こんにちは、マナミナ編集部です。早速、話題になったドラマの傾向を調査していきましょう。
なお、こちらの調査は全国のモニター会員(15歳以上の男女)へ、2023年7月~9月に放送されたテレビドラマ(以下前期ドラマ)と、2023年10月から放送予定のテレビドラマ(以下今期ドラマ)の、認知度と視聴意向について実施したアンケートの結果をもとに、各ランキングを作成しています。
サスペンスドラマの視聴実態高まる!?熟年層は「VIVANT」「ハヤブサ消防団」若年層は「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」が人気
初めに、前期ドラマの認知度と視聴実態を見てみましょう。
表1 前期ドラマの認知度と視聴実態
サンプル数は21,310
タイトル認知度・視聴実態共に1位は、初回放送までストーリーや役柄が一切明かされず、注目を集めたTBS系日曜劇場「VIVANT」でした。2013年放送の日曜劇場の人気ドラマ「半澤直樹」で演出を務めた福澤克雄氏が原作を手掛けており、過去ドラマや映画で主演を務めたことのある俳優が数多く出演していることも、期待値を高める要因だったことがうかがえます。
タイトル認知度・視聴実態共に2位は、前回記事で視聴意向が高かったテレビ朝日の木曜ドラマ「ハヤブサ消防団」でした。原作の池井戸潤氏の小説を知る多くのファンが、視聴していたことが想定されます。人気マンガが原作の「トリリオンゲーム」も視聴実態4位と比較的高いことが分かりました。
続いて、ドラマタイトルを認知しているユーザーの属性を調べてみます。
表2 タイトルを知っているドラマ×ユーザー属性 年代別
サンプル数は21,130
左から、タイトルを知っているユーザーの割合が高かった作品順
上の表は、各年代のうち、それぞれの作品を認知している人がどれくらいいるか、その割合を示したものです。
「VIVANT」と「ハヤブサ消防団」は、他の作品に比べて50代以上の認知度が高いことが分かりました。特徴的だったのは、6位の日本テレビ系土曜ドラマ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」が他の作品に比べて10代からの認知度が高い点。高校生活が舞台のサスペンスドラマの為、同世代の多くのユーザーから注目を集めていることが想定されます。
次に認知度・視聴実態の高いドラマのうち、満足度の高いドラマを調べてみましょう。
メディアを横断した「VIVANT」のファンマーケティング
表3 前期ドラマの中で最も満足した作品
サンプル数は10,991
満足度1位は「VIVANT」2位は「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」でした。3位は刑事ドラマシリーズ「刑事7人 Season9」で、過去シリーズから視聴するファン層の期待やニーズに応える作品であったことがうかがえます。
次に、各ドラマを満足したと答えたユーザーを年代別に見てみましょう。
表4 最も満足したドラマ(性年代別)
サンプル数は10,991
左から、満足したと感じるユーザーの割合が高かった作品順
すべての年代における満足度を見てみると、1位の「VIVANT」の割合は全体の32.3%で、2位の「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」と20%ほど差があり、他のドラマに比べて圧倒的に評価の高い作品であったことが分かりました。
性年代別に詳しく見てみると、「VIVANT」は40代以上の男性、「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」は10代の男女と20代女性の満足度が高いことが分かりました。
3位の「刑事7人 Season9」は60代以上の男性、5位の「トリリオンゲーム」は10代女性の満足度が高いことが見えてきました。
ではドラマのどんな点に満足しているのでしょうか。その理由を探ってみます。
表5 最も満足したドラマ(1位~5位)の満足理由
サンプル数は9,911
満足度の高いドラマの満足理由を俯瞰してみると、各ドラマごとに個別の強みを感じる結果となりました。
もっとも満足度の高い「VIVANT」は、今までにないストーリーや出演者の演技力の高さに加え、放送中の話題性も他のドラマに比べて高いことが分かりました。詳しく調べてみると、後編9話放送前の生放送特別番組や、監督と出演者によるファンミーティングの有料配信を行っており、メディアを横断したファンマーケティングも放送中に話題性を高めた要因と言えそうです。
満足度の高いドラマの共通点はストーリーの斬新さや共感性
「VIVANT」を最も満足したドラマと回答したユーザーの具体的な満足理由を調べてみると「今までにないスケールのドラマ」という声が多いことが分かりました。今までのテレビドラマでは感じることのできない独自の魅力が、視聴者の心を掴むポイントになっていると考えられます。
