積立投資ブームの今、Webログから読み解く証券トレンド

積立投資ブームの今、Webログから読み解く証券トレンド

積立投資ブームが到来していますが、証券トレンドにはどのような特徴があるのでしょうか。ネット証券だけでなく、スマホ証券にも注目が集まっているようです。Webログをもとに、証券会社の業界シェアや利用者の属性を中心に調査しました。


背景 ~ 2024年から始まる新NISA制度

2024年から新NISAがはじまることをご存じの方は多いのではないでしょうか。

現行のつみたてNISAと比較して、非課税保有期間や口座開設可能期間が無期限化され、年間の投資上限額が拡大するなど、多くのメリットがあります。

日本証券業協会の調査によると、2022年9月末のつみたてNISAの口座数は466万口座でした。2021年末は、339万口座であったため、37.6%も増加しています。

政府が投資を後押ししていることもあり、投資は危険なものというイメージは薄れているかもしれません。とくに積立投資は、短期売買ではなく長期的保有を目的としたリスクの低い投資です。100円という少額からはじめられるサービスもあるため、「それならやってみよう」と興味を持つ人も増えていると考えられます。

このような積立投資ブームが背景にある現在の証券トレンドの特徴について、検討者や利用者の実態が反映されやすいWebログをもとに見ていきます。

今回は、ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用いて、調査・分析しました。

業界シェアでは、SBI証券と楽天証券が2強

まずは、直近1年間(2022年2月〜2023年1月)の証券会社におけるWebサイトの業界シェアをみてみます。

SBI証券が22.7%、楽天証券が22.4%と高いシェア率を誇ります。次いで、SMBC日興証券、マネックス証券です。

図:業界シェア
期間:2022年2月~2023年1月
分析ツール:Dockpit
デバイス:PC、スマートフォン

SMBC日興証券やマネックス証券のシェアは、2022年に入ってから微増していますが、SMBC日興証券は、2022年11月から減少傾向にあります。相場操縦事件による3か月間の業務停止命令を受けたことが少なからず影響していると考えられます。それでも業界シェア3位に位置しているのは、大手証券会社という信用があるからでしょう。

図:業界シェア推移
期間:2022年2月~2023年1月
分析ツール:Dockpit
デバイス:PC、スマートフォン

若年層ほどネット証券の割合が高い

では、年代別で見た場合の業界シェアには、どのような特徴があるのでしょうか。20代、30代、40代のそれぞれの年代における業界シェアの結果は、以下の円グラフの通りです。

それぞれの年代に共通していえるのは、上位を占めているのが楽天証券とSBI証券という点です。

大きな特徴としてあげられるのは、若年層ほどネット証券の割合が高いことです。楽天証券とSBI証券はネット証券の代表例としてあげられますが、20代は2社が全体の59.9%を占めています。30代でも54.8%と半数以上が楽天証券とSBI証券です。一方、40代は、楽天証券とSBI証券をあわせても46.5%と、50%を下回る結果となりました。

若年層にネット証券が人気の理由は、2点考えられます。ネット証券の手軽さとコストです。

ネット証券は、PCやスマホで手続きが完結するため、実店舗に足を運ぶ必要がありません。20代〜30代にかけては会社員として働く人も多いため、24時間利用でき、時間制約がないことは大きなメリットです。PCやスマホからアクセスできる手軽さが人気の要因のひとつといえるでしょう。

店舗型の証券会社の場合は、店舗に立ち寄りさえすれば、担当者に対応してもらえます。しかし、人が対応するため人件費が発生します。その結果、手数料が高く設定される傾向にあるため、コストの面ではネット証券に軍配が上がります

インターネットが身近にある世代だからこそ、高い手数料を払って担当者に対応してもらうよりも、自分で調べて完結させることで手数料を抑える方法を選ぶのではないかと推測できます。

図:業界シェア20代
期間:2022年2月~2023年1月
分析ツール:Dockpit
デバイス:PC、スマートフォン

図:業界シェア30代
期間:2022年2月~2023年1月
分析ツール:Dockpit
デバイス:PC、スマートフォン

※オレンジ(1.6%)は「GMOクリック証券」

図:業界シェア40代
期間:2022年2月~2023年1月
分析ツール:Dockpit
デバイス:PC、スマートフォン

6割が男性、40代の比率が最も高い

次に、証券会社のWebサイト利用者の属性を見てみましょう。

証券会社のWebサイト利用者は、男性が60.1%で、対する女性は39.9%です。男性の方が証券会社への関心を持っている人が多いことがわかります。

図:「証券 企業」性別
期間:2022年2月~2023年1月
分析ツール:Dockpit
デバイス:PC、スマートフォン

続いて、年代別です。

20代から40代にかけて右肩上がり、反対に40代以降は構成比が低くなっています。「貯蓄から投資へ」といわれて久しいですが、老後に向けた資産形成を考えている40代は、証券会社に対して高い関心を持っているとも考えられます。

