未来を拓く中国食品業界。2023年の最新トレンド

未来を拓く中国食品業界。2023年の最新トレンド

中国では日々さまざまな変化が起こっており、食品業界も例外ではありません。中国は多くの消費者を抱える中、食品業界はほぼ毎年革新を遂げ、新たなトレンドを生み出しています。この記事では2023年の中国食品業界の中で、とくに注目すべきトレンドを3つ紹介します。


食品業界もAI化?

2023年4月、ChatGPTは世界的な注目を集め、高度で洗練された言語モデルによって様々な業界に大きな変革をもたらしました。食品業界もその影響を受け、多くの中国の食品ブランドが「AI」を積極的に活用し始めました。
その代表格中国で高価なアイスクリームで知られるブランド钟薛高(Zhongxue Gao)が挙げられます。同ブランドはChatGPTや文心一言などさまざまなAIツールを活用し、「Sa’Saa」というアイスキャンディを開発しました。このアイスキャンディは味の開発から命名、宣伝、デザインまでの全プロセスをAIが参加または主導しています。その結果、この新製品の発表後に話題はWeibo(中国圏最大のSNS)でトレンド入り、3.4億人が閲覧し、2.3万回の議論を呼び起こしました。

钟薛糕の創設者である林盛氏は、「AIによって生み出された名前は若々しく、流行のあるブランドイメージを代表している」と考えています。AIの提案は驚くべきものであり、その多くのアイデアは人間の想像を超えてきます。钟薛糕は今後製品の開発や、市場動向の予測、消費者の嗜好判断、マーケティングなどさまざまな分野でAIの参加度を高めていくそうです。さらにAIを新製品の開発やマーケティング、運営のあらゆる段階にも落とし込んでいくことが計画されています。
また健康零食品ブランド「食验室」でも、AIを製品デザインの作業フローに組み込んでいます。4月1日の夜、食验室の創設者である孫思达氏はAIを用いて「5種類のパッケージを一気にデザインする」という宣言をしました。

AIツールを用いてデザインしたクッキーパッケージ

「私たちはAIによるパッケージングが消費者の購買意思決定に過度の影響を与えることはないと認識しています。むしろAIが全体の作業フローにおいて、どれだけ効率を高めることができるかを見たいので。従来のデザインプロセスでは、デザイナーが1つのパッケージを作るのに約1週間かかっていましたが、AIを活用するとわずか4時間で5つのパッケージのデザインを完成できるようになり、大幅にコストを削減することができました。
「AIを活用することで、製品をより効率的かつ低コストで完成させることができ、さらに市場にも受け入れてもらえることを実感しました」と孫思达氏は述べています。

このように人工知能は、中国の食品業界の発展に変革をもたらしています。AIは自身のアイデアを迅速に視覚化し、製品の実現に多くの可能性をもたらすだけでなく、人件費を削減し、生産効率を向上させます。これはAIが社会発展において持つ根本的な意義だと考えられます。
技術の急速な進化の中で、AI技術に加えて食品業界全体はより高次元の科学技術の製造方法を探求しています。例えば3Dプリントや合成生物学技術、宇宙実験などの技術手段が食品業界のイノベーションを推進しており、無限の可能性を創造しています。これらの技術の導入により、食品業界に新たな視点と展望がもたらされ、さらなる革新と変化が期待されています。

美容内服の人気が衰えずに続く

近年「容姿経済」の台頭に伴い、中国の消費者は容姿に対する要求が高くなり、美容に関連する市場は強力な成長を示しています。その中で美容内服はより健康で安全な特性を活かして、多くの人々が美しさを追求する際の第一選択肢として選ばれています。
インターネットの発展は中国の若者の抗老化に対する関心を一定程度高め、「抗老化」は社会現象となり、その傾向は若返りつつあります。艾媒咨询が発表した「2022-2023年 全球及び中国の抗老化産業発展と消費者ニーズ調査報告」によると、56.6%の消費者は19〜35歳であり、23.2%の消費者は18〜25歳で抗老化に関心を持ち始めていました。

2022年中国消費者が抗老化に関心を持ち始めた年齢分布

北京栄養士協会の副理事長である劉蘭氏によると、美容内服は肌のケア効果を口から摂取する方法で実現する機能性食品です。これは人々の食事のニーズを満たすと同時に、美に対する追求も満たします。元々「内服外養」という概念は日本発祥であり、1970年代に日本で口から美容を目的とした製品が登場しました。中国は日本に次ぐ世界第二の美容内服市場であり、過去30年以上の発展の中で海外ブランド主導から国内ブランドの台頭、停滞、そして製品ブランドの強力な発展などいくつかの変遷を経験してきました。

