情報過多の時代を乗りこなす、Z世代に特有のカスタマージャーニーとは?【博報堂若者研究所 コラボ企画】

情報過多の時代を乗りこなす、Z世代に特有のカスタマージャーニーとは?【博報堂若者研究所 コラボ企画】

これからの社会を牽引し、消費の中心になっていくZ世代。昨今の世間を賑わすようなトレンドの多くは、Z世代から生み出されているように思えます。SNSによる情報収集が主流になり情報に溢れている現代において、デジタルネイティブ世代ともいわれるZ世代は、日々どのように情報を収集しているのでしょうか、また、どんな態度でそれらと向き合い取捨選択し、自らの行動や買い物を決定していくのでしょうか。 今回、その一連の流れに関する若者のリアルな姿について、「計画」をテーマに、現役大学生との共創会議を核とする「博報堂 若者研究所」とともに共同研究を行いました。


「若者研究所」ってどんな組織?

こんにちは。マナミナのコンテンツマーケティング担当、21年新卒の及川です。今回は、博報堂の「若者研究所」とヴァリューズの共同プロジェクトに、Z世代代表として参加した様子をレポートします。

若者研究所(以下、若者研)のコンセプトは、「若者と、未来の暮らしを考える」というもの。「若者と」とあるように、「大人が最近の若者を語る」でもなく、「若者だけで自分たちのことを語る」でもない、「若者の体験や考えに、プロのマーケターの知見を加えながら、若者の心理と行動の傾向を一緒に考える」活動なのが特徴です。

博報堂若者研究所クレデンシャル資料より

現代の若者を代表して、大学生が有志で集まり、博報堂の社員の皆さんと一緒にディスカッションをする、ワークショップの形でプロジェクトが進められています。基本的には学生どうしでの話し合いをメインとして、そこにコメントしたり、さらなる意見を促したり、議論を総括するファシリテーターの立ち位置で社員が入る、というスタイルです。学生と社員の距離が近く、就活のグループディスカッションのような固い空気感とは真逆の、和気あいあいとした雰囲気で会議が進みます。

上のメンバーアイコンは、若者研の公式サイトに掲載されているものの一部です。会議に参加している学生たちのアイコンも一覧化されており、そこにもメンバーの仲の良さ・カジュアルさが表れているように思います。

Z世代の特徴

「自分らしさ」「気持ちの鮮度をキーに、綿密な計画はしない

そんな若者研の取り組みと、ヴァリューズの保有する消費者のWeb行動ログデータを掛け合わせることで、シナジーを生み出そうという目的で実現した今回の共同プロジェクト。

若者研の強みは、言語化に長けた若い世代のリアルな声を豊富に収集している点であることに対して、行動ログデータの強みは、生活者が意識していない領域まで、実際にオンライン上で起こった行動を事実ベースでつぶさに分析できる点。これらをどう接続するかを検討するために、まずは若者研ワークショップの通常回にヴァリューズが参加しました。

テーマは「計画」。まずはじめに、事前に宿題として振り出されていたお題に対する自分の考えを、各々がメンバー全員に向けて発表し、そこから数グループに分かれてディスカッション。そこで出た意見をまとめて持ち寄り、全体でラップアップという流れで進みました。

個人課題ではオートエスノグラフィの手法を用いて、自分の体験を可能な限り書き出し、気付きを抽出

客観的に自分の行動を振り返って言語化していく学生さんたちのコミュニケーション能力・思考力の高さ、そして積極的に意見出しをしていく意欲の高さに、ひたすら刺激を受ける時間となりました。ここでは、身近な「計画」である、「外出・旅行の計画」について交わされた議論の一部をご紹介します。

お出かけの際は、事前に新しく調べることは特になく、レパートリーの中で処理することが多いです。

私は情報はインプットするけど、いつやるかは決めないかな。現地のハプニング的な要素を大事にしています。

目玉スポットなどのポイントは押さえつつ、自由に動きたい気持ちが私も強いです。計画を立てれば立てるほど、「自分らしさ」がなくなる気がします。インプットはしておいて、その場の直感で選択することで、コテコテのものになるのを防げていると思います。

それで言うと、思いついたときが一番ワクワクしてませんか?僕はその新鮮さを大事にしたい。だから、あらかじめスケジュールを立てておくことはしないですね。

私も偶発性とか計画の余白は楽しみたいなと思いますが、「北極星」のような、絶対に外せないテーマや軸は必要だなと思います。

お出かけにおいて、情報のインプットはしつつ、いつ何をやるかというスケジューリングという意味での計画はしないZ世代が多い、ということがわかります。また、その背景には「自分らしさ」「気持ちの鮮度」の追求があること、「ここは外せない」という軸は持っているということも、共通して見られる特徴となりました。

