「ダイエット」の検索者数は減少傾向にある
テレビやSNSで様々なダイエット法が話題になることもしばしばあり、「ダイエット」という単語は多くの人が日常的に耳にしているのではないでしょうか。Instagramの検索窓に「#ダイエット」と入力してみると、「#ダイエット」だけで2,182万件の投稿があり、その他にも「ダイエット」が含まれるハッシュタグが付けられた投稿が数多く存在することがわかります。
Instagram検索で「#ダイエット」と入力した画面のキャプチャ(2024年8月27日現在)
しかし、それでもここ数年でダイエットへの興味関心には変化が見られるようです。本記事では、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツールDockpitを用いて、国内の人々のダイエットにまつわる意識を調査します。
まず、直近2年間の「ダイエット」の検索者数を見てみましょう。以下の図を見ると、直近2年間の「ダイエット」の検索者数は細かい増減を繰り返してはいるものの、全体的に緩やかな減少傾向にあるようです。
「ダイエット」検索者数推移
調査期間:2022年8月〜2024年7月
デバイス:PC・スマートフォン
また、2022年・2023年の12月に検索者数が激減していることがわかります。12月は1年の終わりで多くの人が忙しく、クリスマスや大晦日など特別な食事をする人が多いイベントがあります。そのため、「ダイエット」について考える人が比較的少ないのかもしれません。
「ダイエット」検索者はお金と時間に余裕あり?
「ダイエット」検索者の人となりをヴァリューズのWeb行動ログ分析ツールDockpitを用いて分析します。
まず「ダイエット」検索者の男女比から見てみましょう。以下の図によると、「ダイエット」検索者の約7割を女性が占めていることがわかります。
「ダイエット」検索者の男女比
調査期間:2022年8月〜2024年7月
デバイス:PC・スマートフォン
次に、「ダイエット」検索者の年代割合を見ます。以下の図から、ネット利用者全体と比較して20代〜40代の割合が高く、「ダイエット」検索者数の約7割を占めています。特に30代・40代はそれぞれ約25%を占めており、年齢と共に体形に変化が見られたり、自分の身体がどう見えるのかに気を遣う年代であることがその理由として考えられます。
「ダイエット」検索者の年代割合
調査期間:2022年8月〜2024年7月
デバイス:PC・スマートフォン
以下の図は「ダイエット」検索者の未婚・既婚割合を表しています。ネット利用者全体と比較すると、「ダイエット」検索者は未婚割合がネット利用者全体と比べて10%ほど高いことがわかります。
「ダイエット」検索者の未婚・既婚割合
調査期間:2022年8月〜2024年7月
デバイス:PC・スマートフォン
「ダイエット」検索者の世帯年収も見てみます。以下の図から、ネット利用者全体と比較して400万円未満の割合が5%ほど低く、400-800万円の割合がわずかに高くなっています。
「ダイエット」検索者の世帯年収
調査期間:2022年8月〜2024年7月
デバイス:PC・スマートフォン
「ダイエット」検索者は未婚割合がやや高いため、配偶者を持たず、自分自身のために時間やお金をたくさんかけられる人が多い可能性があります。
「ダイエット」検索者の多様な興味関心の実態
続いて、ダイエット検索者の興味関心について見ていきましょう。以下の図は、「ダイエット」検索者の「掛け合わせワード」のユーザー数上位15位までのランキングです。
「ダイエット」の掛け合わせワード(上位15位)
調査期間:2022年8月〜2024年7月
デバイス:PC・スマートフォン
これらのワードを分類してみると、大きく以下の3種類に分けられます。
・食生活系:
「レシピ」「プロテイン」「食事」「サプリ」「リンゴ酢」「オートミール」「漢方」「おやつ」「豆腐」
・運動系:
「筋トレ」「運動」
・概要把握系:
「おすすめ」「効果」「方法」「女性」
まとめて見ると、食生活に関するキーワードが最も多くなっています。「プロテイン」「オートミール」は食事の一部を置き換えることようなやり方。「サプリ」「リンゴ酢」「漢方」「豆腐」からは、適量を普段の食事にプラスすることでダイエット効果を狙うといったユーザーの考えがうかがえます。
