中国Z世代の調味料に対する新たなニーズは?❘ 中国トレンド調査

中国Z世代の調味料に対する新たなニーズは?❘ 中国トレンド調査

消費水準が高まるにつれて、現在中国における調味料業界が全体的に好調を見せています。2021年から新型コロナウイルスの影響を受けたものの、消費者は外食を控え、自炊比率が上がっため、中国の調味料業界の発展潜在力は依然として高いと言えます。一方、近年若者たちにとって、自宅で自炊することが幸福感を高めることから、料理は人気を増してきました。本記事では、中国の調味料業界の発展過程及び中国Z世代の調味料に対するニーズを解説していきます。


調味料業界の現状と発展

消費水準が高まるにつれて、中国における調味料業界が全体的に好調を見せています。アイメディアリサーチが発表した「2022~2023年中国調味料業界の商業洞察及び発展潜在力研究報告書」によると、2022年に中国調味料市場規模は5,133億元(約10兆円)、2027年に10,028億元(約20兆円)に達すると予想されました。

出典:https://data.iimedia.cn/page-category.jsp?nodeid=44278520
iimedia.cnの記事をもとに、ヴァリューズが翻訳

中国の調味料企業の発展過程を簡単に紹介しましょう。中国の調味料の歴史は、日本と比較し長くはありません。2001年から2013年まで中国の調味料業界は高度成長期にあり、醤油業界の海天、李錦記、厨邦、東古、鶏精業界の夫人楽、家楽、酢業界の恒順、味精業界の阜豊などが相次いで中国の調味料市場を制覇しました。

それから2014年以降現在に至るまで、収入水準が絶えず向上して住民の健康観念が強化されたことで、中高級調味料市場は発展機会を迎え、「原乳、有機、低塩」などを掲げる調味料が続々と出ています。

アイメディアコンサルティングによると、調味料業者は2014年の1万8982社から2020年の9万991社に増えましたが、2021年にはコロナウイルスの影響を受け、3万5764社に減少しました。一方、中国調味料協会によると、2021年調味料100大企業の年間生産量は1831万tに達し、3年間の複合成長率は13.19%でした。

出典:https://data.iimedia.cn/page-category.jsp?nodeid=44278521
iimedia.cnをもとに、ヴァリューズが翻訳

総じて見ると、中国の調味料業界は2021年から新型コロナウイルスの影響を受けたものの、発展潜在力は依然として非常に高いと言えます。感染拡大の影響で中国の人々は外食を控え、自炊比率も上がるようになりました。

中国のZ世代による、新たな調味料ニーズ

また、近年中国のZ世代(1995年以降に生まれた若者の総称)と呼ばれる若者達は、自宅で楽しみを見つける傾向があります。そんな若者たちにとって、自宅で自炊することが幸福感を高め、料理をすることは次第に人気になりました。では、中国の若者達は調味料に対してどのようなニーズを持っているのでしょうか。具体的な例を挙げながら、中国のZ世代の消費者心理を中心に、紹介していきます。

1. 健康意識がトレンドに

近年中国の若者達の間で「養生」というワードが話題になり、健康な食生活を求める傾向があります。そうした若者の心理を考慮し、現在中国の多くの人気食品には「零糖」「低カロリー」「無添加」といったラベルが貼られています。

中国では「民は食を天とする」ということわざがあります。ここ数年、人々の健康に対する関心が高まるにつれて、健康消費はトレンドとなりました。アイメディアリサーチによると、中国の消費者たちが食べ物を選択する際の主な要素のうち、健康で安全な調味料に対して、よりお金をかけるという消費者の割合が60%を超えました。

出典:https://www.iimedia.cn/c400/78132.html
iimedia.cnをもとに、ヴァリューズが翻訳

消費者の健康志向を反映した代表的な例として、「三不加」というブランドの調味料が挙げられます。「三不加」の三は「ゼロ炭水化物、ゼロ脂肪、ゼロ砂糖」を指しています。例えば、三不加醬油の宣伝ポスターでは、非遺伝子組み換え大豆を使い、食品添加物と防腐剤が添加していないことをアピールしています。

2. 料理の手間を減らす調味料が人気

多くの若者は、一人暮らしを始めたタイミングで自炊を始めます。仕事のため時間がなかったり、料理を苦手に感じたりする若者は少なくないです。したがって味、食感を豊かにでき、調理時間と難易度を一気に減らすことができるオールインワンソース、調理済み食品、冷凍野菜などが若者に好まれています。

