再会
ご無沙汰していた方々に久しぶりにお会いする機会が増えてきました。もちろん、お会いしたかった方ばかりではありません。一生会わずとも済ませたかった方もいますが、押しなべて再会すると心和みます。
再会出来、幸福感に浸れる時間を持てるのは自分の大切な資産です。幾久しく交流が途絶えていても相手を確認した瞬間は夢見心地です。さらに一歩踏み込んで相手とのコミュニケーションを再構築し、これをビジネスチャンスとして活かせれば、目に見える資産として産出することも存外可能性が高いのです。
心に疼く再会シーンが印象に残る映画も数多く存在します。古典的名作「哀愁(Waterloo Bridge)」では戦地から戻った戦死したはずの英国軍将校ロイ・クローニン大尉(ロバート・テイラー)をバレリーナのマイラ・レスター(ビビアン・リー)が駅で偶然見つけてしまったシーン、「ロビンとマリアン」で十字軍の遠征から戻ったロビンフッド(ショーン・コネリー)が尼僧になっていたマリアン(オードリー・ヘップバーン)を遠くから気づき話しかけるシーン等々、動画は小説などの原作に勝る点もあります。
これらの作品では俳優の演技力もさることながら、心に直接訴え、現実と夢との境を教示してくれるところが動画の強みです。現在の姿と在りし日の姿を瞬時に特定し、目を見開いて求め受け入れる状態にこそ再会(再開)の醍醐味があるのです。
久しく会えず、音信不通の知人や友人達と積極的に交わる機会を作りたいとは思っています。なかなか難しいところもありますが。
無形資産(Intangible asset)
資産は大まかに有形資産と無形資産の対に分かれます。一般的には有形資産とは不動産、現金、証券、商品、工場、建物などの実物資産であり、「形のある資産」、「目に見える資産」を指します。
無形資産は物的には実体の存在しない資産を示し、権利やノウハウといった「形を持たない資産」、「目に見えない資産」であり、ブランドや文化、特許や商標権といった知的資産、あるいはソフトウェアやデータベース、従業員の持つ経験・技術や能力など人的資産、企業文化や企業風土、経営管理プロセスなどといった企業収益の基盤となるインフラストラクチャ資産などが挙げられます。
競争力の源泉が物理的な生産設備から人々のアイデアや発想にシフトしつつあり、無形資産の重要性が高まっています。これらは実体の無い資産であることから、会計制度上では原則として資産として計上出来無くなっています。デジタル化が進む現代では、現行の税制では無形資産の補足は極めて困難です。膨張著しい財政への対応や課税公平の原則からも無形資産を如何に補足するかあるいは評価するかは国際的にも今後の重要な課題となっています。
投資という観点からも欧米を中心に無形資産が注目され、投資額も増加しています。特許権やソフトウェア、のれん(営業権)等、一部の無形資産は企業の貸借対照表に計上されますが、多くは財務諸表に反映されず、企業による非財務情報開示から読み取る必要があります。
Made in JAPAN(メイド・イン・ジャパン)
最近ではあまり話題になら無くなったブランドが「Made in JAPAN」です。高度経済成長を迎え、それまで粗悪とされていた日本製品がその技術力や独自性を徐々に世界で評価され始め、ついには「Made in JAPAN」という製品ブランドが世界を席巻するようになりました。
「Made in JAPAN」で波に乗る日本は、品質の信頼性、製品へのこだわり、先見性のあるユニークなデザインなどで、世界経済をリードする存在となり2010年に中国に抜かれるまで米国に次いで、GDP世界第2位となりました。
ラグジュアリーやファッションなど高級品という観点におけるブランド力では欧米に追いつくのは至難の業でしたが、特に家電や自動車などでは向かうところ敵無しであり、「産業のコメ」といわれる半導体産業でも日本のメーカーは世界を凌駕しました。その後は過剰品質を追求するあまり、ブランドとしての「Made in JAPAN」は価値を失う傾向にあります。
今まで高いブランド価値を誇ったのは、日本の商品・技術を認められようとエコノミックアニマルと軽蔑されても世界中で商売を展開してきた先人達の功績もあります。
また、「Made in JAPAN」の背景には明治以降の富国強兵のもと欧米からの科学技術の導入に国を挙げて傾注してきた結果、戦闘機のエンジンは自動車産業に、軍艦の船舶技術は造船業に、建設・土木技術はインフラ整備になどとその高度な技術力がそれぞれに進化し、戦後日本の高度成長を支えたという要素もあります。フランスのコルベール委員会など欧州のブランド戦略も国を挙げてです。近頃、これだけインバウンド観光客が集まる日本です。「Made in JAPAN」のさらなる活性化を図るか、あるいは勝るとも劣らない強力なブランドを構築すべきか思案のしどころです。
無形資産と日本企業
2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)は知的財産への投資を取締役会が監督し、開示すべきとしています。主要上場企業を比較すると、米国企業は企業価値に占める無形資産が9割に達するのに対し、日本企業は3割に留まっています。欧州や中国、韓国と比べても割合の低さが目立っています。
日本はかって「特許大国」と言われていましたが、この30数年間イノベーションから遠ざかっています。日本企業は家電などモノづくりの市場で稼げなくなりつつあることを認識しながら、新市場への投資を怠り既存事業の効率化に終始したためです。
結果として、米国や中国を筆頭とする国々にIT関連の新事業の創出で水をあけられたのです。
2002年には「知的財産立国」を掲げながらも知財の活用は不十分でした。知財を事業に活かすには受け皿となる器が必要ですがそれに日本は失敗したといわれています。原因のひとつに経営者の無形資産への関心が薄かったことが挙げられます。
つまるところ、経営者は環境変化に対応した企業戦略を立案し、投資家達に説明して資金を調達する必要がありますが、その「証拠」である特許などの知財への十分な理解の不足が要因と考えられます。
無形資産とは、ブランドや信頼、デザインなど良い商品を生み出す「企業の競争力そのもの」です。それをどう表現・開示するべきかが、改めてこれからの日本及び日本企業に問われています。





株式会社創造開発研究所所長、一般社団法人マーケティング共創協会理事・研究フェロー。広告・マーケティング業界に約40年従事。
日本創造学会評議員、国土交通省委員、東京富士大学経営研究所特別研究員、公益社団法人日本マーケティング協会月刊誌「ホライズン」編集委員、常任執筆者、ニューフィフティ研究会コーディネーター、CSRマーケティング会議企画委員会委員、一般社団法人日本新聞協会委員などを歴任。日本創造学会2004年第26回研究大会論文賞受賞。