新概念バタフライ・サーキットで捉えるデジタル時代の購買検討行動とは?|宣伝会議主催セミナーレポート

新概念バタフライ・サーキットで捉えるデジタル時代の購買検討行動とは?|宣伝会議主催セミナーレポート

「一人1デバイス」が当たり前となったデジタル時代。今、マーケティングにおける購買行動のセオリーが変わりつつあります。デジタル化によって何がどう変わったのか。私たちを取り巻く膨大な情報により変化した購買検討行動。それらを新しい概念で紐解こうと共同研究された「バタフライ・サーキット」が、宣伝会議主催のデータマーケティングカンファレンス2020で紹介されました。


消費行動の「刹那化」とは?

消費行動を分析するセオリーの代表格であるAIDMAやAISAS。
「はたして本当に人はAIDMA通りに動いているのか?実は最近、そうではないのではないかという話があります。」と問題提起からセミナーはスタート。

株式会社ヴァリューズ 執行役員 子安 亜紀子(こやす・あきこ)

株式会社ヴァリューズ 執行役員 子安 亜紀子(こやす・あきこ)

慶應義塾大学 環境情報学部卒。システムエンジニア・Webコンサルタントを経て、
株式会社マクロミルに入社。マクロミルのベンチャー時代から、商品開発、事業企画、営業企画などを手掛ける。2011年よりヴァリューズに参画。執行役員として、事業企画やマーケティング部門の統括などを担当。

子安:「検討行動は、例えば右のようなジグザグを描いていた途端、突然AIDMAが発生して購買につながることが、最近多く見受けられます。おそらくこの10年くらいの変化なのではないかと推測しています。」

SNSなどで日常的に多くの情報を受信し、気になるものがあれば自身のタイミングで自発的に検索する。商品を検討する時間の流れやプロセスというものが、左に描かれている従来の階段式なAIDMAの形状から変わってきているのではないか。消費行動がより瞬間的、刹那的になっているのではないか、と子安は続けます。

図:消費行動の刹那化

図:消費行動の刹那化

情報検索行動と「バタフライ・サーキット」

こういった行動の変化の背景としては、現代のデジタル化・スマホ化が大きく影響していると考えられるとのこと。

子安:「この10年程で、「フィルターバブル」のような、誰もが多くの情報に自由にリーチできているように見えて、実はその情報は個々にカスタマイズされ、自分に心地良い情報だけが届くような情報環境に変わってきているのではないかという仮説があります。そしてそのように操作された情報の中で、受動的に情報を受け取りながらも、時に気になった事を突如検索する。そういった検索行動が最近増えているのではないかと推測されます。」

そこで紹介されたのが「バタフライ・サーキット」

子安:「Google社が毎年、検索行動を軸にした人の動きの変化について研究発表されるのですが、これは昨年秋にGoogle社、博報堂社とヴァリューズの三社で行った共同研究の結果です。ヴァリューズが保有するモニターパネルのパソコン、スマホでのネット行動を分析することで、購買行動のリアルな姿が見えてきました。」

図:バタフライ・サーキット

図:バタフライ・サーキット

子安:「「バタフライ・サーキット」のイメージとしては、左側が新しい情報を検索する「さぐる」ための動き、右側が「これでいいのかな?」という「かためる」ための動き
この「さぐる」と「かためる」がグルグルまわり描く円がちょうど蝶々のように見えることから、バタフライ型のサーキットを巡って購買を決めていく「バタフライ・サーキット」と名付けられました。」

「バタフライ・サーキット」における8つの動機とは?

図:情報検索の8つの動機

図:情報検索の8つの動機

この「バタフライ・サーキット」での検索内容を分類すると、は8つの検索動機に分けられます。これらは大量のユーザーの購買行動データを読み込んだ結果、ほぼこの8個のどれかに検索行動が集約された裏付けから成り立っています。

この検索動機について、旅行検討の具体例を用い、ヴァリューズでデータアナリストを務める灰谷が購買者の心理変化を説明しました。

株式会社ヴァリューズ ソリューション局 アシスタントマネジャー データアナリスト 灰谷 圭史(はいたに・よしふみ)

株式会社ヴァリューズ ソリューション局 アシスタントマネジャー データアナリスト 灰谷 圭史(はいたに・よしふみ)

京都大学教育学部卒業。ヴァリューズに入社後は、ネット行動ログ分析とアンケート調査を掛け合わせた独自のマーケティング分析手法を駆使し、大手日用品メーカーや新聞社、大手広告代理店など多様な業種のクライアントに施策提言をおこなう。2020年には、個人売上目標150%達成やGoogle社との共同プロジェクトを推進した実績を評価され、ヴァリューズMVPを受賞。現在はヴァリューズの国内案件を多数担当しながら、新たな分析パッケージの開発などにも取り組んでいる。

