家電の検討行動のリアルに迫る!商材ごとのカスタマージャーニーをマーケティングに活かすには

家電の検討行動のリアルに迫る!商材ごとのカスタマージャーニーをマーケティングに活かすには

近年、家電購入の検討チャネルとしてネットの重要性が高まっています。比較サイトや大手ECサイトを通じた検討が中心と思われがちですが、商材によって検討チャネルは使い分けられているケースがあることをご存知でしょうか。本セミナーでは、美容家電を題材に、ヴァリューズの持つWeb行動ログデータによって家電購入の検討行動を分析し、商材ごとに異なるカスタマージャーニーを把握する手法をご紹介します。 ※詳細なセミナー資料は記事末尾のフォームから無料でダウンロードできます。


スピーカー紹介

スピーカー紹介

株式会社ヴァリューズ データマーケティング局 マーケティングコンサルタント
平野瑞葉

家電商材によって検討期間もチャネルも異なる

本セミナーでは、家電の検討行動が商材によって異なること、また検討プロセスの違いを把握してマーケティング戦略を練っていく必要があることを、データを元にご紹介していきます。

そもそも家電の検討チャネルはどのように変化しているのでしょうか。
コロナ禍をきっかけに、家電の情報収集や検討行動のチャネルが変化しているのかを示したグラフがこちらです。

家電の検討チャネルの変化

家電の検討チャネルの変化

ちょうどコロナが始まった初期のデータですが、家電を検討している方では、Amazonや価格.comといった比較サイトへ接触する割合が右肩上がりで伸びていることが分かります。

特に外出自粛が始まったタイミングでは、急激にWeb上のAmazonや価格.comへの流入が増えています。その後、外出自粛が落ち着いてからは店舗へ回帰する動きもありますが、トレンドとしてはWebでの情報収集が増えていることは間違いなく言えそうです。

またWeb上での検討行動が増えていることに付随して、検討行動の複雑化も起きています。弊社がGoogleと共同研究で開発した消費者の情報探索行動モデルである、バタフライ・サーキットをご紹介します。

Web上のカスタマージャーニーは複雑化している

Web上のカスタマージャーニーは複雑化している

バタフライ・サーキットは従来型の情報探索行動モデル、いわゆるAIDMA(アイドマ)のように、認知から購入まで一直線に進んでいくのではなく、「選択肢の幅を広げる、探る」といった行動と、「選択肢を絞る、固める」といった行動を行ったり来たりしながら探索的に情報収集が進み、あるタイミングで突発的に購入に至るというパルス型の消費モデルになります。この「探る」と「固める」を行ったり来たりする動きが、蝶々の羽の形に似ていることから、バタフライ・サーキットと名付けられました。このようにWeb上のカスタマージャーニーは複雑化していることが見えてきます。

また今回のテーマである家電の検討行動を調査したところ、商材ごとに異なることが分かりました。テレビや冷蔵庫やエアコンなど、商材ごとに検討期間がどれぐらい違うのかを調べた調査では、プロジェクターや家庭用ゲーム機のような趣味性が高い家電は検討期間が長くなる一方で、加湿器や空気清浄機などは短くなる傾向が出ていました。

購買チャネルも商材によって異なる

購買チャネルも商材によって異なる

このように商材によって検討期間が大きく変わることに加え、購買チャネルも変わることが分かっています。家電の購入チャネルを店舗と総合通販サイトで比較し分析した調査では、商材によってチャネルが顕著に異なることが分かります。

そのため、誰に、どんなチャネルで、どんな訴求をしていくべきか、把握することが重要になってきています。そして商材によって異なる検討プロセスを理解することで、戦略の最適化を図ることができるのではと考えています。

「絞る」「広げる」探索行動が長期に渡る大型家電

ここからは、大きく3つの商品の検討行動をご紹介します。1点目は家電カテゴリの中から冷蔵庫を、2点目は化粧品のアイシャドウを、3点目は美顔器を検討するユーザーの行動です。仮説として美顔器のような美容家電の検討行動は、冷蔵庫とアイシャドウの中間のような動きが見えるのではと考えました。

まず従来の家電検討チャネルでは、家電量販店や実店舗で商品を探し、比較して購入する方が多いと思います。もちろん今もその動きは強い一方で、ネット通販の利用頻度が上昇する中、家電量販店の利用頻度が下がっているという調査もあるなど、Web上で情報収集から購入まで完了するという動きが増えています。

家電を購入した際にどのチャネルで情報収集をしたかを聴取したところ、店舗がやはり強いものの、家電購入に関してはAmazonや価格.comが情報収集媒体の2位、3位に上がるなど、強いチャネルになっていることが分かりました。特に男性が活用する傾向があるので、家電の検討チャネルとしてAmazonや価格.comをしっかりと伝えていくことが大事と言えそうです。

