リピートされる観光地を目指したDMP構築とデータ活用組織作り【広島県観光連盟インタビュー】

リピートされる観光地を目指したDMP構築とデータ活用組織作り【広島県観光連盟インタビュー】

コロナ禍を経て活況が戻った観光業において、データドリブンの施策を展開する広島県観光連盟(HIT)。本稿では「圧倒的な顧客志向」を掲げるHITでの、VALUESのデータ分析伴走支援サービスを通じたチャレンジに迫ります。


デジタルマーケティングのプラットフォーム作りで 観光情報の“見える化”に注力

世界が熱狂する観光地を、みんなで作りたい

広島県観光連盟(以下、HIT)は、自治体や観光事業者と連携しながら、広島への観光促進を担う一般社団法人。
チーフプロデューサーとして招聘された山邊さんは、2020年4月の着任直後、次のように感じたといいます。

HIT 山邊 昌太郎氏(以下、山邊):「HITが手がける観光事業が、“リピーター” につながっているか不安でした。施策の多くが、ポスター掲示やテレビ広告といったプロモーションばかりだったのです」

プロモーションは実行後の効果が表れやすい一方で、消えるのも早く、いわゆるペンシル型の施策であり、獲得できる観光客も初めて広島を訪れる人たちが中心だったとのこと。

山邊:「毎年新規の観光客だけでは事業の継続が難しい上に、プロモーションに使える予算も限られています。そこで、いかにリピートしてもらえる観光地を作るかが、広島の観光事業成長のカギだと考えました。」

山邊さんが目指したのは、“ロングテール型の観光事業” 。広島は平和記念公園や宮島といった、世界的にも集客力のある観光地を擁しますが、より多様な観光地をPRすることで観光客に広島のファンになってもらい、何度も足を運んでもらいたいという想いでした。

山邊:「100万人が集まる1カ所よりも、1万人が熱狂する100カ所を作る。1日あたり約30人が『すごくいい!』と思ってくれる観光地を100カ所作るという視点で地元を見ると、そこかしこに魅力的な場所やお店が見つかるものです。それを効果的に届けることで多くの人に広島のファンになってもらい、ファンとのつながりから得られる情報を、次のマーケティングに生かして満足度を高めてもらいたい、と構想を練りました。」

一般社団法人 広島県観光連盟(HIT) チーフプロデューサー/ 常務理事 事業本部長 山邊 昌太郎氏

一般社団法人 広島県観光連盟(HIT) チーフプロデューサー/ 常務理事 事業本部長
山邊 昌太郎氏

広島県出身。京都大学工学部を卒業後、1992年に株式会社リクルートへ入社し、
新規事業開発や就職関連情報誌編集長を歴任。2016年に「Calbee Future Labo」の
クリエイティブディレクターとして着任。2020年4月より現職

データを集約し活用へ。自走できる仕組み作りに

山邊さんが掲げるビジョンに対して、実務面はどうだったのでしょうか。HITのカスタマーマーケティンググループの中野隆治さんは、データを活用した観光マーケティングに際し、山邊さんの着任前から課題を抱えていました。

HIT 中野隆治氏(以下、中野):「課題は大きく2つありました。まず、広島にある観光統計データが活用できていませんでした。観光地の来場者数などの、広島県内の各市町が集計するデータや観光庁によるオープンデータがWEB上や紙の冊子、ExcelやPDFといった形式で分散していたのです。各市町の集計方法も微妙に異なり、データを使いたくても都度データを探したり手作業で集計したりと、データ活用のハードルが高い状態でした。もう1点は、HITの職員は県庁などからの出向者が多く、任期を終えると出向元へ戻る流れが生む問題でした。HIT内にデータ活用のための情報や知見が蓄積されにくい状況になっていました。」

そこでHITが活用したのが、ヴァリューズによる伴走型のデータ分析支援サービス。HITからのオーダーは、「自分たちで扱える仕組みを、一緒に作ってほしい」。担当者へのヒアリングや議論を重ね、DMP(Data Management Platform)の構築が進められました。

中野:「観光庁などが提供しているオープンデータと、宿泊者数やスポットごとの訪問者の数などの収集データを、BIツールの「Tableau(タブロー)」を活用することによってデータを集約し、自治体や事業者と共有することによって『皆が同じデータを見て議論できる』という状態を作りました」

Tableauは使い始めのデータ処理が整えば、Excelよりもグラフへの組み換えやデータ分析が容易にできるツールです。さらにDMPは構築して終わりではありません。データの更新や分析・活用についても、継続的な伴走支援が行われています。

中野:「データの更新方法をシンプルにしてもらったり、マニュアルを作成してもらったり。おかげでHITの担当者自身で、大きな手間をかけることなくDMPの更新ができています。さらにHITでは、市町や観光協会向けに、データの分析方法や活用法についての勉強会を開催しています」

