地方銀行のWebサイトランキングを調査!デジタルシフトが進んでいる地銀はどこか

地方銀行のWebサイトランキングを調査!デジタルシフトが進んでいる地銀はどこか

人口減少や地域経済の衰退に、超低金利状況なども加わり逆境に立たされる地方銀行に関する調査レポートです。菅政権により「再編」も打ち出されている地方銀行が、どのような生存戦略を図っていくのかを「Webサイト集客が成功している地銀」を調べることで分析していきます。


インターネット、およびスマートフォンなどの通信端末の爆発的な普及によって、銀行業のサービス形態は大きな変化を要求される時代になりました。店舗を開けば顧客が自然に集まるような時代はとうに過ぎ去り、対面での接客や電話応対といった、「ダイレクトチャネル」の優位性は年々下がり続けています。

大きな資産を持つ顧客ならまだしも、大多数の中間層の顧客はネット経由で「預金・融資・為替」といった金融処理を増やしていくでしょう。こうした状況の中、「企業体力があるメガバンクとは違い、従来の集客だけでは立ち行かない」とマーケティング戦略の打ち手を考える地方銀行も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、ヴァリューズの分析ツール「Dockpit」を用い、Web集客に成功している地方銀行と集客構造などを分析します。実際にWebサイトのセッションを多く得ている地銀を特定し、どのような戦略で集客に結びつけられているのかを調べていきましょう。

Webサイトへのセッション数が多い地方銀行ランキング

まずは、Web集客が上手くいっている地方銀行を調べましょう。

Dockpitを使って、全国の地銀のWebサイトが集めているセッション数を抽出し、ランキング形式にまとめたものが以下です。(※企業名はTop10のみ公開。全ランキングデータは記事下のフォームより無料でダウンロード頂けます

地方銀行のサイトランキング

「Dockpit」で抽出した「銀行 企業」Webサイトのセッション数のデータを降順にランキング化
※都市銀行やネットバンクを除く地方銀行のみ, 上位30位まで
期間:2020年5月〜2021年4月
デバイス: PC・スマートフォン

ランキング最上位から、福岡銀行横浜銀行千葉銀行…と続いています。

1位の福岡銀行、2位の横浜銀行に至っては年間3,000万以上のセッション数があり、3位以下の地方銀行に大きく差を付けていることが見て取れます。また一部の例外はありますが、人口の多い関東圏および関東圏に隣接する、静岡や長野に立地する地銀が上位にランクインしている印象です。

これら集客力のある上位の地銀にターゲットを絞って、Web集客の状況をさらに深堀りしていきましょう。

Web集客に成功している地銀の集客指標を比較

Dockpitを用い、前述のランキング上位の地銀についてWeb集客構造の各指標についてデータを抽出してみると以下の通りです。

地方銀行主要4行のサイト基本指標

「Dockpit」で抽出した4つの銀行Webサイトの集客指標データの比較
期間:2020年5月〜2021年4月
デバイス: PC・スマートフォン

各銀行Webサイトの集客指標を眺めると、それぞれに特徴があることがわかります。以下、各銀行サイトの特徴についてさらに掘り下げていきましょう。

「ユーザー数」は横浜銀行と千葉銀行の2行で多い

地方銀行主要4行のユーザー数

「Dockpit」で抽出した4つの地銀Webサイトの「ユーザー数」のデータ
期間:2020年5月〜2021年4月
デバイス: PC・スマートフォン

各銀行の「ユーザー数」を比較すると上記の通りです。横浜銀行が440万人と最も多く、次いで千葉銀行も435万人と遜色のない数字になっており、人口の多い関東圏に本拠地を持つ強みであると言えます。

横浜銀行は2000年代の早期からインターネットバンキングの導入などに踏み切り、銀行業のオンライン化を進めてきた企業です。こうした取り組みもあってか、顧客のネットバンキング利用が盛んであるため、定常的にサイト利用をするユーザー数が多いのではと推察されます。

また、「セッション数」ランキングで最上位になった福岡銀行ですが、「ユーザー数」で見ると横浜銀行と千葉銀行を下回ります。この構図は、”福岡銀行のWebサイトに同一ユーザーが再訪する機会が多い”ということを示唆します。

「直帰率」が低いのは福岡銀行と千葉銀行

地方銀行主要4行の直帰率

「Dockpit」で抽出した4つの地銀Webサイトの「直帰率」のデータ
期間:2020年5月〜2021年4月
デバイス: PC・スマートフォン

「直帰率」を最も低く抑えられているのは福岡銀行で、31.6%という数値でした。4つの銀行の中で30%台をマークするのは福岡銀行のWebサイトだけなので、直帰してしまう訪問者が非常に少ないと言えるでしょう。