代表的な例は、「陶陶居怠け者調味料パック」という商品です。「陶陶居」は中国広州市の飲食業における老舗の一つです。「陶陶居怠け者調味料パック」は中国の新中産層が、5分間で美味しい料理を作ることができるようにするための調味料パックです。複雑な手順なしで中国の名物料理が簡単に、美味しく作れることが商品の魅力です。

陶陶居怠け者調味料パック
出典:https://detail.tmall.com/item_o.htm?abbucket=1&id=684176156906&ns=1

3. SNS映え、高級感を求める

SNS及び写真アプリの発展に伴い、中国のZ世代は「写真世代」と言われています。SNS投稿を前提に、見映えがよく、高級感がある料理が求められています。そのため、現在中国の多くの調味料ブランドは、商品のパッケージを工夫しています。

例えば、中国の「国潮」ブームに乗り、商品のパッケージがデザインされています。国潮とは、中国固有の要素を持っているおしゃれなスタイルです。現在中国のブランドがよく使う新しいマーケティング手段となっています。そのほかにも人気アニメ·漫画のパッケージも若い消費者たちの注目を多く集めます。これらのパッケージは、商品の販売量を大幅に高めているそうです。

チャイナスタイルでおしゃれなパッケージデザイン
出典:https://detail.tmall.com/item_o.htm?id=691924024010&skuId=5086375634476

4. 持ち運びやすさ、シェアのしやすさも重要

「交流」はZ世代の重要な消費動機です。Z世代は対面での交流を好みます。例えば、キャンプは最近若者の間で人気が高まっていますが、そこでシェアできるミニ包装のスープやおしゃれなパッケージの調味パック、ソースなど、携帯しやすい調味料が好まれています。

ホットワイン調味パック、ガーリックバターソース
Vepiaopiao TMALLサイト
出典:https://vepiaopiao.tmall.com/search.htm?spm=a1z10.1-b-s.w5002-21567645573.1.36762627vJmmuN&search=y

中国の調味料市場の展望

日本の発展過程と同じく、中国社会も次第に高齢化、独身化、核家族化の一途を辿っています。高い効率性が求められる社会において、便利で時短になる調味料の市場は、強力な発展潜在力を持っています。

インターネットが普及するとともに、中国の若者達はますます自宅にいる時間が増えています。加えて新型コロナウイルスの影響で、テレワークやオンライン授業が可能になり、家を出なくても普通の生活を維持できるようになりました。これが、より多くの新産業の創出に影響しています。

「怠け者」のように見える若い世代は、依然として質の高い生活を追求しています。つまり、「面倒を極力省きたいが、美味しい食べ物、おしゃれな生活を望む」という消費者心理があります。このようなニーズは、近年の中国における調理済み食品ブランド及び複合調味料の台頭を引き起こしたと考えられます。

今後、中国の調味料市場はさらに競争が激しくなるものと予想されます。購買力の高い若者の心を掴んでこそ、ビジネスチャンスを掴むことができるでしょう。

参考URL

「味蕾的千亿争夺战3.0,油盐酱醋如何吃出新滋味?」
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1751537914454961687&wfr=spider&for=pc
「解密Z世代调味品消费《2022年调味品趋势洞察》发布」
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1750973420320035557&wfr=spider&for=pc
「精致宅催生消费新趋势 这届年轻人吃喝不只是为了味道」
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1699622214179116832&wfr=spider&for=pc
「争夺你的味蕾,调味品迎来“二次革命”」
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1710888235200115824&wfr=spider&for=pc
「消费者追求“零添加”调味品,“油盐酱醋”争夺战正式打响」
https://weibo.com/ttarticle/p/show?id=2309404845052538257911#_loginLayer_1670677966620

この記事のライター

広東省出身の中国人留学生。現在は名古屋大学でメディアを専攻している。

関連する投稿


健康元年、中国社会はどこへ向かう? 「体重管理年」から見るフィットネスと健康食品市場

健康元年、中国社会はどこへ向かう? 「体重管理年」から見るフィットネスと健康食品市場

2024年、中国政府は「体重管理年」と銘打った3年間の国家プロジェクトを始動。「ダイエット」「低糖質」「ヘルシーライフ」などのキーワードが、SNSでも頻繁に取り上げられ、若者を中心に関心が高まり、静かな「健康ブーム」が巻き起こっています。そんな中国における健康意識の高まりと、それに伴うフィットネス、および健康食品市場の成長について考察しました。


