呪術廻戦は「鬼滅超え」なるか!?TVアニメ開始前後の検索データから止まらない人気ぶりを徹底分析

呪術廻戦は「鬼滅超え」なるか!?TVアニメ開始前後の検索データから止まらない人気ぶりを徹底分析

映画化も決定した人気作品の「呪術廻戦」。その人気ぶりは、社会現象ともなった「鬼滅の刃」(著:吾峠呼世晴/集英社)と似ることから、最近ではメディアから“ポスト鬼滅”として取り上げられることも。今回はそんな「呪術廻戦」について、ヴァリューズが提供する市場分析ツール「Dockpit」を用いて、検索データを分析しました。


「呪術廻戦」検索ユーザーはTVアニメ放映開始と同時に急増

「呪術廻戦」は、2018年3月に連載がスタートし、2020年10月にはアニメ放送がスタートした人気作品です。初連載ながら“編集部が満場一致で連載決定”という鳴り物入りのデビューだったと言います。

以下のグラフは2019年3月〜2021年2月までの2年間で「呪術廻戦」を検索したユーザー数の推移です。ユーザー数が増加し始めたのは2020年10月以降ですので、きっかけはTVアニメの放送開始だと考えられます。

「呪術廻戦」の検索ユーザー属性の比較
期間:2019年3月〜2021年2月
デバイス:PCおよびスマホ

TVアニメ放送開始から検索ユーザー数は増え続け、2021年1月に検索者数は月間90万人を超えました。これは1月から第2クール「京都姉妹校交流会編」に突入したアニメが快調である証といえるでしょう。

TVアニメの人気ぶりは検索数以外の数字にも表れています。

・国内No.1アニメ配信サイト「dアニメストア」で行われた「今期何見てる?2020秋アニメ人気投票」で1位
・Netflixが発表した「2020年、日本で最も勢いのあったアニメTOP10」で、配信オリジナル作品に次いで2位
2021年1月度のdTV視聴ランキングで1位
など、数々のランキングからも人気を伺えます。

「鬼滅超え」はあり得るか?

「呪術廻戦」と「鬼滅の刃」の検索ユーザー数推移の比較

同期間で比較すると、赤線で示される「鬼滅の刃」が青線の「呪術廻戦」を上回る結果となります。

一方で、それぞれの作品のアニメ放送開始のタイミングに絞って比較すると違った結果が見えてきます。

「鬼滅の刃」の検索数はアニメ放送が開始された2019年4月で27万ユーザーです。一方の「呪術廻戦」は2020年10月で49万ユーザーとなっています。アニメ放送をきっかけに検索ユーザー数を伸ばしているのは両作品の共通点ですが、アニメ放送開始時点での検索数では「呪術廻戦」に軍配が上がります。

「鬼滅の刃」が人気を大きく伸ばした要因が映画化であることも考えれば、今後の展開やプロモーション次第で「鬼滅超え」も十分な可能性があるといえるでしょう。先日(2021年3月26日)には「呪術廻戦」の映画化の発表もありましたし、今後の展開も楽しみです。

ファミリー層の取り込みが「鬼滅の刃」大ブームの一因

検索ユーザー数のデータから呪術廻戦には鬼滅超えの可能性があることが分かりましたが、両作品の検索ユーザー層にはどのような違いがあるのでしょうか。性別・居住地域・年齢データから考察していきます。

まず、性別に関しては両作品はほとんど同じ結果となっています。

「呪術廻戦」と「鬼滅の刃」の性別検索ユーザー(対象期間:2019年3月〜2021年2月)

ただ、両作品ともやや女性の検索ユーザー数が多いことから、「少年」をタイトルに冠する漫画雑誌媒体で連載している作品であっても、ヒットには女性ファンの獲得が重要だと分かります。

一方で大きく異なるのが年齢層の分布です。下記のグラフをご覧ください。

「呪術廻戦」と「鬼滅の刃」の年代別検索ユーザー(対象期間:2019年3月〜2021年2月)

「呪術廻戦」は20代が最も高い割合を示す一方で、「鬼滅の刃」は40代が最も高い割合を示し、20代の割合は低くなっています。

「鬼滅の刃」はすでに漫画作品自体は終了しており、トレンドに敏感な20代はすでに関心が「呪術廻戦」など他に移っているのかもしれません。10代以下の子供にも人気な「鬼滅の刃」は、その親世代の40代も巻き込んで長期的なファンを獲得しているのではないかと考えられます。下の図のように、「鬼滅の刃」の検索ユーザーはお子さんがいらっしゃる世帯も多く、家族ぐるみで鬼滅の刃を楽しむ状況が浮かび上がってきます。

「呪術廻戦」と「鬼滅の刃」の検索ユーザー属性・子供有無
(対象期間:2019年3月〜2021年2月)

