コロナ禍で経済に関する興味の変化を調査
■手堅く「貯蓄」先行?それとも「投資」に希望?
長引くコロナ禍での生活。コロナ前のライフスタイルから一変し、それに伴って抱く心配ごとが変わった人も多いのではないでしょうか。特に大きな変化の一つとして「経済活動」が挙げられるのではないかと思います。生活に直結するのはやはり「お金」の問題。このシビアな問題を今、どう捉えている人が多いのか、ヴァリューズの消費者Web行動ログデータ「Dockpit」を使って見てみましょう。
まず、2019年10月から2020年9月の間に、「投資」と「貯蓄」というキーワード検索をしたユーザーを抽出しました。
検索ユーザー数としては「投資」に興味を持っている人が圧倒的多数という結果に。また「貯蓄」に関しては横ばいで動きがありません。
「投資」をみると、2020年4月の緊急事態宣言発出時には一度下降していますが、その後2020年5月には急上昇。その後もほぼ右肩上がりとなっています。2020年4月時から9月までの伸長率は約1.35倍となっています。
図:「投資」vs「貯蓄」UU数推移
期間:2019年10月〜2020年9月
デバイス:PC&スマートフォン
続いて属性を見てみます。
「投資」への関心は男性の方が高く、65.8%。対して「貯蓄」は女性が多数の53.7%との結果に。
図:「投資」vs「貯蓄」性別
期間:2019年10月〜2020年9月
デバイス:PC&スマートフォン
それでは年代別に見るとどうでしょうか。
「投資」「貯蓄」共に20代から40代が関心を高く持っているようです。
「貯蓄」は30代がピークとなっていますが、これはライフステージの変化(結婚・出産など)が関係しているのではと推測します。その前後の20代、40代になるとまた投資に関心が戻るといった動きが興味深く見受けられます。
図:「投資」vs「貯蓄」年代別
期間:2019年10月〜2020年9月
デバイス:PC&スマートフォン
SMBC日興証券「日興フロッギー」に見る数値とオウンドメディア施策
■“記事から株が買える投資サービス”「日興フロッギー」とは
「FROGGY(フロッギー)」概要※
URL : https://www.froggy.money/
公開日:2016年11月1日
運営会社:SMBC日興証券株式会社
協力会社:株式会社コルク、株式会社 SIX、株式会社ピースオブケイク(五十音順)
(※2016年11月1日時点名称及び概要)
図:「日興フロッギー」TOPページ
■オウンドメディアを始めたきっかけは?
SMBC日興証券は約340万(2020年9月時点)を超える口座数を持つ大手証券会社です。その大手証券会社がなぜオウンドメディアを始めたのでしょうか。
「証券会社のサイトというのはどこも似ていて、金融商品の名前がずらりと並んでいます。商品の説明だけでは投資のイメージがわかない、情報が多すぎてよくわからないという声もありました。しかし、既存サイトほうがぴったり合うお客様もいらっしゃるのです。そのため、既存サイトを変更するのではなく、新しく違った切り口のものを提供しようということでオウンドメディアを立ち上げました」
(「日興フロッギー」の前身、「FROGGY」の2016年11月1日に開設時。ダイレクトチャネル事業部 兼 経営企画部 副部長の吉岡伸輔氏(当時)のインタビューによる。)
■「日興フロッギー」サイトのユーザー数推移を見てみると?
それでは2019年10月から2020年9月の間に、「日興フロッギー」サイトにアクセスしたUU数を見てみます。
2020年2月から大きく右肩上がりに増えている事が分かります。同年9月までの伸長では約2.5倍となっています。この要因としては、2月に新サービスを発表したことが考えられます。(サービス詳細については後項参照)
図:「日興フロッギー」サイトUU数
期間:2019年10月〜2020年9月
デバイス:PC&スマートフォン
一緒にセッション数も見てみましょう。
急増と言っていいほどの右肩上がりが見て取れます。先程と同様に2020年2月から直近の9月までの伸長率を見てみると、約7.8倍となっています。
図:「日興フロッギー」セッション数
期間:2019年10月〜2020年9月
デバイス:PC&スマートフォン
■オウンドメディアから直接投資ができる、画期的な仕組みが鍵?