メディアのアルゴリズムを前提とした情報収集

情報収集媒体については、以下のような意見も。

インスタで場所のあたりをつけることが多いですが、それは計画ではなくインプットに近いと思います。

私の中では、インスタが選択肢を狭める手段になっているかなと思います。SNSに共通していえることですが、SNSで表示されるのは、自分に最適化されている情報です。加えて、インスタは画像がメインの媒体なので、直感で考え、選ぶことができていると思います。

若者がメディアごとの特徴を理解し、使いこなしている様子が伺えます。レコメンド機能のようなアルゴリズムが働いていることを前提に、流れるように情報の取捨選択がされていることは、デジタルネイティブ世代ならではの特徴ではないでしょうか。

並行検索・スライド検索・蓄積検索...若者の行動データを読み解く

続いて、「旅行」をテーマに開催された10月のワークショップの様子をご紹介します。この回では、ヴァリューズが持つ消費者のWeb行動ログデータから、実際に若者が起こしている行動を明らかにし、どういう特徴があるのか、その背景にはどのような心理があるのかを話し合いました。

ヴァリューズとのワークショップの様子。若者研のオンライン会議は、チャット上も会話が弾むのが特徴

今回参考にしたのは、直近2年間の間に旅行サイトで予約をした25歳以下の男女が、旅行の前後でどのような行動をしていたのかというデータ。どのタイミングで、どのような検索から、どのようなページに流入しているのか、またはどんなアプリを起動しているのか、というオンライン上の行動を、時系列順に見ていきました。対象者には、性別、年齢、職業、居住地といった属性が紐づいており、具体的な人物像を推し量ることができます。

ワークショップにおけるWeb行動ログデータの読み込み観点

このログデータをBIツールtableauで可視化し、zoomで投影しながら議論が進みました。具体的な行動としては、例えば以下のようなものが見られました。

  • 草津、金沢、千葉、日光など、遠いところが同時に検討に上がる
  • 恋人のプレゼントを検討する際、ハイブランドの商品を検索して、すぐに離脱し、プチプラ寄りのブランドに至るまで、他のブランドをどんどん検討していっている

このような行動から、
インスタでまとめ投稿などを見ることで、場所・価格は気にせず一旦検討の土台に上げるような行動が、若者ならでは?
という考察が出てきました。

さらに、具体的な検索ワードやその時のモチベーションを考えると、検索は次の3つに分けられるのではないか、という意見も挙がりました。

  1. 並行検索…旅行直前/旅行中に未来の別の旅行に対する計画が起きる
  2. スライド検索…旅行のために調べていたことが、他のテーマにすり代わる
  3. 蓄積(遅行型)検索…今すぐ使わない情報でも、未来のためにストックしておく

このようにZ世代の情報収集スタイルを理解していくことで、マーケティング施策の中で彼らとどのようにコミュニケーションを取っていくとよいのか、明らかにすることができるでしょう。

この2回のワークショップを踏まえて出てきた示唆の詳細については、2023年2月17日(金)開催予定のヴァリューズ主催セミナーにてお話いたします。博報堂からも若者研メンバーをお迎えし、お取り組みや見解についてお話いただきますので、是非楽しみにお待ちください。

▼セミナー情報はこちらから
https://www.valuesccg.com/seminar/20230203-5590/

若者研は「他の世代と一緒に考えるから気づける」場所

本プロジェクトに参加してみて、自分が普通に日々こなしていると思っていることが、上の世代の方々から指摘されることで、若者ならではの考え方・行動パターンなのだと気づく面が多々ありました。若者研の取り組みは、こうしたこぼれ落ちやすい気づきをすくい上げることができる、「若者視点」と「大人視点」を絶妙なバランスで混ぜ合わせたものだと感じます。

最近何かと話題になる「Z世代」ですが、Z世代は「自分らしさ」を重視する世代であり、一握りの人の意見を聞くだけでは捉えきれない幅広い多様性があると思います。だからこそ、若者どうしで集まって自由にディスカッションをしている様子を上の年代が見る、本人の無意識の領域まで覗くことができる行動データを見る、といったアプローチが有用なのではないでしょうか。

この記事のライター

大阪大学でポルトガル語とブラジル社会学を、カナダのビクトリア大学でビジネスを学び、2021年に新卒でヴァリューズに入社。データアナリストを経て、現在はマナミナのコンテンツマーケティングと自社の海外PRを担当しています。

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