表6 「VIVANT」を最も満足したドラマと回答したユーザーの具体的な満足理由(一部抜粋)
サンプル数は21,132
表5で2位の「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」を見てみると、共感できるストーリーだったことが、自身の学生時代の記憶が新しい若年層からの評価を高めた要因と言えそうです。さらに具体的な満足理由を調べてみると、「ストーリー展開が読めなくて面白い」という声が多く、斬新なストーリーも魅力の1つだったことが想定されます。
表7 「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」を最も満足したドラマと回答したユーザーの具体的な満足理由(一部抜粋)
サンプル数は21,132
表5で3位の「刑事7人 Season9」も共感できるストーリーを評価するユーザーが多く、4位の「ハヤブサ消防団」ハラハラするストーリーに加え、原作が好きだったことや脚本家や演出家が好きなことが、満足する理由だったことが分かりました。5位の「トリリオンゲーム」は他のドラマに比べて、出演者がかっこよかったことや挿入歌に対する評価が高く、10代女性に人気のアーティストや俳優を起用していることで、若年層の視聴が増えたと言えそうです。
前期ドラマと過去のドラマの満足理由を比較してみると、2つの共通点が見えてきました。
・前期ドラマの「VIVANT」や「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」と同様に、前回記事で最も満足度の高かった「ラストマン―全盲の捜査官―」も、満足した理由の中で「今までにないストーリー」という回答が多かった。
・前期ドラマの「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」や「刑事7人 Season9」と同様に、前回記事の満足度3位「あなたがしてくれなくても」も、満足した理由の中で「共感できるストーリー」という回答が多かった。
共通点のあるドラマはジャンルにばらつきがあり、満足と感じるユーザーの属性もドラマごとに異なることから、テレビドラマを視聴する幅広いユーザーの傾向と言えそうです。
最後に、今期ドラマの認知度と視聴意向を見てみましょう。
テレビ朝日系シリーズドラマ「家政婦のミタゾノ」や人気漫画が原作の「パリピ孔明」の期待値高まる
表8 今期ドラマの認知度と視聴意向
サンプル数は10,991
タイトル認知度・視聴意向・期待値全てにおいて最も高かったのは、テレビ朝日系列のドラマシリーズ「家政夫のミタゾノ」と「相棒season22」でした。「家政夫のミタゾノ」は、2016年から放送されているヒューマンドラマで2022年には舞台化されており、「相棒season22」は、2000年から放送されている刑事ドラマで映画化もされていることから、根強いファンが一定数存在することが想定されます。
3位は講談社のコミックや週刊誌で2019年から連作していた漫画が原作の「パリピ孔明」、4位は2019年に発売された書籍が原作の「下剋上球児」と、漫画や書籍を原作としたドラマの期待値が高まっていることが分かります。
まとめ
テレビドラマの視聴実態や満足度を高めるためには、ターゲットを絞り込みドラマ独自の魅力を持たせることに加え、メディアを横断したマーケティングが重要になることを、今回の調査から強く感じました。視聴実態の傾向として、サスペンスドラマは熟年層男性からの評価が高く、満足理由の傾向としては、ドラマのジャンルや視聴者の性別年代問わずストーリーの斬新さや共感性を重視するユーザーが多いことが分かりました。
来期ドラマはどのような影響があるのでしょうか。次回も今期・来期ドラマに対するモニター調査をもとに、認知度・視聴実態について考察を含めお伝えします。
【データ集計定義】
調査対象者:株式会社ヴァリューズのモニター 全国の15歳以上の男女
調査対象ドラマ:フジテレビ・テレビ朝日・TBS・日本テレビの4局で、21時開始枠または22時開始枠に放送された/される予定のドラマ
今回より日本テレビ系日曜22時半の枠のドラマを追加しています(過去視聴・今後期待とも)。また、フジテレビ系金曜21時の枠が新設されましたので、今後期待ドラマで追加しております。
調査期間:2023/9/26~2023/9/30
調査デバイス:スマートフォンおよびPC
回収サンプル数:21,130ss
ウェイトバック集計:当調査では性年代別人口とネット利用率に合わせたウェイトバック集計を行っている。掲載している数値はすべてウェイトバック後の結果となっている。
制作会社でUIUXデザインやWebサイトの施策立案を経験後、ヴァリューズにジョイン。セミナーのサポートやTVドラマランキングの執筆などを担当しています。