ショッピングよりも体験重視!中国の若者の間で広がる「経験経済」とは

ショッピングよりも体験重視!中国の若者の間で広がる「経験経済」とは

コロナ禍以降、中国における消費スタイルは理性的になったと言われています。ここ数十年の消費パターンは商品の購入によってニーズを満たすものでしたが、近年の若者は独特な消費体験をもたらす製品やサービスを選ぶようになりました。このような状況において成長しているのが「経験経済」です。この「経験経済」は農業、工業、サービスに続く第四の経済形態とされており、人々の需要は表面的な満足ではなく「実際的な価値」を得られるものに向いています。この記事では、人々が「実際的な価値」を得るにあたってどのような体験を楽しんでいるのかを紹介します。


「経験経済」のキーワードは「没入型」

「経験経済」においては、消費者が「現実からの逃避」によって積極的に「沉浸式(没入型)」体験を選択するという特徴が挙げられます。社会の急速な発展によって人々の生活は慌ただしくなり、その影響で生活の場面、例えば職場などで重いストレスが伴うようになりました。《2025年情绪消费研究报告》によると、回答者の86.5%が「仕事上でストレスを感じる」と答えており、さらにそのうちの5割以上が「ストレスがとても大きい」と感じているといいます。このような社会状況において、辛い現実から離れ、日々のストレスを忘れて没入できる「没入型」消費体験の人気が高まっています。

この「没入型」の消費は日々の生活から離れた非日常的な性質を持つことから、主に休暇中のリフレッシュや旅行の際の体験として楽しまれることが多くなっています。近年では旅行産業においても、消費者のニーズは個性化したものに変化しています。今や簡単な観光では彼らのニーズに完全に応えることはできず、さらに具体性や深みのある体験型の旅行プランが好まれるようになりました。特に若者の間では「没入型」旅行が流行しています。彼らはただ観光地を巡るだけではなく、現地の文化活動に参加して自分自身で体験をすることに重きを置いています。
また近年ではデジタル技術の著しい発展に後押しされて、AR (拡張現実) やVR(仮想現実)を取り入れた体験が可能になり、「没入型」の広がりに拍車がかかっています。

以下では、各旅行シーズンにおいて楽しまれた「没入型」体験を紹介します。

春節と夜景上映

2025年の春節期間、中国国内の旅行市場は順調に成長を続けました。国内の旅行者は前年同期比5.9%増加の5.01億人に及び、国内旅行の消費総額は前年同期比7.0%増加の6770.02億元となりました。
この春節期間においては、デジタル技術の力を借りた夜間イベントの没入型体験が多くの観光客の人気を得ました。南京夫子廟・秦淮風光帯では、ライティング技術を運用した没入型の夜間観光が行われました。観光客はARでのガイドによって秦淮河の歴史文化に触れることができ、伝統文化と現代科学技術の融合が表現されました。
また開封清明上河図観光地で行われた「大宋上元灯会」では、ホログラム投影技術によって宋代の華やかな景色が再現され、春節期間で最も人気の文化観光プロジェクトの一つとなりました。結果、2025年の春節期間、開封清明上河図観光地を訪れた観光客は延べ83.29万人に達しました。

清明節と花見体験

2025年の清明節では、「賞花(花見)」体験が人気となりました。オンライン旅行予約サイトでは、清明節期間の「花見」関連検索数が前年同期比220%増加となり、SNS上においても「随手拍春天(何気なく撮った春)」「花見攻略」といったトピックへの注目度が高く、REDでは「花見」トピックの閲覧数が3.6億を突破しました。
さらなる「経験経済」の発展に伴い、「花見+グルメ」、「花見+科学技術」、「花見+無形文化」といった新たな没入型消費体験も生み出されています。
大手旅行予約サイト・美団旅行のデータによると、花見関連の検索では「グルメ」「無形文化」の他に「低空飛行」という関連検索が多くなっています。これはヘリコプターに乗って花見ができるという没入型体験です。2025年3月、同サイトにおける「低空花見」「低空飛行」の検索量は前年同期比645%の増加となりました。

「RED」より「低空花見」の検索結果

五一と文化体験

2025年の「五一(GW)」期間では、国潮文化体験を組み込んだ旅行プランが勢いを見せました。抖音ライフサービスデータによると、五一期間前の二週間、無形文化関連のショート動画の再生数が29億回を超え、抖音では無形文化体験に関連した団体購入注文数が激増し、「漢服・国風服飾体験」が662%、「茶芸」が166%、「打鉄花(千年の花火)」が137%、「博物館」が41%などの伸びが見られました。