ショッピングよりも体験重視!中国の若者の間で広がる「経験経済」とは

ショッピングよりも体験重視!中国の若者の間で広がる「経験経済」とは

コロナ禍以降、中国における消費スタイルは理性的になったと言われています。ここ数十年の消費パターンは商品の購入によってニーズを満たすものでしたが、近年の若者は独特な消費体験をもたらす製品やサービスを選ぶようになりました。このような状況において成長しているのが「経験経済」です。この「経験経済」は農業、工業、サービスに続く第四の経済形態とされており、人々の需要は表面的な満足ではなく「実際的な価値」を得られるものに向いています。この記事では、人々が「実際的な価値」を得るにあたってどのような体験を楽しんでいるのかを紹介します。


低アルコールの代表「ほろよい」。「華よい」との違いは?ブランド戦略を徹底調査

低アルコールの代表「ほろよい」。「華よい」との違いは?ブランド戦略を徹底調査

若者の「アルコール離れ」が叫ばれる中、お酒が苦手な人でも飲みやすい設計で、低アルコール市場を席巻するサントリーの「ほろよい」。2024年9月には、同じく果実系の低アルコールブランド「華よい」がキリンから登場しました。今回は華よいと比較しながら、ほろよいの集客戦略と購買状況について分析していきます。


Oisixとnoshの動向を調査!新生活の忙しい若者には宅配食+αがおすすめ

Oisixとnoshの動向を調査!新生活の忙しい若者には宅配食+αがおすすめ

最近、外食やテイクアウト、簡単に調理できる食品など、新しい食事スタイルを提供するサービスが人気を集めています。本記事では多くの人に利用されているOisixとnoshに焦点をあてながら、デリバリーサービスや自炊との比較を交え、現代の人々の食生活のトレンドを分析します。


独身者増加の中国で「一人暮らし経済」が成長中

独身者増加の中国で「一人暮らし経済」が成長中

人口抑制政策などの影響により少子化が進んでいる中国ですが、近年では結婚率も低下し独身者が増加しています。人口減少に拍車がかかる一方、このような状況によって生まれた新たな消費スタイルが「一人暮らし経済」として発展しています。本記事では、この「一人暮らし経済」において人々の間にどのようなニーズが存在するのか調査しました。


最新の投稿


BtoB企業の約4割が「アイデア不足」がコンテンツ制作の課題に!7割以上がリサイクルはマーケティング効果を高めると注目【IDEATECH調査】

BtoB企業の約4割が「アイデア不足」がコンテンツ制作の課題に!7割以上がリサイクルはマーケティング効果を高めると注目【IDEATECH調査】

株式会社IDEATECHは、BtoB企業に勤めるコンテンツマーケティング担当者を対象に、コンテンツのリサイクルに関する実態調査を実施し、結果を公開しました。


情報行動の“世代差”が鮮明に!PRIZMA、SNS利用状況に関する調査結果を公開

情報行動の“世代差”が鮮明に!PRIZMA、SNS利用状況に関する調査結果を公開

株式会社PRIZMAは、全国のZ世代(15〜27歳)、Y世代(28〜42歳)、X世代(43〜58歳)の方を対象に「2025年最新版|世代別のSNS利用状況に関する調査」を実施し、結果を公開しました。


失敗から学ぶ ~ 失敗学とビジネス

失敗から学ぶ ~ 失敗学とビジネス

できることなら経験したくない「失敗」。しかし「失敗学」によれば、その「失敗」も成功のきっかけの一部と言えそうです。「失敗学」とは失敗を推奨しつつ、その原因を追求・分析・周知させることにより、同じような過ちを繰り返さないという思想として学術的にも提唱されており、ビジネス現場においてもその理念は通じるものがあります。本稿では、広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長、一般社団法人マーケティング共創協会理事・研究フェローを務めている渡部数俊氏が、類似する「失敗工学」また「安全工学」という理論も加え、解説します。


オルグロー、AI Overviewに関する利用実態調査結果を公開

オルグロー、AI Overviewに関する利用実態調査結果を公開

オルグロー株式会社は、新たな検索体験を提供するAI Overviewのユーザー動向を深く理解するため、国内在住の男女を対象にアンケートを実施し、結果を公開しました。


若年層の5人に1人が商品差探しに生成AIを利用!商品探索で使いたいAI機能は"条件自動絞り込み"と"横断価格比較"【いつも調査】

若年層の5人に1人が商品差探しに生成AIを利用!商品探索で使いたいAI機能は"条件自動絞り込み"と"横断価格比較"【いつも調査】

株式会社いつもは、ネットでの探索行動とAI検索の利用実態に関するアンケート調査を実施し、結果を公開しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