次にWebログデータを使って、冷蔵庫を検討しているユーザーについて、オンライン上のカスタマージャーニーをご紹介します。

まず最初に「冷蔵庫」という大きなキーワードで検索を開始していました。すぐその直後に価格.comに流入し、冷蔵庫でどんな商品があるのか探す動きが続きました。初期段階なので、強い検討軸があった訳ではないからだと想像します。その後「作り置きレシピ」「作り置き 冷蔵庫」といったワードで検索されています。普段からお料理をして、作り置きを冷蔵庫で保存するので容量が大きいものがいいことが推測されます。さらには「冷蔵庫 比較」というワードを入れ、価格.comの中で気になる商品があったら、家電量販店のサイトに流入して商品を見に行く動きがありました。その次はおそらく何か良さそうな商品を見たのか、「冷蔵庫 冷凍野菜」という具体的なワードを入れて探しに行く動きが見られます。

ただそこからは絞りに行くよりも、今度は広げに行く検索が続きます。例えば「冷蔵庫 おすすめ」といって価格.comに入り、その後でAmazonに入り、価格.comで気になった商品をAmazonで確認しに行くといった行動や、「比較 冷蔵庫」というような「絞りにいく」ワードと「広げる」ワードが続きました。こういった動きを繰り返した後で、東芝、日立、パナソニックのようなメーカー名で初めて検索をし、メーカーの公式サイトもこのタイミングで流入していきます。

Web上の動きしか見ていないものの、最初に冷蔵庫の検討を開始したのが6月、そこからメーカーの公式サイトに流入したのが11月でした。実際は店頭でも比較検討されているかもしれませんが、かなり時間をかけて情報収集を行い、検討されていることが特徴的です。

化粧品の検討は口コミサイトとSNS

続いて家電ではありませんが、化粧品の検討行動をご紹介します。アンケートで化粧品を購入する際、どこで情報収集しているかを聴取した結果では、特に若年層に関してはLIPS(リップス)、@コスメ(アットコスメ)などの口コミサイトや、Instagram、Twitter、YouTubeといったSNSが情報収集媒体として積極的に使われていることが見えてきました。化粧品の特徴的な検討行動と言えそうです。

化粧品の検討チャネル

化粧品の検討チャネル

化粧品に関しても、先ほどと同様にユーザーの検討行動をご紹介します。今回は一例としてアイシャドウの購入を検討している方をピックアップしました。

まずはメーカーの公式サイトを検索して見に行った後、「アンドビー」を検索し、アットコスメやLIPSなどの口コミサイトで情報収集をする動きがありました。その後Instagramに流入して商品を見にいきますが、その後もアットコスメやリップス、マイベストを見てInstagramに流入するという動きが繰り返し見られることが特徴的でした。

また最初はアイシャドウを見ていましたが、少し時間が経つと、検索の仕方が若干変わります。「まぶた 腫れぼったい アイクリーム」という検索が続くなど、アイシャドウに限定せずに、「腫れぼったい」などコンプレックスを解消できるアイテムを探しに行く点が特徴的でした。そしてアイクリームを見て公式サイトに流入したり、Instagramに流入する動きが続いた後、時間が経ってから「アディクション アイシャドウ 人気 ブルべ」と、ブランドを指名する形で検索が始まり、公式サイトを見に行ったりしました。またアイシャドウから外れてチークの検討が始まり、Instagramと口コミサイトを情報収集媒体として使うジャーニーが見えてきます。

アンケートで見ていた行動がWebログデータでも検証できましたが、特に化粧品では口コミ、Instagramなどのビジュアル面で、SNSの情報収集が盛んに行われていることが分かります。

ハイブリッド型の検討が特徴的な美容家電

最後に、家電の中でも美容家電の美顔器の購入を検討している人は、Web上でどんな検討行動をとるのでしょうか。

こちらも一例として、ユーザーの検討行動をご紹介します。検索が始まった最初のワードが「目の下 凹み」でした。おそらく気になり始めて検討が開始されたと思います。その後、「目の下 クマ 美顔器」という解決手段にたどり着くまで、肌再生医療に関するブログなど、かなり意欲的に情報収集をされていました。美顔器にたどり着いて、最初に見ていたのがAmazonでした。いくつか商品を見た後、また「目の下 たるみ 美顔器 ランキング」といった検索で目ぼしい商品を見つけてメーカーの公式サイトに流入して、再びAmazonで…という動きになっています。冷蔵庫の検討行動に近い動きが見られました。

