あえて「無香料」を求めるのはナゼ?「無香料」関心層と製品群から需要を調査

あえて「無香料」を求めるのはナゼ?「無香料」関心層と製品群から需要を調査

柔軟剤や香水などで香りを楽しむ人がいる一方で、あえて無香料の製品を選ぶ人もいます。その背景を探り、「無香料」関心層と需要の高い製品について調査していきます。


香りを求めない理由

店頭に並ぶ柔軟剤をはじめとした日用消費財や香水のラインナップを見てみると、「せっけんの香り」「シトラスフレーバー」などと並んで「無香料」の文字を見かけることがあります。消費者が無香料の製品を求める理由として何が挙げられるのでしょうか。

gooランキングによる「無香料の柔軟剤を選ぶ理由」のアンケートによれば、「人工的な香りが苦手」「職業柄、香りを避けたい」「肌に優しい成分を選びたい」などの意見が多いようです。体質や職業の問題で香りを避けなければならない人が、無香料製品の固定客となっていると考えられます。

また、最近では「化学物質過敏症」という言葉も耳にするようになってきました。化学物質過敏症は、さまざまな種類の微量化学物質に反応して苦しむ病気であり、発症者の80%以上に香水などの化粧関連用品類や衣料用洗剤類などで症状が出ると言われています。

対策を講じようとしている自治体もあり、宝塚市水戸市などでは「香害」特設ページを開設し、過度な香りづけには配慮すること、被害を感じたら消費者庁へ相談することなどを促しています。

「無香料」のターゲットは意外と幅が広い

ここからは、無香料製品を求める人物像や特に需要の大きい製品群を深掘りし、新たなニーズ発見の足掛かりを見つけていきます。

なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」、そしてWeb行動データとアンケートデータを用いて、ターゲットユーザーにおける特定の Web行動の前後の動きと属性を集計できる、ヴァリューズの分析ツール「story bank」を用います。

まずは「無香料」と検索した人の属性にどんな特徴があるのかを見ていきます。

性別は女性が多く、年代は30-40代が中心、未婚の割合がネット利用者全体と比べて多いです。会社勤務や会社経営の割合が比較的高いという要素も掛け合わせると、仕事を中心に生活しているキャリアウーマンというペルソナがすぐに浮かびます。

「無香料」検索者の属性(性別・年代・未既婚・子供有無)の割合
利用ツール:Dockpit
集計期間:202209~202308
デバイス:PC・スマートフォン

「無香料」検索者の職業割合
利用ツール:story bank
集計期間:202209~202308
デバイス:スマートフォン

妊娠や育児を控えた人も

一方で、「無香料」検索者の利用アプリを見てみると、特徴値は低いものの妊娠や育児に関連するアプリが多くランクインしていました。

「無香料」検索者の利用アプリ
利用ツール:story bank
集計期間:202209~202308
デバイス:スマートフォン

妊娠中に匂いに敏感になる人や、赤ちゃんには自然由来の成分のみを与えたいと考える人が検索しているのではないかと考えられます。

敏感肌の人も

人工的なものを避けたいという考えは、利用アプリ3位に「Curél肌手帳」がランクインしていることからも想像できます。これは、お肌の調子・睡眠・ストレス・生理・その日のスキンケアなどを記録すると、それらの生活習慣や天気とお肌の調子をチェックすることができるアプリです。

Curélのメインターゲット層は肌荒れやカサつきが気になる乾燥性敏感肌の人であることを考えると、敏感肌の人が肌に優しい製品を選ぶ際には、香料も判断の材料になっていると考えてもよいのかもしれません。

「無香料」検索者の関心ワードを見てみると、「無添加」、「ナチュラル」などが上位にヒットしており、この仮説を裏付けるデータと言えそうです。

「無香料」検索者の関心ワード
利用ツール:Dockpit
集計期間:202209~202308
デバイス:PC・スマートフォン

肌に優しい製品の需要が最近高まっていることについては、以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。

オーガニックコスメを利用する人が増えている!? Cosme Kitchenが流行った理由を調査

https://manamina.valuesccg.com/articles/867

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需要の高い製品

次に「無香料」検索者の掛け合わせワードを見てみると、柔軟剤、シャンプー、洗濯洗剤、ヘアオイル、ハンドクリームなど、さまざまな種類の製品名が検索されており、無香料にしたい製品の幅が広いことが分かります。

「無香料」検索者の掛け合わせワード
利用ツール:Dockpit
集計期間:202209~202308
デバイス:PC・スマートフォン

季節ごとに特徴あり

需要の高い製品の幅が広いことが分かったので、季節ごとにより特色が出ているかを確認するため、直近1年間の検索を4分割してみました。その結果、春から夏にかけて「虫除け」「制汗剤」「日焼け止め」、冬は「ハンドクリーム」の需要が高まっているほか、「ヘアオイル」の需要は一年を通して高いことが分かりました。