(左)一般社団法人 広島県観光連盟(HIT) チーフプロデューサー/ 常務理事 事業本部長 山邊 昌太郎氏 (右)株式会社ヴァリューズ DX推進支援グループ シニアマネジャー 和田 尚樹

ヴァリューズの和田尚樹(DX推進支援グループ・シニアマネジャー)と山邊さん。HITからの要望は、日常の業務改善から抽象度が高いものまで様々。「どんな相談も、丁寧に付き合ってくれるのが頼もしいですね」

データの整理と活用、 運用までの丁寧な支援で 期待に応える

自走できるデータ活用組織作りは、広島の観光事業の底上げにも繫がります。チーフプロデューサーの山邊さんは、オール広島だけでなく、ファンも巻き込んだ “団体戦” と語ります。

山邊:「現在進めているのが、『HITひろしま観光大使100万人プロジェクト』です。広島が好き、という条件を満たす方であれば誰でも観光大使になれます。2024年2月時点で約2万人の観光大使がいて、台湾やケニアなど国籍も多岐にわたります。現在取り組んでいるのは、スマホのアプリを通じて、広島のことをもっと知ってもらったり、魅力を伝えてもらったりできるような、CRM(Customer Relationship Management)の仕組みを構築したいです」

CRMにより、観光大使が訪問する場所のチェックインデータやクチコミなどがHITのデータとして蓄積されます。GoogleやInstagramといったサードパーティではなく、HIT自身が一次情報を持つことができ、さらに双方向のコミュニケーションが取れることで、より顧客満足に繫がる施策も期待できるでしょう。

ひろしま観光公式サイト「Dive! Hiroshima」

HITがひろしま観光公式サイト「Dive! Hiroshima」で公開する観光関連の統計データ。旅行消費額や宿泊客数など、WEBサイト上で年月推移の確認や他の都道府県との比較が可能だ。観光・体験スポットのPV数、訪問客の属性や満足度も把握できる。

山邊:「ヴァリューズは、『こんな仕組みがあったらいいな』とか、『こういう世界を実現したい』といった漠然とした相談を、きっちりアウトプットに落とし込んでくれます。単なる受発注の関係ではなく、時には壁打ち相手になってくれたり、私たちの講師役を努めてくれたりと、文字通り伴走してくれるのが大きな魅力だと感じています。私たちもヴァリューズの価値を最大限に活用していきたいですね」

データを可視化し、活用するために伴走者としての役割を担う

Key

取材協力:一般社団法人 広島県観光連盟(HIT)
▼自社データ活用支援(DX推進支援)に関するご相談は、お気軽に下記お問合せフォームよりご連絡ください
お問合せ・ご相談はこちら

【関連】DX推進支援サービス|株式会社ヴァリューズ

https://www.valuesccg.com/service/dx/

データインテリジェンス×マーケティングで新たな市場価値の創造をサポートする株式会社ヴァリューズの事業・サービスをご紹介します。

この記事のライター

マナミナは" まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン "。
市場の動向や消費者の気持ちをデータを調査して伝えます。

編集部は、メディア出身者やデータ分析プロジェクト経験者、マーケティングコンサルタント、広告代理店出身者まで、様々なバックグラウンドのメンバーが集まりました。イメージは「仲の良いパートナー会社の人」。難しいことも簡単に、「みんながまなべる」メディアをめざして、日々情報を発信しています。

関連する投稿


国内外で受賞!味の素冷凍食品「冷凍餃子フライパンチャレンジ」における生活者との共創ポイント

国内外で受賞!味の素冷凍食品「冷凍餃子フライパンチャレンジ」における生活者との共創ポイント

味の素冷凍食品株式会社の「冷凍餃子フライパンチャレンジ」プロジェクトが、日本マーケティング大賞 奨励賞の他、世界有数のPRアワードである「PR Awards Asia-Pacific 2024」で3部門のゴールドを受賞しました。「冷凍ギョーザがフライパンに張り付いた」という一件のSNS投稿からはじまったという、このプロジェクト。立ち上げの背景や、取り組むうえで大事にされていたことを、同社 戦略コミュニケーション部 PRグループ長の勝村敬太氏に伺いました。


電通デジタル、DX組織の持続的発展に繋げる簡易診断プログラム「DX組織クイックスキャン」を提供開始

電通デジタル、DX組織の持続的発展に繋げる簡易診断プログラム「DX組織クイックスキャン」を提供開始

株式会社電通デジタルは、DX組織※の現状と課題を診断し、DX組織の持続的成長に向けた戦略を提案する簡易診断プログラム「DX組織クイックスキャン」を開発し、提供開始しました。