Amazonで探しているうちに「パナソニック かっさ」も結構良さそうと思って、アットコスメなどで口コミの情報収集もしています。そこからInstagramに行って、パナソニックのかっさに関する投稿を見ていました。その後Twitterに行きYouTubeに行くなど、SNSでの情報収集が挟まっていることが特徴的です。YouTubeで色々とコンテンツを見たと思われるのですが、「マイトレックス アイリズム」という商品を検索し、またAmazonに流入していくつか商品を探すといった動きが見られました。

この方はAmazonで色々と情報収集しつつSNSも見るという、冷蔵庫とアイシャドウの検討行動のハイブリッドタイプにも見えることが特徴的でした。Amazon内で検討が進むタイミングもありましたが、気になった時にはInstagramやTwitter、YouTubeといったSNS、また口コミサイトも見て、イメージを膨らませに行く動きもありました。

以上、3つの商材についてオンライン上のカスタマージャーニーをご紹介しました。家電という同じカテゴリでも、冷蔵庫と美顔器を検討している人の動きでは、かなり異なっていることが見ていただけたかと思います。また化粧品や美容家電という美容商材を検討している方は、例えば必ずアイシャドウが欲しいわけではなく、まぶたの腫れぼったさをなくすものがほしい、それがアイシャドウの場合もあるし、美顔器の場合もあるというように、検索の軸の特徴があることが見えます。このように、商材によって情報収集、購買チャネルが大きく異なることが分かります。

アスキング型とリスニング型の購買プロセス調査が強み

これらは購買プロセス調査で分析することができると考えています。

購買プロセス調査による問題解決のご提案

購買プロセス調査による問題解決のご提案

購買プロセス調査は、ターゲットとする顧客の意思決定プロセスと離脱要因を把握するための調査ですが、従来のアンケート調査だけでは、うまく取れないケースがあると考えています。というのは、Webの利用が広がるにつれて、消費者の購買プロセスが複雑化しているため、オンラインとオフラインを行き来する検討行動が発生しているからです。アンケートでは自分がどんな情報収集や検討行動をとったか、記憶をベースにして回答してもらうことが多いため、実際にとっていた行動とギャップが生まれてしまう場合があります。例えば以前、アプリをどのぐらい使ってますかというアンケート調査を実施した際、Webログで確認すると自分の認識と実際の行動にギャップが大きく出ていたケースがありました。そこで、実際に起きていたことと記憶のギャップを埋めるために、Webログを見て行く必要があると思います。

このようにアンケート調査は長所と短所があるので、ヴァリューズの購買プロセス調査では、アスキング型とリスニング型のリサーチ手法を掛け合わせて分析することが多くあります。

Asking型とListening型のリサーチ手法

Asking型とListening型のリサーチ手法

アスキング型は従来のアンケート調査やインタビュー調査で、今聞きたいことをピンポイントに絞って聞けたり、どういう気持ちだったのか意識面を聞いたりすることに向いています。一方で忘れてしまっているなど確証性にかけたり、意識してない時に何か情報収集している行動データは取れない面があります。

リスニング型のWebログデータの分析では、記憶に残ってない行動を把握できること、また実際にその人が検索した事実データが残っているので確証があるといった点があります。一方で、心理的な背景を読み取ることは難しくオンラインでの動きしか見られないので、オフラインとオンラインと横断した分析が必要です。

ヴァリューズではオンラインとオフラインを掛け合わせた分析を強みとしています。購入時の心境や気持ちなどインサイトはアンケートで調査し、実際どんなキーワードで検索したのか、どんなメディアで情報収集していたのか、どんな広告を踏んでどんなサイトに流入していたのか、例えばどんなコンテンツを見た後に商品を選ぶ軸が変わっていったのかといった、忘却されやすい検討行動の詳細はWebログで分析することが可能です。

今回は購買プロセス調査に絞ったご紹介でしたが、消費者理解を支援できる領域が広いことがヴァリューズの特徴です。例えば競合の集客状況から勝ちパターン、負けパターンを分析していったり、実際にブランドKPIのモニタリング支援をしています。それぞれに応じたカスタマージャーニーを理解し、ターゲットに対してどのような普及をしていくべきか、ぜひ一緒に考えていくお手伝いができればと思っております。

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この記事のライター

大学卒業後、損害保険の営業事務を経て、通販雑誌・ECサイトのMD、編集、事業企画に従事した後、独立。自身のキャリアを通じて、一人一人のポテンシャルを引き出すことが組織の可能性に繋がることを実感したことから、現在はマーケティングとキャリア・人材を軸に、人と組織の可能性を最大化できるよう支援をしています。

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