【解説者紹介】
TikTokに対抗し、主要SNSが短尺動画機能を次々とリリース
岩間:11月のコンテンツマーケティング最新動向レポートでは、縦型の短尺動画機能について取り上げていますね。短尺動画機能を主要なSNSすべてが展開するようになったとか。
そもそも、短尺って具体的にどれくらいの長さを指すのですか?従来のYouTubeやTwitter上の動画とどう違うのでしょう。
蒋:短尺の明確な定義はないんですよね。各SNSにより定義は異なっており、例えばTikTokは3分以内、Instagramのリール機能では90秒以内、YouTubeでは60秒以内のものを短尺動画としています。あえて言うと、視聴者の忍耐力次第で短尺か長尺かは決まるのではないかと考えています。
岩間:忍耐力次第ですか、なるほど。そんな短尺動画機能が主要SNSで追加されたのには、一体どんな背景があるのでしょうか?
「時間×ユーザー数」の獲得において優秀な短尺動画
蒋:まず、SNSが目指しているのは、「ユーザーの時間を奪いに行く」ということです。いかにたくさんの時間を自分の媒体に費やしてもらえるかが重要です。短尺動画は「15秒だったら」という風に気軽に視聴してもらいやすいので、視聴される動画数が芋づる式に増えていき、結果的に長時間SNSを利用してもらえることにつながるでしょう。
また、TikTokへの対抗という側面も大きいと思われます。TikTokは短尺動画アプリを2017年に中国でリリース、2018年から中国以外の国にも進出しており、2022年10月時点で世界中に約10億のアクティブユーザー(MAU)がいます。
8月のレポートでもお伝えしたように、TikTokは他のSNSと比べて新規ユーザーにアプローチしやすいという特徴があります。InstagramやFacebook、Twitterは今までフォロワーに対して見せるコンテンツが中心で、フォローしていないユーザーには投稿がなかなか届かないという課題がありました。TikTokのような短尺動画機能を展開することは、新規ユーザーにアプローチしやすくなるというメリットが背景にあると考えます。
実際にInstagramは、2022年6月から短尺動画を作成・投稿できる「リール機能」に注力していますが、フォロワー以外のユーザーの目にも止まりやすいことからアクセス数は急増し、特に若年層の視聴者獲得につながっているようです。
岩間:確かにユーザーとしては、30分や1時間のコンテンツより、15秒など短いコンテンツの方が気軽に視聴しやすいほか、普段SNSをやらない人にとってもハードルが低いでしょうね。結果的にSNSが利用される総時間の拡大と、ユーザー数の増加にもつながりそうです。SNSは「時間×ユーザー数」が大きなKPIであると考えると、そのどちらにもアプローチできるのが短尺動画なんですね。
蒋:ここまで各SNSがTikTokと同様の短尺動画機能をリリースしたことを話しましたが、逆のパターンもあります。例えば、TikTokはInstagramと同じようなストーリー機能をリリースしました。機能面でいうと、SNS間の差別化が難しくなってきているといえるでしょう。
エンゲージメントは低迷?各SNSが苦戦している理由
岩間:各SNSは短尺動画機能をリリースしたことで、何か変化があったのでしょうか?TikTokに対抗する意味合いもあったということですが…。
蒋:Instagramのリール機能は、先述の通りアクセス数の増加は見られたものの、その他の効果はまだ出ていないようです。むしろ視聴時間とエンゲージメント率の低迷が目立ちます。アメリカのメタが実施した調査によると、視聴時間はTikTokの1割未満で、ほとんどのユーザーは投稿に全く反応を示していないとか。ユーザー数はInstagramの方が多いにもかかわらず、TikTokの方が短尺動画は見られているということですね。
岩間:苦戦しているようですね。どうして、そのようなことが起こってしまうのでしょう?
蒋:大きな理由として、オリジナルコンテンツの不足が挙げられます。Instagramのリールを見たことがある方はわかると思いますが、TikTokのコンテンツがそのまま使われていることが少なくないんですよね。Instagramっぽいコンテンツが少なく、TikTokとの差別化が見られない状況です。そうなると、ユーザーとしてもわざわざInstagramでリール動画を見ようとするモチベーションを持てないでしょう。
むしろTikTokに興味のないInstagramのユーザーがリール動画をみたときに、TikTokっぽい内容ばかり出てきたら、うんざりしてしまうのではないでしょうか。
岩間:各SNSで機能だけでなく、投稿内容まで差別化が見られなくなっているということですね。
蒋:そうですね。また、リール動画の投稿数自体も多くありません。アメリカではInstagramのクリエイターのうち、5分の1ほどしかリール動画を投稿する人がいないというデータも出ています。内容と数、両方の問題があります。
岩間:あるSNS用に作成したコンテンツをそのまま他のSNSに横展開していくだけでは、媒体のためにもユーザーのためにもならないと感じました。
短尺動画を活用したマーケティングで意識すべきこと
岩間:このような現状を受けて、マーケターは短尺動画機能をどう活用していくべきと考えますか?
蒋:各SNSの特徴を把握し、ユーザーに合わせたコンテンツを作ることが大切です。
例えばTikTokなら、親近感を感じられる内容やハウツー系と相性が良いです。Instagramの場合は「映え」や文字入れを意識したり、うるさい音を使わないように気を使ったり。Twitterならリアルタイムの情報を届けることを意識することが求められるでしょう。
■YouTubeの広告収入還元など、クリエイター支援も進行中
蒋:また、オリジナルコンテンツ不足の問題を解消するため、各SNSはクリエイター支援に関する施策に力を入れています。例えば、YouTube側は短尺動画のクリエイターに広告収入の45%を還元する仕組みを導入しています。収益につながるとあれば、インフルエンサーも短尺動画の作成に力を入れるようになるでしょう。企業のプロモーションにおいても、インフルエンサーを活用した短尺動画クリエイティブを選択することで、さらにこの領域が活性化していくと思われます。
以上、11月のコンテンツマーケティング動向「SNS編」でした。次月のネタも楽しみにお待ちください。
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IT企業でコンテンツマーケティングに従事した後、独立。現在はフリーランスのライターとして、ビジネスパーソンに向けた情報を発信しています。読んでよかったと思っていただける記事を届けたいです。