近年国際貿易と電子商取引の発展に伴い、POLAや資生堂、FANCLなどの日本の有名ブランドが相次いで中国市場に参入。コラーゲンペプチドやナイアシンアミド、グレープシード、ヒアルロン酸などの成分が広く宣伝され、美容内服が再び「爆発期」を迎えています。Grand View Researchが発表したデータによると、2027年までに中国のコラーゲンの市場規模は約15.76億ドルに達すると予想されており、これは世界市場の約6.96%に相当します。
巨大な市場規模により、健康製品や医薬品、スキンケア製品、食品、国産の新興ブランドなどを含む様々なジャンルが参入を計画しています。中国の美容内服市場は、海外と国内のブランドが競い合う状況になりそうです。

北京大学を卒業した五人の女性博士が創立した美容内服ブランド 

「美容内服」製品の市場はコーヒーやお茶、健康製品などの分野に比べてまだマイナーな部類に属しています。また「美容内服」の有効性に関しては、常に議論が絶えません。しかし、まだ始まったばかりの口服美容市場は中国においては規制が明確でなく、業界も未熟な成長段階にあるものの、その背後には依然として巨大な潜在能力が隠れています。

コーヒーショップの数は世界一?

12月13日のAllegra Groupの研究機関World Coffee Portalが発表した報告によると、中国ブランドのコーヒーショップの総数が約5万店に迫り、世界で最も多いブランドのコーヒーショップを保有する国になりました。世界1位の称号は過去20年間常にアメリカに属していました。報告によると、過去12か月で中国ブランドのコーヒーショップの数は58%増で49,691店に達し、同時期のアメリカブランドのコーヒーショップはわずか4%増にとどまりました。
中国の店舗ラッキンコーヒーは2023年の1年で5,000店舗以上を新規開店しました。現在ラッキンコーヒーの店舗数は13,000店舗を超え、スターバックス中国のほぼ2倍となっています。同時にクディコーヒーの店舗数も6,000店舗を超え、スターバックスに迫る勢いです。スターバックスを超えることは時間の問題と言えるでしょう。

「中国のスタバ」と呼ばれるラッキンコーヒー

2020年から2025年までの中国のコーヒー市場に関する前瞻研究院の発表によると、中国のコーヒー市場の年間の平均成長率は15%であり、これに対し、世界のコーヒー市場の平均成長率は2%のみです。
それでも、中国の年間1人当たりのコーヒー消費量はわずか12杯であり、この数字は欧米諸国の長い歴史を持つコーヒー文化や、例えば日本の年間1人当たりの約200杯と比較しても低いです。収入格差を考慮しても、中国の巨大な人口基数に基づくと、コーヒー消費にはまだ大きな成長余地があると考えられます。

参考資料

https://www.foodtalks.cn/news/43100
钟薛高推出首款AI雪糕!
https://www.foodtalks.cn/news/43212
AI设计半天定方案!食验室一口气上线5款产品
https://36kr.com/p/2353235169342983
复苏、爆红、失宠、出局……2023食品行业年中盘点
https://www.foodtalks.cn/news/50393
中国将咖啡馆开到全球第一,泡沫将破还是厚积薄发?
http://finance.china.com.cn/consume/20231215/6061755.shtml
口服美容的年轻化破圈:“抗衰”低龄化,年轻人掀起口服美容消费新风潮

この記事のライター

広東省出身の中国人留学生。現在は名古屋大学でメディアを専攻している。

関連するキーワード


中国トレンド調査 中国市場

関連する投稿


中国シルバー経済の新傾向を調査

中国シルバー経済の新傾向を調査

日本と同様、年々高齢者の割合が高くなっている中国。中国民政部が発表した《2023年民政事業発展統計公報》によると、2023年末の時点で全国の60歳以上の人口は29,697万人に達し、総人口の21.1%を占めました。高齢者の増加に伴い、近年中国では“銀髪経済”(シルバー経済)という高齢者を主力とした現象が発生しており、高齢者の間で新たな生活様式が広がっています。


「感情」で消費する中国のZ世代

「感情」で消費する中国のZ世代

新型コロナウイルスが終息した後、経済が低迷しているように見える中国ではさまざまな新しい消費現象が現れています。以前から話題となっていたシティウォーク、ペット経済、リラックス感のあるファッションや「搭子社交」など、これらの現象をよく考えてみると、一つのキーワードに辿り着きます。それが「感情」です。社会的地位を証明するためにブランド品を追い求め、他人に自慢するのではなく、現在の中国のZ世代は、むしろ自己の癒しに注目し、一つの活動や商品を購入する際に自分に「感情的な価値」をもたらすかどうかを重要視しています。この現象は中国で「感情経済」を生み出すに至りました。本記事ではこの現象について詳しく紹介します。


