【話者紹介】
2023年3月、コアアルゴリズムアップデート実施
岩間:「2023年4月のコンテンツマーケティング最新動向レポート」では、3月に行われたコアアルゴリズムアップデートについて解説していますね。コアアルゴリズムアップデートとは何か、改めて説明してもらえますか。
安部:コアアルゴリズムアップデートとは、Googleによって検索結果のアルゴリズムが見直され、検索順位に大きな変動が起こるアップデートのことです。年に数回行われ、今回の「The March 2023 core update」と呼ばれるアップデートは、日本時間3月16日(木)に開始されました。
今回は「変動幅が非常に大きい」
安部:今回僕がまず注目したのが、コアアルゴリズムアップデート実施の告知形式が変わったこと。今まではTwitterを通して発表されていたものが、今回はプラスして今年新しく作成された「Google Search Status Dashboard」上でも発表されたんです。
岩間:「Google Search Status Dashboard」には、今までは検索環境のエラーなどが一覧表示されていました。これからはアルゴリズムの発表も、こちらで行われるようになっていくのかもしれませんね。
アップデートの中身はどうですか。方向性がどのような感じか知りたいです!
安部:ここからお話しすることは、あくまで傾向としてですが、全体感として変動幅が非常に大きいことが特徴的です。今回はアップデート初日から大きく動いたほか、アップデート中も一定大きな変動が見られました。
以下のデータを見ても、日本における検索順位の変動幅の大きさが見てとれます。
岩間:確かに前回や前々回は、アップデートにしては変動幅が小さかったですが、今回は大きいですね。
安部:今回のアップデートを読み解くには、2022年のアップデートの傾向を理解しておく必要があります。2022年の内容をまとめたものを用意したので、ご覧ください。
安部:この中で僕が注目しており、かつSEO界隈で話題になっていることは、寄生サイト(サイト貸し)です。去年から下落傾向にあるので、今回のアップデートでどうなっていくかは見ていきたいポイントです。
■「EEAT」発表後、初のアップデートにも注目
安部:同じく注目したいのは、EEAT(ダブル・イー・エー・ティー)についての対応ですね。今回は、GoogleによるEEAT発表後初めてのアップデートです。従来のE(Expertise:専門性)A(Authoritativeness:権威性)T(Trustworthiness信頼性)に、E(Experience:経験)が追加されたことが、今回のアップデートによってどうアルゴリズムとして組み込まれるかは見ていく必要があるでしょう。
■ChatGPTによるコンテンツ急増に、Googleはどう動く?
安部:あとはAIコンテンツも押さえておきたいポイントです。最近は文章の自動生成が話題になり、実際、AIコンテンツで作成した記事を上げているブロガーさんもいると聞きます。今回のアップデートで、このような自動生成系のAIコンテンツがどのような影響を受けるかも見ていきたいですね。
2023年コアアルゴリズムアップデートの傾向とは
岩間:2022年のアップデートを振り返ることができたので、2023年コアアルゴリズムアップデートの具体的な傾向を教えていただけますか。
安部:今回の検索順位の動きをまとめてみたので、見てみましょう。
安部:この中から、いくつかピックアップしてお伝えしていきます。
■AI対策?独自性の高いコンテンツの検索順位が上昇
安部:まず注目したいのが、「②独自性の高いコンテンツの検索順位上昇」です。先ほど説明した、自動生成系のAIコンテンツへの対策と考えられます。
岩間:AIでコンテンツを作るとなると、表現の一部が違うだけで、内容はほぼ同じサイトが増えていきそうですものね。結局AIは既存のコンテンツから学習して生み出すだけなので、今あるものと同じようなコンテンツがどんどん増えていきそうだと感じました。
安部:おっしゃる通りで、AIが作るコンテンツは、新しい内容や特徴的な内容とはいえません。そのような中、今回のアップデートでは独自性が高いコンテンツがあるページ、独自性コンテンツが中心のドメインの検索順位の上昇が見られたんです。
例として挙げられるのは、医療系サイト。患者さんの症例写真や、実際の現場で見た上での一次情報があるようなコンテンツ中心の、医療系サイトの検索順位が上がってきています。また、一次情報が掲載されている政府官公庁系のサイトも同じような傾向が見られます。
AIコンテンツ時代への対策として、独自性があるコンテンツの判定に対するテクノロジーが発展し、また一次情報があるサイトの優遇が進んでいると考えています。
岩間:独自性のあるコンテンツの優遇は、今後も進んでいきそうでしょうか。
安部:その傾向は続くでしょう。
また、これは個人的な意見ですが、検索結果の1ページ目の1位から3位ぐらいのコンテンツは、ユーザーの気になる情報が網羅されていることが多いと感じています。よりオリジナルなコンテンツが掲載されていることが多いのは、4位から10位ぐらいかなと。
今回のアップデートで、このような傾向がどれだけ動くか、つまり独自性のあるコンテンツが1位から3位ぐらいに表示されるようになるかといった点がまだ見えないと感じています。
