【解説者紹介】
ブランディング効果にも期待?環境マーケティングとは
蒋:2022年10月のコンテンツマーケティング最新動向レポートでは、環境マーケティングについて取り上げています。環境マーケティングとは、エコマーケティングやグリーンマーケティングとも呼ばれ、自然や生態系への負荷がない、または少ない商品やサービスを経営に活用するマーケティング方法です。たとえば、ビニール包装を使わないことでゴミを削減したり、環境への負荷が少ない材料で商品を開発したりするといったことが挙げられます。
岩間:最近では、様々なところで「SDGs」や「エシカル消費」といった言葉が使われるようになり、社会や環境のことを考えて行動する消費者が増えてきたように感じます。商品やサービスを購入する際に、企業やブランドの社会的責任や環境保護に対する姿勢を重視する人もいるようですね。このような状況を受け、実際に環境を意識したマーケティングを行っている企業も多く見られます。
蒋:そうですね。企業にとっては、環境保護・社会貢献のほか、ブランディング効果も期待できると考えられています。でも、ちょっと疑問に思ったんです。マーケティングという点で見ると、一体どれほど効果があるのだろうと。マーケターの皆さんの参考になればと思い、調べてみました!
日本人は「エシカル消費」に慎重な傾向あり
蒋:最初に国別に見た、環境意識の違いを紹介します。まず株式会社アスマークが実施した「日本・アメリカ・中国のSDGsに関する意識比較調査」の結果を見てみましょう。エシカル消費につながる商品やサービスに対して、日本の購入意向は低水準であり、慎重な様子である一方、中国とアメリカは購入に前向きな回答が多いことがわかります。
・2022年10月のコンテンツマーケティング最新動向レポートp.38
・調査名:日本・アメリカ・中国のSDGsに関する意識比較調査
・調査会社:株式会社アスマーク
・調査期間:2022年1月21日(金)~1月26日(水)
・調査対象:アメリカ、日本、中国3ヶ国 15-39歳(n=900)
岩間:中国は8割が購入意向があると出ていますね!中国は経済成長期で、環境への取組みに対する優先度が低いイメージがあったので、意外に感じました。
蒋:中国では、環境を意識した商品やサービスを購入することをステータスに感じる人が多いんです。環境に配慮した商品やサービスは、そうでないものと比べて価格が割高になる傾向があることから、富裕層の人たちが選ぶことが多くなります。富裕層に対する「イケてる」という憧れが、環境を意識した購買行動へのイメージに結びついていると考えられます。
そのため企業としても、環境によいことを訴求すると消費者の購買意欲を高められると考えています。特にアパレル業界のハイブランドは、いち早く環境マーケティングに注力していますね。そして、そういったハイブランドを購入したことをアピールしているインフルエンサーも多いので、消費者の「エシカル消費」への興味・関心にますます注目が集まります。
蒋:ほかにも中国で一番影響力があるとされるインターネット企業Tmallや京東(Jingdong)でも、環境マーケティングに積極的に取り組んでいます。Tmallはグリーン会場を設営し、環境意識の高い企業のために売り場を用意していますし、ECサイト京東ではエコな物流管理をしていることをアピールしています。
岩間:なるほど!中国人の蒋さんならではの情報ですね。アメリカについては、どう考えますか?
蒋:アメリカも中国と同様の構図なのではないかと考えます。加えて、アメリカは多民族国家であることも関係しているでしょう。一人ひとりの価値観を尊重しており、環境に対する意識もそのひとつとされているのではないかと。
岩間:様々な理由があるでしょうが、貧富の差がそこまで大きいとは言えず、かつ人種や文化の多様性が定着していないことも、日本人の環境意識が高まっていない理由の一つなのかもしれませんね。
蒋:国民性も関係があるでしょう。例えば中国人と日本人の特徴でいうと、中国人はトレンドに乗っかり、最新のものだからとりあえず買ってみるという人が多いと感じます。一方日本は「オタク文化」に象徴されるように、基本的に自分に興味のあるものしか買わない人が多いのではないかと。
日本のZ世代は環境問題への関心が低いことが判明!
岩間:「自分の興味のあるものしか購入しない」という日本人の傾向ですが、若い世代ほど強くなっているようですね。ネオマーケティングが実施した調査結果を見ると、日本国内で他の世代と比べた際に、Z世代は「自分の価値観を重視している」「他人に興味がない」人が多い傾向にあり、トレンドに流されず、自分の興味があるものしか買わない人が多いことが伺えます。
岩間:グラフの1番下にある「環境問題へ関心」に関する項目も気になります。Z世代は環境意識が高いイメージがあったのですが……。
蒋:日本の場合、Z世代の環境意識は決して高いとは言えない状況です。ネオマーケティングが実施した別の調査結果を見てみましょう。日本のZ世代(1996年~2015年生まれ)の環境意識はアメリカのZ世代と比べても低いことがわかります。
岩間:Z世代にも同じような傾向が見られるんですね。日本ではメディアなどで「SDGs」や「エシカル消費」といった言葉を最近よく目にしますが、若い世代にしっかり響いているわけではなさそうですね。今後日本で環境意識は高まっていくと考えますか?
蒋:ブームを作り出すのはZ世代であることを考えると、その土壌が整っているとはまだ言えないと思います。
岩間:今回の結果を踏まえて、マーケターたちはどう行動すればいいでしょう。
蒋:今の状況で考えると、Z世代向けの商材を扱っている企業は、エコであることをアピールする環境マーケティングに力を入れても、そこまで大きな効果は期待できないと考えます。一方、環境訴求の商材を扱っている企業は、自社商品のターゲットを選定する時に、中高年層を選んだ方が良いかもしれません。
以上、10月のコンテンツマーケティング動向「トレンド編」でした。次月のネタも楽しみにお待ちください。
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IT企業でコンテンツマーケティングに従事した後、独立。現在はフリーランスのライターとして、ビジネスパーソンに向けた情報を発信しています。読んでよかったと思っていただける記事を届けたいです。