「カブアンド」とは
「カブアンド」は2024年11月20日に開始したサービスです。「ZOZO」の設立者である前澤氏が代表取締役社長を務め、「国民総株主(国民全員が株主になること)」を理念に掲げています。
サービス開始からわずか20日間で登録会員数100万人を突破するなど、目覚ましい成果を上げており、一時は申し込みが殺到して新規受付を停止するほどでした。なお2025年1月20日に受付再開されています。
「カブアンド」公式サイト
サービスの利用額に応じて株引換券がもらえるという内容で、株引換券は1枚1円の価値があり、株と交換することができます。受け取る株はカブアンド社の未公開株で、カブアンド社上場後に売却できるようになります。3年以内に上場できなければ株を買い取る「株買取保証」を宣言しており、リスクを回避しながら株を始めることができるのが特徴です。
また、マイページに株が貯まっていくため証券口座が必要ないこと(上場後の売買にあたっては必要)、ポイント付与と違い、株の価値はカブアンド社の成長と共に上がる可能性があることは、気軽に資産形成を始めてみたい層には魅力的なのではないでしょうか。
利用すると株がもらえるサービスは、現時点で電気、ガス、モバイル、ひかり(ネット回線)、ウォーター、ふるさと納税の6つで、どれか1つでも切り替えると、カブアンドの株がもらえる仕組みになっています。
「カブアンド」公式サイト(Service)
電気やガス、ネット回線などのインフラサービスは、引っ越しのタイミングでのみ検討する人が多く、Web集客が難しい業界。そんな中、カブアンドはWeb上での集客に成功しています。今回は、カブアンドのサイト閲覧者のデータから、同サービスがどのような人に検討されているのか、6つのサービスのうちどの分野に特に関心が集まっているのか、分析していきます。
なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用います。
初月の訪問回数は驚異の1,000万回超え
サービス開始した2024年11月を見ると、サイト閲覧者数は451万人、セッション数(訪問回数)は1,090万回となっており、初月から驚異の快進撃を見せていることがわかります。

「カブアンド」公式サイトの閲覧者数
期間:2024年1月~12月
デバイス:PC&スマートフォン

「カブアンド」公式サイトのセッション数(訪問回数)
期間:2024年1月~12月
デバイス:PC&スマートフォン
積極的な広告・SNS施策が功を奏す
ロケットスタートの背景には、積極的な話題作りがあるようです。サイトの集客構造を見ると、ディスプレイ広告を中心に、大規模なPRを仕掛けていることがうかがえます。芸人の明石家さんまさんと前澤氏が広告塔となっていることも、インパクトに繋がっていると考えられます。

「カブアンド」公式サイトの集客構造
期間:2024年1月~12月
デバイス:PC&スマートフォン
(グラフの明るい紫は「メール」、茶色は「ノーリファラー」)
「ソーシャル」の内訳を見ると、LINE経由の流入が143万回、X経由が74.5万回、YouTube経由が20.8万回となっています。LINEニュースやLINE公式アカウントからの流入が多かったのかもしれません。

「カブアンド」公式サイトの集客構造:「ソーシャル」の内訳
期間:2024年1月~12月
デバイス:PC&スマートフォン
YouTubeでは前澤氏の対談動画が多く再生されており、NewsPicksの公式チャンネルで約132万回再生、ホリエモン氏のチャンネルで約151万回再生(ともに2025年1月21日時点)となっています。また、お金にまつわる基礎教養を発信している「両学長 リベラルアーツ大学」のチャンネルでも複数動画がアップされており、UGC(※)も盛り上がりを見せているようです。
※ユーザー生成コンテンツ:ユーザーが自発的に作成・発信したコンテンツ
「カブアンド」関心層はどんな人?
■男性が6割、30~40代割合が高め
では、カブアンドのサイトを閲覧しているのはどのような人たちなのでしょうか。
性別では、男性が約63%、女性が約37%と、男性が多数を占めています。

「カブアンド」公式サイト閲覧者の性別割合
期間:2024年1月~12月
デバイス:PC&スマートフォン
年代別に見ると、ネット利用者全体と比べても30~40代の割合が高くなっており、50代もボリュームゾーンになっています。資産形成への関心が高まる世代と言えそうです。

「カブアンド」公式サイト閲覧者の年代割合
期間:2024年1月~12月
デバイス:PC&スマートフォン
■ファミリー層、高所得世帯が多い
サイト閲覧者の未既婚状況を見ると、既婚者が56.1%でした。カブアンドは「使った分だけ株がもらえる」ため、単身者よりもファミリー層の方が関心が高くなりやすいのかもしれません。

「カブアンド」公式サイト閲覧者の未既婚割合
期間:2024年1月~12月
デバイス:PC&スマートフォン
続いて世帯年収です。ネット利用者全体と比べると、400万円未満の割合が低く、400~1500万円が高くなっています。

