スピーカー紹介
図:「スピーカー紹介」
株式会社ヴァリューズ 執行役員 子安亜紀子
6カ国のGen Zの価値観や消費行動を調査
Gen Zとは日本ではZ世代と呼ばれ、一般的に1995年〜2010年頃に生まれた世代を指します。この世代は、生まれた時からインターネットが存在しており、デジタル・スマホネイティブ世代です。また、ソーシャルメディアとの親和性が高いことも特徴です。
2023年現在で、世界の人口の約4分の1を占めているGen Z。世界を見据えるにあたり、Gen Zに注目することがとても重要であると考えられます。
本セッションでは、日本、中国、アメリカ、東南アジアの計6カ国のGen Zが比較されました。まず、これら6カ国の総人口に占めるGen Zの割合はどうなっているのでしょうか。
図:「Gen Z 6カ国比較」
この図を見ると、中国、アメリカ、タイ、ベトナムでは人口の2割前後をGen Zが占めています。インドネシアでは人口の28%をGen Zが占めているため、このような新興国においては若年層のトレンドをどう掴んでいくかが非常に重要になるのではないでしょうか。
今回は、ヴァリューズで取り扱っている調査データを基に、「Gen Zの価値観・人となり」「消費に対する価値観・購買決定要因」「日本ブランドに対するイメージ」の3つについて、株式会社ヴァリューズの執行役員 子安が解説します。
図:「今回ご紹介する調査について」
世界のGen Zの価値観とは?
株式会社ヴァリューズ 子安亜紀子(以下、子安):Gen Zの価値観というと、一般的にはどのようなイメージがあるでしょうか? よく言われるものとしては、
・デジタルネイティブでSNSを重視
・多様性に寛容
・つながりを大切にし、オープンなコミュニケーションを好む
・社会課題や環境問題への興味関心が強い
・現実主義で効率を重視
などが挙げられます。
調査では、6カ国のGen Zに「社会課題への意識」「個人の成功」といった7つの項目について、5段階で答えてもらいました。
図:「大切にしている価値観」
■世界共通で「社会問題への意識」が高い
以下の図は、大切にしている価値観を各国ごとにランキング化したものです。5段階評価で「とてもあてはまる」を選択した率が高い順に項目が並んでいます。
図:「大切にしている価値観ランキング」
すべての国で「社会問題への意識」を指す緑色の項目がランクインしていることがわかります。特に、「自然や環境を大切にする」という項目がほぼ全ての国でランクインしていることから、自然や環境への意識はエリアを問わず高いと言えます。
また、右側の東南アジア3カ国(タイ、ベトナム、インドネシア)では、青色の項目が目立ちます。これらは「個人の成功」に分類される価値観であり、アグレッシブでハングリーなワードが上位にランクインしている点が東南アジアの特徴です。
一方で、日本と中国では「承認欲求」に分類されるオレンジ色の項目に加え、「他の人に負けたくない」という項目がランクインしています。東アジア共通の価値観として、「競争に勝ちたい」「他者に認められたい」「社会的地位を得たい」という意識が相対的に高いことが考えられます。
一方でアメリカを見ると、「物事に疑問を持ち、自分の意見を持つことが大事だ」という項目が1位に、緑色で示される「社会課題への意識」の項目が3つランクインしています。ここから、「主張する」ことが文化として根付いており、社会課題への意識が相対的に強いことがアメリカの特徴であると言えます。5位にランクインしている「世界の平和に貢献したい」という項目もアメリカらしさを表しているのではないでしょうか。
■Gen Zの理想的な生活のイメージやマイブームは?
Gen Zの理想的な生活のイメージも聞いてみました。全体の傾向として、「経済的ゆとり」「精神的ゆとり」「健康的」「平穏かつ安定」を満たすような生活が理想的なようです。
図:理想的な生活のイメージ
地域別に見ると、日本と中国では「時間的ゆとり」を求める割合が高いのに対し、タイやインドネシアでは「仕事面の充実」を求める割合が高くなっています。東南アジアの若者に比べて、日中の若者は「自分らしさ」「ゆとり」のある生活を送りたいという思いが強いことがわかります。
また、中国では近年「996」や「ねそべり族」のような言葉も流行しています。このような言葉の流行やデータ全体から、日中の若者には世の中に対する諦観が見られるのではないでしょうか。
図:「996」と「ねそべり族」
さらに、各国の80〜100人弱にマイブームを自由回答してもらいました。以下の図はその内容を分類したものです。
図:「Gen Zのマイブームは?」
これを見ると、タイの若者は勉強やキャリアアップに関する発言が相対的に多いようです。 中国の若者には、テクニカルなこと、テクノロジー、新しい技術のようなことに興味を持つ人が多く見られます。一方で、日本ではキャリアアップやテクノロジーに関する発言はあまりなく、エンタメまたは自分の趣味をマイブームとする人が多いようです。
また、自由回答の中で頻出ワードを抽出してみると、日本では「寝る」「食べる」「はまる」といった単語が上位に見られたことから、日常生活の中に小さなマイブームがあるようなイメージを持つことができます。
一方、中国では「Xiaomi」「携帯電話」「人工知能」が上位に見られます。中国国内で新たな技術がたくさん生み出される中で、それらを追いかけるような若者や、新しい製品を手に入れたいと考える若者もかなり多く存在するのではないでしょうか。
