革新的ビジネスモデルでファストファッションの黒船に?「SHEIN」ユーザー急増の理由を探る

革新的ビジネスモデルでファストファッションの黒船に?「SHEIN」ユーザー急増の理由を探る

ショッピングセンターや百貨店などの度重なる休業要請はまだ記憶に新しいことでしょう。新型コロナウイルスはファッション業界にも大きな影響を及ぼしています。そのような背景がある中でも、いま急成長をしている企業があります。2012年に中国で設立された.アパレルブランド「SHEIN(シーイン)」です。注目が集まる理由を紐解くべく、ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を使って調査しました。


ファストファッションの黒船「SHEIN」とは

「誰もがファッションの美しさを楽しむことができる 」をコンセプトに2012年に中国で設立されたファストファッションブランド「SHEIN(シーイン)」。婦人服を中心に紳士服や子ども服、アクセサリー、靴、バッグなど、高品質で低価格なトレンドファッションアイテムが幅広く手に入ります。

そんなSHEINは実店舗はもたず、オンラインのみで販売しているのが特徴。世界各地に倉庫を所有することで、150カ国以上でビジネスを展開しています。AIによる効率化で低価格を実現し、さらに独自のサプライチェーンを構築したSHEINは、いま革新的ビジネスモデルといわれています。

SNSでも人気が高い

さらにSHEINはSNSを見ても人気が高いことがわかります。

日本版Instagramアカウントを見てみると、約44万人フォロワー(2022年5月現在)が集まっています。いわゆる日本で大手と言われるファッションECサイトのアカウントと比べてみても、SHEINのフォロワー数や投稿数はずば抜けています。これらをみても、SHEINの認知度が高い様子が伺えますね。

日本でユーザー数が急上昇

では実際、SHEINユーザー数の推移やユーザー層にはどのような変化があったのでしょうか? ここ1年の推移を、毎月更新される行動データを用いて競合サイト分析を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」で調査しました。

WEB/アプリ ユーザー数

「SHEIN」Web/アプリ ユーザー数の推移
(集計期間:2021年5月~2022年4月、デバイス:PC&スマートフォン)

2020年12月に日本語版のサービスを提供し始めたSHEIN。Web・アプリともにリリースから半年足らずで約30万人のユーザーが集まっていたことがわかります。その後も月を重ねるごとに、​​着実にユーザー数が伸びているのです。

今回はユーザー数増加の中でも、2022年4月に200万人規模のサイトへ急成長を遂げた「SHEIN」Web版に注目し深掘りしていきます。急成長の裏側で、いったいなにが起きていたのでしょうか……?

ミドルシニア世代の増加がサイトの急成長へ

ここからは属性の詳細を詳しくみていきます。性別や年代、掛け合わせワード、世帯年収から伸長の背景が見て取れました。

男女比はほぼ同等

まずは性別です。

SHEIN_男女比

SHEIN(Webサイト)ユーザー 男女比
(集計期間:2021年5月~2022年4月、デバイス:PC&スマートフォン)

ファッションというと女性のイメージが先行しがちななか、男女で比べるとその差はわずか。約10%ほど女性が多いものの、ほぼ同等に近い数値となりました。

実際にSHEINサイト男性ユーザーの口コミを覗いてみると、「海外サイトというだけあってサイズが豊富」「ブランド物に間違えられるおしゃれなデザイン」など、男性ユーザーにとってさわやかでハイセンスな印象を与えているようです。

若者でなく、50代以上にも利用されている

続いて年齢層です。

SHEIN_年代

SHEIN(Webサイト)ユーザー 年代構成
(集計期間:2021年5月~2022年4月、デバイス:PC&スマートフォン)

「若者のサイト」というイメージが先行している中、ネット利用者全体の20代の割合はわずか約16.2%。ほかの年代をみると、30代が18.4%、40代が22.9%、そして50代以上が42.4%と全体の約半数を占めているのです。

公式ブランドサイトでも掲げている「若い女性からティーンエイジャー」だけにとどまらず、意外にも50代以上に多く利用されている結果となりました。この50代以上のユーザー数の増加がサイトの急成長へと繋がっていると考えられます。

ちなみに、SHEINユーザーをWebサイトとアプリで比較すると、アプリの方は20代・30代の割合が高くなっていました。アプリとWebサイト、それぞれで異なるユーザー層を獲得できているようです。

SHEINユーザー 年代構成の比較(Webサイト/アプリ)

SHEINユーザー 年代構成の比較(Webサイト/アプリ)
(集計期間:2021年5月~2022年4月、デバイス:PC&スマートフォン)

「SHEIN 口コミ」という検索が大幅増加

SHEIN_掛け合わせワード

「SHEIN(Webサイト)」検索掛け合わせワード推移
(集計期間:2021年5月~2022年4月、デバイス:PC&スマートフォン)

目立った変化は「掛け合わせワード」からも感じられました。これまで圧倒的に検索されていた「通販」に加えて、「口コミ」が大幅に急増しています。SHEINを知って、商品に興味を持ったユーザーが口コミを確認する。これらから購入に向けて商品を検討している様子が伺えますね。

低価格設定で幅広いユーザーを獲得

SHEIN(Webサイト)ユーザー 世帯年収

SHEIN(Webサイト)ユーザー 世帯年収
(集計期間:2021年5月~2022年4月、デバイス:PC&スマートフォン)

最後は世帯年収です。世帯年収は400万円未満の層でネット利用者全体と比べても最も多いという結果でした。安さや気兼ねなく手を伸ばせる価格帯であることがSHEINの人気のひとつになっていることがわかりますね。定期的に行われているセールや、ファッションサイトでは珍しい2,000円で送料無料の低価格設定、購入特典などの施策もユーザー数増加に寄与しているでしょう。

50代以上のユーザー数増加の理由は?

