Web広告に注力する地銀は?再編が進む地方銀行のマーケティング事例を解説

Web広告に注力する地銀は?再編が進む地方銀行のマーケティング事例を解説

現在再編が進み「1県1グループ」になりつつある地方銀行(以下、地銀)。コロナ禍においては、対面での営業が難しい時期が長く続きました。そのため今後の地銀の活性化に向けては、デジタルマーケティングの施策が必要となっています。 今回は地方銀行のうち、2022年の1年間でアクセス数首位であったスルガ銀行、福岡銀行、横浜銀行、千葉銀行、埼玉りそな銀行について調査し、地銀が採るべきデジタルマーケティングのヒントを探りました。


各地方銀行(地銀)を簡単にご紹介

地銀はその地域に根差しているため、他の都道府県の人にとってはピンとこないかもしれません。各地銀を簡単にご紹介します。

スルガ銀行

スルガ銀行は静岡県沼津市に本店を置き、静岡県や神奈川県を営業エリアとしています。地銀ながら、東京や大阪など都市圏にも店舗が多くあり、インターネットバンキングも全国展開しています。

福岡銀行

福岡銀行は福岡県福岡市に本店を置く、ふくおかフィナンシャルグループ傘下の地方銀行です。ふくおかフィナンシャルグループは2023年10月、「福岡中央銀行」を完全子会社化する予定としています。

横浜銀行

コンコルディア・フィナンシャルグループ傘下である横浜銀行。神奈川県横浜市に本店を置いています。今後、同県内の神奈川銀行を完全子会社化する予定となっています。

千葉銀行

千葉銀行は千葉県千葉市に本店を置き、県内で大きなシェアを誇っている銀行です。地銀としてはトップクラスの資産規模、収益力を有しており、海外にも店舗・駐在員事務所があります。

埼玉りそな銀行

埼玉りそな銀行は、りそなホールディングス傘下の銀行です。本店は埼玉県さいたま市で、東京都や群馬県などにも支店があります。

サイト訪問者No.1はスルガ銀行、福岡銀行は滞在時間でトップ

それでは、スルガ銀行、福岡銀行、横浜銀行、千葉銀行、埼玉りそな銀行の5つの地銀について、集客状況を調査していきましょう。

今回の調査は、各公式サイトに訪問したユーザーのデータをもとにしています。使ったツールは、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」です。

まずはサイトの訪問者数です。5つの地銀の中でサイト訪問者が最も多かったのはスルガ銀行で、5,510,000人でした。次にサイト訪問者が多かったのは福岡銀行で、直帰率が最も低く、平均滞在時間も長くなっています。横浜銀行は新規率が最も低く既存ユーザーが多いのに対し、埼玉りそな銀行は新規の訪問者の割合が高くなっていました。

「スルガ銀行」「福岡銀行」「横浜銀行」「千葉銀行」「埼玉りそな銀行」基本指標
集計期間:2022年2月~2023年1月
デバイス:PC・スマートフォン

スルガ銀行は日本全国に支店があり、銀行代理店業者も約80社が提携しています。サイト訪問者の居住都道府県を見ると(下図)、他の地銀はそれぞれの地域からのアクセスが主であるのに対し、スルガ銀行はその他の全国からアクセスされていることがわかります。他の銀行に比べて全国的に知名度があることが、訪問者数に影響しているといえそうです。サイト訪問者が次に多い福岡銀行も、九州・沖縄・山口と、アクセスする県は多めです。

「スルガ銀行」「福岡銀行」「横浜銀行」「千葉銀行」「埼玉りそな銀行」居住都道府県
集計期間:2022年2月~2023年1月
デバイス:PC・スマートフォン

次に性別の割合を見てみます。地銀間で5%ほどの割合の開きはあるものの、5つの地銀はいずれも男性の割合が高いという結果になりました。かつては、「銀行は仕事の合間か、家にいる人(主婦)が行くもの」だった家庭が多かったかもしれません。今は実店舗に行かなくてもインターネットバンキングで目的を達成できるため、男女・共働き/専業主婦・主夫問わず利用できる状態になっていることが、割合からもうかがえます。

「スルガ銀行」「福岡銀行」「横浜銀行」「千葉銀行」「埼玉りそな銀行」サイト訪問者の性別の割合
集計期間:2022年2月~2023年1月
デバイス:PC・スマートフォン

続いて年代の割合です。いずれも40代をピークとしています。スルガ銀行のみ、60代もサイト訪問者数が多くなっていました。スルガ銀行のサイト訪問者数の多い背景には、60代ユーザーの多さが影響しているのかもしれません。

「スルガ銀行」「福岡銀行」「横浜銀行」「千葉銀行」「埼玉りそな銀行」サイト訪問者の年代の割合
集計期間:2022年2月~2023年1月
デバイス:PC・スマートフォン