灰谷:「実際の旅行商品検討行動の一例ですが、一方に盛り上がるばかりではなく、「盛り上がる」・「落ち着く」と、グルグル両方に動いているのを繰り返して検討行動が進んでいくというところに「バタフライ・サーキット」の特徴が見えました。」

挙げられたサンプルの検索行動でも、初期検討から「海外旅行」といった漠然としたキーワード検索ではなく、「ニューヨーク 安い 時期」と具体的な検索行動が見られたそう。

子安:「行動とは、通常「抽象」から「具体」に移ってゆくのですが、この例を見ても最初から「ニューヨーク」と具体的検索を行っており、やはり実際の検索行動は段階的なAIDMAのような時間軸とは異なる、ということがわかります。」

この後、実に「バタフライ・サーキット」的だと灰谷が指摘したのは、「具体的な検索」から突然「海外旅行 一人旅」といった「抽象的な検索」に戻った動き。そして、「ニューヨーク旅行」の購入直前に、本来の目的とは全く違う「ヨーロッパ」という検索をしている動きだと言います。

灰谷:「これらは、あえて「抽象的な検索」や「ヨーロッパ」を検索することで、やはり自分には「ニューヨーク」に行く選択が正しいのではないかという、「ニューヨーク」行きを決定する自分を正当化するために裏付ける検索をしているという解釈に落ち着きました。
まさに「バタフライ・サーキット」にある「答え合わせさせて」という検索動機と一致した行動と推測します。」

図:検索モチベーションのグラフ

図:検索モチベーションのグラフ

まずは今のユーザーの動きを理解する事が大切

「デジタル時代の購買行動はどうしても瞬間的に「パン!」と購入するような事象が起こりやすい。その背景には、デジタル社会ならではの検索行動の変化があります。このようなユーザーの動きが変化しているということをご理解頂くというのがまず1つ目のポイント。
2つ目は、自社のプロダクト購入プロセスにおける「バタフライ・サーキット」を理解することが重要
です。」と子安はまとめました。

実際に自社の商品を購入する人が、「さぐる」プロセスで何を探っているのか、「かためる」プロセスで何を悩んでいるのかを理解していくと、購入の瞬間を予測出来たり、購買の可能性が上がるキーワードなどをきちんと掴む事が出来ると考えられると言います。

子安:「どうやって「バタフライ・サーキット」を解釈するのか、ヴァリューズ社のデータを使って頂くのもありますし、また、インタビューや仮説を立ててをやってみるというのも良いと思います。まずはこういったユーザーの行動理解を進めていくと、デジタルマーケティングやUXのデザインなどにもご活用頂けるのではないかと思っております。」

図:2つのポイント

図:2つのポイント

消費者行動の変化をとらえる分析ツール「story bank」を開発

「バタフライ・サーキット」の有効性を説いてきましたが、同様にマーケティングにおいて、瞬間的なニーズの高まりを的確に捉える重要性が高まっている中で、ヴァリューズ社では、大量の行動ログデータから消費者ニーズや購買意識の移り変わりを捉え、モーメントの分析ができる「story bank」を開発しました
ツール上では特定アクションを任意に設定し、前後のWeb行動を可視化することで、消費者ニーズの変化やトリガーとなった要因を分析することができます。

サービス名の「story」は、消費者がサービスを検討・購入する背景にはそれぞれ異なるきっかけやストーリーがあることを意味し、「bank」は、そうしたストーリーが詰まっているデータベースを表しています。これらのデータがさらに現代の行動動機への深いアプローチを可能にするのではないでしょうか。

子安:「検索行動とは、人の興味関心やストーリー、背景などが綺麗に現れます。「story bank」のようなツールを使って分析しながら、自社商品や自社テーマの背景でユーザーが何を思っているかなど、ユーザー理解にもおおいに役立てると思います。」

図:「story bank」のご紹介

図:「story bank」のご紹介

「story bank」の利用方法について

ご利用期間やアカウント数に応じて料金プランを各種用意しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

資料請求はこちら

関連記事

ビッグデータを活用したデータマーケティング事例

https://manamina.valuesccg.com/articles/588

データに基づきキャンペーンを最適化したり、パーソナライズしたりするデータマーケティング。従来の属性データに加え、ネットの購買行動などの行動データが取れるようになったことで企業が使えるデータ量は爆発的に増加しています。大量かつ複雑なデータ=ビッグデータを活用するデータマーケティングとその事例をご紹介します。

