早速、話題になったドラマの傾向を調査していきましょう。
なお、こちらの調査は全国のモニター会員(15歳以上の男女)へ、2024年10月~12月に放送されたテレビドラマ(以下前期ドラマ)と、2025年1月から放送予定のテレビドラマ(以下今期ドラマ)の、認知度と視聴意向について実施したアンケートの結果をもとに、各ランキングを作成しています。
家族・兄弟愛がテーマの「ライオンの隠れ家」や長崎県・端島が舞台の「海に眠るダイヤモンド」が全話視聴上位に
初めに、前期ドラマの認知度と視聴実態を見てみましょう。

表1 前期ドラマの認知度と視聴実態
サンプル数は44,493
タイトル認知・1話以上視聴共に1位は、テレビ朝日系刑事ドラマシリーズ「相棒 season23」でした。
タイトル認知2位、全話視聴3位のTBS系日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」は、昭和の高度経済成長期に、石炭産業で躍進した長崎県・端島と現代の東京を舞台に、家族の絆や人間模様が描かれています。前回調査の高い期待値を、視聴実態へ繋げていることが分かりました。
タイトル認知3位、全話視聴1位は、TBS系金曜ドラマ「ライオンの隠れ家」でした。自閉スペクトラム症の弟とその家族が主人公の、家族・兄弟愛を描いたヒューマンサスペンスストーリー。脚本は、2016年から放送し話題になったドラマシリーズ「おっさんずラブ」で受賞経歴のある、徳尾浩司氏が手掛けています。前回調査では期待値7位と比較的低かったのですが、認知度・視聴実態をどのようにして高めたのでしょうか。
全話視聴2位のテレビ朝日系木曜ドラマ「ザ・トラベルナース」は、2022年10月期に放送した第1シリーズの続編で、前回調査の期待値も高いことから話題性を感じます。
タイトル認知、全話視聴共に4位は、日本テレビ系土曜ドラマ「放課後カルテ」でした。小学校の保健室を舞台にしたヒューマンドラマ。原作は日生マユ氏のコミックで、40代~50代の女性をターゲットにした講談社「BE・LOVE」に、2011年~2018年まで連載していることから、原作のファンが認知度・視聴実態を高めている可能性を感じます。
そしてタイトル認知5位は、TBS系火曜ドラマ「あのクズを殴ってやりたいんだ」でした。
続いて、ドラマタイトルを認知しているユーザーの属性を調べてみます。

表2 タイトルを知っているドラマ×ユーザー属性 年代別
サンプル数は44,493
左から、タイトルを知っているユーザーの割合が高かった作品順
上の表は、各年代のうち、それぞれの作品を認知している人がどれくらいいるか、その割合を示したものです。
「相棒 season23」「海に眠るダイヤモンド」「ザ・トラベルナース」は、他の年代に比べて60代以上の認知率が高いことが分かりました。「ライオンの隠れ家」は幅広い年齢層から認知されており、「放課後カルテ」は、10代の認知率が高く、「あのクズを殴ってやりたいんだ」は、10代と30代以上の幅広い年齢層から認知されていることが分かりました。
次に、タイトル認知度の高いドラマ(1位~5位)の認知経路を見てみましょう。

表3 タイトル認知度の高いドラマ(1位~5位)の認知媒体
サンプル数は21,209
全体の傾向として、現在もテレビCMやテレビ番組表・実際の放送からドラマを知るユーザーが多いことが分かりました。
他ドラマと比較して、テレビCMからドラマを知る割合が高いのは「海に眠るダイヤモンド」で、テレビの番組表・実際の放送からドラマを知る割合が高いのは「相棒 season23」でした。
「放課後カルテ」「ライオンの隠れ家」はTikTok経由の認知率が高く、「あのクズを殴ってやりたいんだ」はInstagram経由の認知率が高いことが見えてきました。
「相棒 season23」「ライオンの隠れ家」「放課後カルテ」は、家族の口コミもドラマを知るきっかけになっていることが想定されます。
続いて、前期ドラマの満足度を調べてみましょう。
前期ドラマは「ストーリーの斬新さ」「泣けるストーリー」への評価高まる

表4 前期ドラマの中で最も満足した作品
サンプル数は23,226
満足度1位は「相棒 season23」でした。2024年1月期調査の「相棒 season22」の満足度がもっとも高かったことから、前期も多くファンの期待に応えるドラマであったと言えそうです。
満足度2位は「ライオンの隠れ家」、満足度3位は「海に眠るダイヤモンド」、満足度4位は「放課後カルテ」、満足度5位は「ザ・トラベルナース」で、視聴実態・満足度共に高かったことが分かりました。
続いて、各ドラマを満足したと答えたユーザーを年代別に見てみましょう。

表5 最も満足したドラマ(性年代別)
サンプル数は23,226
左から、満足したと感じるユーザーの割合が高かった作品順
「相棒 season23」は、幅広い年代の男性から評価が高いことが分かりました。
「ライオンの隠れ家」と「放課後カルテ」は10代~20代女性の満足度が高く、「海に眠るダイヤモンド」は40代以上の男女、「ザ・トラベルナース」は60代以上の男女の満足度が高いことが分かりました。
ではドラマのどんな点に満足しているのでしょうか。その理由を探ってみます。

