中国の犬猫3000万匹がシニア期へ、進化するペット終活最新事情

中国の犬猫3000万匹がシニア期へ、進化するペット終活最新事情

今、中国ではペットの老いが大きなテーマになっています。たくさんの犬や猫がシニア期を迎え、ペット業界もかわいがるだけのフェーズから、最期まで寄り添うケアへと変わってきました。ペット保険、フードと健康管理、そしてペット葬儀。広がり続けるこの市場で、今最も注目されている変化をレポートします。


はじめに

高齢化社会も、成熟したペット経済も、日本ではもうおなじみの風景です。実はここ数年、中国でもよく似た変化が起きています。
Petdataによると、 2024年の中国都市部における犬猫の消費市場は、前年比7.5%増の3002億元(約7.1兆円) になりました[1]。内訳は犬が1557億元(約3.7兆円)、猫が1445億元(約3.4兆円)です。
そして今、 約3000万匹もの犬猫がシニア期に入っていて、業界の関心もきめ細かく飼うことから、健康と心のケア、看取りや見送りまで含めたペット終活へと移ってきています[2]。
この記事では、ペット保険、フードと健康管理、ペット葬儀という3つの分野で、今起きている変化を見ていきます。

シニア期に入ったペットたち

ペットの高齢化は、今となっては感覚上の話ではありません。
iBrandiの分析によると、 中国でシニア期に入った犬猫の数は増え続けており、2025年には7歳以上のシニア犬猫が約3000万匹になるとみられています[2]。

この変化の背景には、中国社会そのものの高齢化があります。
KPMG中国の報告書によると、2024年末時点で60歳以上の人口は3.1億人、65歳以上は2.2億人になり、 中国はすでに中度老齢化社会に入ったとされています[3]。
シニア世代が子育てのようにペットを飼う感覚を強めていることも大きなポイントです。ペットを単なる番犬やネズミ捕りではなく家族の一員として捉える人が増え、それがペット向けのシニア市場を支えています[3]。

シニアペットが増えるにつれ、ペット業界の専門メディアもペットの老いとどう向き合うかを発信するようになってきました。

ペット保険:浸透率は伸びているが、まだこれからの市場

このトレンドのなかで強く注目が集まっているのが、ペット保険です。
Petdataの白書によれば、 2024年は犬猫の消費市場全体のなかで、保険を選ぶ人の割合が前年から1.7%増えました[1]。
とはいえ、KPMG中国の報告は、ペット保険のような高額サービスはまだ普及が進んでおらず、これから伸びる余地が大きいと指摘しています[3]。

理由のひとつが、住民一人当たりの収入の伸び方です。収入自体は増え続けているものの、増えるペースは鈍くなっていて、今後の収入増加への安心感がやや弱まっているといいます[3]。
つまりペットを家族のように思う気持ちが強まっても、保険のような将来のリスクに備える消費に進めるかは、 家庭の経済的なゆとり次第のようです。

出典:Alipay(支付宝)ペット関連サービス画面より引用

一方で、シニア期に入ったペットは慢性疾患のリスクが高まる傾向にあり、手術や長期投薬が必要になると、一回の医療費が高くなることも珍しくないといいます[2]。こうした医療費の高さが、保険という選択肢への注目をさらに後押ししています[4]。

フードと健康管理:意識と市場が急激に進化中

一生を通じて見守るという考え方が広がるなかで、中国のペット健康管理も急速に進化しています。 病気になってから治すのではなく、未然に防ぐことや、年齢に合わせたごはんへと力点が移っています。

犬猫の老年期は10歳以上とされ、この時期には抗酸化物質や関節をサポートする栄養が必要だといわれています。
実際、シニアペットの飼い主は元気を保つためにラクトフェリン系のサプリメントを、関節の健康のためにグルコサミンやカルシウム系の製品を選ぶ傾向が強いです[5]。

多くのシニアペットの飼い主が、ペットがシニア期に入ったあとに専用フードや療法食を買いたいと考えていて、ロイヤルカナンやヒルズといった海外ブランドだけでなく、誠実一口や鮮朗といった 中国国内のブランドも、シニアペット向けの機能フード市場に次々と入ってきています

ただ、供給はまだ需要に追いついていません。
2024年時点で、国産のシニアペットフードの売上は業界全体のわずか3.2%にとどまり、購入している人の割合も5%に届いていないというデータもあります[2]。

ペット葬儀:市場急成長の中、追いつかないルール整備

ペットの生涯のいちばん最後にあるのが、葬儀や看取りのサービスです。
2024年時点で中国のペット数はすでに1.2億匹を超え、毎年数百万匹のペットが命を終えているとされています[6]。

出典:小紅書(RED)アプリ内投稿画面より引用

Qichachaのデータによれば、 2025年6月時点でペット葬儀を事業内容に含む会社は全国で8000社を超え、しかもその大半が過去3年以内に立ち上げられた新しい会社だといいます[6]。
市場規模も、 2023年の18.25億元(約430億円)から、2025年には50億元(約1,200億円)、さらに2030年には100億元(約2,370億円)を超えると見込まれています[6]。
サービスの内容も、火葬や遺骨の保管といった基本的なものから、お別れの儀式、記念アルバム作り、遺髪を使った記念品づくりまで、どんどん広がっています[6]。

ただ、急成長の裏側には解決するべき問題も少なくありません。業界関係者や専門家からは、動物処理に関するルール整備や、複数の行政部門が連携した監督体制づくり、料金をはっきり示すことなどが求められています[5]。

これからどうなる

ペットフード、医療、保険、そしてペット葬儀。これらはもう別々の市場ではありません。ペットの一生を通じてひとつにつながる産業になりつつあります[2]。

これまでの10年、中国のペット業界にとって最大のチャンスは飼う人が増えることでした。
これからの10年は、ペットが老いていくこと自体が、新しい市場を生み出す時代になっていくのかもしれません[2]。

参考文献URL

参考資料
[1] 派读宠物行业大数据平台(Petdata.cn). 2025年中国宠物行业白皮书(消费报告)【2025年中国ペット産業白書(消費報告)】[R/OL]. (2024-12)[2026-06-18]. https://pdf.dfcfw.com/pdf/H3_AP202512111798269901_1.pdf.
[2] iBrandi品创. 3000万只犬猫进入"银发期",宠物生意要变了?【3000万匹の犬猫が「シニア期」入り、ペットビジネスに変化が訪れる?】[EB/OL]. CBNData. https://www.cbndata.com/information/295370.
[3] 毕马威中国(KPMG中国). 2025年中国宠物行业市场报告——"它经济"的消费升级与市场洞察【2025年中国ペット産業市場報告——「ペット経済」における消費のアップグレードと市場インサイト】. https://assets.kpmg.com/content/dam/kpmg/cn/pdf/zh/2025/06/2025-china-pet-industry-market-report.pdf.
[4] 央视财经. 宠物保险消费升温 现实瓶颈如何破局?【ペット保険消費が活発化、現実的な課題をどう打開するか?】[N/OL]. 新华网客户端. (2026-01-27)[2026-06-18]. https://app.xinhuanet.com/news/article.html?articleId=d68c9cb7311d39c03837cfc9cb941022.
[5] 世界宠物协会. 报告解读丨2025年中国宠物分阶喂养与营养需求白皮书【レポート解説|2025年中国ペットのライフステージ別飼育・栄養ニーズ白書】. https://www.world-pet.org/newsinfo/3109788.html.
[6] 武江民, 李晓婷, 宋佳. 新华视点·关注宠物经济丨每年数百万只宠物死亡,"身后事"怎么办?【新華視点·ペット経済に注目|年間数百万匹のペットが死亡、その「最期」はどう扱うべきか?】. https://www.news.cn/politics/20250612/9c509c65a8424e318ba83af4c05074a9/c.html.

この記事のライター

WSK

文章を書くことと、人の気持ちや社会の動きに目を向けることが好きで、現在は日々のニュースを自分なりの視点で追いかけています。中国出身で、現在は日本で学びながら生活しています。ふとした日常や、見過ごされがちな出来事の中にも、誰かの心に残るストーリーがあると信じています。そんな想いを込めて、ひとつひとつの記事を綴っています。

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