以下では「漢服」「博物館」について紹介します。

博物館でのAR鑑賞

各地の博物館ではデジタル技術が採用されており、文化財のハイビジョンスキャンや3D模型作成が進められると同時に、AR/VR技術を使った展示によって文化財の細部を観賞可能にしたり、古代の風景を投影して文化財の背景知識を感じられるようにしたりする工夫が成されています。
例えば西安秦始皇陵博物院では、来館者がARグラスを装着することによって「復活した兵馬俑」との対話ができる体験が提供されました。このプロジェクトは人気を博し、当該観光地の五一期間における収入は前年同期比210%の増加となりました。

「RED」より「復活した兵馬俑」のプロジェクト検索結果

さらに成長する漢服ブーム

上記データで特に伸びが見られた漢服ですが、 iiMedia Researchの《2025年中国汉服产业消费行为调查数据(2025年中国漢服産業消費行為調査データ)》によると、漢服を着用したことがある人のうち約62%が「漢服体験ができる店に行った」となっており、没入型消費体験として楽しむ人が多いことがわかります。
Z世代の間ではこの五一期間に漢服を着て観光スポットに行くことが一種のスタンダードとなり、同時に各地では古代の文化をモチーフとしたイベントが行われました。さらに漢中市の多くの観光スポットでは「漢服着用で入場料無料」という政策が推進され、その影響によって来訪者数が40%増加との結果になりました。

まとめ

この記事では、経験経済の中で人々が楽しむさまざまな没入型体験を紹介しました。
デジタル技術を駆使した演出や歴史文化の体験など、多種多様な分野で展開される没入型体験は人々の個性化したニーズを満たしています。さらに成長が見込まれる経験経済について、今後の大型休暇で新たにどのようなトレンドが生まれるか期待されます。

参考URL

2025六大消费趋势正在涌现
https://news.sohu.com/a/874924528_121124731
2025年消费市场新趋势:年轻人引领的“体验经济”崛起
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1820733389055741843&wfr=spider&for=pc
2025「情绪消费」爆火:是消费升级,还是智商税?
https://m.baidu.com/bh/m/detail/ar_9749084662418413428
文旅观察|文旅沉浸式焕新,怎能少了数字化?
https://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_30237161
“赏花经济”焕新,跨界融合让人们为“体验”买单
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1829253843813226054&wfr=spider&for=pc
“五一”国潮趋热,汉服、国风服饰体验受捧
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1830349782305028163&wfr=spider&for=pc
从五一旅游热潮看经济韧性:消费分层体验经济与政策红利的共赢
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1831364238794989989&wfr=spider&for=pc
艾媒资讯|2025年中国汉服产业消费行为调查数据
https://www.iimedia.cn/c400/105618.html
五一假期消费与旅游复苏:文旅创新与汉服打卡引领新风尚
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1831339748042850326&wfr=spider&for=pc

この記事のライター

早稲田大学在学中。

関連する投稿


リアルなモニタリング!中国市場Web調査ツール「ValueQIC」日記調査機能のご紹介【第6回】

リアルなモニタリング!中国市場Web調査ツール「ValueQIC」日記調査機能のご紹介【第6回】

トレンドの変化が速い、と言われている中国市場。「最近、中国市場の変化が掴めない。言語の壁もあり、中国人生活者の生活実態がよくわからない。」という声も多く耳にします。Web調査ツール「ValueQIC(ヴァリュークイック)」なら、日記形式の調査を通じて、最大14日間分のモニタリング結果をご提供することが可能です。第6回は、日記調査機能の特徴を事例とともにご紹介します。


エスビー食品、中国挑戦の鍵は「生の声」。スピーディーな調査を叶えたValueQIC活用術

エスビー食品、中国挑戦の鍵は「生の声」。スピーディーな調査を叶えたValueQIC活用術

エスビー食品株式会社は、「S&Bブランドの世界定番化」をミッションに事業を展開しています。ヴァリューズが伴走支援に携わっているのは、レトルトカレーの中国市場への進出。中国人消費者の声を集める「ValueQIC」を活用し、現地の「生の声」を具体的な販売戦略へと落とし込んでいます。本記事では、同社の馬 嘉貝氏に取り組みの全容をうかがいました。


日本の「サンド」が世界進出! 訪日客とSNSが広げた新たな食文化 | 海外トレンドに見るビジネスの種(2026年1月)

日本の「サンド」が世界進出! 訪日客とSNSが広げた新たな食文化 | 海外トレンドに見るビジネスの種(2026年1月)