DX推進企業の約7割がSaaSを導入している一方で、生産性向上や業務効率化を実感できているのは4割未満にとどまる【うるるBPO調査】

DX推進企業の約7割がSaaSを導入している一方で、生産性向上や業務効率化を実感できているのは4割未満にとどまる【うるるBPO調査】

株式会社うるるBPOは、DXを推進している企業の係長以上の役職者を対象に、「SaaSを利用した業務の実態調査」を実施し、結果を公開しました。


提案資料を自動で整理する「Pitchcraft (ピッチクラフト)」~ 社内にある“使える資料”が、みんなのものに

提案資料を自動で整理する「Pitchcraft (ピッチクラフト)」~ 社内にある“使える資料”が、みんなのものに

マーケティングの業務支援を行うSaaSとして、「Dockpit」を提供してきたヴァリューズが、2024年7月、組織の提案力と生産性を向上させる提案ナレッジシェアクラウド「Pitchcraft(ピッチクラフト)」をリリース。社内の情報を効率よく共有したいという思いから開発したツールは、その圧倒的な利便性からプロジェクト化し、1つのサービスとして世に出ることになりました。本記事ではナレッジシェアの重要性にはじまり、「Pitchcraft」の特徴や効果などについて、データマーケティング局アライアンスG マネージャーの大櫛、ソリューション局 システムソリューションG マネージャーの大島に取材しました。


AI画像解析で商品陳列状況をリアルタイムに数値化・見える化!インパクトフィールド、買い場分析システムを消費財メーカー向けに提供開始

AI画像解析で商品陳列状況をリアルタイムに数値化・見える化!インパクトフィールド、買い場分析システムを消費財メーカー向けに提供開始

インパクトフィールド株式会社 は、店頭活動DXプラットフォーム 「MarketWatcher NEO (マーケットウォッチャー ネオ) 」 の拡張機能として、流通小売店舗の店頭状況の把握・分析業務を大幅に効率化する買い場分析システム 「ShareWatcher (シェアウォッチャー) 」 を提供開始したことを発表しました。


最新の投稿


メールDMを確認する日は"月曜日"が6割!「新商品・サービス発表」「業界トレンド等の調査結果や最新ニュース」「商品の割引」が開封されやすい傾向あり【PRIZMA調査】

メールDMを確認する日は"月曜日"が6割!「新商品・サービス発表」「業界トレンド等の調査結果や最新ニュース」「商品の割引」が開封されやすい傾向あり【PRIZMA調査】

株式会社PRIZMAは、メールDM経由で商談を受けた経験のあるBtoB企業の社員を対象に、「メールDMに関する調査」を実施し、結果を公開しました。


電通デジタルと電通、Amazon Ads動画広告のリーチ・購買効果を把握・検証できる統合動画マーケティングソリューションを開発

電通デジタルと電通、Amazon Ads動画広告のリーチ・購買効果を把握・検証できる統合動画マーケティングソリューションを開発

株式会社電通デジタルと株式会社電通は、Amazon Adsの動画広告のリーチ指標や、実店舗での「オフライン購買」およびECサイトなどでの「オンライン購買」に与える影響を把握し、プランニングおよび効果検証に活用することができる統合動画マーケティングソリューションを開発したことを発表しました。


食料危機 ~ 天災か人災か

食料危機 ~ 天災か人災か

食料・食糧の危機が迫っています。地球上では、気候問題や行政の責任下で今なお続く飢饉もあります。私たちの未来を豊かにするために欠かせない食料・食糧。それを恒常的に守っていくためには、今この時にどのような行動が必要なのでしょうか。基本的な言葉の意味の説明や、それぞれに対する詳細な対策案を交え、広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長、一般社団法人マーケティング共創協会理事・研究フェローを務めている渡部数俊氏が解説します。


“第2次”アサイーブームは続くのか? 検索者属性や検索ニーズからカテゴリ浸透の未来を考察

“第2次”アサイーブームは続くのか? 検索者属性や検索ニーズからカテゴリ浸透の未来を考察

近年再び話題になっている「アサイー」。若い女性を中心に人気を集めているようです。他にはどのような特徴を持つ人がアサイーに関心を持っているのか、アサイー検索者がアサイーのどんなことに興味を持っているのかについて、Web行動ログデータから分析・考察します。そして、アサイーブームのこれからを考えます。


2024年のソーシャルメディアマーケティング市場は1兆2,038億円、前年比113%の見通し。2029年には2024年比約1.8倍、2兆1,313億円に【サイバー・バズ調査】

2024年のソーシャルメディアマーケティング市場は1兆2,038億円、前年比113%の見通し。2029年には2024年比約1.8倍、2兆1,313億円に【サイバー・バズ調査】

株式会社サイバー・バズは、株式会社デジタルインファクトと共同で、2024年国内ソーシャルメディアマーケティングの市場動向調査を実施し、結果を公開しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