実際、「鬼滅の刃」の映画公開前の検索ユーザーの年齢分布は下のグラフのようになっています。

「鬼滅の刃」の検索ユーザー属性(年代)
期間:2019年8月〜2020年1月
デバイス:PCおよびスマホ

年齢分布が現在の「呪術廻戦」の年齢分布と類似することから、「鬼滅超え」には、10代以下の子供世代・およびその親世代のファンをどれだけ獲得できるかが重要な鍵になりそうです。

アニメ化で膨大に増えた「呪術廻戦」検索

ここからは、「呪術廻戦」の検索ユーザーが具体的に何に関心を持っているのか考察するため、「呪術廻戦」と掛け合わせで検索されたキーワードを分析します。

「呪術廻戦」との掛け合わせキーワード/季節比較
※該当期間に多く検索された掛け合わせキーワードほどフォントが大きく配置されます。

<2019年3月〜2019年8月>

アニメ化前の時期は「呪術廻戦」の検索数も多くなく、掛け合わせワードも少ないです。掛け合わせキーワードは、連載を追うファンによるネタバレの検索(ZIPはネタバレを掲載するサイト関連)や、キャラクター人気投票の検索のみとなっています。


<2019年9月~2020年2月>

九十九という素性の明かされていないキャラクターの登場に伴い、「九十九」の検索が最も検索されています。その他、前期間に引き続きネタバレの検索(RAR、RAWはネタバレを掲載するサイト関連)や、2019年11月にアニメ化が発表されたことによる「アニメ」の検索がされています。


<2020年3月〜8月>

最も検索されたのは8月の12巻発売に伴う「12」でした。その他の検索は前期間と大きく変わりません。(TORRENTもネタバレを掲載するサイト関連)


<2020年9月〜2021年2月>

9月以降は10月のアニメ放送開始と、それによる人気急上昇で検索ワードが大きく変化します。まずは「第5話」などアニメ各話の検索、「封印」「指」「死ぬ」などアニメの内容に関する検索、「エンディング」「主題歌」などアニメ関連の検索が並びます。その他に呪術廻戦の人気上昇に伴って、コラボ商品や、関連銘柄(鬼滅の刃の関連銘柄の株価が上昇したことからだと考えられる)の検索ワードが並んでいます。

コラボ商品に関しては、2021年6月発売予定の商品「呪術廻戦ウエハース2」の予約販売が、開始1分ほどで早々に完売しています。漫画市場やアニメ市場だけでなく、キャラクター市場にも舞台を移していると言えるでしょう。

「呪術廻戦」検索でユーザーはどんなサイトに訪問した?

最後に、「呪術廻戦」検索語の流入サイト・ページランキングは以下のとおりでした。

「呪術廻戦」検索後の流入サイトランキング

「呪術廻戦」検索後の流入ページランキング

サイトランキング1位はWikipedia、2・3位にアニメ公式サイト、4位に漫画の連載媒体である週刊少年ジャンプが入りました。ページランキングも同様に公式サイトとWikipediaが上位を占めています。

また、二次創作やネタバレ・考察関連が、サイト・ページどちらにもランクインしていることから、物語を深くまで理解したいというニーズが強いことが伺えます。

まとめ

コミックス累計発行部数が3,600万部突破など人気急上昇中の「呪術廻戦」。どのタイミングで人気が出てきたのか、そのきっかけやファン層などを比較されることの多い「鬼滅の刃」と比べながら、市場分析ツール「Dockpit」を使用して検索データを調査しました。

両作品ともアニメ放送により人気を博して検索ユーザー数が増加しているものの、放送開始したタイミングでの検索ユーザー数は「呪術廻戦」に軍配が上がる結果となりました。「呪術廻戦」はすでに20代を中心にファンを獲得しています。コラボグッズなども多数登場しどれも人気となっていることから、キャラクター市場にも影響を与える存在と言えるでしょう。

ここからさらに人気を上昇させ、「鬼滅超え」や社会現象化を達成するには、「鬼滅の刃」が映画化を通してそうなったように、10代以下の子供世代、およびその親世代のファンをどれだけ獲得できるかが重要な鍵になると考えられます。

<分析概要>
ネット行動分析サービスを提供する株式会社ヴァリューズは、全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「Dockpit」を使用し、2019年3月~2021年2月のネット行動ログデータを分析しました。
※ユーザー数はヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。

「Dockpit」は、過去どのような変化があったのか、消費者のトレンド調査にとても役立ちます。もし宜しければ、一部無料で使える機能もありますので、下記よりご登録ください。

dockpit 無料版の登録はこちら

この記事のライター

2022年の春から、新卒としてヴァリューズに入社。

関連する投稿


新時代のフランス発SNS「BeReal(ビーリアル)」MAUは過去1年で4倍に。広告にも期待感高まる

新時代のフランス発SNS「BeReal(ビーリアル)」MAUは過去1年で4倍に。広告にも期待感高まる

リリースされてから、Z世代を中心に強い支持を集めている「BeReal(ビーリアル)」。2023年初頭から人気を集め始めていますが、いまだにその人気は衰えていません。2024年7月には、日本で広告事業を本格化しはじめたことが大きな話題になりました。今回は、BeRealの最新動向をデータを用いて分析するとともに、広告ビジネスの可能性を調査していきます。


