イマーシブ・フォート東京は本当に終わったのか。利用者データから読み解く次の展開

イマーシブ・フォート東京は本当に終わったのか。利用者データから読み解く次の展開

2024年にお台場ヴィーナスフォート跡地にオープンしたイマーシブ・フォート東京が、2026年2月28日(土)をもって営業終了することを発表しました。本記事では、開業から2年間の利用者データや消費行動をもとに、同施設がどのように支持されてきたのかを分析しました。また、「リアル脱出ゲーム」との比較や閉業理由を踏まえ、イマーシブ体験市場の今後について考察します。


イマーシブ・フォート東京とは

「イマーシブ・フォート東京」は体験型エンターテイメント施設として2024年3月に東京・台場にオープンしました。目の前で繰り広げられる演劇の世界に入り込み、自身も登場人物として没入できる世界観が特徴です。

オリジナル作品のほか、アニメ化され人気を博した「東京リベンジャーズ」や、Netflixの実写化で話題を呼んだ「今際の国のアリス」など、幅広い人気作品を題材にしたプログラムも展開されていました。

独自の事業モデルで注目を集めていたイマーシブ・フォート東京ですが、2026年2月28日をもって営業終了することが発表されました。立ち上げ当初から期間限定での運営が予定されていたものの、事業期間を繰り上げる形での終了となります。

オープンから7ヶ月までが注目度のピークか

まず、イマーシブ・フォート東京のサイト訪問者数について見ていきましょう。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用います。

「immersivefort.com」サイト訪問者数

「immersivefort.com」サイト訪問者数
調査対象:PC&スマートフォン
調査期間:2024年3月~2026年2月

公式サイト訪問者数は、2024月10日が最も多く、68万人以上となっています。2024年11月からは訪問者数が減少し、オープン直後の勢いは無くなっています。

サイト訪問者数が上昇した2024年7月は、新作として「今際の国のアリス」のプログラムが追加された時期です。参加者は原作漫画やドラマに登場する“首輪爆弾”を模したデバイスを身に着け、謎解きに失敗すると首元から実際に電流が流れるという刺激的な内容になっています。こうした他では体験できない演出に加え、ドラマ化による注目度の高まりも相まって、特に人気を集めたと考えられます。

IF今際の国のアリス

出典:PR TIMES

オープンから最も注目度が高くなった2024年9月〜10月は、通常のプログラムとは別に、ハロウィン特別プログラムが行われていました。USJの「ハロウィーン・ホラーナイト」を手掛けたプロデューサーによる特別プログラムで、安全・快適にハロウィンを楽しめる場として人気があったのかもしれません。

IFイマハロ

出典:PR TIMES

自然検索が最多、ディスプレイ広告による集客も

次に、公式HPの集客構造を見ていきましょう。

「immersivefort.com」集客構造

「immersivefort.com」集客構造
調査対象:PC&スマートフォン
調査期間:2024年3月~2026年2月

公式サイトの集客構造を見ると、アクセスが多かった2024年10月付近はディスプレイ広告の割合が高くなっており、集客に大きく影響していたと思われます。

「immersivefort.com」ソーシャル内訳

「immersivefort.com」集客構造
調査対象:PC&スマートフォン
調査期間:2024年3月~2026年2月

ソーシャルの内訳は、XとYouTubeが9割以上を占めています。イマーシブ・フォート東京は新感覚のエンターテインメントであるため、内容のイメージが難しいと考えられます。実際に体験した人の感想や、YouTubeのPR動画を見て興味を持った人が多かったのかもしれません。

イマーシブ・フォート東京、実際に来た人は?

次に、イマ―シブフォート・東京の「チケット購入サイト」から、実際に来た人はどんな人だったのかを見てみましょう。

利用者のボリュームゾーンは20代女性

まず、性別を見ていきます。

「ticket.immersivefort.com」サイト訪問者の性別

「ticket.immersivefort.com」サイト訪問者の性別
調査対象:PC&スマートフォン
調査期間:2024年3月~2026年2月

女性の割合が約7割と男性より多くなっています。

次に年代を見ていきましょう。

「ticket.immersivefort.com」サイト訪問者の年代

「ticket.immersivefort.com」サイト訪問者の年代
調査対象:PC&スマートフォン
調査期間:2024年3月~2026年2月

年代は20代、30代がボリュームゾーンとなっており、50代からの割合は低くなっています。若い世代に人気があったと言えるでしょう。

来訪者は関東在住がほとんどを占める

次に、チケット購入サイト訪問者の居住地を見てみます。

「ticket.immersivefort.com」サイト訪問者の居住地

「ticket.immersivefort.com」サイト訪問者の居住地
調査対象:PC&スマートフォン
調査期間:2024年3月~2026年2月

図を見ると、関東地方の割合が大半を占めていることがわかります。イマーシブ・フォート東京は台場の一か所にしかないため、関東以外の地域から来場するには距離的なハードルがあったのかもしれません。

