注目を集める「嗅覚経済」、「香り」に対する中国人の新トレンドを調査

注目を集める「嗅覚経済」、「香り」に対する中国人の新トレンドを調査

「嗅覚経済」が中国の消費者の注目を集めています。自分が身に纏う香りや、日常生活における香りの質を求める消費者が増え、今や「口紅効果」ならぬ「香水効果」と呼ばれています。本記事では、中国における香水・アロマ製品市場の盛り上がりや、市場における新トレンドを紹介します。


中国の「嗅覚経済」

そもそも、「嗅覚経済」とはどういうものでしょうか。広義の解釈では「人々の嗅覚に頼り促進される経済活動」、狭義の解釈では「人々が嗅覚的体験や自身のニーズを満たすために行う個人の経済活動」とされています。本記事で紹介する「嗅覚経済」は、後者の狭義の解釈に基づきます。
中国の「嗅覚経済」は主に香水や家用アロマ、ボディケア・スキンケア用品の香りに分類されます。本記事も同様の分類にのっとり、各市場について紹介します。

拡大する中国香水市場

かつて「嗅覚経済」市場において、香水市場は未開拓の市場でした。若者世代といった新しい消費者層の増加に伴い、自分を良い気分にしてくれ、ちょっとした高級感も与えてくれる香水は、しだいに受け入れられるようになりました。
艾媒咨询(iiMedia Research)のデータによると、2021年の世界香水市場規模は465億ドル。一方で中国香水市場の販売額は109億元で、2025年には300億元に達する見込みです。これは、世界市場の3倍の増加速度にものぼる計算となります。世界の香水市場の拡大規模が緩やかになっていく一方、中国国内の香水市場は大幅な増加を続けており、この拡大の傾向は継続すると予測されます。

艾媒数据中心のデータをもとにヴァリューズが作成
出典:2022-2023年中国嗅觉经济发展趋势与商业机会研究报告

艾媒数据中心のデータによると、香水市場の主力消費者層は24歳から40歳の青年世代です。この世代では2022年における香水購買の頻度が増えたと答えた割合が30%以上と、他の年代と比べ最も大きな数値を打ち出しました。反対に、2022年における香水購買の頻度が減ったと答えた24歳から40歳の消費者の割合は、他の年代と比べ最も少ない数値を記録しました。

一方で、CBNDataが発表した「2021线上嗅觉经济研究报告(2021年オンライン上における嗅覚経済研究報告)」によると、2000年以降生まれのいわゆるZ世代は消費金額こそ他の年代に劣るものの、前年同期比増加率は他の年代と比べ圧倒的に高い数値を記録しました。ここから現在の中国香水市場の主力消費者層は青年世代、若者世代が今後消費が増えるだろう潜在的な主力層であることが分かります。

種類豊富な香水の香りの中で、中国の消費者から強い人気を集めているのが、「東方香」です。現在中国では「国潮経済」と呼ばれるように、中国の伝統的文化の要素を取り入れた製品が人気となっています。香りの好みもこの「国潮経済」の影響を受けているのです。
さらにCBNDataと天猫(Tmall)が連名で発表した「2023香水香氛消费者洞察白皮书(2023年香水・アロマ消費者洞察白書)」によると、64%の消費者が「新しい中国式の東方香を試してみたい」と意思表示をしています。いかに記憶の中の古典の雰囲気を感じてもらえるかが、新しい中国式の東方香が消費者の心を動かす重要な要素となっています。

CBNDataのデータをもとにヴァリューズが作成
出典:2023香水香氛消费者洞察白皮书

「東方香」の香りの香水を販売している中国国内ブランドの例として、観夏(To Summer)が挙げられます。観夏(To Summer)は東方の植物や、中国の伝統的なお香文化を製品に取り入れている点が特徴的なブランドです。製品が販売初日に1000個以上売れる、看板商品が3秒で売り切れるなどの記録を樹立しました。增长黑盒のデータによると、観夏(To Summer)の2021年の売上額は約1.43億元にものぼります。

観夏(To Summer)の製品例

艾媒咨询が発表した「2022-2023年中国嗅觉经济发展趋势与商业机会研究报告(2022-2023年中国嗅覚経済発展趨勢と商業機会研究報告)」によると、60.8%の中国の消費者が東方香のおかげで香水の香りの選択肢が増えたとし、さらに36.5%の消費者が、国潮文化の香水は文化的な豊かさを内包していて、より買う価値を感じています。
以上のことから、現在中国における香水消費者の間では、「東方香」と呼ばれるような中国の伝統的な要素を感じられる香りがトレンドとなっていることが分かります。

人気が増す家用アロマ

家用アロマは、コロナ禍で売上を伸ばしました。コロナ禍初期の2020年の1月から9月の期間において、世界の香水の売上は前年同期比で17%減少しましたが、対照的に家用アロマの売上は前年同期比で13%の増加を記録しました。コロナ禍により在宅時間が増えた結果、「日常生活をより素敵なものにしたい」、「不安な感情を和らげたい」と思う消費者が、家用アロマを重宝した様子が窺えます。

