DAZNがW杯全104試合配信で注目集まる
2025年12月、DAZNは、2026年6月に開催されるFIFAワールドカップ26の全試合をライブ配信すると発表しました。
史上最大規模となる全104試合をライブで視聴できるのはDAZNのみであることに加え、日本代表戦の全試合を無料配信する方針も明らかになり、大きな注目を集めています。
これまで、ワールドカップのような国際大会は地上波テレビで視聴するイメージが強かった一方、近年は配信サービスで観戦するスタイルも広がりつつあります。
「独占配信」「全試合無料」国際大会で進むテレビから配信への移行
今回のワールドカップ以外にも、大型スポーツ大会をめぐっては配信サービス各社による大規模配信が相次いでいます。
■Netflix×WBC2026
Netflixは2026年大会の日本国内独占配信権を獲得し、地上波放送なしで配信する方針を発表しました。
Netflixにとって日本国内で初となる本格的なライブスポーツ配信となり、大きな話題を集めました。海外ではNFLやWWEなどのライブ配信実績があり、日本市場でもスポーツ領域への展開が始まった形です。
■ABEMA×FIFAワールドカップカタール2022
ABEMAはFIFAワールドカップカタール 2022を配信し、日本史上初めて全64試合を無料生中継しました。
試合開催23日間のうち21日間でSNSトレンド入りを記録し、視聴中コメント機能を通じた投稿は約70万件にのぼりました。また、本田圭佑のブランド絵文字を活用した投稿も約65万件発生するなど、SNS上でも高い盛り上がりを見せました。
さらに、アクセス集中を見据えて通常時の約3倍規模の配信キャパシティを準備し、開局以来最大規模のトラフィックを記録しています。
参考:数字で振り返る「ABEMA」の「FIFA ワールドカップ カタール 2022」 | 株式会社AbemaTV
このように、近年は大型スポーツ大会の視聴環境が、地上波テレビだけでなく配信サービスへと広がっています。
DAZNがW杯を放映する意味とは
様々な配信サービスが大型スポーツ大会を配信するなかで、改めてDAZNがワールドカップを放映する意味や目的を考察していきます。
ここでは、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用います。
■1.利用者拡大
DAZNがワールドカップを放映する大きな目的として、利用者の拡大があると考えられます。実際に大型スポーツ大会は利用者拡大に寄与するのか、DAZNがスポーツの国際試合を配信した月の「DAZN」と検索した人の人数と、実際のDAZNユーザー数をみていきます。
図:DAZN検索者数推移
調査対象:PC&スマートフォン
調査期間:2024年5月~2026年4月
図:DAZNユーザー数推移
調査対象:スマートフォン
調査期間:2024年5月~2026年4月
赤丸部分が国際大会の配信があった月です。(2024年11月:FIFAワールドカップ・アジア最終予選日本代表戦2試合、2025年6月:FIFAクラブワールドカップ)
いずれのデータでも、国際大会の時期に増加が見られました。国際大会の配信がされると、DAZNへの関心が高まり、検索行動につながっていることがうかがえます。あわせて、実際のアクティブなユーザー数もやや伸びており、話題化が利用増加にも結びついているようです。
こうした傾向を見ると、今回のFIFAワールドカップ26配信も、利用者拡大の追い風になる可能性があります。
他サービスでも見られる、国際大会による利用拡大
Netflixでは、WBC配信期間中に日時利用ユーザー数が大きく増加しました。日本戦開催日は500万〜600万人規模となり、大会前の1〜2月(200万〜300万人規模)を大きく上回っています。
また、WBC期間にNetflixを使い始めたユーザーでも、その後一定の割合で残存することも分かっています。
大型スポーツ大会は、既存ユーザーの視聴機会を増やすだけでなく、新規ユーザーと継続的に繋がるきっかけになる可能性があります。
■2. “スポーツを見るならDAZN”を加速させる
DAZNは2026年に日本上陸10周年を迎えます。これに先立ち、新たなスポーツ表彰イベントDAZN AWARDSを創設しました。
2025年12月23日には、アスリートやチームだけでなく、ファンやレジェンドも称えるイベントとして、DAZN AWARDS 2025 presented by ZOZOTOWNを開催しました。映画界のアカデミー賞、音楽界のグラミー賞のように、日本のスポーツ界を代表するアワードを目指すとしており、DAZNがスポーツ文化そのものへの関与を強めようとしている姿勢がうかがえます。
こうした節目のタイミングでFIFAワールドカップ26 を配信することは、スポーツを見るならDAZNというブランドイメージをさらに強める一手になるのではないでしょうか。
■3.Jリーグのシーズン移行を踏まえた、年間の「継続的な視聴サイクル」の確立
DAZNユーザーの関心サイトを見ると、上位のほとんどをサッカー関連のサイトが占めており、DAZNユーザーは、スポーツの中でも国内リーグを中心としたサッカーへの関心が高いことが分かります。
図:DAZNユーザーの関心サイト
調査対象:スマートフォン
調査期間:2024年5月~2026年4月
実際、DAZNのアプリ利用動向はJリーグのシーズン展開と連動しています。従来のJリーグは2月開幕・12月閉幕の「春秋制」のため、春から夏にかけてリーグ戦が本格化します。これに呼応するように、DAZNアプリの利用も春から初夏にかけてピークを迎え、秋から冬にかけては徐々に落ち着いていく傾向が見られます。
図:DAZNユーザー数推移
調査対象:スマートフォン
調査期間:2024年5月~2026年4月
一方で、Jリーグは2026-27シーズンから秋春制へ移行します。8月頃に開幕し、翌年5月頃に閉幕するため、これまで利用が伸びやすかった夏場は、オフシーズン寄りの時期へと変わります。DAZNにとっては、夏のアクティブユーザー維持が新たな課題になる可能性があります。
そこで注目されるのが、2026年6〜7月開催のFIFAワールドカップ26 です。Jリーグ移行の影響で利用が落ち着くことも想定される夏場に大型大会が入ることで、DAZNにとってはユーザー維持の追い風になりそうです。
図:Jリーグシーズン移行後の年間スケジュールイメージ(筆者作成)
データ参照:2023_26796_j1.pdf
もしここで視聴習慣の定着に成功すれば、秋〜春はJリーグと欧州リーグ、夏はワールドカップや各国代表戦、移籍市場の話題で需要をつなぐ流れが生まれます。
これによって、DAZN内で年間を通じてユーザーが定着し続ける「継続視聴の仕組み」が整うと考えられます。
まとめ
DAZNによるFIFAワールドカップ26 配信は、単なる放映権獲得ではなく、成長戦略の一手と言えるでしょう。大型スポーツ大会は、新規ユーザー獲得や認知拡大につながりやすく、配信サービス各社にとって重要なコンテンツとなっています。
DAZNはすでに国内スポーツ配信市場で存在感があり、今回のワールドカップ配信によって「スポーツを見るならDAZN」というブランド強化も期待されます。さらに、Jリーグや欧州サッカーなど継続視聴につながるコンテンツも多く、大会後の利用継続にもつなげやすい点が強みです。
2026年ワールドカップは、日本のスポーツ視聴がテレビ中心から配信中心へ移る転換点になるかもしれません。







2027年4月に入社予定の大学4年生です。
スポーツ健康科学部で、スポーツマーケティングを専攻しています。