シニア〜フレイル・プレフレイル -健康と商品購入の実態
■株式会社リクシスとは
2016年創立。代表取締役CEO佐々木裕子氏。
「大介護時代に全ての人の物語が輝く世界を」をテーマに、超高齢社会に、介護に関わるすべての人を心理・物理・情報ハードルから解放し自分の「選択」ができる世界を実現するということをミッションに活動。
歳を取るごとに必要となる「エイジングリテラシー」や、介護に関しての知識のソリューションを提供中。
株式会社リクシスのサービス紹介ページです。当社は、最先端のIT技術と介護プロフェッショナルの知見、そして人と組織にかかわる変革デザイン技術を結集し、シニアケアにかかわる「すべての人」が、輝き続ける未来をつくります。
図:株式会社リクシス ミッション
スピーカー紹介
(左)取締役COO大隅聖子(おおすみ・せいこ)氏。
大学卒業後、リクルート(現・株式会社リクルートホールディングス)に入社、17年の勤務ののち、2006年株式会社ローソン入社。2009年開発統括本部・オーナー開発部長、新たなFC制度の構築に成功。2012年理事執行役員就任。2016年に株式会社永谷園ホールディングスに入社、研究・開発本部健康食品事業部長に就任。健康食品、介護食などの新規事業立ち上げを牽引した。流通、メーカーの経験からシニアマーケットを在り方を考える。
(右)CCO(Chief Care Officer)木場猛(こば・たける)氏。
東京大学文学部卒。介護福祉士。2001年の在学中から現在まで20年近く現場の介護職として在宅介護に携わり、これまでにのべ500組以上のご高齢者及びそのご家族の支援を行う。「仕事と介護の両立支援窓口」相談員を務める。
シニア市場のマーケット規模
「シニア市場は唯一の拡大維持マーケット」と題して、リクシスの木場氏(以下:木場)は「日本の人口全体が減少傾向にある中で、高齢者の占める割合だけが増加傾向にある」と説明。
図:シニア市場のマーケット規模① 人口推移
続いて、令和2年版高齢社会白書に基づき、「60歳以上が占める金融資産の割合は6割を超え、以降も増加している」と指摘します。
人口のおよそ3割弱が6割の金融資産を占めるという現実は、シニア関連市場が今後拡大傾向にあるマーケットであることを示唆しています。
図:シニア市場のマーケット規模② 金融資産
■シニアの健康状態別の分類
次に3600万人いると言われるシニア層(65歳以上)を健康状態によって4段階に分類。
木場:「要介護の方は実数で、フレイル・プレフレイルの方は厚生労働省の推計で算出し、図のように健康な方・プレフレイル・フレイル・要介護、と4つに分けています。
フレイル・プレフレイルという言葉に馴染みのない方もいらっしゃるかと思いますので、簡単にご説明すると、『老化に伴って色々なリスクを抱えた脆弱な状態』をフレイルと言います。」
木場の説明によるとフレイルに当たるのは以下の5つのような症状をいくつか抱えた状況だと言います。
・何をするにも骨折りだと感じる
・階段は壁つたいや手すりがないと昇れない
・1km程を続けて歩くことが難しい
・1日のうち、座る、横になる時間が置いている時間の80%以上である
・6ヶ月の間に2〜3kgの体重減少があった
木場:「この5つがチェック項目の全てではありませんが、このような状況を3つ以上当てはまるのがフレイル。1〜2つ当てはまるのがプレフレイルと分類しています。」
図:シニアの健康分類
■コロナ禍での健康への意識の変化
2020年6月にリクシスとヴァリューズの共同で行った、健康意識の調査によると、新型コロナ感染拡大をきっかけとした変化として、半数以上の人が以前よりも健康・介護・医療に関する情報を収集したいと考えているとの結果に。
さらに、健康状態の分類毎に「意識の変化」をみてみると、健康維持に役立つ情報に対して、特に健常・プレフレイルは「そう思う・ ややそう思う」計で56.0%とコロナ以前と比べ関心が高まっているとわかりました。
図:健康に関する意識調査
シニアの消費行動の実態は?
