Web行動ログから顧客理解を深化させるパナソニックの戦略とは|日経クロストレンドFORUM 2020レポート

Web行動ログから顧客理解を深化させるパナソニックの戦略とは|日経クロストレンドFORUM 2020レポート

「パナソニック」が、ヴァリューズ独自のWeb行動ログを分析することで推進した、マーケティング戦略における顧客理解深化とは。2020年11月に開催された「日経クロストレンドFORUM 2020」において、パナソニック株式会社アプライアンス社の富岡氏と、株式会社ヴァリューズ執行役員の子安が登壇し、データと向き合うことで、マーケティング部のメンバー全体により深く消費者インサイトを浸透させていくという、パナソニックのデータ組織構築事例を解説しました。本稿ではそのレポートをお届けします。


セミナー概要

Agenda

1・マーケティングデータ利活用の取り組み

2・ネット行動ログで見る顧客理解のための行動データ分析

3・行動データ分析から得られたこととは?~消費者インサイトの理解と浸透~

スピーカー紹介

図:スピーカー紹介

図:スピーカー紹介

マーケティングデータ利活用の取り組み

株式会社ヴァリューズ 子安 亜紀子(以下、子安):「マーケティングデータ利活用の取り組み」というところで、パナソニックではどのような取り組みをされていたのかという点を、富岡さんからご紹介頂けますでしょうか。

パナソニック株式会社 富岡広通氏(以下、富岡):では、ここ2年位の我々の取り組みについて簡単にご説明させて頂きます。

大きなテーマである「顧客理解」。私たちの家電商品をどういったお客様が利用しようとしているのか、今現在どのように利用して頂けているのかといった、要は家電周辺でのお客様の行動がどの様な状態にあるのかを知ることが「顧客理解」だと考えます。

一例として、「Bistro(ビストロ)」というオーブンレンジの例でご説明しますと、この商品のターゲットとして、我々の会社の中では「30代女性、共働きで小学校のお子様がいる」といったいわゆるペルソナ、属性を仮定することが多くあります。

しかし、下記に挙げたこの属性に合う方3名のコメントを見て頂くと、雰囲気などそれぞれ違いますよね。当たり前ですが、この属性だけでは一括りで顧客像を表せないことは、皆さんも当然ご理解頂けると思います。

ではこのような中でどうするか。我々は、ターゲットや顧客の「ありたい姿・価値観」などからくる、自分はこうしたいのだけどまだちょっと足りてないといった「未充足ニーズ」の部分を紐解いていくことが、得なくてはいけない「顧客理解」と考えています。

こういった「価値観」や「未充足ニーズ」を紐解いていくと、この「Bistro」を訴求するにあたって、おそらくクリエイティブもメッセージも変わってくると思います。よって「価値観」に紐づいた情報を提供する、プロモーションの戦略やクリエイティブの戦略も同様に「価値観」に準ずるように構築するべきと考えています。

図:ありたい姿・未充足の把握

図:ありたい姿・未充足の把握

富岡:続いて手法についての話ですが、以前は勘や経験、インタビュー調査やアンケート調査などで紐解いていくのが伝統的な手段でした。しかし、これにデジタルデータを加えることで、もう少し深く細かく理解できないかということが、ここ2年ほどのテーマになっています。

もちろんアンケートやインタビューにも非常に有効なことは沢山ありますが、アンケートやインタビューの限界と感じさせられるのが、質問に対して合理的な答えを探してしまう、実際の真実の回答とちょっと変わってしまうというようなことです。

したがって、この意識と無意識の行動の隙間にある真実の部分をデジタルデータで補完することでより深い理解が可能になるのではないかというのが我々の仮説です。

図:お客さま理解のアップデート①

図:お客さま理解のアップデート①

富岡:私がいつも念頭においているサイクル図をご紹介します。

ベースにあるのは一番下の「スコアリング/ID」です。ここから右図の縦、自社データであるとか、他社のデータエクスチェンジみたいなものを掛け合わせて、分析につなげていきます。ここをデジタル領域で見ていきます。
このようにしながらお客様の理解を深め、クリエイティブの開発やプロモーションの戦略を練っていきます。

この図式のように顧客理解を深めながらデータを蓄積し、さらに理解を深めていくというサイクルを実行しております。

図:お客さま理解のアップデート②

図:お客さま理解のアップデート②

富岡:家電を人生の中で考えるタイミングというのは、多分ほぼ一瞬であると思われます。いわゆるモーメントですが、どういう時に未充足を家電で解決しようという思考になるのかという理解が極めて重要となります。
家電を検討し始めて、自社のオウンドメディアで接点ができれば、そこから追跡することもできるのですが、その前後がやはりわからないということが次の課題となってきました。
具体的には、商品サイトに訪れる前後、会員登録して頂く前後といったモーメントを理解する必要があるということです。

