「自分チョコ」や「推しチョコ」がトレンド? 日本の2023年バレンタイン商戦を調査

「自分チョコ」や「推しチョコ」がトレンド? 日本の2023年バレンタイン商戦を調査

2月14日はバレンタインです。日本では、女性が男性へチョコを送ることが一般的な慣習でしたが、近年は「友チョコ」や「自分チョコ」など、様々なジャンルのバレンタインチョコが登場しています。今回は、そんな特色ある日本国内のバレンタイン事情や、ユーザーの興味の変化を調査してみました。ユーザーのバレンタインに対する価値観にも、変化が訪れているようです。


そもそもバレンタインとは?様々な「◯◯チョコ」の存在

毎年2月14日はバレンタインデーです。

現在のような「恋人へプレゼントをし想いを伝える」という慣習は、イギリスの出版社によるバレンタインカードの販売が起源だと言われています。日本においては、チョコレート会社の戦略がきっかけとなり、1970年代ごろから小学生〜高校生までの学生層を中心に流行し、社会に定着し始めたようです。

世界的には、男女の区別なくプレゼントを送り合うことが一般的な様子ですが、日本においては「女性が男性に自身の想いを伝えるため、チョコレートを贈る」という特徴が存在します。また近年では、友人へ贈る「友チョコ」や、これまでの日本的風習とは反対に、男性が女性へチョコレートを贈る「逆チョコ」、本命チョコとは対照的に、女性が男性に贈るものの恋愛感情を伴わない「義理チョコ」、そして自分自身へのプレゼントとしての「自分チョコ」など、様々なトレンドが誕生しており、日本独自の発展を遂げています。

今回は、この特徴ある日本のバレンタインについて、市場の特徴やユーザーインサイトの変化を調査していきたいと思います。

自分チョコ・世話チョコ・推しチョコ....新たなトレンドの登場

まずは、近年の日本におけるバレンタインのトレンドを調査してみます。

「自分へのご褒美」がトレンド?バレンタインの市場構造に変化

2023年のバレンタインの市場動向は、どのようになっているのでしょうか。

FNNプライムオンラインの2023年3月の発表によると、主要4大百貨店の2023年2月期の収益は全社において増加。卒業式等の影響もありますが、特にバレンタイン商戦における利益がプラスに働いたとFNNプライムは推測しています。また、2001年から開催され、2023年で23回目を迎えたジェイアール名古屋タカシマヤによる「2023アムール・デュ・ショコラ」の売上高は、2023年に過去最高にのぼり、前年度比127%の来客数となりました。

一方で、日本インフォメーションが2023年2月に実施したバレンタインに関する調査によると、2023年のバレンタインにプレゼントを渡す予定がある相手の人数は平均4.8人、予算額は平均4,244円と、昨年度の実測値をどちらも下回る結果となっています。

またこちらは、2022年・2023年にインテージが実施したバレンタインに関する調査における、義理チョコを用意する(用意した)と回答した女性の割合をグラフにしたものです。

インテージによるバレンタインに関するアンケート調査をもとに作成
※2021年の割合は、2022年度の調査において「昨年度義理チョコを実際に用意した」と回答した女性の割合
調査期間:2021年・2022年のデータ|2022年1月25日~1月27日 2023年のデータ|2023年1月20日~1月23日
対象:2022年|16~69 歳の男女 2,116名 2023年|15~79 歳の男女 2,633名

グラフから読み取れるとおり、義理チョコを用意する女性は年々減少傾向にあるようです。義理チョコを職場で配る文化が根付いている会社も一定数存在する中で、2023年に実施された同調査において、職場における義理チョコ文化への参加意識を尋ねたところ、「参加したくない」と回答した女性は全体の82.8%にのぼりました。

反面、アイランド株式会社が2022年10月に実施した調査では、バレンタインに自分自身へチョコを贈ると回答した人の割合は25%と、昨年度から9ポイント増加。また、松屋銀座が2022年に実施した、2023年のバレンタインに関する調査では、「自分チョコ」にかける平均予算額は前年度比102%と増加傾向にあります。

以上の点から、バレンタインに義理チョコを渡す習慣が減退しつつある一方、チョコレートなどのプレゼントを自分自身へ贈る「自分チョコ」の習慣が浸透し始めていると考えられます。

またその背景には、社会的な性別観の変化や、職場や学校で義理チョコを配るという習慣をコロナ禍で強制的に辞めざるを得なかった、といった点が存在するのではないでしょうか。

「世話チョコ」「推しチョコ」...新たなカテゴリも続々登場

近年では、「義理チョコ」の派生形と考えられる「世話チョコ」も登場しています。
「世話チョコ」は、その名の通りお世話になった方へ感謝の気持ちを込めて送るチョコレートのこと。

こちらは、ジェイアール名古屋タカシマヤが2022年12月~2023年1月に実施した調査における、チョコレートの送り先を割合別で示したグラフです。

出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000184.000047031.html
調査期間:2022年12月20日~2023年1月6日
対象:2,455名