続いて、Web行動データとアンケートデータを用いた分析を行える、株式会社ヴァリューズの分析ツール「Perscope」を用いて、利用者の人物像を深堀りしていきます。

イマーシブ・フォート東京利用者は体験に投資

まず、「イマーシブ・フォート東京」チケット購入サイト訪問者の関心アプリを見てみましょう。

「ticket.immersivefort.com」サイト訪問者の関心アプリ

「ticket.immersivefort.com」サイト訪問者の関心アプリ
調査対象:PC&スマートフォン
調査期間:2025年3月~2026年2月

1位には東京ミステリーサーカス公式アプリが入っており、謎解きに強い関心を寄せていることがわかります。ディズニーやUSJといった、世界観に没入できる施設も人気であり、ウタヒロやカラオケ館など、カラオケ施設のアプリも見られるのが特徴です。普段の日常から少し離れて、物語や音楽の世界に自分から積極的に入り込み、感情を動かす体験を楽しむ人が多いのかもしれません。

また、1人あたりの1ヶ月平均支出を見てみます。

「ticket.immersivefort.com」サイト訪問者の1人あたりの1ヶ月平均支出

「ticket.immersivefort.com」サイト訪問者の1人あたりの1ヶ月平均支出
調査対象:PC&スマートフォン
調査期間:2025年3月~2026年2月

図からは、国内外の旅行・イベント・ライブへの支出が、ネット人口全体と比べて特に高いことが分かります。一方で食費の割合は低く、体験のためであれば惜しまずお金を使う傾向がうかがえます。

イマーシブ・フォート東京のチケット価格は4,800円~24,800円と比較的高めでしたが、体験に対して積極的に投資する層との相性が良かったと考えられます(公式HPより)。

体験施設なら、堅調な謎解きイベントが強いか

先ほどの分析から、イマーシブ・フォート東京の利用者は謎解き関連アプリへの関心が高いことがわかりました。では、同じ体験型ジャンルで長年シェアを維持してきた「謎解き」そのものの動向はどうでしょうか。ここでは、その代表例として安定した人気を誇るSCRAPの「リアル脱出ゲーム」と比較していきます。

体験型イベントとして広く知られるリアル脱出ゲームは、2007年の初開催以来、約20年にわたり高い人気を維持し続けています(参考:公式HP)。

「リアル脱出ゲーム公式HP」サイト訪問者数

リアル脱出ゲーム公式HP」サイト訪問者数
調査対象:PC&スマートフォン
調査期間:2025年3月~2026年2月

サイトの訪問者数を見ると増減はあるものの、直近2年間は25万人以上を安定して維持しています。

「リアル脱出ゲーム」は全国14ヵ所に店舗を構え、オンラインで参加できるプログラムもあります。プログラムも豊富に用意されており、コラボイベントが頻繁に開催されるのも強みです。気軽に参加できたり、興味のあるプログラムを見つけやすいことから安定した人気を築き上げていると考えられます。

イマーシブ・フォート東京は小規模で返り咲くか

イマーシブ・フォート東京のチケット購入サイトの訪問者数は、直近1年間で月10万〜20万人ほどでした。全国展開・オンライン展開を行い、プログラム数も圧倒的に多い「リアル脱出ゲーム」の月間訪問者数が約25万人であることを踏まえると、台場のみで少数プログラムを提供していたイマーシブ・フォート東京も、決して注目度が低かったわけではないと言えます。

イマーシブ・フォート東京を運営していた株式会社刀は、営業終了の理由についてこう述べています。

当初の事業計画では大人数を対象に広い施設面積を要する「ライトな体験」が大半を占めると想定しておりましたが、実際は人数を限定した「ディープな体験」に需要が強く偏ることがわかり、開業2年目にディープ体験中心への業態変更を実施しました。それにより学び得た最適な事業モデルに照らし、本施設規模が過大であると判断し、営業を終了する決断に至りました。