加えてその文脈ですね。定量データやビッグデータで、前述の「価値観」を紐解いていくのですが、その価値観に至る理解、すなわち「生活理解」とも言えますが、顧客行動に注目するともっと細かい背景が読み解けて、よりクリエイティブにも影響するのではないかとも考えています。

このようにして次のステップの仮説を持ち始め、この課題をどう深掘りするかと考えたタイミングに、ヴァリューズの子安さんよりGoogle社によるバタフライ・サーキットという分析結果を報告頂いて、そこにヒントがありそうだなと感じました。

ネット行動ログで見る顧客理解のための行動データ分析

子安:それでは私の方から、今回パナソニック様とご一緒させて頂いた取り組みとその背景を含めてご紹介させて頂きます。

Google社と一緒に研究させて頂いた中で、デジタル時代の消費活動は今までの理論では通用しないのではないかという話があり、その話を富岡さんにさせて頂いたところから、今回の事例に繋がりました。

その話というのが「パルス型消費とバタフライ・サーキット」です。

今やデジタルで物や情報を調べたり購入したりするようになってきた世界は、いわゆる従来の「AIDMA」といった時間を経て、徐々に検討プロセスが変わって購入するというよりも、瞬間的・刹那的に弾けるように購入するといった様式に変化してきているんじゃないかと言われています。いわゆる刹那消費。パルスが「パン」と跳ねるような様子から「パルス型消費」と呼んでいます。

さらに「パルス型消費」の背景には、人の考え方が移ろうような検索スタイルをとるようになっているんじゃないかと考えられています。資料右図にあるように、何か物を検索して、さぐって固めて購入するといった移ろいですね。この検索の動き方を「バタフライ・サーキット」と呼んでいます。

このような分析から、デジタル時代では「パルス消費とバタフライ・サーキット」がこれからのユーザー理解のキーワードになるのではないかと考えられています。
これらを背景に、今回ご一緒させて頂いた取り組みを詳しくご紹介いたします。

図:パルス型消費とバタフライ・サーキット

図:パルス型消費とバタフライ・サーキット

図:バタフライ・サーキット詳細

図:バタフライ・サーキット詳細

パナソニックとの取り組み〜プロジェクト事例

「スティック掃除機」「オーブンレンジ」における購買プロセスを読み込む顧客理解ワークショップを実施

⚫︎ 家電において「バタフライ・サーキット」は発生しているのか?

⚫︎ オフラインも含め、家電を買う際に消費者はどのような検討プロセスを辿るのか?

子安:ではプロジェクトの流れをご説明いたします。
ヴァリューズ保有の約250万人のモニター会員に対して、直近の掃除機、オーブンレンジの購入有無、購入場所、購入機種など、実態と意識等を先にアンケートリサーチで確認しました。

次に実際に買われた方の行動ログデータを使って、実際に購入した前後でどういったネット行動しているのか、どんな検索をしているのかということを分析していきます。

こうしたユーザーの行動ログデータを読み込むワークショップを実施しました。

ワークショップは4時間を2回といったボリュームで行いました。そこでパナソニックのメンバーの皆さんとディスカッションしながら、どうしてこのお客様が最終的にこの掃除機、オーブンレンジを選んだのだろうか、どんな背景があったのだろうといった議論をして、実際に仮説を立てていきました。

図:分析プロジェクトのプロセス

図:分析プロジェクトのプロセス

行動データ分析から得られたこととは?~消費者インサイトの理解と浸透

子安:続いて行動データ分析ですね。色々な人の行動を細かく分析していく中で、どういうことが見えてきたのかということを富岡さんとお話したく思うのですが、その前に行動データ分析のメリットについてまとめてみました。

行動データ分析のメリットのまとめ

⚫︎ 家電購買時のオンライン行動の実態が把握できる

⚫︎ 家電検討者の生活背景も含めたインサイトが見える

⚫︎ ワークショップによる消費者インサイトの社内浸透

家電購買時のオンライン行動の実態が把握できる

子安:まず「家電購買時のオンライン行動の実態の把握」なのですが、先ほどのようなデータを実際ご覧になって、富岡さんが感じられたことや発見などがあればお話頂けますでしょうか。

富岡:何よりオンラインの行動が深くわかるというのが興味深かったですね。
あと、コロナになって、当然デジタルでの購入が増えているというのは知っていましたが、やはりこうした細かいデータを見てみないと実際の前後の行動がわからない。したがってこうしてデータを詳しく見ていってクリエイティブやメディア戦略を考えていかないと、なかなか差別化できないと思いましたし、想像以上に我々の戦略を考える上で重要なデータになったなと思っています。

