近年、仮想通貨やNISA、IDECOなど様々な投資が注目されています。投資には「初心者にはむずかしい」というイメージがありますが、そんななかで投資初心者でも気軽に始められるサービスがロボアドバイザーです。
ロボアドバイザーとは、AIや専門家の分析をもとに利用者に対して資産運用のアドバイスや運用の手伝いをしてくれるサービス。「アドバイス型」と「投資一任型」の2種類があり、「アドバイス型」は利用者の目的等に合わせた最適なポートフォリオを提案してもらい、最終的な意思決定は自分で行うというもの。一方「投資一任型」では、運用資金があれば提案から実際の運用まですべて行ってくれます。
本記事ではロボアドバイザー市場について、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用いて分析を行います。
ロボアドバイザーに興味のある人はどれくらい?投資信託と比較
まず、ロボアドバイザーに興味がある人がどれくらいいるのかを調べるため、「ロボアドバイザー」の検索ユーザー数を「投資信託」の検索ユーザー数と比較してみます。
「ロボアドバイザー」と「投資信託」の検索ユーザー数推移をそれぞれ見てみましょう。
「ロボアドバイザー」の検索ユーザー数推移
(集計期間:2019年12月~2022年1月、デバイス:PC&スマートフォン)
「投資信託」の検索ユーザー数推移
(集計期間:2019年12月~2022年1月、デバイス:PC&スマートフォン)
検索ユーザー数を比較すると、ロボアドバイザーは投資信託よりも桁が一つ小さく、まだまだ発展途上の市場だと言えます。また、投資信託が2020年4月から2022年1月で2倍近くユーザー数を伸ばしている一方で、ロボアドバイザーは全体的に右肩下がり。同期間で1/3程度減少していました。
次に検索時の掛け合わせワードの比較です。
「ロボアドバイザー」の掛け合わせワードランキング
(集計期間:2019年12月~2022年1月、デバイス:PC&スマートフォン)
ロボアドバイザー検索でもっとも多いのは「比較」というワードとなっており、どんなサービスを使うべきかを検討する行動が見られます。
一方で、特徴的だったのは「おすすめしない」「デメリット」といったロボアドバイザーを不安視するようなワード。AIなどの機械が投資先を選定する点を考慮しているのでしょうか。他に「評判」や「実績」という掛け合わせワードも見られ、ロボアドバイザーに慎重な目を向けるユーザーの存在がうかがえます。
続いてユーザー属性を比較してみます。まずは性年代で見てみましょう。
「投資信託」「ロボアドバイザー」の男女比
(集計期間:2019年12月~2022年1月、デバイス:PC&スマートフォン)
「投資信託」「ロボアドバイザー」の年代構成比
(集計期間:2019年12月~2022年1月、デバイス:PC&スマートフォン)
「投資信託」検索者と「ロボアドバイザー」検索者では、いずれも性年代属性に違いが見られませんでした。性別では男性が多く、年代では30代がボリュームゾーンです。
次に年収構成比も見てみましょう。
「投資信託」「ロボアドバイザー」の年収構成比
(集計期間:2019年12月~2022年1月、デバイス:PC&スマートフォン)
年収構成比についても投資信託とロボアドバイザーで大きな違いはありません。ネット利用者全体と比べ、年収が比較的高い人からの興味が高くなっています。
検索ユーザー数や掛け合わせの検索ワードから見ると、ロボアドバイザー市場の認知度はそこまで高くないと言えます。しかしターゲット自体は投資信託検索者と大きな差がなく、今後ロボアドバイザーへの信頼が高まれば、利用者が爆発的に増える可能性もありそうです。
競合分析で見るロボアドバイザーサービス市場の状況とは
続いてロボアドバイザーの市場について、サービスごとのWebサイトの訪問者数を比較して分析してみます。
まず、「アドバイス型」のサービスとして「投信工房」「マネックスアドバイザー」「SMBCロボアドバイザー」の3サービスのWebサイトの基本指標をDockpitで比較したものが下表になります。
「アドバイス型ロボアドバイザーサービス」の基本指標比較
(集計期間:2019年12月~2022年1月、デバイス:PC&スマートフォン)
