セミナー概要
●サブスク市場の動向について
●動画配信サービスのコロナ前後の変化
図:スピーカー紹介
現在のサブスクリプション市場の動向について
中尾は、現在のサブスクリプション市場の動向の概況を捉えるため、株式会社ICT総研による「2020年サブスクリプションの市場動向調査」のグラフを用いて解説を始めました。
中尾:「すでに認知度も上がってきたサブスクリプションですが、2019年のサブスク市場は1.1兆円、2023年には1.4兆円の見込みと今後も市場は拡大し、特にデジタル系の伸び率が高く見られます。
これは、今までの「所有」という消費形態が「利用」「体験」へと変化が加速しているのではと考えられます。」
図:サブスク市場の成長
続いては、ヴァリューズ保有データを元に「サブスク」をキーワードにした検索量を調査。
2018年8月から、2020年7月までの「サブスク」へ関心度の変化を紹介しました。
注目すべきは2019年9月からの急伸長。そして2020年3月には120万人を超える検索者数となっています。
中尾:「2018年8月からの1年間の検索者数はおよそ100万人。2019年8月からの同じく1年間の検索者数は約460万人。年間比で4.6倍と、多くの人々が「サブスク」に関心を持つようになったことがわかります。」
図:サブスクへの関心の増加
次に、実際の2020年3月~7月の検索者の特徴を追っていきます。
このデータによると、「サブスク」検索者は、男性・20~30代が多くみられました。
また、可処分所得5万円以上、世帯年収700万円以上の比率が高いなど、ネット人口全体よりも比較的お金にゆとりがあるユーザーが多いと推察されました。
図:「サブスク」検索対象者の特徴
「サブスク」と一口に言っても、「デジタルコンテンツ」だけではなく、「花」、「高級腕時計」といったものまで様々な種類のサブスクのサービスが増えている中、直近では「トヨタ」や「パナソニック」と言った大手企業も参入してきており、それも特徴的だと中尾は続けます。
以下はそういった様々な「サブスクリプションサービス」を8つのジャンルに分け、2020年2月から2020年7月の、各業界の「サブスク」のアプリ利用者及びサイト訪問者数の伸長を表したグラフです。
中尾:「このコロナ期において、お花や美容系のジャンルの伸長率が高く、また動画配信や音楽配信などエンタメ系のジャンルも堅実に伸びている一方で、自動車や飲食は一時ユーザーが減少しました。
これらは、コロナ禍によって外出できないという環境により、浮いた時間を屋内で楽しめるサービスのニーズが増えた結果と考えられます。」
図:ジャンル別サブスクサービスの変化
動画配信サービスのコロナ前後の変化
それでは「サブスクリプションサービス」の中から、「動画配信サービス」にフォーカスします。
まず中尾が示したグラフは、2020年3月以降に接触したメディアの割合を集計したものです。
コロナを機にライフスタイルがどのように変化したかが見受けられます。
接触時間が増えた、あるいは、やや増えたと答えたカテゴリとして注目すべき変化があったのは、テレビ、インターネット。
中でもインターネットPC:45.5%、スマホ・タブレット:64.1%という結果からも「インターネット」への接触機会が急増していることがわかります。
図:デジタルデバイスへの接触量変化
増加したインターネットメディアへの接点。それらの中で、特に何に興味を持ったか深掘りしていきます。
下記は「コロナを機に興味を持ったことは?」というアンケート調査の結果です。
無料動画配信サービス(16%)、有料動画配信サービス(10%)など、動画配信サービスに興味を持った人が増えていることがわかります。
図:コロナ禍で興味を持ったこと
「動画配信サービス」の興味が増加していることに加えて、実際にどのように余暇を過ごしているかという調査結果も見ていきます。
新型コロナ影響拡大後に増えた休日・余暇の過ごし方として、第3位に「動画配信サービスでの動画鑑賞」がランクインしています。
コロナ拡大前と比べても+7.3%pt増。検索や興味といった段階でなく、実際に生活に取り込まれていることもわかりました。