掃除の悩みや求めることは同じ?中国における家庭の掃除意識を調査

掃除の悩みや求めることは同じ?中国における家庭の掃除意識を調査

コロナ禍が後押しとなって、中国において家庭掃除への関心が高まっています。その中でユーザーは掃除に関してどのようなことに苦労し、どのようなことを望んでいるのでしょうか。ヴァリューズ独自の中国定性調査サービス「百路QIC(ヴァリュークイック)」を用いて、ユーザーの本音を明らかにしました。


中国Z世代における消費観“情緒経済”の特徴とは|ホワイトペーパー

中国Z世代における消費観“情緒経済”の特徴とは|ホワイトペーパー

巨大市場中国。本調査は、中国の消費者の消費動向、購買実態や新しい消費トレンド、消費観を明らかにすることを目的として調査。中でもキーとなるのは、世代間比較。この比較を行うことで、“情緒経済”を重視していると言われているZ世代の特徴や、居住地域によるZ世代内の消費観の差について検討が可能となっています。海外展開事業担当者の方や中国Z世代向けマーケティングを考えている方必見のレポートです。※調査レポートは記事末尾のフォームより無料でダウンロードいただけます。


中国におけるAI。スポーツ、就職、人材育成での活用動向

中国におけるAI。スポーツ、就職、人材育成での活用動向

さまざまな文化、技術発展の速い中国。そんな中国人は新しい技術に対して楽観的な態度を持つことが多く、AI技術も例外ではありません。2023年にスタンフォード大学が発表したAI Index Report の調査結果によると、中国人はAIに対して最も楽観的な態度を持っています。AIがもたらす可能性のあるプライバシー侵害などのリスクよりもAIが生活をより便利にすることが信じられているようです。本稿では中国AI業界の最新情報を詳しく紹介します。


最新の投稿


SEO対策、企業の40%が重要視も実施率は25%未満【メディアリーチ調査】

SEO対策、企業の40%が重要視も実施率は25%未満【メディアリーチ調査】

株式会社メディアリーチは、企業のマーケティング課題を解明するための定期的な調査として、2024年11月に実施した『経営者・役員対象:SEO対策意識調査 2024・2025年』の結果を公開しました。


Z世代の6割以上は「SNS」が認知のきっかけに!特に「衣類・ファッション」はSNSで比較・検討を行う割合が高い【僕と私と調査】

Z世代の6割以上は「SNS」が認知のきっかけに!特に「衣類・ファッション」はSNSで比較・検討を行う割合が高い【僕と私と調査】

僕と私と株式会社は、全国のZ世代/Y世代/X世代を対象に、商品カテゴリー別のカスタマージャーニーに関する調査を実施し、結果を公開しました。


ポッドキャスト、マーケターの約8割が認知も活用は約1割!活用における課題は「制作ノウハウがない」が最多【オトバンク調査】

ポッドキャスト、マーケターの約8割が認知も活用は約1割!活用における課題は「制作ノウハウがない」が最多【オトバンク調査】

株式会社オトバンクは、企業のマーケティング担当者を対象に「ポッドキャストに関する調査」を実施し、結果を公開しました。


スイート&スパイシー「Swicy(スワイシー)」味の商品が続々と登場!アメリカで人気の背景とは | 海外トレンドに見るビジネスの種(2024年11月)

スイート&スパイシー「Swicy(スワイシー)」味の商品が続々と登場!アメリカで人気の背景とは | 海外トレンドに見るビジネスの種(2024年11月)

海外からやってくるトレンドが多い中、現地メディアの記事に日々目を通すのはなかなか難しいもの。そこでマナミナでは、海外メディアの情報をもとに世界のトレンドをピックアップしてご紹介します。今回は、アメリカの食品業界で新たなトレンドワードとして注目されている「Swicy(スワイシー)」とその流行の背景について取り上げます。


DB型サイトでSEO施策を実行して対策ページが上位化するまでにかかった期間は"6か月"が最多【eclore調査】

DB型サイトでSEO施策を実行して対策ページが上位化するまでにかかった期間は"6か月"が最多【eclore調査】

株式会社ecloreは、同社が運営する「ランクエスト」にて、データベース型サイト運営者を対象に、SEOの実施状況やその効果について調査を実施し、結果を公開しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