アメリカのZ世代・ミレニアル世代の生活とともにある占星術

アメリカの若い世代を中心に、占星術への関心が高まっています。アメリカの若者(16〜34歳)に対して行ったEduBirdieによる調査(※1)によると、回答者の80%が占星術を信じていると答えています。ホロスコープ(生まれた瞬間の天体の位置を表した図)をチェックする頻度に関しても、回答者の58%が週1回以上と答えており、占星術はアメリカの若い世代の日々の生活の中に浸透しているものであることがこの調査からうかがえます。
(※1)
Planetary persuasion: How does astrology influence one’s life?
https://edubirdie.com/blog/how-gen-z-uses-astrology-daily
2024年の調査。アメリカの2000人のZ世代と若いミレニアル世代(16〜34歳)が対象。
■「星座あるある」の共通認識で多くの人と繋がるSNS効果
現在のように占星術が多くの若者の興味をひくことになったきっかけはSNSにあると言われています。SNS上には占星術に関する投稿が多くあげられており、特にTikTokやInstagramで盛り上がりを見せています。実際にTikTok上では、#astrology(占星術)の投稿数が490万にものぼっています(2025年5月時点)。
代表的なSNSへの投稿内容としては、ホロスコープの意味を読み解く説明動画や、星座あるあるのようなミーム画像などがあります。占星術は、多様なバックグラウンドの違いを超えて人々が共通の話題で盛り上がり、楽しく繋がれる居場所を作り出しています。
「ほら言った通りでしょ」と言いたくなる気持ちを抑えている乙女座
(占いアプリSanctuary公式アカウントのInstagram投稿)
占星術が今のアメリカの若い世代に響く理由
■上手くいかないのは星のせい?不安定な世の中を生き抜くための占星術
アメリカのZ世代やミレニアル世代は、不況や政治的衝突、環境問題などの不安定な世の中で育ってきた世代と言われています。そのような苦境に対して納得できる理由づけを与えてくれるものとして占星術が重宝されています。
物事が上手くいかないときによく結びつけられる占星術の用語に、「水星逆行(Mercury Retrograde)」や「土星回帰(Saturn Return)」があります。
水星逆行は、天体ごとに太陽の周りを公転するスピードが異なることから、地球から見て水星が普段と逆方向に進んでいるように見える時期のことを指します。年に3〜4回の頻度で起こる水星逆行の時期には、コミュニケーションの相違や遅れ、混乱がもたらされると占星術では言われています。
土星回帰は、自分が生まれた時と同じ位置に土星が戻ってくるタイミングのことを指します。29歳、58歳、87歳頃に訪れる現象です。自分自身を見つめ直し、成長するための試練の時期であると言われています。
これらの現象が起こっているタイミングだから、と理由づけをすることで、今置かれている大変な状況を切り抜けることに役立っているのです。
■自己理解に繋がるパーソナライズ性が魅力に
人それぞれ多様なあり方が尊重される中で、占星術は自分が何者かを理解する助けにもなっています。
西洋占星術では、ホロスコープをもとに生まれ持った自分の性質や価値観、行動の傾向、そこから導かれる未来の運勢などを読み解きます。ホロスコープは自分の生まれたタイミングの天体の位置で決まるため、人それぞれ異なるものとなります。
価値観の多様化とともに生きる若い世代にとって、自分のためにパーソナライズされた情報を与えてくれる点も魅力を感じやすい要素と言えます。自身の経験と重ね合わせて占星術の占い結果を解釈することで、より個人的な気づきに繋がります。
また、科学でも宗教でもない位置にある占星術は、より親しみやすいものとして若い世代に浸透しています。若い世代の間で、昔ながらの伝統や宗教などに関連する帰属意識が弱まっていく傾向がある中、その代替として占星術に魅力を感じる人が多くなっているのではないでしょうか。
人間関係のヒントとして期待される占星術
EduBirdieの同調査によると、占星術を最も参考にするトピックは回答者が多い順に、人間関係(45%)、ウェルネス(32%)、金銭関連(19%)、キャリア(18%)、教育(9%)があげられています。
占星術で参考にするトピックに関する調査結果
