トレンドサイト堂々の1位!中国発の新興EC「Temu」とは
Temu(ティームー)は、中国の『拼多多(ピンドゥオドゥオ)』が運営するECサービスです。
消費者のオンライン上の行動を分析できるツール「Dockpit」の「トレンド分析」機能を用いて見てみると、6か月上昇のサイトトレンドで1位となっており、まさに破竹の勢いでマーケットを拡大していることがうかがえます。
サイトトレンド(6か月上昇)
調査期間:2023年11月
デバイス:PC
「Shop Like a Billionaire(億万長者気分でお買い物)」をコンセプトとしており、サイト上でもアプリでも利用することができます。
公式サイトによると、
・すべての注文で送料無料
・無料返品90日以内
・配達時間:5-20日
とあり、海外通販にしては商品の到着までがスピーディなケースも多いようです。
Temuの特徴は、何といってもその価格設定。
「ベストセラー」のページを開いてみると、ハンディクリーナーやブレンダーが1,000円代で販売されています(2023年12月14日時点)。
X(旧Twitter)上でも、「安い」「速い」という投稿が見られます。
一方で、「安すぎて不安」という意見も。
Temuは、その豊富な品添えも強みのようです。
公式サイトで商品カテゴリを見てみると、以下のように様々なジャンルの商品が掲載されていることがわかります。
「Temu」公式サイト「カテゴリ」より
積極的なディスプレイ広告配信で、ユーザー数増加を続ける
ではここから、Temuの利用実態を詳しく見ていきましょう。
公式サイトの訪問者と公式アプリ利用者の合算でユーザー数推移を見ていくと、日本でサービスが開始された2023年7月以降ユーザー数を増やし、同年11月には2,460万人となっています。
「Temu」のユーザー数推移:サイト訪問者+アプリ利用者数
調査期間:2022年12月~2023年11月
デバイス:PC&スマートフォン
特に認知が急拡大した2023年8月のタイミングには、積極的にディスプレイ広告を出稿し、広告でサービスを目にしたユーザーが気になって検索したためか、自然検索からのサイト流入も多くなっています。
「Temu」公式サイトの流入元(セッション数ベース)
調査期間:2022年12月~2023年11月
デバイス:PC
SHEINよりも男性・年配ユーザーの割合が高い
続いて、同じく「激安」を売りにして爆発的な認知を獲得した「SHEIN」と比較しながら、Temuのユーザー像を明らかにしていきます。
なお、SHEINについては以前にマナミナでも調査記事を取り上げておりますので、参考にご覧ください。
革新的ビジネスモデルでファストファッションの黒船に?「SHEIN」ユーザー急増の理由を探る
https://manamina.valuesccg.com/articles/1812ショッピングセンターや百貨店などの度重なる休業要請はまだ記憶に新しいことでしょう。新型コロナウイルスはファッション業界にも大きな影響を及ぼしています。そのような背景がある中でも、いま急成長をしている企業があります。2012年に中国で設立された.アパレルブランド「SHEIN(シーイン)」です。注目が集まる理由を紐解くべく、ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を使って調査しました。
まずはユーザーの男女比から。
SHEINは女性が約70%と女性比率が高いのに対して、Temuは男女がおよそ半々と、男女の偏りなく利用されていることがわかります。
「Temu」「SHEIN」ユーザーの男女比:サイト訪問者+アプリ利用者
調査期間:2022年12月~2023年11月
デバイス:PC&スマートフォン
年代比率を見てみると、ネット利用者全体と比べて20-30代の利用が目立つSHEINに対し、Temuは50-60代の利用者割合が高くなっています。
「Temu」「SHEIN」ユーザーの年代割合:サイト訪問者+アプリ利用者
調査期間:2022年12月~2023年11月
デバイス:PC&スマートフォン
このことから、Temuは新興サービスではあるものの、新しいもの好きな若者がイノベーターとしてこぞって利用を始めているわけではないことがわかります。SHEINは様々なコスメやファッションアイテム、お洒落な雑貨を安く試してみたい若い女性の利用が多いイメージですが、Temuはそれとは別のターゲット設定をしているのかもしれません。利用者の興味関心については、後ほど深堀りしていきます。
それぞれの利用者の未既婚状況や子供の有無を見てみても、Temuはユーザー年代が高いためか、SHEINと比較してやや既婚者割合、子供あり割合ともに高いことが分かります。
「Temu」「SHEIN」ユーザーの未既婚状況:サイト訪問者+アプリ利用者
調査期間:2022年12月~2023年11月
デバイス:PC&スマートフォン