図:休日・余暇の過ごし方の違い
次に、アプリ起動実態を見てみます。
Amazonプライム・ビデオ、Netflix、Hulu、U-NEXT、Paraviの5サービスに絞って調査した結果を用いて解説。
中尾:「Amazonプライム・ビデオは、プライム会員者が副次的に見ていることも考えられるので、そもそも圧倒的にボリュームがあると思われます。
伸長率を見ると、2020年3月頃を境に各アプリともにユーザー数を増加させているのがわかります。それ以降もAmazonプライム・ビデオやNetflixは、右肩上がりの増加傾向にあることがわかります。」
図:動画配信サービスのアクティブユーザー数
続いて、各動画配信サービス利用者のうち、2020年以前の利用者と2020年3月以降のユーザーの、月間のアプリ起動日数を集計したグラフを用い、コロナ前後のアプリ起動に、どのような差が生じるのか中尾は解説しました。
中尾:「10日未満をライト、10日以上20日未満をミドル、20日以上をヘビーと位置付けたとします。ここで注目すべきは、ヘビー層の変化です。各アプリ、コロナ前と比較して、ヘビー層の利用者が増加しています。また、U-NEXTは他社と異なり、ヘビー層だけでなくライト層の比率が高まっている点も興味深いポイントになります。こういったことからも、コロナ禍の生活様式の変化で、視聴の時間が伸びた事、各社のアプリの使われ方の変化がうかがえるでしょう。」
図:コロナ前後のアプリ起動者の変化
利用が急増した「動画配信サービス」。コロナ禍が大きな要因の一つであると考えられますが、もう一つの要因として、強力コンテンツの存在を中尾は示唆しました。
そこで、ユーザーが急増するタイミングと強力コンテンツとはどういった関係性が現れるか、といった調査を実施。
前述で用いた「動画配信サービスのアクティブユーザー数」のグラフに、話題となった強力コンテンツの配信時期を重ねて、ユーザー数の推移の動きを比較してみました。
すると、話題になった「全裸監督」、「愛の不時着」、「Nizi Project」といった強力コンテンツがユーザー数の増加を後押ししていることがグラフから推測できました。
中尾:「やはり話題になった強力コンテンツが、一定の集客の効果を持つことが分かるのではないかと思います。」
図:動画配信サービス 話題コンテンツの影響
引き続き、「愛の不時着」、「Nizi Project」の2作品に絞ってコンテンツの検索者像を深掘りしてゆきます。
属性としては女性が多く目立ちます。年代層としては、若年層よりに「Nizi Project」、中高年層よりに「愛の不時着」の検索行動がみられました。
中尾:「両者ともに、ユーザー数、セッション数の伸長時期は配信直後よりも二ヶ月後から急増しているのは、クチコミなどの拡散のタイムラグと考えられます。」
図:コンテンツへの関心の高まり
まとめ
今回の行動ログ調査では、コロナ禍においてインターネットというメディアへの積極的な接触増加や、余暇の過ごし方の一つとして、「動画配信サービス」への関心の高まりが判明しました。
そのようなネットとサービスのこれからの市場・顧客開拓について、中尾はこうまとめました。
中尾:「コロナ禍により、行動の自粛や範囲が狭まるなどして、今までネットでは活動していなかったリアルで動いていたユーザーも、ネットに入り込んできていると言えます。
それは市場・顧客開拓という面で言うと、今まではネットでリーチがしにくかった層も、コロナによりネットへ接触する機会が増加することになり、裾野が広がっていると考えられます。そうした際に、自社や商品の強みがターゲットとなる層を再定義し、ターゲットのネット行動を丁寧に考察し入念な仮説を構築していくことで、今は新たな市場・顧客を開拓するチャンスになり得ると考えます。」
図:本日のまとめ
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マナミナ 編集部 編集兼ライター。
金融・通信・メディア業界を経て現職。
趣味は食と旅行。