岩間:独自性のあるコンテンツだけで統一させるというよりは、網羅的な内容があった上で、その中に何かしらのプラスアルファや根拠を加えることで、独自性を出していくのが良いという感じでしょうか。
安部:そのような考えもできるでしょう。ある程度ユーザーが知りたいものを網羅して載せていくというユーザーファーストを大切にしつつ、オリジナルも載せていくバランスが必要なのだろうと考えています。
■コーポレートサイト・オウンドメディアに対する評価が上昇
安部:ほかに今回のアップデートで押さえておきたいポイントとして、「⑤サービス提供のサイト、オウンドメディアが上昇」という項目があります。メディアを運営している企業や、自社でコンテンツマーケティングをするべきか迷っている企業は、ぜひチェックしていただきたいです。
具体的には、サービスを提供しているサイトや、サービス提供サイトの配下にあるオウンドメディアの順位が上昇しています。例えば、脱毛サービスを展開している企業の脱毛メディアが挙げられます。
ヴァリューズでは、サービスを提供しているサイトの企業が優遇されるのは、E-E-A-TでのExperience(経験)に即しているためと考えています。
つまり、ただ情報発信をしているだけでなく、その領域で何かしらのサービスを提供しているという点で、経験に基づいた情報提供として評価されているのだろうと思います。
商品やサービスを自社で展開している企業がSEO対策をはじめるには追い風ではないでしょうか。判断材料のひとつになるでしょう。
安部:ここまでの話に付随して押さえておきたいのが「⑥特定条件のドメイン貸しアフィリエイト下落傾向」。
ドメイン貸しをしているアフィリエイトサイトについて、運営者が一致しない、または元サイトとのテーマが一致しないサイトについては下落傾向が生じています。例えば家電量販店のサイトがマッチングをテーマにしたサイトを運営しているようなケースです。
この動きに伴って、運営者やその事業と情報発信しているテーマが一致しているものに関しては、順位の上昇が見られました。
ヴァリューズの見解としては、このような傾向が見られる理由は、基本的にはサービスを提供していないサイトというのが大きいとしています。
そのため、アフィリエイトのために運営されているようなメディアは、Googleに評価されなくなっていくのではないでしょうか。
■サイト内で重複が多いコンテンツが下落
安部:最後に紹介したいポイントは、「⑧サイト内で重複が多いコンテンツの下落」について。サイト内で重複が多いコンテンツは、もともとGoogleから評価が受けにくかったのですが、今回ますますその傾向が顕著になっています。
例えば、20代・30代・40代というキーワードに対して、それぞれタイトルやディスクリプション、コンテンツの内容がほとんど同じ場合は下落傾向にあるとわかりました。
岩間:なるほど。例えば資産運用に関するコンテンツのように、年代によって伝えたいことが明らかに違う場合は記事を分けてもいいけれど、年代で違いがほとんどない場合は分けるとかえって評価が下がってしまうということでしょうか。
安部:ご認識の通りだと思います。大切なのはキーワード選定のタイミングだと考えます。既に言われていることですが、キーワードを選定するとき、キーワードを見るだけでなく、「このキーワードだったらどんな記事になりそうか」を考えて判断することが必要です。そうしないと同じような記事が出来上がってしまい、作ってしまったのだから公開するしかないという判断になることもあるでしょう。そのように同じような記事を公開し続けると、サイトはSEO観点で見てどんどん弱くなっていくと考えられます。
岩間:キーワードの掛け合わせで一つひとつ記事を作っているようなメディアの場合、同じ検索意図であるなら、例えば20代・30代・40代というキーワードをタイトルに入れたり、合体させて一つの記事にしたりしたほうがいいのかもしれませんね。
安部:そうですね。よりキーワードのグルーピングが必要になっていくと思います。
2023年3月コアアルゴリズムアップデートの対策
岩間:最後に、今回のコアアルゴリズムアップデートを受け、マーケターができることを教えてください。
安部:普段のSEO改善という点でいうと、個別にページを見て順位が下がったのなら、課題はどこなのかを見ていく必要があるのですが、アップデート前後のタイミングの対応はおすすめしません。まだ変動が大きい状態ですぐに対応してしまうと、傾向をつかみきれず誤った対応をしてしまう可能性があるためです。順位が落ち着くタイミングまで対応はせず、対策のための情報を収集していくことが必要です。
岩間:焦って対応せず、きちんと傾向を踏まえて、適切なタイミングを判断して対応していくことが大切だと思いました。
安部:以上、4月のコンテンツマーケティング動向「SEO編」でした。次月のネタも楽しみにお待ちください。
(本調査はあくまでも傾向に注目し、今後の施策における仮説立てや優先順位の検討に有効活用するためのものであり、因果関係を示すものではないこと、また、各トピックの内容やVALUESの見解は、資料作成時のものであり、今後の情勢やアルゴリズムの変化によって変わることがある旨、ご留意ください)
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IT企業でコンテンツマーケティングに従事した後、独立。現在はフリーランスのライターとして、ビジネスパーソンに向けた情報を発信しています。読んでよかったと思っていただける記事を届けたいです。