2022年の618セール期間における、京東商城(JD.com)や天猫(Tmall)、快手などの大型ECモールのデータによると、アロマやお香の人気は継続的な上昇状態にあることが分かりました。香水市場と比較すると家用アロマの市場規模は小さくはありますが、今後も市場規模の拡大を続けていくと、共研网が発表した「2022年中国家居香氛市场规模分析及预测(2022年中国家用アロマ市場規模分析と予測)」では予測されています。

共研网のデータをもとにヴァリューズが作成
出典:2022年中国家居香氛市场规模分析及预测

CBNDataと天猫(Tmall)が連名で発表した「2023香水香氛消费者洞察白皮书(2023年香水・アロマ消費者洞察白書)」によると、アロマは今や寝室だけでなく、日常生活のあらゆる場所で使用されています。アロマを使う場所に関する調査(複数回答可)では、寝室が76%と最も高く、次いでリビングが59%、オフィスが56%、自家用車内が47%、浴室が44%と並びました。アロマを使う生活場面に関する調査(複数回答可)では、家で映画を見る時が37%と最も高く、次いで運転時が31%、寝る前の読書タイムが30%、仕事や勉強に集中したい時が29%と並びました。

アロマ製品の形態としては、以前から用いられていたアロマキャンドルやアロマオイルが依然として68%、60%と高い割合を占めているものの、拡香石(アロマストーン)やアロマカードといった新形態のアロマも46%、37%と低くない割合を占めています。

アロマストーン。一般的には石膏で作られた素材に、アロマオイルや香水を垂らすことで香りを楽しめるディフューザーの一種

CBNDataが発表した「2021线上嗅觉经济研究报告(2021年オンライン上における嗅覚経済研究報告)」によると、1985年~94年生まれの層が家用アロマの主要な消費者であるものの、1995年以降生まれの若者世代も香りへの消費の姿勢を強く見せています。家用アロマの消費者層は若年化の傾向を見せ、このことから中国では、将来においても家用アロマの需要は継続して増加することが窺えます。

ボディケア・スキンケア用品も香りを重視

ボディケアやスキンケア用品などにおいても、香りはますます消費者が重視する要素となっています。製品の実際の物理的効果だけでなく、消費者の感情面の満足に重点を置くスキンケア用品が、国内で需要を伸ばしているのです。ボディースプレーやアロマオイル、ボディミルクなどが製品の形態として挙げられます。

2023年2月25日、中国日用化工協会などが連名で「中国身体皮肤护理白皮书(2023)(中国ボディ・スキンケア白書(2023))」を北京で発表し、専門家を招いたフォーラムを開催しました。フォーラムでは、消費者がボディミルクを選ぶキーポイントは「効果・香り・質」であると専門家が述べました。
また既にアロマオイル入りボディミルクやバスオイル、ハンドクリームなどを販売している中国の化粧品ブランド・半亩花田は、香料・芳香化合物を取り扱うメーカー・シムライズとの技術協力契約を執り行いました。世界の調香師と調整をとり、半亩花田専属の調香師が更なる優れた香りを創出することをサポート。同時に先端技術を活用することによって、全製品カテゴリーの感情実験室を打ち出し、香りの領域における創造的な開発を支援することを決めたのです。

半亩花田公式HP記載の商品画像

以上のように、ボディケアやスキンケア用品においても、良い香りであることは製品の人気を高めるうえで重要な要素となっています。

まとめ

「嗅覚経済」と呼ばれる、人々の嗅覚体験を重視する経済的風潮が広まっている中国において、香水・アロマ市場は各分野で需要を伸ばしています。香水においては、現在中国で流行している国潮文化の影響を受け、「東方香」と呼ばれる中国の伝統的な要素を取り入れた香りが人気を集めています。
香水・アロマ市場はコロナ禍において規模を大きく拡大した市場であることから、コロナ禍が収束した今後、どのように発展を続けていくか注目です。

参考URL

风口下的嗅觉经济:消费者在为哪些“气味”买单?
https://36kr.com/p/2233487956864642
2022-2023年中国嗅觉经济发展趋势与商业机会研究报告
https://www.sohu.com/a/579622946_121124715
VOGUE Business 重磅揭晓《2023解码中国Z世代的香氛经济白皮书》
https://mp.weixin.qq.com/s?__biz=MzU1NjQ3MzE1MQ==&mid=2247667621&idx=5&sn=d78353bdb4926aa33d0b1a9f0f604325&chksm=fbc881f5ccbf08e395e4875b0d21ab955d1feab1431abb7a1210c421ab9bdd1def2b3b97c13b&scene=27
瞄准年轻人 百亿“嗅觉经济”正崛起
http://stock.10jqka.com.cn/20220919/c641873848.shtml
2022年中国家居香氛市场规模分析及预测
https://www.sohu.com/a/577586851_120991642 
国内首个白皮书发布!2023身体护理趋势有哪些?
https://www.sohu.com/a/646915990_100004142 

この記事のライター

横浜国立大学、早稲田大学を卒業後、2024年に新卒でヴァリューズに入社。
海外領域のリサーチャーとして、中国、東南アジア、アメリカなどの地域において、定量調査だけでなくSNS分析などの技術型調査手法を活用し、これまで家電、食品、飲料、小売系の企業様のマーケティング支援に携わる。

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