福岡銀行は前項でも”同一のユーザーの再訪が多い”可能性に触れましたが、サイト訪問者が直帰しにくいというデータも踏まえると、ユーザーが繰り返し利用や閲覧のできる環境が充実しているのかもしれません。

「平均滞在時間」は福岡銀行が最大

地方銀行主要4行の平均滞在時間

「Dockpit」で抽出した4つの地銀Webサイトの「平均滞在時間」のデータ
期間:2020年5月〜2021年4月
デバイス: PC・スマートフォン

「平均滞在時間」の指標においては、福岡銀行の3分22秒という数字が他の3行を圧倒しています。前述した再訪ユーザーの多さや直帰率の低さもあり、サイト訪問ユーザーが長い時間Webサイトを閲覧していると推察できます。

Web集客が好調な地銀は広い地域でも顧客接点を作る

Dockpitによって、冒頭のランキング上位4位に位置した銀行サイトに訪問しているユーザーを、都道府県別に色分けしたものが以下の図です。

地方銀行主要4行の地域別利用者

「Dockpit」によって「福岡銀行(青)」「横浜銀行(ピンク)」「千葉銀行(緑)」「静岡銀行(黄)」のWebサイト訪問ユーザーを地域で色分け
※各地域で最も訪問者の多いサイトが色分けされます
期間:2020年5月〜2021年4月
デバイス: PC・スマートフォン

上記を見ると、各地銀が本拠地とする地域だけでない都道府県からも、サイト訪問者があることがわかります。例えば、千葉銀行は本社のある千葉県だけでなく、北海道~東北や北信越、関西といった非常に広いエリアから訪問者を集めているようです。

この背景には、元々その地方に居住していたユーザーが口座を開設した後、別の地域に移住しても、引き続き各地銀の利用を継続している、といった事情があるのかもしれません。もしくは、各地銀の独自サービスに惹かれた別地方の在住ユーザーが、何らかの形でサイトやサービス利用を行っている可能性もありそうです。

このように、Web集客が上手くいっている地銀はオンライン化により顧客の在住エリアにこだわる必要がなくなるため、広い地域で多数のユーザーとの接点を作れる可能性があると言えるでしょう。

まとめ|地方銀行がWeb集客に成功するためのポイント

今回、Web集客に成功している地方銀行の事例を見てきましたが、これからの地方銀行が事業継続や拡大の戦略を練る上で重要なポイントは以下のとおりと考えます。

①従来の業態を脱却し三大業務「預金・融資・為替」を中心にデジタル化を促進
②オンラインを活用し広域で「攻めの集客」を行う
Fintechの新興サービスと積極的に連携し広い領域で顧客を集める努力

①は2000年代から進んだネットバンキングなども含め、銀行業の三大業務を早急にデジタル化させていく必要性を指摘しています。例えば、本調査でネットバンキングの利用が盛んであると推察された横浜銀行のように、デジタル化によって顧客と複数のタッチポイントを作り、それぞれを連携させることで自社の収益最大化を図っている企業もあります。(参考:『横浜銀行が歩んできたマーケティング10年間の挑戦--最新技術で顧客志向へ』)

②は、来店する顧客が減少していく中で、各地銀が自社商品をどのように顧客へリーチさせていくかという点です。オンライン化を駆使し、元々の営業領域であった地元以外の地方からも、広く自社の顧客を集める努力を要する時代になっていると言えるでしょう。

③は、地銀がこれから顧客との接点をいかに作っていくかという点です。従来のように、店舗を置けば自然に顧客が集まるという状況は変わっており、そもそもの地方在住者の人口も減少の一途をたどっています。

そんな中、技術革新によって次々と生まれてくる様々な金融領域のサービスを敬遠せず、居住地も利用シーンも広く捉えて顧客の創造に活用していかなければならないでしょう。実際に福岡銀行では、アプリ開発やデザイナー、データサイエンティストなどの幅広いIT人材を採用しています。「Fintech領域」に積極的に乗り出す姿勢がうかがえます。

ふくおかフィナンシャルグループ採用ページより(2021年5月現在)

以上、柔軟な視点を要する3つのポイントをおさえることが、地銀の事業継続に必要でしょう。本調査が、皆さんのマーケティング業務や市場調査などに役立ちますと光栄です。

【調査概要】
・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報にもとづき分析
・行動ログ分析対象期間:2020年5月〜2021年4月
※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:PC・スマートフォンの両デバイス

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この記事のライター

国内大手の採用メディア制作部を経てフリーライターとして独立。現在はWebマーケティング、就職・転職、エンタメ(ゲーム・アニメ・書籍)等の各種メディアにて記事制作を担当。「マナミナ」では一人でも多くの読者に楽しく読んでもらえるマーケティングコンテンツを提供していきます。

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