タイでは、「お金」「成績」「仕事」「音楽」「ゲーム」など、仕事や学業に関するワードが上位に見られることから、一生懸命に頑張る若者というイメージが湧きます。
図:「『マイブーム』国別比較」
各国Z世代の消費に対する価値観を考察
子安:続いて、消費の価値観について解説します。今回は、商品の価値観として考えられるキーワード8つに基づく質問に5段階で答えてもらいました。以下のグラフがその結果です。
図:「消費価値観」
このグラフの点線で囲われている部分から、「お得感」「家族や友人の情報・ネット上の口コミ」を重視する傾向があることがわかります。また、グラフの右側の項目である「社会・環境に配慮された商品」「自分らしさを示せる商品」に関しても購入意欲が高く、「地元の企業のブランドを応援したい」という意向が強いことも読み取れます。
■Gen Zからの支持を集めるブランドとは
ここで、実際にGen Zから支持されているブランド・商品をいくつかご紹介します。
ひとつ目は、インドネシアのサスティナブルフットウェアメーカー「Pijakbumi」です。こちらは2010年頃にジャカルタで設立されたエコフレンドリーブランド。インドネシアの若者が環境に優しい靴を作っているというストーリーもあって、インドネシア国内で多くの支持を得て、現在は少しずつ海外進出もしているようです。まさに、「社会環境への配慮」と「自国発」のお洒落なブランドという点でGen Zの支持を集めているのではないでしょうか。
図:「エコフレンドリーブランドの台頭(インドネシアのサスティナブルフットウェアメーカーPijakbumi)」
「ローカル・自国愛気質」もGen Zの消費行動を紐解くキーワードです。中国では、「国潮」が長らくブームになっています。「国潮」は「自国愛」のようなイメージで、中国文化や伝統に基づくものを魅力的だと感じ、それを自分でも取り入れたいというような風潮です。以下の写真は、中国の観光地で、中国の若者が地元の伝統衣装を着て写真を撮ることや散策を楽しんでいる様子です。このように、あえて自国の文化に深く触れてみることが魅力的・楽しいと思われているようです。
図:「ローカル・自国愛気質:中国の国潮ブーム」
この流行は商品にもかなり反映されています。2023年にGen Zで最も流行したと言われるコスメブランド「东边野兽 (Herbeast)」やフレグランスブランド「观夏(To summer/ GuanXia)」では、東洋の草木・植物を使用した化粧品を赤いパッケージで売り出していたり、東洋風かつシンプルであることを前面に押し出したパッケージにしたりすることで、東洋的・中国的なものを買いたい人々からの支持を得ています。また、中国で流行している海外ブランドが、中国色を取り入れたパッケージによって支持を得ることもトレンドになっているようです。
■購買時の情報源
では、各国のGen Zはどのように情報収集を行っているのでしょうか。今回は美容・コスメの商品を購入する際の情報源についてのアンケートから分析します。以下の図がアンケート結果のグラフです。
図:「美容・コスメ 商品購入時の情報源」
図から、「動画投稿型SNS」が各国でよく使われる情報源であることがわかります。また、アメリカ以外の各国では、「ECサイト」も重要な情報源となっているようです。アメリカでは、能動的に「検索エンジン」で調べる行動が相対的に多くなっています。
また、グラフ全体を見ると、いくつも山があることがわかります。ひとつの商品を購入するにあたっても様々な観点で情報収集し、購入を判断していると考えられます。「自分らしい商品は自分で探す」というような観点が表れているのではないでしょうか。
まとめ
子安:最後に、おさらいとして要点を章ごとに整理します。
◯Gen Zの価値観・人となり
Gen Zは、各国共通して社会課題に対する意識や自分を表現することへの意欲が高いようです。それに加えて、地域ごとの経済環境や文化背景から、異なる価値観の側面も見られます。
◯消費に対する価値観・購買決定要因
Gen Zは、消費行動においても自然環境への配慮や自分らしいブランドであることを重視するようです。特に中国を中心に、ローカル愛も商品選びの価値観の一つとなっていることがわかりました。また、ECサイトの情報、動画を中心としたSNS、検索による情報など、多様な情報を用いて吟味する傾向があります。
今回の調査をマーケティング業務に生かしていただければありがたいです。なお、ヴァリューズでは、海外マーケットについての自主調査・情報発信を行っています。最新の海外情報はマナミナの「海外データ」からご確認いただけます。
https://manamina.valuesccg.com/globaldata
また、「ホワイトペーパー」から自主調査レポートをダウンロードいただけます。
https://manamina.valuesccg.com/whitepaper
現役Z世代による”Z世代の行動データ”分析ラボ Gen-Z調査隊も活動しています。
https://manamina.valuesccg.com/users/77
2025年4月に入社予定の大学4年生。大学ではジャーナリズムのゼミに所属。言葉に触れることが好き。音楽を聴くのも演奏するのも大好き。よりよい文章を綴れるよう日々精進中。