病気やケガで入院したり手術を受けたりした際に、給付金をもらえるのが医療保険です。生命保険文化センターの2021年度の調査結果(※1)によると、医療保険の加入率は9割以上であり、多くの人が加入していることがわかります。また、今まさに加入を検討している人もいるでしょう。
金融庁の報告(※2)によると生命保険会社は42社あります。各保険会社がさまざまな商品を提供していますが「医療保険」に関心があるユーザーは、どのようなサイトへ流入しているのでしょうか。ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用いて、調査・分析しました。
(※1)2021(令和3)年度「生命保険に関する全国実態調査」(2021年12月発行)
(※2)生命保険会社免許一覧
男女の割合はおよそ半々で40代の比率がもっとも高い
ネットで「医療保険」と検索している検討者を性別と年代別に見ていきます。
性別は男女およそ半々ですが、わずかに女性のほうが関心が高いことがわかります。これは、女性特有の病気に備えるためだと考えられるでしょう。女性の場合、若年層でも乳がんや子宮頸がんなど女性疾病にかかるリスクがあります。また、妊娠や出産に備えて医療保険への加入を検討している人もいるでしょう。そのため、男性よりも医療保険への関心が高いと予想できます。近年では、女性疾病に備えた特約を設定している保険商品も多々あります。
図:「医療保険」検索者の性別
期間:2022年8月~2023年7月
分析ツール:Dockpit
デバイス:PC、スマートフォン
年代は40代をピークとした山型です。40代は、ライフステージの変化により保険を見直す人や将来を見据えた保険の加入を検討する人が増えるためだと考えられます。独身から既婚に変わったり妊娠・出産を終えたりすれば、加入中の保険では保障内容に過不足が生じる可能性があります。20代、30代で加入した保険を見直したり老後を意識した保険を検討したりする人が増えてくる年代だといえるでしょう。
生命保険文化センターの調査(※)によると、生命保険の加入率は男女ともに50代がもっとも高くなっています。50代以降に備えるため、40代で保険の見直しや加入を検討している人も多くいると考えられます。
※生命保険に加入している人はどれくらい?
図:「医療保険」検索者の年代
期間:2022年8月~2023年7月
分析ツール:Dockpit
デバイス:PC、スマートフォン
検索後は価格.comへの流入が約2割でトップ
「医療保険」検索後の流入サイトをみていきましょう。
トップは「価格.com」でユーザー数のシェアは約2割です。その後、シェアが約1割の保険市場、アフラックと続きます。アフラックや太陽生命などの保険会社のメディアだけでなく、価格.comや保険市場などの比較サイトも上位にランクインしています。キーワードは保険商品の「医療保険」ですが、検索後の流入サイトは保険会社のメディアに限らないという点が特徴的だといえるでしょう。
価格.comはさまざまなカテゴリの商品を比較できるサービスですが、保険の扱いもあり保険料のシミュレーションや人気ランキングを調べられます。保険市場は保険相談サイトです。アフラックは、がん保険・医療保険の保有契約件数がトップ(※)の保険会社です。
※日本で初めてがん保険を開発。時代をこえて変わらないアフラックの想い
図:「医療保険」検索後の流入サイト
期間:2022年8月~2023年7月
分析ツール:Dockpit
デバイス:PC、スマートフォン
比較サイトのシェアは2割強
「医療保険」検索者の流入サイトのシェアについて、詳しく調査しました。
「医療保険」検索者全体のセッション数は、3,730,000です。上位10サイトについて、サイトカテゴリを「生命保険 企業」「保険 メディア」「その他」に分類し、それぞれのセッション数を足し合わせています。「価格.com」は「総合 メディア」に分類されていますが、保険比較の機能を持つサイトの特性上「保険 メディア」に含めています。
図:「医療保険」検索後の流入サイト(セッション数)
期間:2022年8月~2023年7月
分析ツール:Dockpit
デバイス:PC、スマートフォン
これらをふまえて「医療保険」検索者全体のセッション数に占める各カテゴリのセッション数のシェアを算出しました。なお「未分類」は「医療保険」検索者全体のセッション数から、上位10サイトのセッション数を引いたものです。
未分類をのぞき、もっともシェアが高かったのは「価格.com」をはじめとする「保険 メディア」で2割強でした。「生命保険 企業」の2倍以上です。
図:「医療保険」検索後の流入サイトシェア
「生命保険 企業」サイトは、テレビCMや知人のおすすめなどから特定の保険会社の商品を調べるために閲覧されていると予想できます。一方「保険 メディア」に分類される比較サイトは、複数商品を比較するために閲覧されていると予想できます。数多くある保険商品のなかから、自分に合う費用対効果の高い商品を選びたいというユーザーの意向が反映された結果だといえるでしょう。
保険には掛け捨ての商品もあり、事故でケガをしたり病気にかかったりしない限りは「お金を捨てている」感覚の人もいると考えられます。また、保障を重視すればするほど、毎月の保険料は高くつきます。そのためユーザーは、自分のライフステージに応じた適切な保障内容を確保しながらも、無理のない範囲で支払える保険料の商品を求めていると考えられるでしょう。
各保険会社から多くの商品が出ていますが、商品の移り変わりが激しく、商品性もさまざまです。検索流入のシェアの調査結果から、自分に合う商品を見つける難しさを感じているユーザーがいることがわかるのではないでしょうか。
保険会社には、わかりやすい商品説明と費用対効果をアピールすることが求められていると考えられます。他社との比較結果がすぐにわかる仕組みがあれば、契約につながりやすくなる可能性もあります。また、比較サイトの運営にあたっては、シミュレーションやランキングなどを用いて「わかりやすく、比較しやすいメディア」が求められているともいえるでしょう。
まとめ
今回は「医療保険」検索結果から検討者の流入サイトについて調査しました。
医療保険への関心度は、男女別にみるとわずかに女性のほうが高く、女性疾病への備えが理由のひとつだと考えられます。年代別でみると40代がもっとも高く、ライフステージの変化によるものだといえるでしょう。
検索後の流入サイトは「価格.com」が約2割でトップです。上位10サイトのカテゴリには比較サイトと保険会社がありますが、比較サイトのほうが全体に占める割合が高いことがわかりました。
保障内容によって月々の保険料はさまざまですが、決して安い固定費ではないため「商品を比較してから決めたい」というユーザーの意向がうかがえます。
保険会社でも比較サイトでも「わかりやすい他社との比較結果」を重視したメディア運営ができれば、流入シェアを上げることができると考えられます。
▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
Webライター。転職、キャリア、美容、不動産、金融ジャンルの記事を執筆中。新卒からシステムエンジニアとして働いていました。ライティングにおいては、わかりやすい文章を書くことはもちろん、どこかくすっと笑えるような、読み手が温かい気持ちになれる記事を書くことを心がけています。