続いて、リクシスとヴァリューズが共同で行ったシニアの消費行動に関する実態調査結果を、リクシスの大隅氏(以下:大隈)が解説しました。
調査対象:健常・プレフレイル・フレイルの方
人 数:200名
年 代:70代以上
性 別:男女 各100名
調査方法:インターネット調査(株式会社ヴァリューズ)
■シニアは新商品への興味関心が強い
まず、大隈はシニアの新商品への興味関心の高さに注目。その割合は実に88%との数字にも現れています。
図:シニアの消費行動①
大隈:「これを先ほど分類をご説明した健康状態別に傾向を見ていきたいと思います。
フレイルは新商品の興味関心が10%ほど低い結果でした。その理由として、すでに自身の健康状態に見合った商品を持っているだとか、身体上の不便から新商品を自ら選んで買う機会が減っている、また、生活に対する意欲の低下などが考えられます。
プレフレイルの方は、自分の健康状態に変化を感じているためか、自分の健康をより健康になれる、サポートしてくれる商品を探す意欲が高いと読み取れます。
いずれにせよ全体的に高い数値であることに変わりはないと見受けられました。」
図:シニアの消費行動②
それではシニアの認知経路はどこから来るのか見てみましょう。
大隈:「昨今、新聞・テレビ番組・テレビCMと同等に、インターネットからの認知と影響が大きい傾向があるとわかりました。
そもそもこれがインターネット調査という性質から、結果に偏りがあるという可能性を示唆される方もあるかもしれませんが、令和元年の総務省発表の通信の利用状況でも60歳以上のインターネット利用が10%以上伸びて、74.2%までがネットを利用しているということがわかっています。
また、今回の調査対象の70代、80代に区切っても、70%以上のネット利用が確認されているとの結果が出ています。そういった裏付けからも、シニアへのネット普及率は高い水準にあるといえるでしょう。」
図:シニアの消費行動③
同じく、認知経路だけでなく、購入経路としてもインターネットが利用されているというのがわかるのが下記のデータです。
大隈:「食品はまだまだ余地はあります。とは言え、36.5%が新商品の認知・購入経路にインターネットを利用している点にはご注目頂いても良いのではないでしょうか。」
図:シニアの消費行動④
シニアの消費行動について、大隈は下記のようにまとめました。
1.シニアの最大の関心は「健康」
健康と言っても、各健康状態によって求める「健康」が違ってくる。それぞれの求める健康に合わせた訴求が必要になっていくのではないか。
2.シニアはすでにECを活用している
インターネットを用いた自社への認知を高めることで、自社サイトへの購買経路も確立できるのではないか。
ログデータで読み解く、シニアのウェブ行動
セミナー後半では、多くの消費者が不安に思っている「認知症」をテーマに、ウェブ行動から読み解ける消費者の行動を分析します。
定量的な観点:
どんな人が調べているのか?どんなことに興味を持っている人が調べているのか?
定性的な観点:
どのような文脈で興味をもって調べているのか?どんなコンテンツを見ているのか?
スピーカー紹介
図:スピーカー紹介
■ネット行動ログ〜「認知症」を調べる人ってどんな人?
まずは定量的な観点からヴァリューズの竹久が解説。
竹久:「下記のデータは「認知症」を含む検索を、PCあるいはスマートフォンで行った人はこの1年間で200万人に上り、約750万回のセッション数が確認されています。
検索者の属性としては、女性が6割以上と男性より多く、40代から50代のユーザーが多い事が特徴的です。これは自身の事というよりも、親世代の健康状態を案じて検索をしているという見方もできると思います。」
図:認知症を調べる人の人数・属性
続いて、「認知症」と掛け合わせて検索されているワードに着目。
性年代別に「どのような掛け合わせ検索をしているか」について解説は続きます。
竹久:「左にあるほど男性が多く、上に行くほど年齢が上がるという見方のデータになります。
年齢が高くなると、「認知症」の「兆候」や「初期症状」など、自分や身近な人の予兆が気になる様子がわかります。
年齢が若い人では、「特徴」「年齢」など、自分の事ではなく、やや先のこととして考えている様子がわかります。」
図:認知症を調べる人の検索の仕方
続いて示したデータは「認知症を調べる60代以上の興味・関心」について。
竹久:「これは興味関心に関するアンケートを集計した結果になっているのですが、
「テレビ番組」というのが大きく出てきているのが興味深く感じられます。
他には「経済」、「健康・医療」、「病気」、「パソコン」、「読書」、「書籍」、あとは「映画」などがあがっていますが、データが示す位置から言っても、「テレビ番組」が一種のハブになっていると推測できそうです。「テレビ番組」で報道されたもの、扱われたものに関心を持っていると解釈できると言えそうです。」
図:認知症を検索する60代
上記3つのデータにより、「認知症」を検索する人の全体像がイメージできた事と思います。続いては、定性的な観点から、どのような検索をしているかの深掘りをしていきます。
竹久:「細かく人の行動ログを読み解いていくと、色々なアイデアが浮かんできます。
例えば、どんな時にどのような情報に触れるかといった点では、普段シニアがニュースやメディアで、「認知症」に関する記事を読んだりしているという行動から、能動的な検索を待つだけではなく、それら当該メディアでの記事・特集などが有効なのではないかということが言えます。
また、オンラインだけではなく、オフラインメディアと連動したアプローチが有効と推測もできるかと思います。
また、どのような情報を参考にしているかという点では、医師や専門家が薦める健康法や、体験談を多く検索、閲覧していることから、専門家とタイアップした記事や、訴求が有効ということが一つ言えると思います。
そして、手軽にできる脳トレや体操などのコンテンツが参照されやすいといった結果からは、体操、脳トレといった現在主流の健康対策にどのように取り入れてもらうかがポイントと言えそうです。
例えば食品なら、『トレーニング後のプロテイン』といったイメージでの訴求方法の仮説が立てられるのではないでしょうか。」
図:「認知症」を検索するユーザーの文脈・サマリ
まとめ
シニア市場のリアルな拡大傾向、その中の潜在的な購買力について知ることができ、ひとまとめにシニアというだけでなく、健康状態別にターゲットへの訴求が必要との印象深い話から始まった今回のセミナー。
続いて、検索行動ログから消費者の感情を読み解き、「認知症」関心者に関する市場開拓へ繋げるアイデアも大変興味深く感じられました。
日々拡大する高齢化社会。今回垣間見えた調査結果は、「エイジングリテラシー」や個人の幸福度につながるようなシニア市場創造の一助になるのではないでしょうか。
※本セミナーに関するお問い合わせ、シニア市場の消費者データ分析のお問合せはこちらへどうぞ↓
メールマガジン登録
最新調査やマーケティングに役立つ
トレンド情報をお届けします
マナミナ 編集部 編集兼ライター。
金融・通信・メディア業界を経て現職。
趣味は食と旅行。