チョコレートの送り先として「お世話になった人」と回答した人は第3位で全体の15%に上り、同質問における「友達」の回答割合よりも多くなっています。また、同調査に「義理チョコ」の選択肢が存在することから、世話チョコは、義理チョコとは別のカテゴリとして捉えられている様子が伺えます。

また「推しチョコ」と呼ばれる、自身の「推し」に送ることを目的として、チョコレートを購入するというトレンドも登場しており、2023年のバレンタイン期に合わせて、明治やメリーといった大手菓子メーカーが「推しチョコ」をテーマにキャンペーンを実施しています。

明治が2023年1月に、15歳~26歳のZ世代を対象として実施した「推しチョコ」に関する調査では、バレンタインにプレゼントを送る相手として27.1%が「推し」と回答、昨年度から11.4ポイント増加しています。また同調査においては、約63%が自身の推しを応援する「推し活」の一環としてバレンタインに参加してみたいと回答。トレンドである「推し活」と、バレンタインとの親和性の高さが伺えます。

トレンドの「推し活」。ファン活動の実態と行動原理を探る

https://manamina.valuesccg.com/articles/2055

2021年の流行語大賞にもノミネートされた「推し活」。急速に知名度を上げたこのワードの検索者数は、2020年9月から2022年8月までの2年間で10倍以上に急増しました。どういう人が、どういう媒体を利用して、どんなものを推しているのか?熱量が減少する要素とは?「推し活」の実態を徹底調査しました。(ページ数|34ページ)

バレンタインのユーザー層を調査

次に、どんなユーザーがバレンタインへ関心を持っているのか、調査してみます。
なお調査には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を用います。

まずは、2021年1月から2023年2月に「バレンタイン」を含むワードを検索したユーザー数の推移を見てみましょう。

「バレンタイン」検索ユーザー数(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年1月〜2023年2月
デバイス: PC・スマートフォン

2021年から2023年にかけて、毎年2月に検索ユーザー数のピークが訪れていますが、2023年のピークは2021年・2022年のものと比較してユーザー数が少なくなっており、バレンタインへ関心を向けるユーザーは、年々減少傾向にあることが推測されます。

次に、「バレンタイン」検索者の性別属性を調査してみます。

「バレンタイン」検索ユーザーの性別割合(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2023年1月〜2023年2月
デバイス: PC・スマートフォン

男性の割合が20%、女性の割合が80%と、女性ユーザーが圧倒的に多いことが分かります。また、クロスマーケティングが2023年1月に行った調査では、2023年のバレンタインにおいて「誰かにプレゼントをする予定」と回答した割合は、女性が57.5%男性が22.7%でした。この結果からも、女性が中心ユーザーであることが推測できます。

そして、インテージが2023年1月に実施した調査によると、調査対象の女性がバレンタインに用意するチョコレートの種類は、年代別で以下のグラフの通りとなっています。

出典:https://www.intage.co.jp/news_events/news/2023/20230208.html
調査期間:2023年1月20日~2023年1月23日
対象:1,325名(アンケート全体では2,633名)

15-19歳の学生層は、他の年代と比較して特に友チョコの割合が非常に高くなっており、主に学校などで友人にプレゼントを渡す学生の様子が伺えます。また、15-29歳の若年層は、本命チョコの割合が比較的高くなっており、気になる相手に自分の想いを伝えるという従来のバレンタインの習慣が、今も社会的に存在する様子が読み取れます。加えて、30-49歳のミドル層は、自身の家族に送る「家族チョコ」の割合が他の年代よりも比較的多くなっており、ライフステージの変化と共に、プレゼントを贈る相手も変化していることが伺えます。

そして、50代以降は、年齢が上がるに比例して渡す予定はないと回答した人の割合も増加。全体的に、10代から40代がバレンタインの中心ユーザー層になっていると考えられます。

最後に、「バレンタイン」とよく掛け合わせて検索される言葉のランキングを調査してみます。

下の画像は、2022年1月から2023年2月に「バレンタイン」と共に検索されたワードのランキングの一覧です。

「バレンタイン」の掛け合わせワードランキング(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2022年1月〜2023年2月
デバイス: PC・スマートフォン

緑色の枠で示したワードは、「手作り」や「レシピ」など、バレンタインに際してお菓子を手作りするユーザーによって検索されていると推測されるものです。ユーザー数の推移に注目してみると、2022年と比較して2023年のユーザー数が減少傾向にあることが分かります。ここから、バレンタインにお菓子を手作りするという習慣が衰退しつつある様子が伺えるのではないでしょうか。

また、青色で示したワードは、「プレゼント」や「メッセージ」など、バレンタインで誰かにプレゼントをあげる予定のユーザーによって検索されていると推測されるものです。こちらも、緑色のもの同様、2022年に比べて2023年の検索ユーザー数は減少傾向にあることが分かります。冒頭で「義理チョコ」が減退傾向にあるとご紹介しましたが、義理チョコに限らず、バレンタインに誰かへプレゼントをあげるという習慣自体が衰え始めているのかもしれません。