特に多くあげられた人間関係に関して、同調査の全回答者のうち74%の人がデートの相手の星座を確認すると回答しています。さらに31%の人は相性の悪い星座の人とは付き合わないとまで回答しました。恋人探しに星座の相性の良し悪しを気にしている人が多く、実際に相手選びの行動に反映させている人も一定数いることがうかがえます。
このように人間関係の相性を星座で確認しておきたいというニーズがある中、マッチングアプリに星座の機能が含まれているものも登場しています。例えばBumbleでは、マッチする相手を星座で絞り込み検索できるフィルター機能があります。Hingeでは、自分の星座をプロフィール情報に設定し公開することができます。
スピリチュアルな占いを気軽に楽しめるアプリも人気に
占星術関連のアプリで代表的なものにCo-StarとSanctuaryがあります。
■Co-Star
Co-Starの公式ウェブサイト
Co-Starは、NASAのデータと占星術のコンテンツを組み合わせたアメリカ発の星占いアプリです。AIによってパーソナライズされた占星術の結果を即座に見れる点が特徴となっています。2017年に発表されました。statistaの統計(※2)によると、Co-Starの登録ユーザー数は2020年の740万人から、2023年の3000万人まで成長しています。
(※2)
Number of registered Co-Star users worldwide from October 2019 to July 2023
https://www.statista.com/statistics/1451873/costar-registered-users/
アプリ内では、生年月日、生まれた時刻と場所を登録し、そこから導き出される自分用に用意された占星術の結果を読むことができます。自分が元々持っている性質や傾向を知るだけでなく、毎日その日の占い結果も読むことができます。またアプリ内で友人の情報を追加することができ、お互いの星座の相性をチェックすることができます。
■Sanctuary
Sanctuaryの公式ウェブサイト
Sanctuaryは、自分の生年月日や生まれた時刻や場所から導き出される星占い結果を見たり、タロットやクリスタルなどのスピリチュアルな占いに関連する読み物のコンテンツを楽しんだりできるアプリです。アプリ内で、実際の占い師にチャットや電話を通じて個人的に占ってもらえるサービスも提供しています。
まとめ
今回はアメリカの若い世代を中心に関心が高まっている占星術について取り上げました。
SNS上で星占い結果を発信したり、面白おかしくミームを見たりすることで、カジュアルに占星術を楽しんでいるような姿が浮かび上がってきました。
また不安定な世の中を生きる上で心を軽くしてくれるものとして占星術の価値が見出されていることも分かりました。自己理解を深め、人間関係をより円滑にするためのヒントとしても活用されています。
そして占星術への関心の高まりとともに、マッチングアプリで星座の相性を見れる機能や、占星術のコンテンツを楽しめるアプリなどが登場しています。
SNSや星占いアプリを通じて気軽にいろんな人と占星術を話題にできる今、占星術と人々の距離感がぐっと近くなってきています。
【参考】
https://theweek.com/tech/gen-z-and-astrology-written-in-the-stars
https://www.bbc.com/worklife/article/20210205-why-astrology-is-so-popular-now
https://www.brookes.ac.uk/about-brookes/news/news-from-2025/05/expert-comment-why-is-gen-z-looking-to-the-stars-f
https://www.abc.net.au/news/2019-07-11/mercury-retrograde-if-life-is-a-mess-can-you-blame-it-on-planets/11298144
https://www.thecut.com/article/saturn-return-what-it-is-what-to-expect.html
https://www.costarastrology.com/faq/
大学ではポルトガル語と言語学を学び、常に様々な外国文化や言語に興味がありました。
海外情報に関する記事を通じて、何かヒントに繋がる新たな視点や面白い発見をお届けできればと思います。
趣味は、海外エンタメ情報の追っかけとおうちでラテアート修行をすることです。