タイのSNSショッピングって?
なぜタイでは、SNSショッピングが浸透しているのでしょうか。背景には東南アジア独特のデジタル生活の成熟があります。
まず、タイではインターネット利用者の大多数がオンライン購入に慣れており、SNSで商品を見てそのまま買う行動が日常化しています。
タイのEC市場トレンドに関する詳しい内容は、以下の記事をご覧ください。
【2025年】タイのEC市場トレンドと成長中のTikTok Shop | [マナミナ]まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン
https://manamina.valuesccg.com/articles/3996タイで急成長中のTikTok Shopは、動画視聴とショッピングを融合した新しいECプラットフォームです。2024年にはライブコマースで500%以上の伸びを記録し、多くの企業やクリエイターが成果を上げています。本記事では、タイのEC市場のトレンドと、TikTok Shopの魅力や成功事例について解説します。
このような土壌があったからこそ、TikTokは2022年、インドネシアと英国での海外先行試験を経て、タイ、ベトナム、マレーシアをTikTok Shop店舗展開地域に追加し、東南アジアでの電子商取引(eコマース)の展開を拡大しました。
2023年の「東南アジアEC利用実態調査」によると、タイ人のECの1ヶ月あたりの利用金額はベトナム・インドネシアと比較して、高い傾向があります。
株式会社ヴァリューズ(2023)「東南アジアEC利用実態調査」P.18
一方、日本におけるTikTok Shopのサービス開始は2025年7月でした。導入時期に約3年のタイムラグがあることからも、両国におけるECおよびSNSショッピングの普及状況の違いが読み取れます。
■タイではどのSNSが使われている?
2025年2月のmeltwaterの資料「2025 Social Media Statistics for Thailand」によると、16歳以上のインターネット利用者が最も使用したアプリケーションは、Facebook、 LINEに続き、3番目にTikTokが多いという結果になりました。
Meltwater(2025)「2025 Social Media Statistics for Thailand」
ユーザーごとの各アプリケーションの使用時間は、YouTubeの42時間14分に続いてTikTokが37時間40分と、3番目のFacebookの16時間23分と大きく差が開いています。
Meltwater(2025)「2025 Social Media Statistics for Thailand」
このことから、タイ人がTikTokを長時間利用し、商品の購入を決断しやすい環境にあることがわかります。
タイのSNSショッピングの特徴は?
■小売企業のSNS参入と成功
タイの初期のeコマースでは、人気インフルエンサーがライブ配信で商品を爆発的に売る「個人主導」のスタイルが主流でした。
しかし現在は、 TikTok が提供する撮影環境・編集機能・販売システムの進化により、小売企業自身がクリエイターとして参入できる時代に突入しました。
2025年3月にCP AXTRA傘下のタイのスーパーLotus’s(ロータス)を含む小売ブランド群(Makro–Lotus’s)が、WISESIGHT(Thailand)社が主催する第13回 THAILAND SOCIAL AWARDS において、ハイパーマーケットおよびスーパーマーケット部門の「Best Brand Performance on Social Media」賞を受賞したことを自社のホームページに掲載しました。
TikTokにおいては、Lotus’s(ロータス)が、フォロワー数200万人を突破し、小売ブランドとして国内No.1になりました。
もともとTikTokは、小規模ブランドや新興ビジネスが、低コストで発信力を獲得できるプラットフォームとして評価されています。
しかしロータスのアカウントは月間6,100万回の動画再生回数と、1,200万件を超えるエンゲージメント(2025年12月19日時点のコメントや「いいね」数など)を達成し、「巨大小売企業でもTikTokで勝てる」ということを証明しました。
今回のLotus’s(ロータス)の事例は、小売業が従来の「チラシ」や「紙媒体」に依存した販促から、ソーシャルメディアを中心としたデジタル全体へと軸足を移し、大きく飛躍できることを示しています。
Lotus’s(ロータス)は、オンラインとオフラインを融合させた購買体験を提供し、新たな顧客との関係構築に成功しました。
■小売企業と個人クリエイターの共存
タイのSNSショッピングを語るにあたって、タイの人気インフルエンサーであるpimrypie(ピムリーパイ)は外せません。
彼女はTikTokやFacebookのライブ配信を通じて、さまざまな商品を販売し、記録的な売上を達成したことで注目を集めた『タイのオンライン販売の象徴的存在』です。ライブ配信中はコミカルなトークから視聴者との掛け合いまで、エンタメ要素が散りばめられ、Tiktok のフォロワー数は1,545.万人、エンゲージメントは3.5億を達成しています(2025年12月時点)。
彼女の興味深い点として、売上の一部の寄付や学費の肩代わりなど、社会貢献活動を積極的に行っている点があります。これにより、フォロワーからの信頼度は圧倒的に高く、若者にもシニアにも支持されています。
このように、小売企業のLotus’s(ロータス)と、個人クリエイターのpimrypieの共存が、タイのTikTok市場のおもしろさとなっています。
タイのSNSショッピングで刺さるコンテンツは?
