「子供のおもちゃ」という価値観に変化 安心感を求めて高まるぬいぐるみ人気

■おもちゃ市場で注目の「キダルト」
北米やヨーロッパで、大人によるぬいぐるみ人気が高まっています。従来子供向けとされてきたおもちゃを購入する大人は、kidとadultを組み合わせて「kidult(キダルト)」と呼ばれており、現在キダルト市場の成長が期待されています。
市場調査会社Grand View Searchのレポート(※)によると、アメリカにおけるぬいぐるみの市場規模は2023年時点で34億ドル。そして2024年から2030年にかけてさらに毎年6.1%成長し続けると予想されています。
(※)U.S. Stuffed Animals And Plush Toys Market Size, Share & Trends Analysis Report By Product (Stuffed Animals, Cartoon Toys, Action Figures), By Distribution Channel (Online, Offline), And Segment Forecasts, 2024 - 2030
https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/us-stuffed-animals-plush-toys-market-report
■今なぜ、ぬいぐるみが人気?
流行のきっかけは、不安や孤独に悩まされる人が増加しメンタルヘルスへの関心が高まったコロナ禍でした。ぬいぐるみから得られる安心感や心地良さに、子供だけでなく大人も魅力を見出しています。
SNSでの盛り上がりも流行を後押ししました。大人がぬいぐるみに関する投稿をしているのを見ることで、「ぬいぐるみは子供のためのもの」というイメージが変化し、大人がぬいぐるみを愛でることへのハードルが下がってきています。TikTokやInstagramでは、新たに購入したぬいぐるみや、収集したぬいぐるみの紹介をする投稿がたくさんあがっています。単なる癒しとしてだけでなく、集めることやそれをシェアする楽しさも、大人に人気の理由と言えそうです。
SNSで話題のブランド「ジェリーキャット」「スクイッシュマロ」
ここ数年、子供だけでなく大人の間でも人気を伸ばしている代表的なぬいぐるみブランドに、ジェリーキャット(Jellycat)とスクイッシュマロ(Squishmallow)の2つがあります。それぞれのブランドの特徴や人気の背景に注目していきます。
■ジェリーキャット(Jellycat)
ジェリーキャットの代表的なうさぎのぬいぐるみ
ジェリーキャット(Jellycat)は1999年にイギリスのロンドンで誕生したぬいぐるみブランドです。
動物だけでなく、野菜、フルーツ、コーヒーなど、日常で目にするようなアイテムをモチーフとしてラインナップ豊富に販売されていることが特徴です。サイズは小さなものから抱き枕サイズのものまで展開しており、バッグに吊り下げられるチャームタイプのものもあります。ジェリーキャット公式サイトによると、現在は77か国で販売されています(2025年4月時点)。
以前からイギリスで愛されるブランドではあったものの、ここ数年の間、国内外においてさらなる人気に火がついたのはSNSの影響が大きいと言われています。実際に2023年には、前年比で37%収益が上がるという急速な成長が見られました。
SNSでは、ファンによる投稿が盛り上がりを見せています。掲示板型SNSのRedditでは、ジェリーキャットについて投稿するスレッドがあり、約5万3千人ものメンバーが参加しています(2025年4月時点)。新たな購入品や、収集したコレクションの写真をシェアしたり、ジェリーキャットに関する情報交換をしたりする場所となっています。
ジェリーキャット公式によるSNS投稿もファンの心をくすぐる内容となっています。各種SNS(TikTok、X、Instagram、Facebook)が定期的に更新されており、まるで生きているかのようにぬいぐるみが動くアニメーション動画や、共感してほっこりするようなストーリー仕立ての投稿がされています。
ジェリーキャットダイナー(ニューヨーク店)の店内
また、ジェリーキャット店舗での体験がSNSで拡散され話題になりました。ロンドンのフィッシュ&チップスのお店、ニューヨークのダイナー、パリのパティスリーといったように土地によって異なるテーマの店舗を出店しています。店舗では、欲しいぬいぐるみを注文すると、店員が食べ物を調理するかのようなパフォーマンス(パンケーキのぬいぐるみを焼く等)や包装をしてくれる体験型店舗となっています。
■スクイッシュマロ(Squishmallow)
各誕生月のスクイッシュマロ
スクイッシュマロ(Squishmallow)は、2017年に誕生したアメリカのぬいぐるみブランドです。
卵形のぬいぐるみで、それぞれのぬいぐるみに細かく名前やキャラ設定がされていることが特徴です。動物やキャラクター、食べ物などが主なモチーフになっています。サンリオ、ポケモン、ディズニーのようなコラボ商品も数多く展開しています。公式サイトによると、現在では2500種類以上あり、50か国以上で販売されているとのことです(2025年4月時点)。
スクイッシュマロの売り上げが伸びたのも、2020年のパンデミック以降でした。その頃、有名人もスクイッシュマロの写真を投稿し話題を呼びました。過去にはレディー・ガガやキム・カーダシアンがスクイッシュマロのコレクションをInstagramでシェアしています。2022年には市場調査会社NPDがスクイッシュマロを最も売れたおもちゃ(#1 Best Selling Toy)に選定しています。
2023年12月には、米マクドナルドのハッピーセットのおもちゃとしてスクイッシュマロが提供されました。ハッピーセットの箱に印字されたQRコードをスキャンすると、選んだスクイッシュマロのキャラクターをテーマに作られた音楽プレイリストにアクセスできるというものでした。一つ一つのキャラクターの世界観の作り込みに力を入れていることが魅力のぬいぐるみブランドです。
まとめ
今回は、北米やヨーロッパで子供だけでなく大人にも愛され、ここ数年で人気が上昇したぬいぐるみについてご紹介しました。
パンデミックをきっかけに人々がぬいぐるみの安心感や心地良さを求めるようになり、さらにSNSが流行の後押しとなりました。その後もSNS上のファン同士の交流や、公式アカウントの投稿を楽しむ形が続いています。
英ぬいぐるみブランド「ジェリーキャット」は、公式アカウントによるストーリー仕立ての投稿や、体験型店舗がSNS上で話題となりました。一方、米ぬいぐるみブランド「スクイッシュマロ」は、それぞれのキャラクターの世界観作りや、キャラクターや企業との積極的なコラボによってファンを増やし続けています。
大人を新たなターゲットとして、ますます注目を集め魅力を増していくぬいぐるみの今後が楽しみです。
【参考】
https://nypost.com/2025/01/14/lifestyle/gen-z-dont-care-if-you-think-its-dumb-they-carry-stuffed-animals-around/
https://finance.yahoo.com/news/jellycat-250-million-rise-perfect-170600064.html?guccounter=1
https://blog.withdipp.com/en/jellycat-hits-a-record-high-revenue-growth-the-emotional-resonance-brand-strategy-is-the-key
https://eu.jellycat.com/our-story?_gl=1*18t03c0*_up*MQ..&gclid=CjwKCAiA1-6sBhAoEiwArqlGPuTgy4PPUwBo76bcDi9dbtcAKbtbWoTQlcF41oYDtPTaUUkCitZ2iBoCxckQAvD_BwE
https://find-and-update.company-information.service.gov.uk/company/03591414/filing-history
https://www.reddit.com/r/Jellycatplush/?rdt=63147
https://www.today.com/food/restaurants/mcdonalds-squishmallows-happy-meal-rcna130455
https://shop.jazwares.com/pages/about-squishmallows
大学ではポルトガル語と言語学を学び、常に様々な外国文化や言語に興味がありました。
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趣味は、海外エンタメ情報の追っかけとおうちでラテアート修行をすることです。