「Temu」「SHEIN」ユーザーの子供の有無:サイト訪問者+アプリ利用者
調査期間:2022年12月~2023年11月
デバイス:PC&スマートフォン
一方でユーザーの世帯年収については、両者で大きな違いはなく、ともに400万円未満がボリュームゾーンになっています。「激安」という特性上、可処分所得が少なめで、節約意識の高いユーザーが特に注目しているのかもしれません。
「Temu」「SHEIN」ユーザーの世帯年収:サイト訪問者+アプリ利用者
調査期間:2022年12月~2023年11月
デバイス:PC&スマートフォン
SHEINはコスメやファッション、Temuはデジタル機器や家電
■ユーザーの興味関心
ここから、それぞれのユーザーの解像度をさらに上げていきましょう。
なおここでは、Web行動データとアンケートデータを用いて、ターゲットユーザーにおける特定のWeb行動の前後の動きと属性を集計できる、ヴァリューズの分析ツール「story bank」を使用します。
まずは、SHEINユーザーが日々どのようなトピックに興味関心を抱いているのかを集計しました。見ると前述のイメージ通り、ファッション、コスメ・化粧品、ヘアケア・ヘアサロンといったトピックへの関心が特に高いことがわかります。インテリアやアクセサリー、ダイエット用品も、ユーザーとの親和性が高そうです。
「SHEIN」ユーザーの興味関心:サイト訪問者+アプリ利用者
調査期間:2022年12月~2023年11月
デバイス:PC&スマートフォン
※0pt以上のみ表示。
※横軸は特徴値、縦軸はリーチ率。右上に行くほど対象者の興味関心ごとが高くなる。
一方でTemuユーザーは「パソコン」への関心が突き抜けています。そのほか、デジタル機器、ヘルスケア商品、ガーデニング用品、カー用品なども、ECで見られやすい商品カテゴリになってくるかもしれません。
「Temu」ユーザーの興味関心:サイト訪問者+アプリ利用者
調査期間:2022年12月~2023年11月
デバイス:PC&スマートフォン
※0pt以上のみ表示。
※横軸は特徴値、縦軸はリーチ率。右上に行くほど対象者の興味関心ごとが高くなる。
■Temuでよく見られている商品は?
最後に、Temuのサイト上で実際にどのページがよく閲覧されているのかを見てみましょう。
人気コンテンツの上位には、トップページやクーポン、利用規約、プライバシーポリシー、サポートセンターなどのページが並んでいます。海外発のECで、かつ驚くほど安いという特徴を不安に思う利用者が多いのかもしれません。
「Temu」サイト内でよく見られているページ
調査期間:2022年12月~2023年11月
デバイス:PC&スマートフォン
商品ページがランクインしてくるのは30位以降。パソコンケース、エアフライヤー(油を使わずに揚げ物が作れる調理家電)、バッグ、ガラスリンサー、ポータブルエアコン、スポンジホルダー、ミニドールハウスキット、ポータブルマッサージ機、カーバッテリーチャージャー、目覚まし時計、防水ジャケットといった商品が並んでいます。家電や生活雑貨などのジャンルがよく見られているようです。
ちなみにガラスリンサーとは下画像のような商品で、簡単にグラスやマグカップ、水筒などを洗浄できるようになっています。
「ガラスリンサー」の例
「Temu」サイト内でよく見られているページ
調査期間:2022年12月~2023年11月
デバイス:PC&スマートフォン
普通に買うと高くつく家電を、Temuで安く試してみようという心理が背景にあるのかもしれません。
SHEINと比較したTemuのユーザー分析、いかがでしたでしょうか。
ともに激安を売りにしている中国初のECですが、両者で実際の利用者は大きく異なる様子がうかがえました。
SHEINの場合は、「SHEIN 購入品紹介」といった動画が多くのYouTuberによって配信され、サービスの認知拡大に大きく貢献したと思われますが、Temuも今後そのような拡散がされることで、さらに爆発的な認知度を得ていくかもしれません。既に、「Temuで買い物してみた」系の動画を配信している情報感度の高いクリエイターも出てきており、こちらの動画は106万回再生という人気コンテンツになっています(2023年12月14日時点)。
「安すぎて怖い。本当にちゃんと届くのかな」「海外産のサービスだけど、安心して使えるのかな」といった不安に対して、先行して試してみて、正直なレビューを発信してくれるインフルエンサーの存在によって、利用を後押しされる消費者も今後増えてくるかもしれません。
Temuの利用者は今後も増え続けるのか。そして、マジョリティ層に利用が広がっていくことによって、ユーザーのペルソナは変化していくのか。
今後もTemuの動向に注目です。
1997年生まれ、大阪大学卒。データアナリストを経て、Webマーケティング・リサーチを軸に、コンテンツディレクション、SNS運用、デジタル広告運用などを担当。現在はフリーで活動しています。