運動を新しく始めることや習慣づけることに比べると、食生活に新たなものを取り入れる方が楽でしょう。そのため、多くの人々が食生活からダイエットに取り組もうとするのかもしれません。
一方、運動に関するキーワードでは「筋トレ」が上位にランクインしており、単に運動によって体重を落とすだけではなく、筋肉をつけることに興味を持っている人が一定数存在するようです。
それに加えて、「おすすめ」「効果」「方法」など、ダイエットに関する他者の意見・経験・科学的な根拠や、実際のやり方を問うような概要把握系のキーワードも多く調べられています。これらは、「ダイエットを始めたいけれど何をすれば良いかわからない」という人々が、最初に検索するキーワードであると考えられます。また、ダイエットに時間やお金を使うからには、他の人々の経験や意見を知ることで一番効果の高い商品・方法を選択しようと考える人も多いのではないでしょうか。
「女性」というキーワードもランクインしており、これは「ダイエット」検索者に占める女性の割合が高いことに起因していると考えられます。
次に、掛け合わせキーワードのワードネットワークを見てみます。以下のワードネットワークでは、先ほどの掛け合わせワード上位5位までのキーワードが第2階層に配置されており、そこからさらに様々なキーワードが繋がっていることがわかります。特徴をキーワードごとに簡単に見ていきましょう。
「ダイエット」のワードネットワーク
調査期間:2022年8月〜2024年7月
デバイス:PC・スマートフォン
左上、2階層目の「レシピ」と多く掛け合わせられたキーワードは食材の名称が多く、「簡単」「人気」のようなキーワードも見られます。これらの食材はいずれもダイエットに効果的とされるものであると考えられ、いかに楽に、美味しく調理するかを知りたい人も多いと考えられます。
「プロテイン」は飲み方やタイミング、効果などを知りたい人が多いようです。どのタイミングでプロテインに置き換えればよいのか、プロテインに置き換えることによってどのような効果があるのかなどを知りたい人が多いのかもしれません。
「おすすめ」は体重計や食品、漢方など、ダイエットに用いるものの名称や間食・朝食といった食事を摂るタイミングと掛け合わせて検索される場合が多いようです。「ダイエット おすすめ 女性」のように、自分に合ったやり方を探す検索もあれば、「ダイエット おすすめ 漢方」など、既に漢方に興味があり、具体的な商品を探すような検索もあり、ユーザーの志向の多様性が浮かび上がっています。
「食事」は年代や時間帯と共に調べられているほか、筋トレや運動などのキーワードとも調べられているようです。自分の年代や時間帯に応じた食事の内容や、ダイエットの二大要素とも言える「食事」「運動」を同時に知りたいと考えるのかもしれません。
「ダイエット」検索者数はなぜ減少傾向?
冒頭で「ダイエット」検索者数が減少傾向にあるというデータを紹介しました。それには一体どのような背景があるのでしょうか。少し掘り下げて理由を考察してみます。
以下の図は2021年6月〜2024年7月までの検索者数の推移を表したものです。このデータを見ると、2024年7月の検索者数は2021年6月の検索者数の約2分の1になっていることがわかります。
「ダイエット」検索者数の推移(Dockpitのグラフをもとに筆者作成)
調査期間:2021年6月〜2024年7月
デバイス:PC・スマートフォン
おそらくこの理由として、コロナ禍におけるダイエットへの意識の高まりが落ち着きつつあることが考えられます。新型コロナウイルスが世界的に流行し始めたのは2019年末で、日本では2020年3月から小中高校などでは臨時休校が開始され、国内企業の多くが在宅勤務へと移行しました。