一方、黄色で示したワードは、「スタバ」や「イベント」など、バレンタインの期間中に開催されるイベントへ興味を抱くユーザーが検索したと考えられるワードです。

具体名が挙げられている「スタバ」は、毎年バレンタインに際して新たな商品を発売しており、それに注目するユーザーによって多く検索されたとみられます。また「イベント」検索に関しては、冒頭でご紹介したジェイアール名古屋タカシマヤによる「アムール・デュ・ショコラ」を始め、バレンタイン期間中に開催される様々なイベントの情報を求めるユーザーにより検索されたものと考えられます。これらのワードは、先にご紹介したものとは対照的に、2022年と比較して2023年はユーザー数が増加しています。

またこちらは、2022年1月から2023年2月に「チョコ」と共に検索されたワードのランキングの一覧です。

「チョコ」の掛け合わせワードランキング(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2022年1月〜2023年2月
デバイス: PC・スマートフォン

2022年と比較して2023年は、青枠の「バレンタイン」、「レシピ」というワードが減少傾向にあることが分かります。また、掛け合わせワードとして上位15位までに、「リンツ」「ロイズ」「GODIVA」「モロゾフ」というチョコレートブランドがランクインしており、特にロイズについては、2022年と比較してユーザー数が増加傾向にあるようです。

下のグラフは、先述の4ブランドについて、その名称を検索したユーザーの年代を割合で示したものです。

「リンツ」「ロイズ」「GODIVA」「モロゾフ」検索ユーザー年代別割合(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2023年2月
デバイス: PC・スマートフォン

全体的に、20-40代のユーザーが中心となっています。20-30代の若年層からは、リンツ(青色)とGODIVA(緑色)への注目が集まっており、ロイズ(桃色)とモロゾフ(黄色)については、40代の割合が最も高くなっています。

以上を踏まえると、義理チョコを始め、バレンタインに誰かへプレゼントを送る習慣は全体的に減退している一方で、バレンタイン期間中に開催されるイベントへの注目は高まっていることから、自分自身へご褒美としてチョコレートを購入するトレンドが盛り上がりを見せている様子が伺えるのではないでしょうか。

まとめ

今回は、世界各国と比較して独自の習慣を持つ日本のバレンタインをテーマに、そのトレンドやユーザー層の特徴を調査しました。

その結果、以下のような特徴的なポイントが見られました。
・「バレンタイン」の検索ユーザー数、並びにプレゼントを贈る平均人数・予算減少傾向。義理チョコを始め、「誰かのため」のバレンタインは減退しつつあるか?
・一方で、自分自身へのご褒美としてチョコレート等を購入する「自分チョコ」の予算額は増加傾向に。「自分のため」のバレンタインがより浸透しつつある様子。
10-40代の女性ユーザーが中心であるとみられるが、年代によって「何チョコ」であるか(誰にプレゼントを贈るか)に差異があった。
新たなトレンドとして「推しチョコ」や「世話チョコ」が登場。日本の独自性がさらに強まっている様子。

日本においては、かつての「恋人や大切な人のために、想いを込めてプレゼントを贈る」という形式に加えて、様々なバレンタインの種類・トレンドが登場しています。社会の価値観等の影響を受けながら、バレンタインは今後も変容・進化を遂げていくのではないでしょうか。

▼今回の調査にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

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参考資料

・バレンタイン商戦が好調 2月百貨店売上高 3割増も
https://www.fnn.jp/articles/-/493629
・名古屋でチョコが「1日1億円」売れる催事の正体
https://toyokeizai.net/articles/-/326991
・令和のバレンタイン事情2023 ~女性たちのホンネ~ | アンケート調査・マーケティングリサーチなら日本インフォメーション
https://www.n-info.co.jp/report/0043
・変化するバレンタイン。贈りたいひとは「家族」と「自分」
https://www.intage.co.jp/news_events/news/2022/20220204.html
・いまどきバレンタイン事情|市場調査ならインテージ
https://www.intage.co.jp/news_events/news/2023/20230208.html
・【調査報告】おとりよせネット、2023年バレンタイン調査:ネット通販での購入予定は66% 自身へのご褒美が9ポイント増加 チョコレートスイーツランキングも公開 | アイランド株式会社
https://www.ai-land.co.jp/press/p-otoriyosenet/14825/
・バレンタイン「自分にご褒美」で市場拡大…今年はイートイン充実、銀座の人気バーも出店
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230121-OYT1T50084/
・【名古屋タカシマヤ】2023 バレンタイン意識調査 ~総購入個数「10個以上」が多数、自分チョコへの贅沢傾向続く
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000184.000047031.html
・Z世代の今年のバレンタイン対象、“本命”ではなく“推し”が上昇!「推しと一緒にSNSに投稿」など、“贈る相手”や“楽しみ方”も多様化!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000025200.html
・【お知らせ】バレンタインに関する調査(2023年) | リサーチ・市場調査ならクロス・マーケティング
https://www.cross-m.co.jp/news/release/20230201/

この記事のライター

大学ではマーケティングを専攻。ヴァリューズにて内定者インターンに参加中です。

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