50代以上の層からの人気はどこにあるのでしょうか? データから、特定のカテゴリへの人気が理由として考えられます。50代以上の訪問者がサイト内で訪れているページをセッション数でランキングしたデータを見てみましょう。

SHEIN_50~70代のランディングページ

「SHEIN(Webサイト)」50~70代のランディングページ
(集計期間:2021年5月~2022年4月、デバイス:PC&スマートフォン)

すると、50代以上の層ではジャケットやシューズなど、特定のファッションカテゴリーページへの興味が集まっていることがわかりました。カテゴリで特徴が見えてくる点が興味深いです。

広告施策が成功。アフィリエイト強化で集客増

前述の通り、2022年3月から2022年4月にかけてユーザー数が急激に増えたのは気になるところ。

SHEIN(Webサイト)ユーザー数の推移

SHEIN(Webサイト)ユーザー数の推移
(集計期間:2021年5月~2022年4月、デバイス:PC&スマートフォン)

当初から比べると約7倍規模のユーザー数をたたき出した2022年4月に、いったい何があったのでしょうか? これまでのデータと比較してみると、ある広告施策が見えてきました。

2021年5月~2022年3月までと、2022年3月の流入元別のグラフを見てみましょう。

SHEIN(Webサイト)の流入元構成

SHEIN(Webサイト)の流入元構成
(集計期間 左:2021年5月~2022年3月/右:2022年4月デバイス:PC&スマートフォン)

アフィリエイト広告からの流入が目に見えて増加しています。HPやブログ、メルマガ、SNSなどに広告を掲載し、成果に応じて報酬を獲得するアフィリエイト。それまで行っていたディスプレイ広告やリスティング広告に加えて、アフィリエイト広告を中心にWebマーケティングを展開していたようです。

アフィリエイトはCPAが最も安いといわれる費用対効果の高い広告施策です。一方で広告主側の負担、ここでいうSHEIN側の運用など、社内の人件費や労力の負担が高く、企業として規模を広げづらいのも特徴。そんな背景がある中、アフィリエイト広告で集客を最大化したことはSHEINが急成長をしている企業であることをまさに体現しています。

リスティングやディスプレイ広告による集客が増加

SHEIN(Webサイト) 集客構造推移

SHEIN(Webサイト) 集客構造推移
(集計期間:2021年5月~2022年4月、デバイス:PC&スマートフォン)

SHEIN利用者の増加はアフィリエイト広告だけではありません。従来行っていたリスティング広告やディスプレイ広告においても増加傾向になります。2021年8月と比べると、リスティング広告は約5倍、ディスプレイ広告では約12倍にまでユーザー数を伸長させています。

SHEIN成功の裏側には、広告手法を広げた上で従来行っていた広告も集客を拡大させるという、デジタル広告施策があったと考えられます。

【まとめ】ECサイトではデジタルネイティブ以外をいかに巻き込めるかが鍵

今回のSHEINについて調査し、わかったことは「50代以上の層が全体ユーザー数の約半数いること」「アフィリエイト広告が成功していること」でした。SHEINのHPを見ると若者のモデルを起用したり、SNSでも若い世代に向けた企画やプロモーションを行っていました。しかし実際の調査結果では、20代だけでなく40代や50代、60代にまで注目されていたのです。

新型コロナウイルスの影響により、生活環境が著しく変化している昨今。実際に総務省の家計調査をみても、ネットショッピングの利用率が進んでいます。これらはミドルシニア世帯であっても同様。50代以上のすべての世代で、急激にECサイトの利用率が伸びています。

SHEINではこういった世の中の動きをキャッチアップし、幅広い年代に受け入れられるファッションアイテムでミドルシニア世代を見事に取り込んでいました。実際にSHEINのサイトを見ても、デジタルが苦手な方でも対応しやすいよう会員登録が簡略化されていたり、支払い方法がクレジット以外にコンビニ払いなどが用意されていたり、購入までの導線が比較的親切な印象でした。さらに季節の折には、毎回大型の割引企画が用意され、さらにお得に購入ができるのです。

このようにデジタルネイティブだけでなく、デジタルにあまり触れてこなかった高年齢層を巻き込むことや、アフィリエイトやリスティング、ディスプレイ広告などの広告手法の最適化を行うことで、事業の成功に寄与し飛躍した成長を遂げられるのではないでしょうか。

今後のユーザー数の動きにますます目が離せませんね。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

dockpit 無料版の登録はこちら

【調査概要】
・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報にもとづき分析
・行動ログ分析対象期間:2021年5月〜2022年4月
※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:PC・スマートフォンの両デバイス

この記事のライター

女性系メディアの運営に4年携わり、現在は子育てをしながらフリーランスとして活動中。目標は”子どもと楽しく暮らす”こと。
みなさんが「読んでよかった」と思える記事をお届けしたいです。

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