表6 最も満足したドラマ(1位~5位)の満足理由
サンプル数は21,209
すべてのドラマの傾向として、出演者の高い演技力や今までにないストーリー、ハラハラするストーリーが、多くのユーザーの満足度を高めていることが分かりました。
「相棒 season23」は、原作・出演者のファンであること、家族や知人も視聴していることが、ドラマの満足理由となっており、異なる年代の男性同士でも、「相棒 season23」が共通の話題になっていることがうかがえます。
「ライオンの隠れ家」は、泣けるストーリーや今までにないストーリーに加え、出演者の演技力を評価するユーザーが多いことが分かりました。具体的な満足理由を詳しく調べてみると、はらはらしながらも愛を感じる素敵なストーリーや、障がい者と共存しながら生活を送るという社会へのメッセージ性のあるストーリーを評価していることが分かりました。

表7 「ライオンの隠れ家」を最も満足したドラマと回答したユーザーの具体的な理由(一部抜粋)
サンプル数は44,493
「海に眠るダイヤモンド」は、今までにない泣けるストーリーや出演者の演技力と共に、演出家・脚本家のファンであること、放送中の話題性も満足度を高める要因になっていることが分かりました。
「放課後カルテ」は、泣けるストーリーに加え、共感できるストーリーや励まされるストーリーに魅了されるユーザーが多く、具体的な満足理由を調べてみると実際に誰かが悩んでいることを取り上げている点や、学校で起こる出来事を教師目線だけではなく、医師の目線で対応している点に満足度を感じていることが見えてきました。

表8 「放課後カルテ」を最も満足したドラマと回答したユーザーの具体的な理由(一部抜粋)
サンプル数は44,493
「ザ・トラベルナース」は、共感できて励まされるストーリーであること、出演者の個性を評価するユーザーが多いことが分かりました。
人気ドラマシリーズ「家政夫のミタゾノ」や女性コミックが原作の「クジャクのダンス、誰が見た?」が話題
最後に、2025年1月期のドラマのタイトル認知や期待値の調査結果を見てみましょう。

表9 今期ドラマの認知度と視聴意向
サンプル数は44,493
タイトル認知・期待値共に1位は、テレビ朝日系ドラマシリーズ「家政夫のミタゾノ」でした。2016年から続く話題のドラマシリーズで、2023年10月期の調査では満足度2位と評価が高く、多くのファンの期待を感じます。
タイトル認知・期待値共に2位は、前期満足度1位の「相棒 season23」でした。
タイトル認知3位のフジテレビ系木曜劇場「日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった」は、映画やドラマで受賞経歴のある実力派の作家陣が脚本を手掛けています。期待値5位と少し順位を下げていますが、今後の視聴実態にも注目したいと思います。
期待値3位は、TBS系日曜劇場「御上先生」でした。演劇界で受賞経歴のある詩森ろば氏が脚本を手掛け、2024年4月期の「アンチヒーロー」や2023年7月期の「VIVANT」の制作に参加してきた飯田和孝氏がプロデューサーであることも、期待値を高める要因と考えられます。
期待値4位のTBS系金曜ドラマ「クジャクのダンス、誰が見た?」は、浅見理都氏のコミックが原作で、講談社の女性コミック「Kiss」に2022年9月から連載しているそう。現在と過去の事件の真相に迫るサスペンスドラマで、期待値の高さから原作の話題性を感じます。
まとめ
前期ドラマは「海に眠るダイヤモンド」「ライオンの隠れ家」「放課後カルテ」など泣けるストーリーへの評価が高かったことが印象的でした。
「ライオンの隠れ家」「放課後カルテ」は若年層からの評価が高く、社会へのメッセージを感じるストーリーが話題となりました。SNSを活用し若年層のニーズに沿った認知施策と、幅広い世代が共感するテーマに基づくストーリーが、ドラマの評価に影響していると言えそうです。
そして、前期の「海に眠るダイヤモンド」の満足度も高かったTBS系日曜劇場は、2024年4月期の「アンチヒーロー」・7月期の「ブラックペアン シーズン2」と、3期連続で満足度上位にランクインしており、「日曜劇場」というドラマ枠に対するターゲット戦略の成功事例と言えそうです。今期の「御上先生」への期待値も高く、引きつづき視聴実態を追っていきます。
人気のドラマシリーズ「家政夫のミタゾノ」は今期の期待値も高く、根強いファンの存在がうかがえます。コミックが原作の「クジャクのダンス、誰が見た?」は、原作を知る女性ファンの期待値が高く、サスペンスストーリーを好む熟年層男性の視聴実態の影響も視野に入れて、調査を進めていきます。
次回も今期・来期ドラマに対するモニター調査をもとに、認知度・視聴実態について考察を含めお伝えします。
【データ集計定義】
調査対象者:株式会社ヴァリューズのモニター 全国の15歳以上の男女
調査対象ドラマ:フジテレビ・テレビ朝日・TBS・日本テレビの4局で、おおよそ21時開始枠または22時開始枠に放送された/される予定のドラマ
調査期間:2024/12/24~2024/12/31
調査デバイス:スマートフォンおよびPC
回収サンプル数:44,493ss ※ローデータの数値に合わせる
ウェイトバック集計:当調査では性年代別人口とネット利用率に合わせたウェイトバック集計を行っている。掲載している数値はすべてウェイトバック後の結果となっている。
制作会社でUIUXデザインやWebサイトの施策立案を経験後、ヴァリューズにジョイン。セミナーのサポートやTVドラマランキングの執筆などを担当しています。