話者紹介
セントラル短資FX株式会社
開発部 課長 宮城 純一氏
株式会社ヴァリューズ
(左)データマーケティング局 マネージャー 横井 涼
(右)データプロモーション局 コミュニケーションデザイナー 安部 竜司
セントラル短資FXが感じていた業界の課題とは
ヴァリューズ 横井涼(以下、横井):セントラル短資FX様には、ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」や「story bank(ストーリーバンク)」を活用したコンテンツマーケティングに取り組んでいただいています。本日は改めてその内容をお伺いできればと考えていますが、その前に、まず近年の金融業界の動きをお聞かせいただけますでしょうか?
セントラル短資FX 宮城純一氏(以下、宮城):老後資金2,000万円問題やコロナ下での生活不安などを契機に、投資の重要性が広く認識されつつあります。投資に興味を持つ方が一気に増えたと感じます。
その分、投資商品を扱う業界での競争は、激しくなっています。最近では株や投資信託だけでなく、もっと気軽に投資できる商品がどんどん出ているほか、様々な会社が金融分野に進出しています。そうなるとやはり顧客を獲得するためのコストも高騰します。
このような状況では、投資に関心はあるが、まだ具体的に始めていない潜在ユーザーといかにタッチポイントを作れるか、また自分の会社を知ってもらうかが重要で、ファネルの上部への効率的なアプローチを考える必要があると考えています。
加えて、FXに関しては、残念ながら未だに「投機」といったイメージを抱く方も少なくありません。業界としては、単なる「投機」ではない、様々なメリットと機能を持つFXに関して正しい情報をわかりやすく伝えていくことも課題としてあるでしょう。
レッドオーシャンに突っ込むのではなく、確実に勝てるところを見つけたい
横井:御社がコンテンツマーケティングを始めたのは、2021年6月からでしたね。始めた理由を教えていただけますか?
宮城:もともと当社のウェブサイトは、Web広告が大きな集客割合を占めていました。しかし、サイトに長く滞在してくださったり、何度も訪問してくださるのは、オーガニックで流入したユーザーであることも分かっていました。「それならば、オーガニックで集客につながるコンテンツを作らないといけない」と考えたのですが、FXに関連するキーワードで検索順位トップを取るという、いわば王道のやり方に莫大なリソースを投入できる会社には到底かないません。コンテンツが質量ともに充実しているサイトはすでに数多くあるので。
そこで、レッドオーシャンに突っ込むのではなく、他社が手をつけていない領域を探って、確実にコンテンツマーケティングで勝っていきたいと考えました。
横井:となると、やはり競合動向の情報が必要になりますね。
宮城:そうです。何も知らずに施策を打ち、結局競合先と同じことをしていたのでは、勝つことはできませんから。やはり競合先の動きを知ったうえで施策を考えたいと思っていました。
横井:実際、Dockpitやstory bankを活用してみてどうでしたか?
宮城:競合先の動きを、憶測ではなくデータとして見られるようになったのは大きいですね。以前は競合先の状況を広告代理店経由で聞くか、自分たちで仮説をもとに考えたりするしかありませんでした。story bankのデータをみることで、自社や他社のユーザーがネット上でどういう行動をしているのかを具体的に把握できるようになりました。
とくに、Dockpitでは新たな発見がありました。例えば、私たちのようにFXを商品として提供する側は、「FXに興味のある人はこういう人たちだろう」と無意識のうちにステレオタイプで見てしまうことがあります。でも、Dockpitのデータを見るとよい意味で裏切られました。なかでも興味深かったのは「セミリタイア」「副業」「節約」のクエリを発見したときです。
「Dockpit」トップ画面。調べたいクエリを画面上で検索することで、キーワードの検索者数やユーザー属性がわかり、加えて掛け合わせワードや関連ワードなどの分析も可能。
横井:意外な結果でしたね。たとえば「副業」だと、私は「本業のほかに仕事をする」といったイメージが強かったのですが、FXを堅実な投資として捉えて、「お金に働いてもらう」ことを考えている人がこんなにいるのだとびっくりしました。
宮城:「セミリタイア」「副業」「節約」は、発見したクエリのほんの一部です。他にも「FXに興味のある人は、こういうことを知りたいのか」といった発見が多くあり、たとえ実際の施策につながらなくても、ユーザー理解を深めるのに役立ちました。広告やプロモーションの新しい切り口が見えてきたと思います。
横井:まさにレッドオーシャンではないところで戦うことができますね。
宮城:本当にそう思います。競合先がまだ手を付けていない、当社独自の施策を考えることができるようになりました。
ヴァリューズ 安部竜司(以下、安部):コンテンツマーケティングにおいて独自の施策を作れるのは、Dockpitのメリットのひとつです。競合先がすでに出しているキーワードを分析することは、他のツールでも可能ですが、競合先が出しておらず、かつ親和性のあるキーワードを読み込めるという点は、やはりDockpitの優れているポイントだと思います。
企業によっては、競合先がやっていない施策を打つことに不安を抱く場合もあるかと思いますが、御社ではチャレンジするにあたって障害はありませんでしたか?
宮城:もちろん、何も根拠のないことに取り組むことはできませんが、数か月かけて様々なデータから分析した結果だったので、チャレンジしてみようと決断できました。
安部:Dockpit活用の他のメリットとして、コンテンツに盛り込むべきキーワードがわかりやすい点もあります。例えば、「セミリタイア」で検索するユーザーにおける年代ごとの傾向をつかむことも可能です。
さらに、他のSEOツールとの違いでいうと、掛け合わせワードだけでなく、類似ワードも出るのがやはり大きいでしょう。セミリタイアの類似ワードを見ると、「FIRE」という単語はもちろん「仕事が嫌い」「貯蓄2000万」といった語句も出てくるんですよね。このように「セミリタイア」と検索している人が同じ文脈で他に使っているキーワードを発見するなど、掛け合わせのワードからもう一回り広い世界をとらえることができる、つまりユーザー理解を深められるのは、Dockpitのよいところです。
Dockpitでは検索時の掛け合わせワードだけではなく、ユーザーが関連して興味を持っているワードや、当該クエリと似た類似ワードを調べることもできる。上記の例は、「セミリタイア」クエリの関心ワードと類似ワード。
「セミリタイア」「FX 副業」で検索順位1位を獲得
横井:コンテンツ作りの具体的な取り組みについてお話しいただけますか?
宮城:最初のステップとして、FPや税理士といった専門家が執筆や監修をしたSEOコンテンツを充実させるようにしました。読者に正しい情報を届け、コンテンツの信頼性を高めるなど、今後サイトを成長させるために大切なステップです。
次に、読者がコンテンツの内容を「自分のこと」として捉えてもらえるような施策が必要だと考えました。そこで、セミリタイア・副業等のインフルエンサーのインタビュー記事を制作しました。インフルエンサーは、多くの人たちからの共感を得ています。実際にセミリタイアを経験したインフルエンサーは、リアルな情報を読者に届けたい、役立ててもらいたいと思っている人たちなので、当社に関係なくフラットな立場で情報を発信してくれるだろうと考えました。
このコンテンツを通して、読者に投資を遠い世界の話ではなく、身近なものだと感じてもらいたいと思っています。
キャプション:実際にセミリタイアを達成したインフルエンサーを起用したコンテンツ
出典: https://www.central-tanshifx.com/topics/thinkaboutmoney/columns/clm24.html
横井:「セミリタイア」「FX 副業」のキーワードで検索1位を獲得しましたね。
宮城:うれしいです。実際にコンテンツを見た人にあてたリターゲティング広告からコンバージョンも出ています。もともと当社でFXをやりたかった人なのか、それともコンテンツに触れて顕在化したのかという関連性を検証する必要はありますが、数値として成果は出ています。
また、当社のウェブサイト内にあって、もともと多くのアクセスを集めていたマーケット情報と同等のアクセス数を出すコンテンツも出てきました。
検索エンジンでヒットしたコンテンツで当社のウェブサイトを知ったユーザーが、様々な情報収集をしてくれると、当初の目的通り、ファネル上部からの接触をきっかけに認知度を高められたことになるのかなと思います。
横井:これからもさまざまな成果が出てくると思うと楽しみですね。最後に、今後の展望を教えていただけますか。
宮城:デジタルマーケティングの手法やツールは、この先どんどん変わっていくものだと思います。広告に関して言えば、世界的なプライバシー強化の動きもあり、より高難度化していくのではないでしょうか。でも、どんなに状況が変化したとしても、マーケティングの本質は「顧客のことを知り、自社のビジネスに繋げる」という点は不変だと私は思います。そのためにより一層幅広いデータが必要になると考えます。
データを活用したマーケティングで、より多くの方々に安心して当社を選んでいただけるよう取り組んでいきたいです。
取材協力:セントラル短資FX株式会社
IT企業でコンテンツマーケティングに従事した後、独立。現在はフリーランスのライターとして、ビジネスパーソンに向けた情報を発信しています。読んでよかったと思っていただける記事を届けたいです。