BTSのアーリーアダプターとマジョリティの違いを検索データで分析!NiziUとの比較も

BTSのアーリーアダプターとマジョリティの違いを検索データで分析!NiziUとの比較も

2020年の第63回グラミー賞の候補にノミネートされるなど、今や破竹の勢いで世界に進出する韓国発の7人組男性ヒップホップアイドルグループ「BTS」。本記事ではそんな「BTS」を検索するユーザーの変化を分析します。比較的初期から「BTS」ワードを検索していたアーリーアダプター層と、最近の世界的人気を受けて検索行動を行うマジョリティ層には、どのような違いがあるのでしょうか。


BTSは2013年にデビューした韓国発の世界的アイドルグループです。2020年8月にリリースされたシングル「Dynamite」は米国ビルボードで初登場1位という快挙を果たし、グラミー賞の候補にもノミネート。世界的な人気を確固たるものとしました。

BTSを含む韓流ブームは当初、日本を含めた東アジアで起こりましたが、現在では世界最大のコンテンツ市場である米国にも波及しています。韓国のエンターテインメント業界は、外貨獲得の手段として国際市場を意識してきた背景があり、その戦略が結実していると言えるでしょう。

また、2020年には日本で結成された「K-POP」アイドルユニットの「NiziU」がデビューし、人気を博しています。近年は多国籍のメンバーからなるグループも増えており、K-POPが「韓国のポップス」という元の意味を超えて一つのエンターテインメントのジャンルとしてボーダーレス化してきている様子がうかがえます。

そんなBTSについて、本記事ではヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を用いて「BTS」の検索ユーザーの性質の変化を分析していきます。比較的初期から「BTS」ワードを検索していたアーリーアダプター層と、最近の世界的人気を受けて「BTS」を検索したマジョリティ層にはどのような違いがあるのでしょうか。

「BTS」検索ユーザーの性質の変化とは

それでは早速、2020年2月から2021年1月の1年間で、「BTS」というキーワードを検索したユーザー数がどのように推移したのか見てみましょう。

2020年12月~2021年1月「BTS」検索ユーザー数推移(Dockpit画面より)
※対象デバイス:PCとスマートフォン

「BTS」検索ユーザー数は2020年5月ごろまで15万人程度で横ばいでしたが、6月、7月と増加に転じています。そしてシングル「Dynamite」が2020年8月21日にリリースされて以降に検索ユーザー数は急増し、10月には約65万人まで伸びた結果に。これは半年前の約4.3倍以上の数字です。

ユーザーの急増はなぜ起こったのでしょうか。背景を調べるため、Dockpitで検索掛け合わせキーワードの「季節比較」機能を利用して、2020年5月から7月のユーザーの関心をのぞいてみましょう。

2020年5月~2020年7月「BTS」との掛け合わせワード(Dockpit画面より)
※対象デバイス:PCとスマートフォン

2020年5月から7月にかけてのユーザー数の伸びは、主に「サマソニ」というキーワードによって説明されそうです。サマソニは日本最大級の音楽の祭典、「サマーソニック」の略称ですが、2020年度はコロナ禍の影響でオンライン開催となりました。過去の主要アーティストのパフォーマンスが配信されたため、2015年にサマーソニックに出演したBTSの検索も増えたのではないでしょうか。

また、一気に検索ユーザーが急増した2020年8月〜10月の掛け合わせワードクラウドを見てみましょう。

2020年8月~2020年10月「BTS」との掛け合わせワード(Dockpit画面より)
※対象デバイス:PCとスマートフォン

8月には、世界的に大ヒットを記録した「Dynamite」が発売されています。(スペリングが違っていますが、「DINAMITE」というのはその楽曲のことと思われます。)また、「ムビチケ」や「チケットぴあ」など、ライブのチケット関連と思われる検索も多くありました。これは、2020年9月に行われたBTSのライブツアー「MAP OF THE SOUL TOUR」の東京公演に関わる検索だと思われます。

アーリーアダプター層とマジョリティ層の関心の違い

ここまで、BTSがライブや新譜の発売などで2020年に多くの話題を作り、検索ユーザー数を獲得してきた様子を見てきました。では、大きく検索ユーザー数を伸ばした2020年夏の前と後で、ユーザー属性はどのように変化したのでしょうか。

そこで、世界的な大人気の前からBTSを検索していた「アーリーアダプター層」と、話題沸騰後にBTSを検索した「マジョリティ層」の違いを比較してみましょう。(※2020年2月の検索ユーザーを「アーリーアダプター層」、2021年1月の検索ユーザーを「マジョリティ層」と定義します。

年代別

まず、年代の分布を比較してみます。以下のグラフをご覧ください。

▼上→2020年2月、下→2021年1月

2020年2月「BTS」検索ユーザーの年齢分布(Dockpit画面より)
※対象デバイス:PCとスマートフォン

2021年1月「BTS」検索ユーザーの年齢分布(Dockpit画面より)
※対象デバイス:PCとスマートフォン

2020年2月時点ではネット利用者全体比べて、10代の割合が高く、30代の割合が低かったことが分かります。一方、2021年1月には30代の検索割合が上がり、10代の検索割合はネット利用者全体とおおむね一致しています。