前項の2020年2月からのセッション数急増に絡んでいると考えられるサービスというのが、「オウンドメディア記事から直接投資につながる」という画期的な仕組みではないかと推測できます。
2020年9月現在、「日興フロッギー」では1,200本以上のお金・投資に関するコンテンツが無料で公開されているそう。ユーザーは「日興フロッギー」上のさまざまな記事から企業と出会い、もし興味を持ったら、記事からそのまま約3,700銘柄に投資ができるという仕組みになっています。
そのUIもとても直感的。記事を読み(投資のできる記事にはマスコットキャラクターの「カエル」マークがついています)、その記事に掲載されている企業に興味を持ったら、コンテンツ上にある「フロッギーならそのまま買える」ボタンをクリック。すると即座に口座確認画面に遷移されるというスムーズさです。
図:「日興フロッギー」記事一覧
図:「日興フロッギー」スマホ画面での取引手順
また2020年3月には、「日興フロッギー+docomo」というdocomoのdポイントで投資ができるサービスもスタート。100ptから投資ができ、放置されがちな少額のポイントも活用できるとあって、新規口座開設数はサービス開始前の約7倍、取引件数は約5倍(※2020年8月末時点)を突破したとのこと。
こういった新サービスも追い風になっていると言えるでしょう。
図:「日興フロッギー+docomo」イメージ
■オウンドメディアから新規口座開設コンバージョンとの繋がりを見てみると…
オウンドメディア開設当初、「日興フロッギー」は既存顧客への取引喚起を目的としていたと聞きます。その後は取引サービスの機能も拡張し、dポイントとの連携も開始され、新規口座数も増加。
では現在では、オウンドメディアから新規口座開設への接触はどれくらいあるのでしょう。「日興フロッギー」のサイトと、「口座開設フォーム」の併用率を見てみましょう。
こちらは2020年4月から9月の半年間のデータとなります。
「日興フロッギー」サイトから見ると、「口座開設フォーム」に接触したユーザーは、約17%となっています。
図:サイト併用率①
期間:2020年4月〜9月
デバイス:PC&スマートフォン
続いて、「口座開設フォーム」接触者を見てみましょう。
こちらは85.4%が「日興フロッギー」にも接触しているとの結果に。
口座開設予定の新規顧客にとっても「日興フロッギー」は十分魅力あるコンテンツであると言えそうです。
図:サイト併用率②
期間:2020年4月〜9月
デバイス:PC&スマートフォン
まとめ
失敗するオウンドメディアには「コンセプトが不明瞭」、「誰に何を伝えたいのかが分からない」、「宣伝が多い」などといった意見をよく耳にしますが、今回の一事例となった「日興フロッギー」はそれらと何が違ったのでしょうか。
・ターゲットが明確になっている(開設当初の「既存顧客への投資啓蒙」という目的設定。)
・運営目的が定まっている(投資喚起と、投資への誘導を狙った、自社の取引サイトへの動線機能が上手く備わっている。)
・多種多様の豊富なコンテンツ(投資という初心者には分かりづらいジャンルに対して、プロのクリエイターの登用や漫画の起用などで、理解しやすいコンテンツ作りを目指している。)
一部かつ、おおまかではありますが、上記のような事が挙げられるのではないでしょうか。
読み物としても投資に役立つだけでなくデイリーな情報も参照でき、なおかつ口座を持っていれば、旬な記事から直接気軽に投資できる。このような多様な機能を持つメディアであれば、自然とCVが上がるのも納得と言えそうです。
調査概要
全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「Dockpit」を使用し、2019年10月~2020年9月におけるWeb行動ログを分析しました。
マナミナ 編集部 編集兼ライター。
金融・通信・メディア業界を経て現職。
趣味は食と旅行。