20代、30代はライフステージの変化(結婚・出産・転勤など)が多く、すぐに引き出せる貯蓄を重視する傾向があるため、積立投資については、一般的に家事や育児が落ち着く40代がピークになっているのではないでしょうか。

積立投資は長期的に見て利益を出すことを目的としており、長期保有が望ましく、若いうちにはじめたほうが有利です。しかし、ライフステージの変化を考えると、理想通りに積立投資にお金を回せない家庭も多く、20代の関心度が低い結果になっているとも考えられます。

図:「証券 企業」年代
期間:2022年2月~2023年1月
分析ツール:Dockpit
デバイス:PC、スマートフォン

業界基本指標として、1人当たりのセッション数についてもみてみましょう。

40代のセッション数は、20代のおよそ1.8倍です。上記で見た年代別の証券会社への関心度と同様に、年代が上がるほど1人当たりのセッション数が増加しています。また、40代は20代と比較して、直帰率も低く平均滞在時間も長いことから、年代が上がるにつれて、証券会社に強い興味を持ってアクセスしていることがわかります。

図:業界基本指標
期間:2022年2月~2023年1月
分析ツール:Dockpit
デバイス:PC、スマートフォン

スマホ証券にも注目が集まる

証券トレンドとしては、どのようなキーワードが注目されているのでしょうか。

これまでの分析結果からもわかる通り、「楽天証券」や「SBI証券」といった主要な証券会社の指名検索が上位を占めています。

注目すべきは、13位にSMBC日興証券が運営するメディア「日興フロッギー」が入っていることです。日興フロッギーでは、お金や投資に関するコンテンツが公開されています。記事を読んで興味を持てば、記事から直接投資ができるという画期的なサービスです。約3,900銘柄の株・ETF・REITを100円から購入できます。

ネット証券の人気が高まる理由のひとつに利用の手軽さが考えられることもあり、日興フロッギーを含めたスマホ証券にも注目が集まっているといえそうです。PCよりも手軽にアクセスできるスマホ証券は、今後ますます人気が高まり普及すると期待できます。

図:流入キーワード
期間:2022年2月~2023年1月
分析ツール:Dockpit
デバイス:PC、スマートフォン

日興フロッギーの成長要因と背景については、こちらの記事でまとめています。

スマホ証券のユーザー動向については、こちらの記事でまとめています。

まとめ

今回は、Webログからわかる、証券トレンドについての調査・分析を行いました。

証券会社のWebサイト利用者は、20代、30代、40代と右肩上がりとなっていました。20代や30代はライフステージの変化が大きく、すぐに引き出せる貯蓄を重視する一方で、40代では家事や育児が一段落するため、投資への関心度が高まるといえるのではないでしょうか。

業界シェアとしては、SBI証券と楽天証券のネット証券が上位を占めています。特に20代、30代では、上記2社が50%以上を占めます。

ネット証券は店舗型の証券会社と異なり、手続きなどがオンライン上で完結します。また、人件費がかからないことで、店舗型の証券会社よりも手数料が低く設定される傾向にあります。手続きの手軽さとコスト面を重視して、若年層ではネット証券を選ぶ人が多いと考えられます。

手軽さを重視するという側面では、スマホ証券も注目されています。記事から直接投資ができるというSMBC日興証券が展開する画期的なサービス、「日興フロッギー」も証券トレンドのキーワードのひとつとして上位に入っています。

積立投資ブームのなか、大手証券会社が展開するサービスだけでなく、手軽に利用できるネット証券やスマホ証券などが若年層の間で人気です。新NISAがはじまることもあり、この1年間で証券トレンドにも変化があるのではないでしょうか。

今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

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この記事のライター

Webライター。転職、キャリア、美容、不動産、金融ジャンルの記事を執筆中。新卒からシステムエンジニアとして働いていました。ライティングにおいては、わかりやすい文章を書くことはもちろん、どこかくすっと笑えるような、読み手が温かい気持ちになれる記事を書くことを心がけています。

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