イマーシブ・フォート東京は、大型商業施設ヴィーナスフォートの跡地を活用していましたが、小規模向けのプログラム中心では、広大な施設面積に対する固定費を回収することが難しかったと考えられます。

こうした背景を踏まえると、今後10万〜20万人規模の会場でよりコンパクトに、新たな形で復活する可能性もあり得るでしょう。

まとめ

イマーシブ・フォート東京は予定を繰り上げて閉業となりましたが、体験型エンターテインメントに積極的に投資するファン層からは一定の支持を得ていたことがうかがえます。大規模な市場ではなく、熱量の高い小規模需要に特化する形で再出発する可能性も考えられるため、今後の動向に注目したいところです。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

dockpit 無料版の登録はこちら
▼今回の分析には生活者理解のためのリサーチエンジン『Perscope』を使用しています。『Perscope』では国内最大規模のWeb行動×アンケートデータを活用し、誰でも いつでも 簡単に"生活者起点のマーケティング活動"を実現することができます。無料デモもありますので、興味のある方は下記よりぜひお申し込みください。

Perscope 詳細はこちら

この記事のライター

26卒内定者アルバイトの大学院生。大学では害虫防除の研究をしています。

関連する投稿


タクシー配車アプリ比較!GO・DiDi・Uber Taxiユーザーの違い

タクシー配車アプリ比較!GO・DiDi・Uber Taxiユーザーの違い

スマホ1つで簡単にタクシーが呼べるタクシー配車アプリ。近年はCMなどでの露出も増え、規模を拡大しています。一方、複数のアプリが誕生したことで、どれを選ぶべきか迷っている人も多いのではないでしょうか。本記事では、タクシー配車アプリの「GO」「DiDi」「Uber Taxi」を比較します。アプリの機能面に加え、ユーザーデータの分析から、各アプリのユーザー像を比較していきます。


資さんうどん躍進に見る”外食のファンダム”化。ポイント経済圏・優待券の効力

資さんうどん躍進に見る”外食のファンダム”化。ポイント経済圏・優待券の効力

九州発のローカルチェーン「資さんうどん」は、2024年10月にガスト・バーミヤンなどを有するすかいらーくホールディングスに買収されたことで大きな話題を呼びました。買収から約1年半が経った今、同ブランドへの注目度は急速に高まっています。本記事では、資さんうどんがなぜここまで支持を広げているのか、その背景を考察します。


Duolingoはなぜ“ただの語学アプリ”を超えたのか。2年で100万人増の理由を分析

Duolingoはなぜ“ただの語学アプリ”を超えたのか。2年で100万人増の理由を分析

言語学習アプリとして日本最大級のシェアを誇るDuolingo(デュオリンゴ)。この2年でユーザー数は約100万人増え、競合を大きく引き離す成長を続けています。記事では、Duolingoがなぜここまで支持されるのか、その人気の理由を考察しました。


JR「キュンパス」のお得な平日旅、なぜ若者より50代に人気なのか。魅力に迫る

JR「キュンパス」のお得な平日旅、なぜ若者より50代に人気なのか。魅力に迫る

JR東日本エリアが平日乗り放題になる「JR東日本たびキュン♥早割パス(以下、キュンパス)」をご存じですか?新幹線も乗り放題になるため、かなりお得な旅行を実現できます。今回は、そんなキュンパスの正体を見ていきます。記事の後半では、「平日」に焦点を当て分析し、最後には平日をお得に楽しむ方法をご紹介します。


ハーゲンダッツにも「悪魔」が来た。“魔”を冠した食べ物がヒットする理由

ハーゲンダッツにも「悪魔」が来た。“魔”を冠した食べ物がヒットする理由

「“魔”改造カップラーメン」「“悪魔”のおにぎり」など、商品名に“魔”がつくヒット商品が複数登場しています。この記事では、そんなネーミングとしての“魔”の役割に迫ります。前半部分では、グルメ界でヒットした“魔”の商品と、“魔”の使われ方を見ていきます。後半部分では、“魔”がつく商品がヒットする理由を2つの観点から考察していきます。


ページトップへ