BTSに対する関心がより多くの年代に広がったことが読み取れるのではないでしょうか。

ワードネットワーク

次に、ワードネットワークを比較してみましょう。ワードネットワークとは、掛け合わせ検索のキーワードをネットワーク上に可視化したものです。

▼上→2020年2月、下→2021年1月

2020年2月「BTS」検索ユーザーのワードネットワーク(Dockpit画面より)
※対象デバイス:PCとスマートフォン

2021年1月「BTS」検索ユーザーのワードネットワーク(Dockpit画面より)
※対象デバイス:PCとスマートフォン

検索数の増加に伴ってネットワークの複雑さ自体が増していますが、よく見るとその内容も変化しています。

2020年2月時点では主な掛け合わせキーワードは「歌詞」「アルバム」「V」「ON」「グッズ」などです。具体的な曲名や、グッズやアルバムといった関連商品の購入を思わせるキーワードからは、ファン層によると思われる検索の多さが垣間見られます。ワードネットワークの「V」は、グループ内でも人気の高いメンバー「V」を指すものと思われます。Vはアメリカの映画評論サイト『TC Candler』が毎年選定する「世界で最もハンサムな顔100」で2017年に1位となったことでも注目を集めました。

一方、2021年1月には「メンバー」「防弾少年団」「歌詞」「DYNAMITE」「ダイナマイト」といったキーワードが主要なものになっています。「防弾少年団」という、名称を確かめるような検索や、「メンバー」「見分け方」といったメンバーを確認するような検索の有り様から、新しく興味を持ったユーザーによる検索なのではないかと考えられます。また、「Dynamite」という楽曲の影響の大きさもうかがえます。

BTSのマジョリティ層はどんなコンテンツを見ているか

ここまではアーリーアダプターとマジョリティの差に着目してきましたが、現在の検索ユーザーたちがBTS関連でどのようなトピックに興味関心を持っているのか、流入ページを見てみましょう。

2021年1月 「BTS」検索ユーザーの流入ページ(Dockpit画面より)
※対象デバイス:PCとスマートフォン

流入ページのランキングを見ると、BTSの公式ファンクラブが1位にランクイン。2位と3位はどちらもWikipediaのページです。また、4位、6位、9位、10位はいずれもBTSのメンバーを紹介するコンテンツとなっていました。

最近になってBTSのことを知り、メンバーのプロフィールや人気ランキングを閲覧して基礎的な知識を求めた「BTS」検索ユーザーの姿が浮かび上がります。

Niziuの検索者数はBTSを一気に超えた時期も

最後に、人気急上昇中の9人組ガールズグループ「NiziU」とBTSの検索者層を比較してみます。ファン層にはどのような違いが見られるのでしょうか。

まず、下記は検索者数推移の比較です。

2020年2月から2021年1月の「BTS」と「NiziU」の検索ユーザー数推移 (Dockpit画面より)
※対象デバイス:PCとスマートフォン

NiziUは2020年6月のデビュー時から、一気にブレイクした様子が見受けられます。NiziUは2019年7月からメンバーのオーディションが始まり、その選考や厳しいトレーニングの様子がテレビで既に放送されていました。あらかじめ注目を集めていたために、グループ名が発表された6月に、検索者数のグラフに見られるようなロケットスタートにつながったのではないでしょうか。

次に、ユーザー属性の違いを確認してみましょう。検索ユーザーの性別の割合はどうなっているでしょうか。

2020年2月から2021年1月の「BTS」と「Niziu」の性別割合比較 (Dockpit画面より)
※対象デバイス:PCとスマートフォン

BTSの検索ユーザーは女性の方が多いことが分かります。一方、NiziUはやや女性が多いものの、ほぼ半々という結果になりました。

まとめ

本記事では、人気急騰中のBTSについて、検索データからアーリーアダプター層とマジョリティ層の違いを分析しました。また、NiziUとBTSのユーザー属性の違いも比較しました。下記に考察をまとめます。

・「BTS」キーワードの検索ユーザー数は、2020年6月にオンラインのサマソニが開催されたタイミングで微増し、大ヒット曲「Dynamite」リリース後の10月には半年前の4.3倍ほどに急増しました。

・ユーザー数が急増する前は10代のユーザーの割合が多かったですが、急増後はよりバランスの取れた年代の分布となり、より幅広い人々の間で好まれるようになったと見受けられます。

・ユーザー数が急増する前は、既に一定程度BTSについて知っているファン的な性質を持ったユーザーが多かったようですが、急増後はメンバーの見分け方を調べたり、Wikipediaページでそもそもどのようなグループなのかを調べるような、新規にBTSのことを知ったと思われるユーザーが増えました。

・NiziUはテレビ番組を通じて1年以上にわたってファン層を確立し、デビューとともに検索数を急激に伸ばしました。その検索ユーザー数は世界的大ヒット楽曲「Dynamite」を発表したBTSの検索ユーザー数をも凌駕するほどでした。

本稿のデータがみなさまのお役に立てれば幸いです。また、データはWeb行動ログ調査ツールのDockpitを使用して取得しています。詳細な機能を知りたい方はぜひ無料版を使ってみてください。

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この記事のライター

ウィーン大学への留学を経て京都大学文学部卒業。
外資系大手ITコンサルティング会社に勤務後、フリーランスライターに転向。

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