「カブアンド」公式サイト閲覧者の世帯年収
期間:2024年1月~12月
デバイス:PC&スマートフォン
カブアンドを運営するカブ&ピースが1月17日に一部公開したユーザーデータによると、利用者の平均年収は628万円で、全国平均の460万円を上回ったそうです。年収高めな層が、いち早く反応している様子がうかがえます。
サイト閲覧者の興味関心を見ると、「マネー、投資」がリーチ率、特徴値とともに顕著に高くなっており、「経済」も比較的高く出ています。
※リーチ率:対象者のうち、アンケートで当該項目に回答した人数の比率
※特徴値:対象者のリーチ率−ネット人口全体のリーチ率

「カブアンド」公式サイト閲覧者の興味関心
期間:2024年1月~12月
デバイス:PC&スマートフォン
※ヴァリューズの分析ツール「Perscope(ペルスコープ)」を使用
カブ&ピースが1月17日に公開した前出のデータによると、カブアンド利用者に占める株式投資経験者は約53%で、全国平均の約30%(同社調べ)と比べても高い結果になっており、サービス初期段階ではもともと資産形成に関心の高い層が集まっていることがわかります。
「ふるさと納税」「モバイル」が人気。年末需要か
電気やガス、ネット回線など、現時点で6つのサービスを展開するカブアンドですが、サイト閲覧者は特にどのサービスへの関心が高かったのでしょうか。
公式サイトへの検索流入ワードを見ると、「ふるさと納税」「モバイル」の検索が目立ちます。サービス開始が年末だったこともあり、ふるさと納税とあわせて検索する人が多かったようです。モバイルについては、株引換券の還元率が通常会員でも10%と、電気・ガスの1%などと比べてもかなり高いため、関心を寄せる閲覧者が特に多かったのではないでしょうか。

「カブアンド」公式サイトへの流入キーワード
期間:2024年1月~12月
デバイス:PC&スマートフォン
アプリは「arigatobank」が特徴的
サイト閲覧者の関心が高いスマホアプリ1位には、カブアンドと同じく前澤氏が関わったサービスである「arigatobank」がランクイン。arigatobankは「楽しいコトが、お金に変わる」をコンセプトに、アプリ内のキャンペーンに参加したり、指定のゲームをプレイすることでお金(残高)がもらえるサービスです。前澤氏関連のサービスや、お小遣い稼ぎに関心の高い閲覧者が多いと考えられます。
3位は「Googleウォレット」で、キャッシュレス意識や金融リテラシーが高めな層を取り込んでいる様子もうかがえます。

「カブアンド」公式サイトの閲覧者の関心アプリ
期間:2024年1月~12月
デバイス:PC&スマートフォン
まとめ
今回は、2024年11月20日にサービス開始したばかりの「カブアンド」について調査してきました。
開始後わずか20日で、登録会員数100万人を突破したカブアンド。初月の公式サイト訪問回数は1,000万回を超えており、その背景にはディスプレイ広告を中心とした積極的な広告・SNS施策があったようです。広告塔に明石家さんまさんを起用していることも、話題作りに繋がったと考えられます。
サイト訪問者は資産形成を考え始める30~40代の割合が高めで、ファミリー層、高所得世帯が比較的多いことがわかりました。
使うと株引換券がもらえる6つのサービスの中では、「ふるさと納税」「モバイル」の検索が多く、年末需要や高い還元率で注目が高まったことが考えられます。サイト閲覧者の関心アプリを見ると、同じく前澤氏が参画する「arigatobank」が特徴的でした。
「カブアンド」は2025年1月20日に新規受付が再開されたばかり。今後も順調にユーザーを増やしていくのか、3年以内に上場することは叶うのか、今後も目が離せません。

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https://manamina.valuesccg.com/articles/3872ヴァリューズは、国内最大規模の消費者Web行動ログパネルを保有し、データマーケティング・メディア「マナミナ」にて消費トレンドの自主調査を発信してきました。その中から注目領域の調査・コラムをピックアップし、白書として収録。2021年の発行から4回目を迎えます。今回は2023年下半期から2024年に公開した調査から厳選し、金融業界のデジタル動向をまとめた「デジタル・トレンド白書2024 – 金融編」を公開しました。ダウンロード特典として、銀行、証券など金融各業界のサイトランキングも収録しています。(「デジタル・トレンド白書2024 – 金融編」ページ数|90P)
▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
▼また、生活者理解のためのリサーチエンジン『Perscope』も使用しています。『Perscope』では国内最大規模のWeb行動×アンケートデータを活用し、誰でも いつでも 簡単に"生活者起点のマーケティング活動"を実現することができます。無料デモもありますので、興味のある方は下記よりぜひお申し込みください。
1997年生まれ、大阪大学卒。データアナリストを経て、Webマーケティング・リサーチを軸に、コンテンツディレクション、SNS運用、デジタル広告運用などを担当。現在はフリーで活動しています。