1.生活カレンダーとは
■●全体像イメージ
■●概要
生活カレンダーとは、事業ドメインに関連するターゲットユーザーのイベント・出来事を可視化するアウトプットです。言い換えれば、四半期あるいは半期を通じたターゲットユーザーの生活アルバムを作成するイメージです。
生活カレンダーは消費者視点で作成します。カテゴリーユーザーインタビューから、どのタイミングで事業ドメインや取り扱い商材の話題が発生しているのか、また、実際に行動や消費への意欲が高まる様子を把握していきます。
同じく年間の訴求内容を可視化する成果物には販促カレンダーもあります。しかし、販促カレンダーは事業者視点で作成される傾向が強く、決まり切った事業活動の推進には向きますがアイデア探索の用途にはあまり向きません。
■●種類
生活カレンダーの種類(ページ構成)は以下のようになります。
●1.春/Spring
・4月~6月
●2.夏/Summer
・7月~9月
●3.秋/Autumn
・10月~12月
●4.冬/Winter
・1月~3月
※エピソードの情報量が足りない場合はページを半期で構成し、上期(S/S)と下期(A/W)の2ページで作成する方法もあります。
※本項の例示は四半期ごとのもので作成しています。
■●構成要素
生活カレンダーの構成要素は以下のようになります。
●1.タイムライン
・四半期の各月の名称
●2.シーズンイベント
・季節行事
・業態特有のトレンド
●3.ハッシュタグ
・事業ドメインに関連するハッシュタグ
(シーズンイベントと重なる場合も多い)
●4.ユースケース
・購入商品や利用機能についてのエピソード
・自社プロダクトの利用体験についてまとめる場合と事業ドメイン一般の利用体験についてまとめる場合がある(例示の図表は後者)
●5.ペルソナ
・生活カレンダーの対象となるターゲット層の情報
(ペルソナにしておくとわかりやすい)
■●よくある課題
「ユーザーにプロダクトのことを話題にしてもらうには…?」
⇒この悩みに一枚で答えるためのアウトプット
①キャンペーンの企画内容に変化が乏しいケース
ユーザーリサーチを行うと話題性が豊かなプロダクトと乏しいプロダクトの評価がはっきりと分かれます。話題性に乏しいプロダクトは詰まるところキャンペーン・プロモーションの企画内容に変化が乏しいことがほとんどです。
このケースでは業界で基本となる定番企画を自社として行うだけになっており、変化の表現方法は「販促率」や「提携先」頼みになります。ユーザーを数で捉え、総体的な利用客・購入客とみなしているとこうなってしまいます。
②話題性の創出方法が直接的・単発的なケース
大企業では話題性の創出方法がしばしば直接的・単発的に行われます。代表例はブランドリニューアル、オフラインの広告ジャック、タレントとのタイアップ動画などで、総じて当面の穴を埋める打ち上げ花火的な方法が取られます。
こうした手法を間違えると露出こそ一時的に増えますが訪問は長続きしません。本質的な改善ではないのでユーザーから見て違和感があるからです。もしメディアからの取材時に話すネタが上記の例に偏重していたら要注意傾向です。
2.作り方
①四半期ごとのシーズナル情報を集める
・季節ごとの代表的なイベント情報を収集する
※ユーザーからの情報のみで資料を構成すると、偏りや抜け漏れが発生しやすいので入れておく。
<公開カレンダーからのインプット方法>
Xマーケティング|#モーメントカレンダー
https://marketing.x.com/ja/collections/moment-calendar
note活用ガイド|#創作カレンダー
https://note.com/notemag/m/m6203bff461e2/hashtag/4125450
②ヒアリングをもとにエピソードを選ぶ
・ユーザーインタビューの中から季節ごとに対応するエピソードを選ぶ
・自社プロダクトについての話題はカテゴリーエントリーポイント(認知されやすいキーワード)を意識して選ぶ
<ユーザーリサーチからのインプット方法>
・ユーザーインタビューのユースケース情報
・SNSのUGC(クチコミ)
・日記調査
③エピソードは会話型の文体で記載する
・エピソードはインタビュー時そのままの会話調で書く(思考発話法を活かす)
・ペルソナのボイスアンドトーン(人格を表す口調)があればそれで統一する
3.使い方
①ユーザーにとって大切な年間の出来事を知る
生活カレンダーを作成すると、シーズンイベント・日常の出来事に伴う消費のあり方を理解できます。それを年間通じて見ることでユーザーが購入や利用に至る背景や文脈への理解が深まり、ターゲットの解像度がかなり上がります。
狭義のデータマーケティングでは、極論すると「購入した商品」と「利用した販促」しか見なくなり、こうした定量データ偏重の方法論はプロモーションに変化が乏しくなる要因となります。生活カレンダーで補完していきましょう。
②年間のコミュニケーション戦略を組み立てる
生活カレンダーを参照すると、ユーザー自身のコミュニケーション(社会性)に焦点を当てることができます。各エピソードの中には生活圏で関わる人が登場し、そこで形成されるターゲット層に固有の経済圏が浮かび上がってきます。
分析時(インタビュー実査時)のポイントは、必ずしも利用や購入が起きた箇所にこだわらないことです。特にプロダクトの機能が活用される話は好ましい出来事であり、長期的なコミュニケーション戦略を組み立てるのに役立ちます。
リサーチャー。上智大学文学部新聞学科卒業。新卒で出版社の学研を経て、株式会社マクロミルで月次500問以上を運用する定量調査ディレクター業務に従事。現在は国内有数規模の総合ECサイト・アプリを運営する企業でプロダクト戦略・リサーチ全般を担当する。
デザインとマーケティングを横断するリサーチのトレンドウォッチャーとしてニュースレターの発行を行い、定量・定性の調査実務に精通したリサーチのメンターとして各種リサーチプロジェクトの監修も行う。著書『ユーザーリサーチのすべて』(マイナビ出版)
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