はじめに
薬食同源(やくしょくどうげん)とは、普段食べている多くの食材には栄養だけでなく、体を整えたり日々の食事から健康を維持し、体をいたわるという意味です [1]。
身近な例でいうと、クコの実、山芋、ナツメ、黒ゴマなどがこれにあたります。これらは単なる食べ物ではなく、健やかな毎日をサポートしてくれる心強い味方なのです [1][2]。
今、生活リズムが加速する中国では、単に「お腹を満たす」だけでなく「食べて健康になる」ことを求める人が急増中。この手軽な健康法は、シニア世代から若者まで幅広い層を虜にし、巨大マーケットへと成長しています[2]。
シニア世代の本音:もっと質の高いセカンドライフを
中国は現在、本格的な高齢化社会を迎えています。源達信息証券研究所の報告書によると、2024年末時点で、60歳以上の人口は3.1億人に達し、総人口の22%を占めるまでになりました[3]。
シニア世代にとって、健康食品は慢性期の病気を予防し、元気に毎日を過ごすための必須アイテムです[3]。ただし、ひと口にシニアと言っても、年齢層によってお買い物スタイルには違いがあります。
70代以上: 節約志向が強く、価格が手頃でコスパが良く、伝統的な健康食品を好みます。
60代: 経済的に余裕がある人が多く、高品質で多機能な健康食品にはお金を惜しみません。
50代: 新しいトレンドにセンシティブで、これからの健康食品市場を引っ張るイノベーションの主役です。
若者の新トレンド:忙しい毎日にタイパ抜群の養生
今や薬食同源は高齢者だけのものではありません。仕事のプレッシャーや夜更かしによる疲れに悩む若者たちの間で大人気なのです [4]。
源達信息証券研究所の報告書によると、18歳〜35歳の若者の消費ジャンルにおいて、「健康・養生」は第3位にランクインしています[3]。
とはいえ、シニア世代と同じスタイルではありません。若者たちの本音は「健康にはなりたいけど、面倒なのはイヤ!」[2]。そんなニーズに応えて、市場に新しい健康商品が次々と登場しています。
キャップを開けたらすぐ飲める健康ドリンク
リンゴと黄耆(おうぎ)のお茶、あずきハトムギ茶、陳皮(ちんぴ)茶などがペットボトル化。コンビニで手軽に買ってその場で飲める手軽さがアピールポイントです[2]。
伝統サプリのお菓子化
阿膠(あきょう)のゼリー、黒ゴマ団子、即席ツバメの巣などが、おしゃれな個包装に変身。オフィスで仕事の合間にパクッと一口で栄養補給できるスタイルが定番化しています[3]。
“サクサク食感!お腹に優しいヘルシーおやつを見つけちゃいました✨”
出典:小紅書(RED)ユーザー投稿より(ユーザーID非公開)
今、市場で売れまくっている「薬食同源」ヒット商品
この巨大市場で、特に今注目を集めている健康食品をいくつかご紹介します [4]。
黒ゴマ
中国では古くから美容や健康維持に嬉しい食材とされてきた黒ゴマ。最近では、美味しく味付けされた黒ゴマ団子や黒ゴマペーストになり、ヘルシーなおやつとして大ヒットしています。
“コストコ新商品:香港スタイルの黒ゴマペースト”
出典:小紅書(RED)ユーザー投稿より(ユーザーID非公開)
穀物・シリアル類
スマートな食生活を心がけたい現代人にぴったりです。
オートミールは朝食だけでなくスナック菓子にも応用され、トウモロコシはその素朴な甘さと手頃な価格で愛されています。
山芋
すっきりした毎日や、内側からの潤いを気にする方に嬉しい山芋。
その健康価値が改めて見直され、山芋を使ったチップスなどの関連商品が店頭に溢れています。
これからのビジネス展開と未来のトレンド
智研咨询の調査によると、薬食同源市場の成長スピードは凄まじく、2024年の主要ネット通販プラットフォームでの売上だけで、567.8億元(約1兆円以上)を記録しました [1]。
今後はさらに以下のような方向へ進化していくと予想されています。
サイエンスと安心感
いまの消費者は成分表を厳しくチェックします。「砂糖不使用」「化学添加物なし」といったシンプルな処方ほど売れる時代です。
また、企業側も科学的な実験データをもとに効果を証明し、安心感をアピールしています[2]。
老舗ブランドの「若返り」
100年以上の歴史を持つ漢方の老舗(「北京同仁堂」など)が、異業種とコラボ。漢方ミルクティーや健康アフタヌーンティーを発売し、若者の心を掴んでいます[5]。
より身近になる購入場所
これまでの薬局やスーパーだけでなく、TikTokなどの動画コマース、ネット通販、さらにはコストコやSam's Clubのような大型会員制スーパーでの取り扱いが急拡大しています[4]。
“サムズ・クラブの薬膳パウダー系に超ハマってる人、私以外にもいる?”
出典:小紅書(RED)ユーザー投稿より(ユーザーID非公開)
まとめ
シニア世代から多忙な若者まで、全世代の心を掴んで離さない中国の「薬食同源」トレンド。
消費者の健康志向がかつてないほど高まる中、日々の食事を通じたセルフケアという新たな一大マーケットが、今後どのように成熟していくのか目が離せません。
参考資料
[1]. 智研咨询(2026). 《2026-2032年中国药食同源行业市场运营态势及发展潜力研判报告》「2026-2032年中国薬食同源業界の市場運営動向および発展潜在力予測報告」https://www.chyxx.com/research/1245140.html
[2]. 新消费智库(2026). 《“脆皮”年轻人喝出百亿市场:30个消费者洞察,看懂2025药食同源》「『打たれ弱い』若者が生み出す数百億市場:30の消費者インサイト、2025年薬食同源を読み解く」https://www.21jingji.com/article/20260227/herald/af11b94ffce0d0e727661dbf0ee4cfb4.html
[3]. 源达信息证券研究所(2025). 《中医养生观念深入人心,中药材功能性食品获消费者青睐》「中医学の養生観が浸透、漢方薬材機能性食品が消費者に好評」https://pdf.dfcfw.com/pdf/H3_AP202507221713654659_1.pdf?1753208307000.pdf
[4]. 中国银河证券研究院(2025). 《大健康食品投资品类图谱》「大ヘルスケア食品投資カテゴリーマップ」https://pdf.dfcfw.com/pdf/H301_AP202512171802237618_1.pdf
[5]. 国际商报(2024). 《新中式养生出圈 药食同源引领消费新风向》「新中国式養生がブレイク、薬食同源が消費の新たなトレンドを牽引」https://swt.fujian.gov.cn/xxgk/jgzn/jgcs/dzswhxxhc/gzdt_598/202412/t20241224_6597344.htm
※本記事で紹介している「黄耆(おうぎ)」や「阿膠(あきょう)」などは、中国では一般的な健康食材ですが、日本国内の食薬区分では「医薬品」に分類されており、一般の食品として流通・販売することは認められていません。あくまで中国国内のトレンド事例としてお読みください。








文章を書くことと、人の気持ちや社会の動きに目を向けることが好きで、現在は日々のニュースを自分なりの視点で追いかけています。中国出身で、現在は日本で学びながら生活しています。ふとした日常や、見過ごされがちな出来事の中にも、誰かの心に残るストーリーがあると信じています。そんな想いを込めて、ひとつひとつの記事を綴っています。