松井証券が運営する投信工房が11万ユーザーと最もユーザー数が多く、続いてSMBCロボアドバイザー、上位2つとやや差があるマネックスアドバイザーの順になっています。
一方で「投資一任型」のサービスのWebサイトの基本指標を比較したものが下表になります。
「投資一任型ロボアドバイザーサービス」の基本指標比較
(集計期間:2019年12月~2022年1月、デバイス:PC&スマートフォン)
もっともユーザー数が多いウェルスナビでは2019年12月〜2022年1月までの約2年間で691万人もの訪問者がいたことが分かります。大和ファンドラップオンラインでも100万人のユーザーがいて、全体として投資一任型に興味があるユーザーの方がかなり多いようです。投資信託等でなくロボアドバイザーサービスを利用するのであれば、すべてを任せてしまえる投資一任型を利用するユーザーが多いのでしょう。
では、投資一任型ロボアドバイザーサービスの過去2年のWebサイトのユーザー数推移を見てみます。
「投資一任型ロボアドバイザーサービス」のユーザー数推移
(集計期間:2019年12月~2022年1月、デバイス:PC&スマートフォン)
やはりウェルスナビが全期間を通して多く、直近ではsustenやfolioも増加しています。sustenの爆発的な増加は何らかのプロモーション施策で獲得したユーザーだと考えられますが、増加直後に急落している部分もあるため、安定した流入には繋がっていないと言えそうです。
ウェルスナビのユーザーはどんな人なのか
最後に、ロボアドバイザーサービスのなかで最もユーザー数の多いウェルスナビについて、その利用者を分析してみます。興味関心マップを見てみましょう。
ウェルスナビサイト訪問者の興味関心
(集計期間:2021年2月~2022年1月、デバイス:PC&スマートフォン)
上記は縦軸が「リーチ率」、横軸が「特徴値」となっており、以下の定義に基づいて算出されています。
リーチ率 | 対象者のうちアンケートで当該項目に回答した人数の比率 |
特徴値 | 対象者が一般的なネット利用者と比べて特徴的に興味関心のあるジャンルを可視化するための指標 (対象者のリーチ率)ー(ネット人口全体のリーチ率)で計算 |
縦軸は「リーチ率」で、数値が高いほど興味・関心を持っているユーザー数が多いジャンルです。また、横軸は「特徴値」で、一般的なネットユーザーと比べて顕著に差があるジャンルほど高くなる数値です。両数値を合わせて考えると、グラフ右上に位置するジャンルほど、ウェルスナビの訪問者特有の興味・関心を持つジャンルです。
まず当然ですが、グラフ右上のプロット「マネー、投資」への興味がずば抜けて高く出ています。次に「経済」「デジタル機器」「ビジネス関連」と続いており、ビジネス全般やガジェットに興味のある人物像が浮かんできます。ちなみに、続く項目としては「不動産投資」や「電力自由化」などもあり、資産の効率的な運用に興味を持っているようです。
また、そのほかで比較的興味を持っている対象には「アウトドア」や「車」「写真、カメラ」「スポーツ」といった項目も入っていました。ウェルスナビ利用者の中には、外にでかけることが好きで、アウトドアやスポーツなどのレジャーを楽しみ、写真を撮るためカメラにも少し興味がある、といったユーザーの存在がうかがえます。
まとめ
今回の記事ではロボアドバイザーサービスについて、市場全体を投資信託と比較したのち、「アドバイス型」「投資一任型」それぞれのサービス比較と分析を行いました。投資信託の検索ユーザーが増加する一方で、ロボアドバイザーサービスでは検索者数が右肩下がりの傾向。ロボアドバイザーに慎重な目を向けるユーザーの存在も見られました。
サービスごとの分析では「アドバイス型」より「投資一任型」に関心を寄せるユーザーが多く、そのなかでもウェルスナビが多くのユーザーを獲得していました。
ロボアドバイザーサービスはまだ発展途上の市場ですが、今後実績や評判をもとにユーザーからの信頼を得ることができれば、規模の拡大やユーザー獲得競争が想定されます。ぜひ今回の記事を今後のご参考にしていただければと思います。
▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
2022年の春から、新卒としてヴァリューズに入社。