海外からやってくるトレンドが多い中、現地メディアの記事に日々目を通すのはなかなか難しいもの。そこでマナミナでは、海外メディアの情報をもとに世界のトレンドをピックアップしてご紹介します。今回は、たまごサンドやフルーツサンドといった日本発サンドイッチの世界的人気について取り上げます。訪日外国人の「コンビニグルメ」人気から火がつき、今や「Sando」という新ジャンルとして欧米で独自の進化を遂げています。大手チェーンでの販売も始まった、そのヒットの背景と今後の可能性を解説します。


インド人の生活実態調査レポート|世帯年収別で見る消費実態と価値観

インド人の生活実態調査レポート|世帯年収別で見る消費実態と価値観

2023年に人口が世界1位となったインドは、近年巨大市場として注目されています。しかしながら、14億人強が居住するインドは独自の文化や社会構造があり、それらが複雑多岐であることから、マーケティングが難しい国の一つでもあります。そこで今回はアンケートリサーチを用い、インドの消費者について、主に世帯年収別に基礎情報や消費実態を明らかにしました。※本レポートは記事末尾のフォームから無料でダウンロードいただけます。


より早いスピード感xリアル感!中国市場Web調査ツール「ValueQIC」写真調査機能のご紹介【第5回】

より早いスピード感xリアル感!中国市場Web調査ツール「ValueQIC」写真調査機能のご紹介【第5回】

トレンドの変化が速い、と言われている中国市場。「最近、中国市場の変化が掴めない。言語の壁もあり、中国人生活者の考え方がよくわからない。」という声も多く耳にします。従来の調査には1ヶ月以上の時間が必要ですが、Web調査ツール「ValueQIC(ヴァリュークイック)」なら、定量調査に加え、写真や動画を介して、迅速に、中国人の実態調査を実施することが可能です。第5回は、写真調査機能の特徴を事例とともにご紹介します。


最新の投稿


スマートフォン時代になぜ「チェキ」は選ばれ続ける?顧客起点の富士フイルムの変革

スマートフォン時代になぜ「チェキ」は選ばれ続ける?顧客起点の富士フイルムの変革

スマートフォンの普及により、かつて「記録」の代名詞だった写真は、無料で楽しめるものへと激変した。それに伴い、主力だったプリント事業が厳しい局面を迎えた富士フイルムだが、昨今は「チェキ」をはじめ、こだわりを持つ若い層を中心に支持が広がり、売上を伸ばしている。この復活の裏側には、これまでの「きれい·早い·安い」という常識を捨て去る、写真価値の再定義があった。データマーケティング支援を行うヴァリューズの辻本秀幸社長(元マクロミル代表)が、富士フイルムイメージングシステムズ 代表取締役社長の松本考司氏に話を聞いた。


クレジットカードの平均保有枚数は2.84枚 入会のきっかけは「年会費が無料」がトップ【クロス・マーケティング調査】

クレジットカードの平均保有枚数は2.84枚 入会のきっかけは「年会費が無料」がトップ【クロス・マーケティング調査】

株式会社クロス・マーケティングは、全国20歳~69歳の男女を対象に「クレジットカードに関する調査(2026年)」を実施し、結果を公開しました。


クレジットカードは作成前と利用後で評価が変化?カード選定基準と後悔から見えた利用実態【フォーイット調査】

クレジットカードは作成前と利用後で評価が変化?カード選定基準と後悔から見えた利用実態【フォーイット調査】

株式会社フォーイットは、同社が運営するWeb3メディア「Mediverse(メディバース)」にて、全国18歳以上の男女を対象に『クレジットカードに関するアンケート』を実施し、結果を公開しました


YouTubeがきっかけで商品を購入した経験のある人は43.3%、女性若年層では5割超【エクスクリエ調査】

YouTubeがきっかけで商品を購入した経験のある人は43.3%、女性若年層では5割超【エクスクリエ調査】

株式会社エクスクリエは、全国15歳~69歳男女(1,200人)を対象に「YouTubeにおける購買行動調査(2026年)」を実施し、結果を公開しました。


顧客の声を「戦略」に落とし込む。富士フイルムが選んだ、ヴァリューズのAIインタビュー×伴走支援

顧客の声を「戦略」に落とし込む。富士フイルムが選んだ、ヴァリューズのAIインタビュー×伴走支援

スマートフォンの台頭で変化するデジタルカメラ市場において、富士フイルムは「GFX」「Xシリーズ」のラインアップを展開。フィルム製造の長い歴史から培ってきた色再現の技術や、独自の設計哲学でファンを獲得しています。今後の事業展開を検討するにあたり、ファン心理をより深く理解するため、ヴァリューズのアンケートとWeb行動ログ調査、そして生成AIによるインタビューを活用したリサーチプラットフォーム「NautsHub」を導入。調査から得た知見と今後の戦略について、国内デジタルカメラ販売を担当する高梨氏に伺いました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