なぜロータスのTikTok動画は、世代を超えて人々に刺さっているのでしょうか。そこには、それぞれの世代にフィットするコンテンツを丁寧に作り分け、幅広い層の心を掴む企業の工夫があります。
具体的にいうと、ターゲットごとに最適なアプローチを行うため、コンテンツの切り口を細かく出し分けています。
Z世代に対してはトレンド感やエンタメ性を重視し、楽しさあふれるコンテンツを展開しています。一方で、小さな子どもがいる家庭には、日々の暮らしに寄り添い、「簡単に作れるメニュー」や「家族のためのアイデア」など、実用的で温かい情報を届けています。
また、ティーンを含むファミリー層には、オンライン上で流行しているネタや、ムーブメントに沿ったエンタメ系コンテンツを発信しています。さらにシニア層には、健康や暮らしの質の向上に役立つ情報を中心に、安心して取り入れられるライフスタイルを提案しており、年代ごとに最も響く価値を丁寧に届けているのが特徴です。
Lotus’s(ロータス)は単なる商品の紹介ではなく、商品のレビュー、DIY、健康・美容のヒント、SNSで話題のトレンドに乗った動画など、多様なショート動画を継続的に配信しています。
Lotus’s(ロータス)のTikTok動画の大半は、実際の店舗内で撮影されており、ロータスの制服を着たスタッフが登場して商品やイベントを紹介している点が特徴です。そのリアルな店内感とスタッフの親しみやすさが視聴者に安心感を与え、店舗とオンラインの距離を縮める役割を果たしています。
最近では時代に合わせ、AIソースを用いた映像広告も見られるようになりました。これにより、ユーザーに「楽しさ」と「便利さ」の両方を提供しています。
小売企業であるため、ライブ販売は難しいものの、TikTokのアプリケーション内から直接商品を購入できる、Tiktok shopでの売上向上を狙ってます。
このようにLotus’s(ロータス)は、ただ売上や再生数を追うのではなく、動画を通じてブランドとしての存在感と生活者との関係性を築き、温かさや身近さ、共感を届けています。単なる買い物先から、日常に寄り添うパートナーへとポジションを変えようとしているのです。
こちらは、実際にLotus’s(ロータス)が発信しているTikTokの例です。
まとめ
タイのLotus’s(ロータス)やpimrypieの成功は、単なる「海外の成功事例」ではなく、日本が今後直面していく購買行動の変化を先取りして示しているようにも見えます。
TikTok動画からの商品の購入が特別ではなく日常となり、企業も個人も同じプラットフォームで勝負する。こうした環境は、導入初期の日本にはまだ浸透していませんが、今後は求められていくのではないでしょうか。
参考文献
Lotus’s 関連
https://www.marketingoops.com/news/biz-news/lotus-is-the-number-1-retailer-on-tiktok/
https://corporate.lotuss.com/en/news/corporate/756-en/
Pimrypie 関連
https://marketeeronline.co/archives/244294
https://www.sanook.com/campus/1403047/
https://en.moneyandbanking.co.th/2024/114807/
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東京外国語大学でタイ語を学ぶ大学生。高校生の頃に初めてタイを訪れ、タイ独特の文化や言語、国民性を体感したことでタイに関する理解を深めたいと考えるようになる。最近までタイのタマサート大学に半年間、交換留学をしていた。