スルガ銀行は住宅ローンや目的別ローンなど、シニア向けのサービスが充実しています。これらのサービスが、サイト訪問者の60代ユーザーの割合を引き上げている一因となっているのかもしれません。

シニア向け住宅ローン(ドリームライフホームローン)

https://www.surugabank.co.jp/surugabank/kojin/service/dreamlife_homel/

住みやすい家のかたちは、お客さまとご家族のライフステージに応じて変化していくもの。ドリームライフホームローンは、50歳以上の方にご用意した住宅ローンで、住宅の新築・購入、住み替え、借り替えなどにかかる費用をサポートし、お客さまの住まいに対する夢の実現をお手伝いします。

自然検索が主の地銀。注目はディスプレイ広告

Web広告参入の余地がある地銀

次に、各銀行がどのチャネルから自社サイトへの集客を達成しているのか、流入経路ごとのセッション数を見ていきます。

下のグラフを見ると、多くの銀行で自然検索や外部サイトからの流入が目立ちます。いずれもノーリファラーの割合が最も高く、特に福岡銀行では突出した割合です。おそらく利用を考えている人や既存顧客が、ブラウザに保存したブックマークやメールマガジンなどから地銀の各サイトに直接流入しているものと考えられます。Web広告が起点となる顧客の獲得は、まだまだ少ないと言えそうです。

「スルガ銀行」「福岡銀行」「横浜銀行」「千葉銀行」「埼玉りそな銀行」集客構造の割合
集計期間:2022年2月~2023年1月
デバイス:PC・スマートフォン

全体に対するインターネット広告の割合は低いですが、それでもこの中ではディスプレイ広告からの流入が一定数あります。下記は各銀行のディスプレイ広告の内訳です。

福岡銀行はリターゲティング広告に注力

「スルガ銀行」「福岡銀行」「横浜銀行」「千葉銀行」「埼玉りそな銀行」ディスプレイ広告の内訳(横軸の一番左はGoogle ディスプレイネットワークです)
集計期間:2022年2月~2023年1月
デバイス:PC・スマートフォン

多くの銀行はGoogleディスプレイネットワークを中心としたGoogle広告、Yahoo!広告がメインになっています。一方、福岡銀行はCriteoリターゲティング広告、LINE広告、その他の広告からもバランスよく流入されており、リターゲティング広告に注力していることがうかがえました。

まとめ|配信エリアを絞ったWeb広告を

今後は地銀においてもWeb広告が重要になってくると見られます。Web広告は、配信するエリアを商圏に合わせて絞ることが可能です。Google、Yahooだけでなく、MetaやTwitterでも詳細にエリアを絞る機能が強化されています。Web広告を考えている人は、ぜひ現在のWeb広告の仕様をチェックしてみてください。

Yahoo!広告で運用の自動化を後押しするアップデートが続々!|WEB広告最新アップデート情報(2023年2月) | [マナミナ]まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン

https://manamina.valuesccg.com/articles/2275

あっという間に3月に突入しました。年度末で慌ただしくしている企業さんも多いのではないでしょうか。 忙しい中で最新情報のキャッチアップがなかなか出来ていない、という方はぜひこの記事でアップデート情報をチェックしてみてください。 記事では主要な情報をピックアップしてお伝えします。より詳細な情報についてはページ最後でダウンロード可能ですので、ぜひご確認ください。

またヴァリューズでは、銀行・保険・損保・ローン等、様々な領域でマーケティングのご支援を行っています。金融業界においては感染症の影響で対面営業が難しくなっているため、デジタルシフトが重要です。下記では金融業界各社で行った、調査からプロモーション活用までの取組事例をご紹介していますので、ぜひご覧ください。

調査からプロモーションまで!金融業界でのマーケティング・DX取組み事例資料 | [マナミナ]まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン

https://manamina.valuesccg.com/articles/1353

新型コロナウイルス流行による社会の激変の中、金融業界においても、デジタルマーケティングがますます重要となっています。本資料では、そのような金融業界やwithコロナでのマーケティングの特徴・課題に対し、どのような取組みを行っているのか、当メディアを運営している株式会社ヴァリューズでの支援事例を公開いたします。

【調査概要】

・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報にもとづき分析
・行動ログ分析対象期間:2022年2月〜2023年1月

※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:PC・スマートフォンの両デバイス

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

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この記事のライター

IT企業にシステムエンジニアとして10年あまり勤務。結婚・出産を経てお声がかかり、あっという間にライター・編集が主たる業務になりました。IT系記事と一般家庭向けの役立つテーマをメインに、今さら聞けない人でもしっかり参考にできる、わかりやすい記事を心がけています。

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