1.3C分析とは
■●概要
3C分析とは、市場動向と現況把握を精緻に行うための環境分析の代表的なフレームワークで、①Customer/市場・顧客②Competitor/競合③Company/自社の要素から構成されるアウトプットです。
主に中期計画や新規事業のシーンで大々的に作成され、自社プロダクトに関する市場情報のスタンダードなデータ集として情報分析の側面から経営計画や事業計画の策定に寄与します。
戦略コンサルタントの大前研一氏がマッキンゼー在籍時の1980年代に戦略的三角関係(Strategic Triangle)として提唱し、分析の漏れや重複を防ぐことを目的に作られた経緯があります。
■●構成要素
3C分析の構成要素は以下のようになります。
●1.Customer/市場・顧客
・業界とユーザーに関する情報
A.市場:業界
a.業界の市場規模・成長率
b.業界のニュース・トレンド
B.市場:事業部門/ブランド/カテゴリ
a.事業部門別の市場規模・成長率
b.事業部門別のニュース・トレンド
C.顧客:ユーザー/消費者/生活者
a.顧客の種別・規模
b.顧客のジョブ
c.顧客のゲイン
d.顧客のペイン
e.顧客の意思決定プロセス
D.顧客:クライアント/法人顧客
a.顧客の種別・規模
b.顧客のジョブ
c.顧客のゲイン
d.顧客のペイン
e.顧客の意思決定プロセス
●2.Competitor/競合
・競合に関する情報
a.競合の種類と定義
b.競合の市場シェア
c.競合の事業パフォーマンス
d.競合の競争戦略
e.競合の経営資源
f.競合の市場評価
●3.Company/自社
・自社に関する情報
a.自社のKGI・KPI
b.自社の市場シェア
c.自社の事業パフォーマンス
d.自社の競争戦略
e.自社の経営資源
f.自社の市場評価
■●よくある課題
「業界情報を誰かどこかにまとめていないか?」
⇒この悩みに一枚で答えるためのアウトプット
①業界研究を行う担当者が決まっていないケース
業界情報を参照する機会は組織内の定常業務の中で多数あります。中期経営計画策定、会社概要作成、トップインタビュー、新人研修、採用説明会などなど。かき集めたら中堅メンバーひとり分の仕事量になるほど用途が多岐にわたります。
しかし、業界研究を行う担当者は組織内で決まっていないことがほとんどです。そうすると、使用する場面が直近で一番切迫している誰かが作ることになり、ピックアップする情報の粒度にバラつきのある品質が低い資料が出来上がります。
②環境分析がツギハギ状態で行われているケース
環境分析を行なっている場合も、資料がツギハギ状態で作成・管理されているケースも散見されます。この状況下では、情報の種類や粒度がマクロすぎたり急にミクロになったり、あるいは担当者の関心度順に情報が並んでいたりします。
この主たる原因は資料作成の分業制にあります。分業制は作成時には合理的なのですが、出来上がった時には成果物の統一感は無くなります。内容にまとまりがないと情報の読み手には苦行となり、次第に読まれなくなる運命をたどります。
2.作り方
<STEP1:インデックスのページ作る>
①3C分析のトライアングルの図を作る
②参照項目を記載する
③データアイテムを記載する
④出典・引用を記載する
<STEP2:ハイライトのページを作る>
①ファクトを記載する
②評価・展望を記載する
3C分析資料の作成にあたっては、個別の参考情報を羅列してしまうと読みづらくなるため、まず目次機能を果たすインデックスのページを作成しておき、次に記載内容のサマリとなるハイライトページを作成して構造的に整形していきます。
<STEP1:インデックスのページ作る>
①3C分析のトライアングルの図を作る
・全体の文字情報が多い資料のため、視覚的に位置づけを理解できるようにする
②参照項目を記載する
・3Cの中身を検討するためのデータのまとまりを参照項目(見出し)として記載する
③データアイテムを記載する
・データアイテム(=指標や情報の種類)の名称を記載する
④出典・引用を記載する
・調査や資料の出典・引用元の名称を記載する
<インプット>
・政府統計
・シンクタンクレポート(業界白書)
・業界最大手企業のIR資料・ブログ
・デスクリサーチ
・ユーザー調査
・分析ツールデータ
・自社中計、売上分析、顧客分析
<STEP2:ハイライトのページを作る>
①ファクトを記載する
・データアイテムの要点を記載する
②評価・展望を記載する
・ファクトに対する自社におけるポイントを記載する
3.使い方
①業界情報をまとめるインデックスとして活用する
②経営企画か事業企画の音頭で話題の粒度を整える
①業界情報をまとめるインデックスとして活用する
3C分析の情報構造を業界情報(自社・競合情報)をまとめるインデックスとして活用します。本稿の図表のように3C分析の分析項目とそれに対応するデータアイテムを目次として活かすと、資料全体に流れを作ることができます。
この資料は経営・人事・広報・事業部が共通して参照する場所に配置し、必要な人が必要なところだけ切り出せるよう網羅性を高めていきます。新人研修の準備などを機に年次でアップデートしていく体制で運営できるとベストです。
②経営企画か事業企画の音頭で話題の粒度を整える
海千山千の情報を取り扱う3C分析の資料を読みやすくするには、あらかじめ比較の観点や競合の範囲などを設定しておくことがポイントです。これで、それぞれの項目では別々の話を扱っていても全体を流れで見せることができます。
この設定を行うのは組織内で横断的な役割を担っている人物が適任で、経営企画か事業企画のリーダーがオーナーに向いています。比較の観点や競合の範囲をうまく設定して内容が抽象すぎたり具体的すぎたりするのを防ぎましょう。
リサーチャー。上智大学文学部新聞学科卒業。新卒で出版社の学研を経て、株式会社マクロミルで月次500問以上を運用する定量調査ディレクター業務に従事。現在は国内有数規模の総合ECサイト・アプリを運営する企業でプロダクト戦略・リサーチ全般を担当する。
デザインとマーケティングを横断するリサーチのトレンドウォッチャーとしてニュースレターの発行を行い、定量・定性の調査実務に精通したリサーチのメンターとして各種リサーチプロジェクトの監修も行う。著書『ユーザーリサーチのすべて』(マイナビ出版)
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