子安:そして「さぐる」検索が想定より少なかったですよね。

富岡:少なかったですね。意外にもワクワクとした検索というよりも、故障などが原因なのか、必要性に迫られての検索が多かったですね。楽しんで購入しているというイメージが崩れてしまったので、ここは楽しんで買っていただくシーンを創出したいと思います。

家電検討者の生活背景も含めたインサイトが見える

子安:購買プロセスだけでなく、「生活背景も含めたインサイトが見える」という点ですが、この辺りはいかがお考えですか。

富岡:これはやはり消費者の行動を見ていかないと出てこないデータだなと、非常にユニークに思いました。例えば「家電を同時並行で検討する人」の例など、こういった関連性のないものをまとめて検索する人もいるんだ、こういう想像をする人がいるんだとちょっと驚きましたし、価値あるデータだと思いましたね。

子安:行動データ分析ならではの細かい背景が見えたと思います。

図:家電検討者の生活背景も含めたインサイトが見える

図:家電検討者の生活背景も含めたインサイトが見える

ワークショップによる消費者インサイトの社内浸透

子安:ワークショップでは、色々な部署の方に入って頂きましたね。

富岡:これは想定を超えるメリットとアウトプットがありました。実はこのワークショプの内容を踏まえて、今後社内の定期的な研修にすべきというプロジェクトを進めているくらい、非常に有効だったと感じています。
従来の調査やビッグデータでは、細かいユーザーの動き・感情というものまでは捉えきれないので、それをここまでリアルに見ることで感じることは沢山ありましたね。
そして自社の製品のことを知るだけでなく、ユーザーの生活背景も知ることで、メンバーの想像が広がっていくという現場を目の当たりにして、本当にワークショップをやってよかったと思いますし、実は一番印象に残ったところです。

子安:部署横断で、色々な方が同じデータを見ながらユーザーについて語り合うということで、次の商品展開やWebの施策などにもうまく繋がっていくのではないでしょうか。

図:ワークショップによる消費者インサイトの社内浸透

図:ワークショップによる消費者インサイトの社内浸透

まとめ

子安:ここまで、消費者理解を深める上でのデジタルデータの利活用についてお話ししてきましたが、最後に富岡さんからもコメントあればお願いします。

富岡:今回のプロジェクトは実施前に想定していたよりも、遥かに有効なプロジェクトになったと実感しています。

データ、オンライン、オフライン含めて、データを見ながらユーザーの理解を深めていくということは際限のない取り組みだなと改めて感じたのと同時に、デジタルの活用というのは色々な側面を持っているとも感じました。

多種多様な解決方法やデータがあって、それをどう取捨選択しながら社内のメンバーの理解を深めて進めていくか。今回のプロジェクトは非常に良い一例として経験ができて、レベルアップにも繋がったと思っています。

この記事のライター

マナミナ 編集部 ライター。
金融、通信、メディアなどを経てリサーチ業界へ。
趣味は食と旅行。

関連する投稿


【3/9(火)】新しい食スタイルの最新動向と、具体的な対策方法・事例紹介 ~植物性食品のトレンド分析から~|ヴァリューズ×ベジプロジェクトジャパン共催ウェビナー

【3/9(火)】新しい食スタイルの最新動向と、具体的な対策方法・事例紹介 ~植物性食品のトレンド分析から~|ヴァリューズ×ベジプロジェクトジャパン共催ウェビナー

今回のセミナーでは、株式会社ヴァリューズのリサーチャーがWEBログデータ・アンケート調査結果のご紹介をしながら、大豆ミート・オートミールなど話題の植物性食品の市場・商品動向を分析、トレンドの背景にある消費者心理を読み解きます。


マーケター界隈で最近話題になった記事まとめ マーケ系主要メディアのTop5も調査【21年1月】

マーケター界隈で最近話題になった記事まとめ マーケ系主要メディアのTop5も調査【21年1月】

その月のマーケター向け注目トピックを厳選してお届けする新企画「マナミナ編集部が選ぶ今月のマーケティングトピック」。1月はClubhouseの話題が特に盛り上りましたが、各メディアでは、どのような記事が閲覧数を伸ばしたのでしょうか。調査ツール「Dockpit」を使ってマーケター向けビジネスメディア「マーケジン」「日経クロストレンド」「DIGIDAY」の人気コンテンツを調査するとともに、マナミナ編集部の注目記事もピックアップ。それぞれのテーマを紹介しながら、人気の要因を探ります。


【3/8(月)】製薬業界向け|WEB行動ログデータから読み解く患者の情報収集の実態|オンラインセミナー

【3/8(月)】製薬業界向け|WEB行動ログデータから読み解く患者の情報収集の実態|オンラインセミナー

コロナ禍によりWEBの利用時間が伸びている今、消費行動・情報収集行動もWEBで行われることが活発になり、ターゲットにオンライン上でアプローチする必要性が高まっています。しかし一方で、よく聞く課題として「病気に悩む人がオンライン上でどういった情報収集行動を起こしているのか不明瞭で、どうアプローチしていいか分からない」といった声を多くお聞きします。 本セミナーではWEB行動ログデータを活用して、オンライン上で患者は実際どのように情報収集しているのか、実際のデータをご覧いただきながらご紹介します。


商品やサービス普及のカギ「クリティカルマス」とは?

