今すぐ真似できる!外部環境を調査!ECサイトの市場動向の調査方法

今すぐ真似できる!外部環境を調査!ECサイトの市場動向の調査方法

EC市場の活性化が騒がれる昨今、ECサイトの新規参入を考えられている方も多いのではないでしょうか。ECサイトへ新規参入するにあたり、市場動向調査は不可欠なステップとなります。市場動向調査と一言で言っても、その中にはマクロ・ミクロ両方の視点が含まれており、どちらが欠けていてもそれは市場動向を把握したとは言えません。そこで当記事では、「ECサイトへの新規参入を狙っている家電メーカー」を例に出し、マクロ・ミクロの両視点から、全て無料で簡単に行えるEC市場の動向調査方法をご紹介します。


【1】マクロな視点

まず、ECサイトを開設することが本当に会社の利益につながるのかを、マクロな視点から把握します。

1-1 インターネットの全体像把握

はじめに、インターネットの全体像を捉え、ターゲット層のボリュームを把握します。
そのための手段として、総務省が年に1度発行している、国内の情報通信サービスの利用状況等をまとめた通信利用動向調査の情報を参照します。

中でも当記事では、世代別インターネットの利用率と利用目的を取り上げます。

表1:世代別インターネット利用率

表1により、想定ユーザーのインターネット利用率を年代別に把握できます。

例えばECサイトの想定ターゲットを30代と置いた場合、表1を見ると約98%が現在インターネットを利用していることが分かります。

表2:インターネットの利用目的

次に表2を見ると、商品・サービスの購入・取引にインターネットを利用している年代は、30代が最も多く、60歳以上が最も少ないと読み取れます。

表1と表2を組み合わせると、日本全国の30代の約98%がインターネットを利用しており、そのうち目的が購入である人も6割以上いることが分かります。

このように、ターゲット層のインターネット利用率に加えて利用目的等を把握することで、ECサイト開設が貴社にとって効果的なのかをご判断いただけます。

EC市場に新規参入するにあたり、当然ではあるものの意外と見落としやすいインターネット全体の動向を調べることで、思い込みでサイトを作り、失敗するリスクを回避できるのです。


1-2 EC市場の全体像把握
インターネットの全体像を把握した後は、現在参入することが最適なのかを捉えるために、EC市場全体の動向を把握します。 EC市場全体の動向を把握するには、一つのサイトだけでなく複数のサイトの動向を把握することが必要となります。

複数サイトの動向把握は、インターネットや雑誌等に掲載されている記事を読むことで可能ですが、それでは任意のサイトを指定して動きを見ることは出来ません。

そこで、ヴァリューズのサービスの1つであるネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「eMark+」の無料機能を使用し、把握します。

eMark+」であれば、任意のサイトを指定いただくことで、すぐに分析を行うことが可能です。

機能の1つであるサイトランキングにて、カテゴリをショッピングに絞り、UU数(ユニークユーザー数)ランキングを見たところ、上位10サイトは表3のようになりました。

表3:サイトランキング上位10サイト(時期:2016年3月、カテゴリ:ショッピング、デバイス:PC)

そこで、市場動向を見るために上位3サイトに絞り、過去13か月のUU数推移を見てみます。

表4:表3の上位3サイトのUU数推移(2015年3月~2016年3月)

表4を見ると、2016年3月のUU数は2015年3月と比べてわずかに伸びてはいるものの、格段に伸びているわけではないことが分かります。

このような現状を把握しておくことで、EC市場は急成長しているため自社も参入してみようというような、思い込みによるリスクを回避できるのです。

【2】ミクロな視点

マクロな視点でインターネット利用者・EC市場の全体像を把握した後は、ミクロな視点で関連業種及び競合他社のEC市場動向を見ていきます。

2-1 関連業種の動向把握
関連業種の動向把握に便利なのが、各社がWEB上で公開している自主調査情報です。というのも、会社ごとに調査方法・着目点・結果が異なるため、各社のノウハウを活かした調査を幅広くチェックするだけで様々な角度から市場動向をチェックできるのです。

例:株式会社ヴァリューズの家電メーカーサイトの自主調査(2015.06)

その際、関連業種のみでなく、さまざまな業種の動向を見ておくことも併せておすすめします。そうすることで、ミクロな視点からEC市場全体の動向を掴むこともできるのです。さまざまな業種の傾向を常に把握しておくことで、戦略の幅も広がります。

そのためには、各社の更新情報を定期的に確認することが必要です。企業ごとに更新頻度は異なるため、メールマガジンの登録・RSSリーダー(登録サイトの更新情報を教えてくれるツール)の活用をお勧めします。

本サイトでもナレッジ・自主調査データを配信しておりますので、ぜひこちらも上手くご活用ください。

2-2 競合サイトの動向把握
最後に、市場動向調査と聞いて始めに思い浮かべる人が多いであろう競合サイトの動向を、先述のマーケティング分析サービス「eMark+」の無料機能を活用して調査します。

家電メーカーがECサイトに新規参入するにあたり、家電量販店のECサイトやAmazon/楽天などの総合ECサイトとの差別化を図るためには、市場のどこに参入余地があるのかを見極める必要があります。そこで、家電ECサイトの競合を把握するため、サイトランキングを見てみます。

表5:サイトランキング上位10サイト
(時期:2016年3月、カテゴリ:ショッピング、サブカテゴリ:家電・AV・IT、デバイス:PC)

当記事では、この中で家電全般を販売している3サイトを比較サイトとして選定しました。

まずは家電ECサイトの市場動向を把握すべく、選択した3サイトのUU数推移を見たところ、全サイトで2015年3月よりも2016年3月の方が多く人を集めていることが分かりました。

表6:指定3サイトのUU数推移(2015年3月~2016年3月)

次に、それぞれのサイトの特徴を見るため、基本的な指標を見ていきます。

表7:指定3サイトの一人あたりページビュー数推移

表8:指定3サイトの直帰率推移

表9:指定3サイトの平均滞在時間推移

これを見ると、joshinwebは年間を通じて一人当たりPV数が最も高く、直帰率は最も低いことから、獲得したユーザーをサイト内で回遊させることに成功しているサイトであることが読み取れます。

一方ヨドバシカメラは、ユーザー数が最も多い上に、平均滞在時間も一年中ほとんど変化なく5分前後を推移していることから、じっくり検討するのに向いたサイトであると言えます。

最後に、基本指標の他にサイトの特徴が出やすい、訪問ユーザーの属性を構成比で比較します。

表10:指定3サイトの性別構成比比較

男女比は、全サイトで男性が6割を超えており、joshinwebの女性比率が最も高くなっています。

表11:指定3サイトの年齢区分構成比比較

年齢区分を見ると、joshinwebのみ20代が1割以下、40代以上で7割以上と、他の2サイトと比べて年齢層が高めのサイトであると読み取れます。

表12:指定3サイトのエリア構成比比較

エリア比較を見ると、joshinwebは23.9%と近畿に強いサイトであることが分かります。

基本指標/ユーザー属性のデータを踏まえると、joshinwebはまさに競合サイトと異なる属性をターゲットとすることで成功しているとおわかりいただけるのではないでしょうか。

このように、競合サイトのデータを比較して、参入余地を見つけることが最も重要となるのです。

本記事ではeMark+を用いて調査を行いましたが、eMark+の機能がパワーアップした新ツール「Dockpit(ドックピット)」が2020年10月にリリースされました。「Dockpit(ドックピット)」の無料機能では、他にもさまざまな基本指標/ユーザー属性を無料で分析いただけます。

また、当記事ではサイトランキングから競合を選定する流れをご紹介しましたが、任意のサイトのURLを入力していただければ、すぐにそのサイトのユーザー数などの傾向調査をすることも可能です。PCデータであれば無料でお使いいただけますので、ぜひご活用ください。

【3】おわりに

いかがでしたか。今すぐ無料で実践できるECサイトの市場動向の調査方法をご紹介しました。

これらのデータをどのように読み取り、ターゲットを定めていくのか、ここがマーケッターの手腕が問われる部分であり、市場分析のためのデータ収集はあくまでもその準備に過ぎません。

例えば、当記事でご紹介したデータだけ見ても、さまざまな仮説が生まれてきたのではないでしょうか。同じデータを読んでいても、人によって仮説・考察は異なるのです。

データ収集に余計な時間・力を注ぐことなく、是非ともデータを読み取ることに全力を注ぎ、ECサイト市場への参入余地を見つけ出してください。

この記事のライター

マナミナは" まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン "。
市場の動向や消費者の気持ちをデータを調査して伝えます。

編集部は、メディア出身者やデータ分析プロジェクト経験者、マーケティングコンサルタント、広告代理店出身者まで、様々なバックグラウンドのメンバーが集まりました。イメージは「仲の良いパートナー会社の人」。難しいことも簡単に、「みんながまなべる」メディアをめざして、日々情報を発信しています。

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