ネット行動からみるデジタル時代のコンシューマ変化とは…「戦略的ブランドコミュニケーションフォーラム2020」レポート

https://manamina.valuesccg.com/articles/783

デジタル化・スマホシフト時代の今、言うまでもなくコンシューマーを取り巻く情報の波にも大きな変化があらわれています。そんな中、コンシューマーの行動にはどのような変化が起きているのでしょうか。2月20日に開催された「戦略的ブランドコミュニケーションフォーラム2020」にて、株式会社ヴァリューズは今までの分析実績をもとに、デジタル時代のコンシューマーを取り巻く2つのトレンドとアプローチ方法について紹介しました。

この記事のライター

マナミナ 編集部 編集兼ライター。
金融・通信・メディア業界を経てマーケティング・リサーチ業界へ。
趣味は食と旅行。

関連する投稿


【2023年2月13日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

【2023年2月13日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

編集部がピックアップしたマーケティングセミナー・勉強会・イベントを一覧化してお届けします。


【2023年2月6日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

【2023年2月6日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

編集部がピックアップしたマーケティングセミナー・勉強会・イベントを一覧化してお届けします。


中国人男性の消費意識を掴む。「中国人の消費意識に関するクラスター分析(男性編)」レポート

中国人男性の消費意識を掴む。「中国人の消費意識に関するクラスター分析(男性編)」レポート

世界的にもトップ規模を誇る中国市場。その市場を構成する中国人消費者は、どのような趣向や関心を抱き、どのような環境で生活しているのでしょうか。中国人消費者の購買意欲を捉えるためには、消費背景にある意識、環境特性などを的確に把握することが必要不可欠です。本レポートでは中国人男性にフォーカスし、5つの特徴的なクラスターに分類。それぞれの特性について分析しました。(ページ数|59ページ)


【2023年1月30日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

【2023年1月30日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

編集部がピックアップしたマーケティングセミナー・勉強会・イベントを一覧化してお届けします。


【2022年1月23日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

【2022年1月23日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

編集部がピックアップしたマーケティングセミナー・勉強会・イベントを一覧化してお届けします。


最新の投稿


トレンドワードに「AIアバター」「ライブカメラ」など...「週間」検索キーワードランキング(2023/1/22~2023/1/28)

トレンドワードに「AIアバター」「ライブカメラ」など...「週間」検索キーワードランキング(2023/1/22~2023/1/28)

行動ログをもとに週次の検索急上昇ワードランキングを作成し、トレンドになっているワードについて取り上げます。2023年1月22日~1月28日は、カメラアプリ「SNOW」の新機能「AIアバター」や、日本列島が大寒波に見舞われる中、各地の道路状況を確認できる「ライブカメラ」といった検索が急増していました。


【2023年2月13日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

【2023年2月13日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

編集部がピックアップしたマーケティングセミナー・勉強会・イベントを一覧化してお届けします。


2023年、世界情勢の憂慮 〜「地政学」から見た対中関係と日本企業のこれから

2023年、世界情勢の憂慮 〜「地政学」から見た対中関係と日本企業のこれから

世界を震撼させたウクライナ侵攻や、まだ出口の見えないコロナ禍もそのままに明けた2023年。本稿では、2022年を振り返り、引き続き憂慮される国際社会の動向や、日本にとって特に注視すべき対中関係とそれらに準ずる日本企業のあり方を、大学研究者としてだけでなく、セキュリティコンサルティング会社アドバイザーとして地政学リスク分野で企業へ助言を行っている和田大樹氏が解説します。


D2Cとは?ECとの使い分け・ブランドへの意識など、消費者の利用実態を調査|ホワイトペーパー

D2Cとは?ECとの使い分け・ブランドへの意識など、消費者の利用実態を調査|ホワイトペーパー

2020年はコロナ禍における巣ごもり消費も追い風となり、物販分野のBtoC EC市場は、伸長率20%超えという大幅な拡大が見られました。そんな中、メーカーが新たに注力を始めているのがD2C。D2Cとは「Direct to Consumer」の略であり、メーカーが商品を直接消費者に販売するビジネスを指します。今回は特に化粧品・家電業界に注目し、ECと比べた際のD2Cの使われ方や使い手について、その実態を調査しました。(ページ数|29ページ)


【急上昇サイト】年末やクリスマスなど、シーズナルなコンテンツに検索が急増!|2022年12月

【急上昇サイト】年末やクリスマスなど、シーズナルなコンテンツに検索が急増!|2022年12月

2022年12月にユーザー数を伸ばしたWebサイトは? SaaS型のWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を使うと、どんな人がどんなWebサイトを見ているのか、いろいろな切り口で簡単に調べることができます。訪問ユーザー数の前月比が急上昇したWebサイトを調査しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら