主要SNSで続々リリースの「短尺動画」機能。企業が乗り遅れないためには?|「2022年11月 コンテンツマーケティング最新動向レポート」

主要SNSで続々リリースの「短尺動画」機能。企業が乗り遅れないためには?|「2022年11月 コンテンツマーケティング最新動向レポート」

ヴァリューズのマーケターが、コンテンツマーケティングの今をお届けする本連載。今回のテーマは「短尺動画機能」です。この数年で、各SNSがこぞってリリースしている本機能。施策に活用しているものの、なかなか効果が出ていないと悩んでいるマーケターもいるのではないでしょうか。今回は、短尺動画の魅力と活用方法をお伝えします!


【解説者紹介】

TikTokに対抗し、主要SNSが短尺動画機能を次々とリリース





岩間:11月のコンテンツマーケティング最新動向レポートでは、縦型の短尺動画機能について取り上げていますね。短尺動画機能を主要なSNSすべてが展開するようになったとか。

そもそも、短尺って具体的にどれくらいの長さを指すのですか?従来のYouTubeやTwitter上の動画とどう違うのでしょう。










:短尺の明確な定義はないんですよね。各SNSにより定義は異なっており、例えばTikTokは3分以内、Instagramのリール機能では90秒以内、YouTubeでは60秒以内のものを短尺動画としています。あえて言うと、視聴者の忍耐力次第で短尺か長尺かは決まるのではないかと考えています。










岩間:忍耐力次第ですか、なるほど。そんな短尺動画機能が主要SNSで追加されたのには、一体どんな背景があるのでしょうか?




「時間×ユーザー数」の獲得において優秀な短尺動画





:まず、SNSが目指しているのは、「ユーザーの時間を奪いに行く」ということです。いかにたくさんの時間を自分の媒体に費やしてもらえるかが重要です。短尺動画は「15秒だったら」という風に気軽に視聴してもらいやすいので、視聴される動画数が芋づる式に増えていき、結果的に長時間SNSを利用してもらえることにつながるでしょう。

また、TikTokへの対抗という側面も大きいと思われます。TikTokは短尺動画アプリを2017年に中国でリリース、2018年から中国以外の国にも進出しており、2022年10月時点で世界中に約10億のアクティブユーザー(MAU)がいます。

8月のレポートでもお伝えしたように、TikTokは他のSNSと比べて新規ユーザーにアプローチしやすいという特徴があります。InstagramやFacebook、Twitterは今までフォロワーに対して見せるコンテンツが中心で、フォローしていないユーザーには投稿がなかなか届かないという課題がありました。TikTokのような短尺動画機能を展開することは、新規ユーザーにアプローチしやすくなるというメリットが背景にあると考えます。

実際にInstagramは、2022年6月から短尺動画を作成・投稿できる「リール機能」に注力していますが、フォロワー以外のユーザーの目にも止まりやすいことからアクセス数は急増し、特に若年層の視聴者獲得につながっているようです。








岩間:確かにユーザーとしては、30分や1時間のコンテンツより、15秒など短いコンテンツの方が気軽に視聴しやすいほか、普段SNSをやらない人にとってもハードルが低いでしょうね。結果的にSNSが利用される総時間の拡大と、ユーザー数の増加にもつながりそうです。SNSは「時間×ユーザー数」が大きなKPIであると考えると、そのどちらにもアプローチできるのが短尺動画なんですね。










:ここまで各SNSがTikTokと同様の短尺動画機能をリリースしたことを話しましたが、逆のパターンもあります。例えば、TikTokはInstagramと同じようなストーリー機能をリリースしました。機能面でいうと、SNS間の差別化が難しくなってきているといえるでしょう。




エンゲージメントは低迷?各SNSが苦戦している理由





岩間:各SNSは短尺動画機能をリリースしたことで、何か変化があったのでしょうか?TikTokに対抗する意味合いもあったということですが…。










:Instagramのリール機能は、先述の通りアクセス数の増加は見られたものの、その他の効果はまだ出ていないようです。むしろ視聴時間とエンゲージメント率の低迷が目立ちます。アメリカのメタが実施した調査によると、視聴時間はTikTokの1割未満で、ほとんどのユーザーは投稿に全く反応を示していないとか。ユーザー数はInstagramの方が多いにもかかわらず、TikTokの方が短尺動画は見られているということですね。








岩間:苦戦しているようですね。どうして、そのようなことが起こってしまうのでしょう?










:大きな理由として、オリジナルコンテンツの不足が挙げられます。Instagramのリールを見たことがある方はわかると思いますが、TikTokのコンテンツがそのまま使われていることが少なくないんですよね。Instagramっぽいコンテンツが少なく、TikTokとの差別化が見られない状況です。そうなると、ユーザーとしてもわざわざInstagramでリール動画を見ようとするモチベーションを持てないでしょう。

むしろTikTokに興味のないInstagramのユーザーがリール動画をみたときに、TikTokっぽい内容ばかり出てきたら、うんざりしてしまうのではないでしょうか。










岩間各SNSで機能だけでなく、投稿内容まで差別化が見られなくなっているということですね。










:そうですね。また、リール動画の投稿数自体も多くありません。アメリカではInstagramのクリエイターのうち、5分の1ほどしかリール動画を投稿する人がいないというデータも出ています。内容と数、両方の問題があります。










岩間:あるSNS用に作成したコンテンツをそのまま他のSNSに横展開していくだけでは、媒体のためにもユーザーのためにもならないと感じました。




短尺動画を活用したマーケティングで意識すべきこと





岩間:このような現状を受けて、マーケターは短尺動画機能をどう活用していくべきと考えますか?










各SNSの特徴を把握し、ユーザーに合わせたコンテンツを作ることが大切です。

例えばTikTokなら、親近感を感じられる内容やハウツー系と相性が良いです。Instagramの場合は「映え」や文字入れを意識したり、うるさい音を使わないように気を使ったり。Twitterならリアルタイムの情報を届けることを意識することが求められるでしょう。




YouTubeの広告収入還元など、クリエイター支援も進行中





:また、オリジナルコンテンツ不足の問題を解消するため、各SNSはクリエイター支援に関する施策に力を入れています。例えば、YouTube側は短尺動画のクリエイターに広告収入の45%を還元する仕組みを導入しています。収益につながるとあれば、インフルエンサーも短尺動画の作成に力を入れるようになるでしょう。企業のプロモーションにおいても、インフルエンサーを活用した短尺動画クリエイティブを選択することで、さらにこの領域が活性化していくと思われます。

以上、11月のコンテンツマーケティング動向「SNS編」でした。次月のネタも楽しみにお待ちください。






本記事でご紹介した、コンテンツマーケティング最新動向レポートは下記フォームから無料でダウンロードできます。ぜひお申し込みください。

ホワイトペーパーダウンロード【無料】|コンテンツマーケティング最新動向レポート(2022年11月版)

資料のダウンロードURLを、ご入力いただいたメールアドレスに送付させていただきます。
ご登録頂いた方にはVALUESからサービスのお知らせやご案内をさせて頂く場合がございます。

この記事のライター

IT企業でコンテンツマーケティングに従事した後、独立。現在はフリーランスのライターとして、ビジネスパーソンに向けた情報を発信しています。読んでよかったと思っていただける記事を届けたいです。

関連する投稿


約7割がAIライティングで効果を実感!記事作成の効率化は進む一方、オリジナリティと独自性の創出に課題も【未知調査】

約7割がAIライティングで効果を実感!記事作成の効率化は進む一方、オリジナリティと独自性の創出に課題も【未知調査】

未知株式会社は、AIライティングを実施している全国の20〜60代の男女を対象に「AIライティングの運用状況」に関する調査を実施し、結果を公開しました。


代替SNSとして期待の「Bluesky」急速なユーザー拡大の背景は? | 海外トレンドに見るビジネスの種(2025年1月)

代替SNSとして期待の「Bluesky」急速なユーザー拡大の背景は? | 海外トレンドに見るビジネスの種(2025年1月)

海外からやってくるトレンドが多い中、現地メディアの記事に日々目を通すのはなかなか難しいもの。そこでマナミナでは、海外メディアの情報をもとに世界のトレンドをピックアップしてご紹介します。今回取り上げるのは、Xに代わるSNSとして注目を集めている「Bluesky(ブルースカイ)」。世界規模でユーザー数を伸ばし続けてきた背景に注目していきます。


mixi2のユーザー数"143万人"は今後増えるのか。他SNSと比較して考察

mixi2のユーザー数"143万人"は今後増えるのか。他SNSと比較して考察

2024年12月16日に突如としてリリースされた「mixi2」。mixi2を使ってるという声も聞こえ始めるなか、他のSNSと比べると、どの程度のユーザー数なのでしょうか。この記事では、mixi2のユーザー数を、X、Facebookなどの主要SNSと比較。現在の立ち位置を紹介するとともに、招待制の他のSNSであるClubhouse、Blueskyと比較し、初動のユーザー数の伸びを分析しました。また、今後ユーザー数がどう推移していくのかも考察しています。


2024年に英語圏で注目された流行語は?「ブレイン・ロット」「デミュア」「ロマンタジー」など | 海外トレンドに見るビジネスの種(2024年12月)

2024年に英語圏で注目された流行語は?「ブレイン・ロット」「デミュア」「ロマンタジー」など | 海外トレンドに見るビジネスの種(2024年12月)

海外からやってくるトレンドが多い中、現地メディアの記事に日々目を通すのはなかなか難しいもの。そこでマナミナでは、海外メディアの情報をもとに世界のトレンドをピックアップしてご紹介します。今回は、英語圏で2024年に話題になった、「ブレイン・ロット」「デミュア」「ロマンタジー」などの流行語やその背景にあった社会現象を取り上げます。


特化型SNS「Lemon8」はなぜ人気を伸ばしている? ユーザー属性からその魅力を分析!

特化型SNS「Lemon8」はなぜ人気を伸ばしている? ユーザー属性からその魅力を分析!

ここ一年の間に大きくユーザー数を増やしたSNS「Lemon8」。そのユーザーの多くは女性のようですが、いったいどのような魅力がユーザーを惹きつけているのでしょうか?また、他のSNSとはどんな違いがあるのでしょうか。Web行動ログデータを用いて、Lemon8ユーザーの人となりを分析し、その魅力と他SNSとの違いを考察します。


最新の投稿


サブスク解約理由の7割超が「料金・コスト」!理想のサブスクとして「自分好みのカスタマイズ」や「柔軟な料金設定」を求める意見も【アスマーク調査】

サブスク解約理由の7割超が「料金・コスト」!理想のサブスクとして「自分好みのカスタマイズ」や「柔軟な料金設定」を求める意見も【アスマーク調査】

株式会社アスマークは、一都三県、二府二県の20~50代男女に「サブスクリプションサービスに関するアンケート調査」を実施し、結果を公開しました。


推し活人口は1384万人、市場規模は3兆5千億円に【CDG調査】

推し活人口は1384万人、市場規模は3兆5千億円に【CDG調査】

株式会社CDGと、株式会社Oshicocoは、第2回となる推し活実態アンケート調査を実施し、調査結果を公開しました。


BPaaSの活用意向は約7割!デジタルマーケ業務での導入効果は「広告運用の効率化」が最多【バレットグループ調査】

BPaaSの活用意向は約7割!デジタルマーケ業務での導入効果は「広告運用の効率化」が最多【バレットグループ調査】

バレットグループ株式会社は、マーケティング担当者および管理者、経営層を対象に「マーケティングとBPaaSについての調査」を実施し、結果を公開しました。BPaaS(Business Process as a Service)とは、BPO(業務プロセスのアウトソーシング)とSaaS(クラウドツール)を組み合わせ、業務プロセス全体を包括的に提供するサービスのことを指します。


第2次トランプ政権が発足 日本企業への影響は

第2次トランプ政権が発足 日本企業への影響は

2025年1月20日。ついに第2次トランプ政権が発足しました。大統領選挙前後からすでにトランプ政権に対するさまざまな憶測が飛び交っており、就任式でいくつもの大統領令へ署名をする姿には大きな反響も。そのような第2次トランプ政権の大きな肝となる政策は一体何なのでしょうか。本稿ではトランプ大統領がことあるごとに強く押し出している「関税」にフォーカスし、国際政治学者としてだけでなく、地政学リスク分野で企業へ助言を行うコンサルティング会社の代表取締役でもある和田大樹氏が解説します。


Adjust、アプリの年末年始休暇に関する最新インサイトを発表

Adjust、アプリの年末年始休暇に関する最新インサイトを発表

Adjustは、2024年の年末年始休暇におけるモバイルアプリ利用のトレンドや最新のインサイトを発表しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