アーリーアダプターとは?
こんにちは。私はデータマーケティングの会社・ヴァリューズでコンサルタントを務めている伊東と申します。
株式会社ヴァリューズ マーケティングコンサルタント 伊東茉冬(いとう・まゆ)
新卒では出版社に就職。営業・社長秘書を務めたのち、ヴァリューズに入社。現在は事業会社に対してマーケティング支援を行っている。息抜きは欅坂46の動画を見ること。
今回のテーマは「アーリーアダプター分析」。情報感度が高く、市場への影響も大きいといわれる人たちについて分析していきます。対象カテゴリは化粧品。美容感度の高い人たちはどんな人で、どこで情報収集をしているのでしょうか。Web行動ログを使い、分析していきます。
アーリーアダプター(Early Adopters:初期採用層):
流行に敏感で、情報収集を自ら行い、判断する人。他の消費層への影響力が大きく、オピニオンリーダーとも呼ばれる。市場全体の13.5%。
アーリーアダプターは、1962年に米・スタンフォード大学の社会学者、エベレット・M・ロジャース教授が発表した『イノベーター理論』の中で定義している消費者の分類です。イノベーター理論では商品購入の態度を新商品購入の早い順に五つに分類しており、アーリーアダプターは2番目に早い層に分類されています。
イノベーター理論の分類の中で、イノベーターは少人数であり、重視するポイントが商品の新しさそのもので、商品のベネフィットにあまり注目していません。一方、アーリーアダプターは新しいベネフィットに注目していて、他の消費者への影響力が大きいことから、新しいベネフィットを自らのネットワークを通じて伝えてくれます。
新商品を発売した際、イノベーター・アーリーアダプター(全体の16%)まで広がるかどうかが、アーリーマジョリティ以後への普及に影響してくると言われています。
今回は市場への影響が大きいアーリーアダプターについて、Web行動ログを用いたエスノグラフィー調査(行動観察調査)にて分析していきます。
アーリーアダプターをWeb行動ログで定義する
アーリーアダプターを分析するにあたり、まずはWeb行動ログを用いてアーリーアダプターを発見します。今回は美容アーリーアダプターを分析するため、最近注目を集めている「シカクリーム」と「ロムアンド」という商品・ブランドを用いました。
「アーリーアダプター」の定義方法としては、「シカクリーム」や「ロムアンド」と検索したユーザーを使います。ロジャース教授の理論に基づき、期間全体のうちの最初期の2.5%(イノベーター)に続く、13.5%にあたる検索者をアーリーアダプターと定義。この時期にシカクリームやロムアンドについて検索を行っていたユーザーをピックアップし、そのインサイトや最近ではどのような行動をしているのかを分析していきました。
美容アーリーアダプター① シカクリーム早期関心者
シカクリーム早期検索者では、2020年9月の行動として下記のような行動が見られました。
「Fujimi」という、肌診断を行うと自分用にカスタマイズされたサプリやシートマスクを購入できるブランドや、手作り化粧水を検索するといった行動が見られました。既製品ではなく、自分に合ったものを選びたいという傾向が高まりつつあるのかもしれません。
また、行動の特徴としてスキンケア商品や美容医療に関する行動が大部分を占めていたこと、肌悩みについて長期にわたって調べるという行動が見られます。美容に関して、楽天の「おすすめ!ピックアップ」やメルマガ、Youtuberなどといった媒体を使いつつ1つのものについてとことん調べ、興味の対象がどんどん移り変わっていました。悩みが深いからこそ色々なことを調べ、結果的にカスタマイズに行きついたりしていたのかもしれません。
シカクリームのアーリーアダプターのWeb行動は全体的にスキンケアに関するものが多くありました。美容アーリーアダプターの中でも特にスキンケアに関心が高い「スキンケアアーリーアダプター」であると考えられます。
美容アーリーアダプター② ロムアンド早期関心者
ロムアンド早期関心者では、2020年9月の行動として下記のような行動が見られました。
ルーティンとして、美容系では『Qoo10』、ファッション系では『コーディブック』『MISSWEETS』『DHOLIC』『Attrangs』(すべて韓国系)を閲覧していました。LIPSは日常的によく利用しているようです。
また、9月は美容よりもファッションに関心が高いのか、ファッションアイテムの閲覧が多く見られました。ファッションは安くてかわいいものを探しつつ、イヴサンローランやシャネルといった憧れのブランドは別で持っているようです。メイクアップ関連の行動が多く、スキンケア関連の行動はあまり見られませんでした。
メイクアップ商品であるロムアンドの早期関心者は全体的にメイクアップへの関心が高く、美容アーリーアダプターの中でも「メイクアップアーリーアダプター」であると言えそうです。
シカクリーム早期関心者とロムアンド早期関心者の違いは?
シカクリーム早期関心者とロムアンド早期関心者はそれぞれ「スキンケアアーリーアダプター」と「メイクアップアーリーアダプター」に分けることができそうです。さらに、両者では行動特性や関心のありかもどうやら異なりそうだということがわかりました。
美容感度の高い美容アーリーアダプターとひとくくりにするのではなく、スキンケアとメイクアップでも人物像が異なりそうである、ということが発見でした。
アーリーアダプターがよく見ているメディアは?
最後に、それぞれのアーリーアダプターが2020年9月によく閲覧しているメディアを見てみましょう。
■シカクリーム早期関心者サイトランキング
noteが2位ランクイン。ローリエプレスやファッションプレスは全体へのリーチ率は高くないながらも、シカクリーム早期関心者にはある程度リーチできていることがわかります。これらはスキンケアアーリーアダプターに対してアプローチしやすいメディアと言えるかもしれません。
■ロムアンド早期関心者サイトランキング
noteが1位にランクイン。全体的にファッションや美容系のメディアが多く、ファッションプレスが3位、ARINEという全体リーチ率が低い美容系メディアが4位にランクインしています。ラインナップを見ていても、メイクアップ関心者が見ていそうなメディアが多いと感じます。
まとめ
今回の調査ではアーリーアダプターにフォーカスした分析を行うにあたり、Web行動ログデータを利用したエスノグラフィー調査を行いました。テーマとしては化粧品にフォーカスして分析を行いましたが、美容アーリーアダプターとひとくくりにするのではなく、スキンケアとメイクアップで分けて見る必要がありそうですね。
Web行動ログデータを利用する最大のメリットは、過去にさかのぼって分析できること、過去から現在までの流れを追えることです。さらに、調査対象者の意識でアーリーアダプターを定義するのではなく、明確な数値として定義できるのも良い点ではないでしょうか。
また、今回用いたエスノグラフィー調査では「ジョハリの窓」でいうところの「未知の窓」、すなわち消費者も気づいておらず、企業側も気づいていないインサイトを発見できる可能性があります。
アーリーアダプター分析をWeb行動ログで行う新たな手法、ご興味をお持ちいただければ幸いです。
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株式会社ヴァリューズ マーケティングコンサルタント 伊東茉冬(いとう・まゆ)
新卒では出版社に就職。営業・社長秘書を務めたのち、2019年にヴァリューズに入社。現在は化粧品、日用品、住宅業界などの事業会社に対してマーケティング支援を行っている。