先ほど掛け合わせワードで挙がっていた製品は通年で使用するものばかりでしたが、それだけではなく、季節性の製品にも大きな需要は存在しているようです。

「無香料」検索者の季節比較
利用ツール:Dockpit
集計期間:202209~202308
デバイス:PC・スマートフォン

冬の乾燥対策品は男性も気になる

また、冬にのみ「メンズ」というワードが大きくランクインしています。そこで「無香料 メンズ 冬」と検索すると、「ボディクリーム」「ハンドクリーム」のおすすめ記事が上位に挙がっていました。両者とも女性向けに甘い香りがついている製品が多い印象があるため、無香料の製品を探す男性が多いのかもしれません。

男性は女性よりも肌のうるおいを維持する角層細胞の数が少なく、女性に比べて水分が蒸散しやすい、とも言われており、普段スキンケアには頓着しない人でも乾燥が気になる季節にだけ利用する製品として、検索上位にランクインしたものと考えられます。

「無香料 メンズ 冬」検索結果

オンラインショッピングをよく利用する傾向

では無香料を求める人たちは、普段どのようなチャネルで買い物をしているのでしょうか。

購入チャネル分析の結果を見ると、Amazon、楽天市場をはじめとしたECサイトをよく利用していることが分かります。これは仕事や家事で忙しく、買い物に出かける時間が取れない可能性が考えられます。

製品の主戦場をECサイトにするのであれば、商品ラインナップ数の拡充や大容量サイズなどの展開も今後の展望として見込めるかもしれません。

「無香料」検索者の購入チャネル割合
利用ツール:story bank
集計期間:202209~202308
デバイス:PC・スマートフォン

香りを楽しむために無香料を選ぶ

最後に、無香料に関心がある人には、どのような特徴があるのか見ていきます。

ここでは、「無香料」と検索したときに最上位にヒットしたおすすめサイト「SAKIDORI」において紹介されていた12個の無香料柔軟剤のうち、データを抽出できた5個(ハミング素肌おもい・ヤシノミ柔軟剤・ファーファ フリー&超コン・カネヨ石鹸・ecostore ファブリックソフナー)のAmazon商品ページを訪れた人のデータを抽出してみました。

彼らが普段閲覧している閲覧サイトを見ると、花王やライオンなどの企業サイトや、特徴的なサイトとして「SAKIDORI」「360LiFE」などの商品おすすめメディアのほか、香水のサブスクサービス「カラリア」や洗濯関連の商品やライフハックを紹介する「araou」などがランクインしています。

ハミング素肌おもい・ヤシノミ柔軟剤・ファーファ フリー&超コン・カネヨ石鹸・ecostore ファブリックソフナーのいずれかのAmazon商品ページを訪れた人の閲覧サイト
利用ツール:story bank
集計期間:202209~202308
デバイス:PC・スマートフォン

柔軟剤を求める検索者が「洗濯」に関心を持っていることは想像に難くないですが、無香料製品を求める検索者が「香水」に関心を持っていることは直感に反する結果だと言えます。後者の集団は、今まで分析してきたような香りに苦手意識を持っている人たちではなく、むしろ香りを楽しみ味方につけている人たちだと考えられます。自分好みの香水を思いっきり楽しむために、それ以外の香りを取り除こうとしているのではないでしょうか。

フレグランスおよび香水市場の成長が期待される中、意図しない香りはあえて避けるという動きも、今後活発になっていくのかもしれません。

「香水市場」や「カラリア」については以下の記事やレポートで詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。

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まとめ

無香料製品の需要について、関心層と製品群を中心に調査してきました。

それぞれ簡単にまとめると、ターゲットは、出産・育児を控えた人、自然派思考の人、乾燥肌など肌悩みを抱える人、香水を楽しみたい人など多岐にわたり、求める製品も柔軟剤・ヘアオイル・シャンプーなどの通年使用のものから、制汗剤、虫除け、ハンドクリームなどの季節性のものまで幅が広いことが分かりました。

まずは販売をオンラインに絞るなど初期経費を抑えつつも、化粧品など香りが切り離せないイメージのある製品でも無香料を展開していくことで、新たな顧客の獲得につながる可能性もあるのかもしれません。

フレグランス市場とともに、無香料市場にも着目していきたいと思います。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
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この記事のライター

2024年春にヴァリューズに入社しました。大学院では生命情報学を専攻していました。

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