在宅勤務が主流となる中で、コロナ禍以前よりも運動量が減ったことにより、人々の間で在宅でできる運動やダイエット・筋トレへの意識が高まっていたことは記憶に新しいでしょう。その後、2023年5月に新型コロナウイルスが「5類感染症」へと移行し、徐々に新型コロナウイルスの流行は収まりを見せ、人々の生活はコロナ禍以前に戻りつつあります。それと同時に、人々の運動量もコロナ禍以前へと戻りつつあると考えられます。そのため、日常的な通勤や運動によってダイエットをせずとも健康的な生活を送れている人がコロナ禍よりも増えているのではないでしょうか。
コロナ禍では、様々なダイエット・エクササイズ手法が注目を高めていました。一過性の手法が数多くある中で、「筋トレ」「ピラティス」「ヨガ」の3つは、コロナ禍が終わりつつある現在まで話題に上り続けています。その背景や理由を探るべく、これら3つのキーワードについてもデータから見ていきます。
ピラティスとヨガについて念のため説明しておくと、ピラティスはドイツ人のピラティス氏によって考案された、身体の柔軟性を高め、強化し、バランスを整えるためのエクササイズのこと。ヨガは古代インドで生まれ、呼吸法と瞑想により自分自身の心と向き合うエクササイズです。
これらのキーワードの直近2年間の検索者数推移を見てみましょう。以下の図から、「筋トレ」は2024年初頭まで減少傾向にあったものの、ここ数ヶ月でやや増加傾向にあったことがわかります。「ヨガ」は細かい増減はありつつ、いずれも緩やかな減少傾向にあるようです。「ピラティス」は時折検索者数が急増することもありつつ、全体的には緩やかな増加傾向にあります。
「筋トレ(ピンク色)」「ピラティス(青色)」「ヨガ(緑色)」の検索者数推移
調査期間:2022年8月〜2024年7月
デバイス:PC・スマートフォン
また、これら3つのキーワード検索者の年代割合を見てみると、それぞれ異なる特徴を持っていることがわかります。「筋トレ」は20〜30代、「ヨガ」は30〜50代がボリュームゾーンであり、ピラティスは20〜50代の世代で満遍なく関心を集めているようです。
「筋トレ(ピンク色)」「ピラティス(青色)」「ヨガ(緑色)」検索者の年代割合
調査期間:2022年8月〜2024年7月
デバイス:PC・スマートフォン
キーワード検索者の男女比も見てみると、「筋トレ」はやや男性が多くなっており、「ピラティス」「ヨガ」はいずれも女性が7割以上を占めています。
「筋トレ(上段)」「ピラティス(中段)」「ヨガ(下段)」検索者の男女比
調査期間:2022年8月〜2024年7月
デバイス:PC・スマートフォン
これらのキーワードは、コロナ禍でかなり関心を集めていたと考えられますが、コロナ禍以前の生活が戻りつつある現在でもある程度検索者数を保っており、検索者にはそれぞれ異なる特徴があります。コロナ禍で関心が高まったダイエットや、ただ痩せるだけではない筋トレ・ピラティス・ヨガなどのボディメイクはコロナ禍以後も一定数の人々から注目を集めていると言えるのではないでしょうか。
まとめ
ダイエット検索者は食生活や運動によるダイエットに関心があり、まずは情報収集することで効果の高いダイエットをしたいと考えているようです。楽に美味しい食事で痩せたいと考える人は一定数存在すると考えられます。また、ただ痩せるための運動だけではなく、筋肉をつける筋トレにも興味を持つ人も存在していました。
ダイエット検索者数が緩やかな減少傾向にある理由として、コロナ禍でのダイエットへの意識の高まりが落ち着きつつあることが挙げられます。しかし、ダイエットに加え、コロナ禍で関心を集めた筋トレやピラティス、ヨガといったボディメイクに関するキーワードは、それぞれ異なる属性の人々から現在もある程度の注目を集めているようです。
ここ数年でダイエットの検索者数は減少傾向にありつつも、やはり多くの人々が興味を持っている事柄であることには変わりありません。ダイエットの目的は人それぞれですが、コロナ禍を通じてブームとなったボディメイクの流行が現在も続いていることから、ここ最近では魅力的・健康的な身体作りを目的にする人が増えているのかもしれません。いずれにしても、時代によるダイエット手法のトレンドを上手く捉え、それに対応した情報や製品を提供することが重要といえるでしょう。
2025年4月に入社予定の大学4年生。大学ではジャーナリズムのゼミに所属。言葉に触れることが好き。音楽を聴くのも演奏するのも大好き。よりよい文章を綴れるよう日々精進中。