日本のLDHとタイのGMMが一丸となって誕生した新会社G&LFH 背景とトレンドを解説

日本のLDHとタイのGMMが一丸となって誕生した新会社G&LFH 背景とトレンドを解説

2024年6月5日、EXILEを輩出した音楽事務所LDHがタイ大手音楽レーベルGMM MUSICと新エンターテイメント会社【G&LDH】開設を発表しました。タイ最大のメディア企業GMM GRAMMYの子会社であるGMM MUSICは、タイの音楽産業を牽引する存在です。 この合弁会社の設立により、両国の音楽市場の強化と相互の文化理解が期待されています。 本記事では、タイと日本の音楽文化の違いや、音楽がビジネスに与える影響、そしてG&LDH設立の背景を探っていきます。


いすゞの「だれでもトラック」エルフミオは変革を起こすか? Webサイト訪問者データで初動を分析

いすゞの「だれでもトラック」エルフミオは変革を起こすか? Webサイト訪問者データで初動を分析

2024年7月、いすゞ自動車は新型トラック「ELFmio」を発表しました。普通自動車免許で運転でき、「だれでもトラック」と銘打たれるこのトラック。狙いは物流を担うトラックドライバー不足の解決です。そんなエルフミオのインパクトを、Webサイト訪問者データを通じて分析しました。


ECサイトにおけるKPI策定のポイント

ECサイトにおけるKPI策定のポイント

ECサイトの売り上げをあげるためには、KGIの設定だけではなく、KPIの策定が重要なポイントになります。そこで、気になるKPIの策定ポイントや、課題の洗い出し・分析についてご紹介します。効果的なマーケティング施策にお悩みの方や、ECサイトの売り上げが伸び悩んでいる方はぜひ参考になさってください。


“第2次”アサイーブームは続くのか? 検索者属性や検索ニーズからカテゴリ浸透の未来を考察

“第2次”アサイーブームは続くのか? 検索者属性や検索ニーズからカテゴリ浸透の未来を考察

近年再び話題になっている「アサイー」。若い女性を中心に人気を集めているようです。他にはどのような特徴を持つ人がアサイーに関心を持っているのか、アサイー検索者がアサイーのどんなことに興味を持っているのかについて、Web行動ログデータから分析・考察します。そして、アサイーブームのこれからを考えます。


最新の投稿


SEO対策、企業の40%が重要視も実施率は25%未満【メディアリーチ調査】

SEO対策、企業の40%が重要視も実施率は25%未満【メディアリーチ調査】

株式会社メディアリーチは、企業のマーケティング課題を解明するための定期的な調査として、2024年11月に実施した『経営者・役員対象:SEO対策意識調査 2024・2025年』の結果を公開しました。


Z世代の6割以上は「SNS」が認知のきっかけに!特に「衣類・ファッション」はSNSで比較・検討を行う割合が高い【僕と私と調査】

Z世代の6割以上は「SNS」が認知のきっかけに!特に「衣類・ファッション」はSNSで比較・検討を行う割合が高い【僕と私と調査】

僕と私と株式会社は、全国のZ世代/Y世代/X世代を対象に、商品カテゴリー別のカスタマージャーニーに関する調査を実施し、結果を公開しました。


ポッドキャスト、マーケターの約8割が認知も活用は約1割!活用における課題は「制作ノウハウがない」が最多【オトバンク調査】

ポッドキャスト、マーケターの約8割が認知も活用は約1割!活用における課題は「制作ノウハウがない」が最多【オトバンク調査】

株式会社オトバンクは、企業のマーケティング担当者を対象に「ポッドキャストに関する調査」を実施し、結果を公開しました。


スイート&スパイシー「Swicy(スワイシー)」味の商品が続々と登場!アメリカで人気の背景とは | 海外トレンドに見るビジネスの種(2024年11月)

スイート&スパイシー「Swicy(スワイシー)」味の商品が続々と登場!アメリカで人気の背景とは | 海外トレンドに見るビジネスの種(2024年11月)

海外からやってくるトレンドが多い中、現地メディアの記事に日々目を通すのはなかなか難しいもの。そこでマナミナでは、海外メディアの情報をもとに世界のトレンドをピックアップしてご紹介します。今回は、アメリカの食品業界で新たなトレンドワードとして注目されている「Swicy(スワイシー)」とその流行の背景について取り上げます。


DB型サイトでSEO施策を実行して対策ページが上位化するまでにかかった期間は"6か月"が最多【eclore調査】

DB型サイトでSEO施策を実行して対策ページが上位化するまでにかかった期間は"6か月"が最多【eclore調査】

株式会社ecloreは、同社が運営する「ランクエスト」にて、データベース型サイト運営者を対象に、SEOの実施状況やその効果について調査を実施し、結果を公開しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