商品やサービス普及のカギ「クリティカルマス」とは?

商品やサービスの普及率が一気に上昇するポイント「クリティカルマス」。用語としては「クリティカルマス」単体でも使われますが、イノベーター理論の一部に含まれます。今回はクリティカルマスの紹介、そして類似する「キャズム理論」との違いを解説します。


職種別のサイト訪問傾向を分析!BtoBのWebコミュニケーション設計に使える【データアナリストが語る現場のデータ分析】

職種別のサイト訪問傾向を分析!BtoBのWebコミュニケーション設計に使える【データアナリストが語る現場のデータ分析】

本連載「データアナリストが語る現場のデータ分析」では、ヴァリューズのデータ分析チームが実際に行なったプロジェクト内容を語り、そこから得られた知見や分析の手法などを解説していきます。今回のテーマは、オンライン上で法人ユーザーにアプローチする方法です。コロナ禍でオンライン営業の必要に迫られる中、コロナ前後でWEB行動がどう変わったのか、どうアプローチすれば効果的なのか、職種別に分析していきます。


最新の投稿


BTSのアーリーアダプターとマジョリティの違いを検索データで分析!NiziUとの比較も

BTSのアーリーアダプターとマジョリティの違いを検索データで分析!NiziUとの比較も

2020年の第63回グラミー賞の候補にノミネートされるなど、今や破竹の勢いで世界に進出する韓国発の7人組男性ヒップホップアイドルグループ「BTS」。本記事ではそんな「BTS」を検索するユーザーの変化を分析します。比較的初期から「BTS」ワードを検索していたアーリーアダプター層と、最近の世界的人気を受けて検索行動を行うマジョリティ層には、どのような違いがあるのでしょうか。


【3/9(火)】新しい食スタイルの最新動向と、具体的な対策方法・事例紹介 ~植物性食品のトレンド分析から~|ヴァリューズ×ベジプロジェクトジャパン共催ウェビナー

【3/9(火)】新しい食スタイルの最新動向と、具体的な対策方法・事例紹介 ~植物性食品のトレンド分析から~|ヴァリューズ×ベジプロジェクトジャパン共催ウェビナー

今回のセミナーでは、株式会社ヴァリューズのリサーチャーがWEBログデータ・アンケート調査結果のご紹介をしながら、大豆ミート・オートミールなど話題の植物性食品の市場・商品動向を分析、トレンドの背景にある消費者心理を読み解きます。


中国における美顔器の市場概況 ~ 2大人気日本ブランド「ヤーマン」「Dr.Arrivo」の施策を分析

中国における美顔器の市場概況 ~ 2大人気日本ブランド「ヤーマン」「Dr.Arrivo」の施策を分析

日本国内でも美容家電は注目度の高いカテゴリですが、中国においても「美顔器」の出荷台数は例年増加傾向にあり、市場規模は2020年では80億元(約1,280億円)近くの予測となっています。 中国における美顔器の市場概況と2大人気の日本ブランド「ヤーマン」「Dr.Arrivo」の施策を分析し、調査レポートにまとめました。(ページ数|27p)


ホスト以外でもできる?Zoomの画面共有方法の基本と応用

ホスト以外でもできる?Zoomの画面共有方法の基本と応用

Zoomには資料やブラウザを画面共有する機能があります。画面共有すれば、よりリアルなWeb会議やミーティングを行えます。Zoomの画面共有機能のやり方から画面共有ができない場合のトラブルシューティングまで解説します。


中国の次なる巨大マーケット「下沈(かしん)市場」在住者特徴を都市市場と比較調査。懐事情は都市市場とほぼ変わらぬ水準に

中国の次なる巨大マーケット「下沈(かしん)市場」在住者特徴を都市市場と比較調査。懐事情は都市市場とほぼ変わらぬ水準に

インターネット行動ログ分析によるマーケティング調査・コンサルティングサービスを提供する株式会社ヴァリューズは、中国の都市市場および3級都市以下の都市及び農村である下沈(かしん)市場在住の男女600人を対象にアンケート調査を実施し、都市市場/下沈市場在住者それぞれの特徴と購買実態を比較分析しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング