食品ロス解決アプリのMAUは1年で約1.9倍。SDGsで追い風が吹くフードシェア系サービスを比較調査

食品ロス解決アプリのMAUは1年で約1.9倍。SDGsで追い風が吹くフードシェア系サービスを比較調査

食品ロスを減らすための法律「食品ロス削減推進法」が2019年10月に施行され、SDGsの目標のひとつとしても掲げられている食品ロス問題。自治体主体の取り組みが広がる一方、食品ロス削減に役立つサービスも増えてきています。それらのサービスは、どこまで浸透し、どのような層に利用されているのでしょうか?本稿では「食品ロス削減」サービスを調査しました。


食品ロス問題とは?

農林水産省によると、まだ食べられるのに廃棄される食品は、日本全体で643万トンにのぼると推計されています(平成28年時点)。それらは主に家庭や飲食店での食べ残しや規格外品、賞味期限切れ品など。

最近だと、特に恵方巻の大量廃棄問題は深刻さを極める状況が大きく報道されました。また、2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)にも「2030年までに世界の食料廃棄を半減する」という目標が掲げられ、世界的に問題意識が高まっています。

日本では、2019年10月に「食品ロス削減推進法」が新たに制定され、国や地域を挙げての取り組みが広がっています。自治体のみならず企業の動きも加速し、大手コンビニでは消費期限が迫った商品の購入に対するポイント還元や、恵方巻やクリスマスケーキなどイベント需要の商品の予約販売をスタート。飲食店や食品メーカーの余剰在庫を低価格で購入できるフードシェアリングサービスや、規格外を活用した商品なども広がってきています。

実際、国内の食品ロスへの関心はどうなっているのでしょうか。そこで、Web行動ログ分析ツール「eMark+(イーマークプラス)」を使い、「食品ロス」関連の検索キーワードのランキングを見てみました。

eMark+画面より(集計期間:2019年3月~2020年2月、デバイス:スマートフォン)

食品ロスの規模などに関する検索に次いで、「アプリ」や「通販」がキーワード上位にランクイン。消費者が利用できるサービスへの注目の高まりがうかがえます。では、実際にどのようなサービスが普及しているのでしょうか。次で見ていきましょう。

フードシェア「TABETE」がユーザー数を伸ばす

食品ロス削減に貢献するサービスとして、近年存在感を高めるのがプラットフォーム型のフードシェアリングサービス。中でも、提供地域やユーザー数を着実に伸ばしているのが「TABETE(タベテ)」です。

「TABETE」は、美味しく食べられる状態でありながら、閉店時間や賞味期限などの理由から廃棄が迫る食品を、ユーザーが購入できるプラットフォーム。お店の食品ロス削減や売り上げ貢献に繋がることから、サービス内では食事を購入することを「レスキュー」と表現しています。

店舗側の負担がないことや運用の手軽さも後押しとなり、自治体や店舗が続々と加盟。現在、関東中心に7県で展開され、約560店舗で利用できます。ユーザーはサービスを通じて社会貢献ができるほか、美味しい食事がお得に購入できたり、新しいお店が発見できる楽しさもあるといいます。

フードシェアリングサービス「TABETE」のWebサイト画面。普通よりも安い値段で食事が販売されている。

では「TABETE」はどのようなユーザーに利用されているのでしょうか。まずサービスのMAU推移をeMark+で見ていきましょう。

(集計期間:2019年3月~2020年2月、デバイス:スマートフォン)

集計してみると、1年間で1.9倍近くユーザーが拡大していることが分かりました。特にユーザー数の増加が目立つ2019年6月から7月は連携地域が増えたタイミングと重なり、それに伴いユーザー数が増えたと考えられます。

また、グラフで山になっている2019年10月は「食品ロス削減推進法」が施行された月です。新法成立もサービスの伸びに影響したのではないでしょうか。

次に性・年代別のユーザー層を見ていきます。

TABETEアプリユーザーの性別割合(集計期間:2019年3月〜2020年2月)

TABETEアプリユーザーの年代別割合(集計期間:2019年3月〜2020年2月)

男女比では男性が約49%、女性が約51%と、ほぼ半々という結果です。また年代における偏りも大きくは見られず、まんべんなく分布していることが分かりました。

多様化するフードシェアリングサービス

「TABETE」は出品者の掲載料もユーザー会費もかからないことから、主な収益源は販売手数料と考えられます。一方で、フードシェアリングの中には月額料金と月の利用回数が設定されているサービス(「ReduceGO」や「FOOD PASSPORT」など)もあります。(編集部注:FOOD PASSPORTは新型コロナウイルスの影響から2020年4月30日以降サービスを停止)

また、「TABETE」は飲食店と連携したサービスですが、食品メーカーの賞味期限が近づいた商品や販売時期のずれたギフト品などをお得に購入できる通販型のサービス(「KURADASHI.jp」、「Otameshi」)などもあります。

食品ロス削減サービスの多様化により、ユーザーはライフスタイルに応じて使いやすいサービスの比較検討が可能になっています。サービスの特長を活かし、併用するユーザーもいるでしょう。

フードシェアリングサービスは購入チャネルがリアル店舗か通販か、支払い方法は利用時か月額課金か、で大別される

企業の福利厚生に食品ロスを活用も

フードシェアリング以外にも、独自のテクノロジーで食品ロス削減に貢献するサービスも登場しています。例えば、フローズンフルーツ「HenoHeno(ヘノヘノ)」は、規格外やキズのある果物を冷凍加工した商品。「美味しくフードロス削減に貢献」をコンセプトに、急速冷凍の技術が生み出す新食感や、生の果物のような風味が特長だといいます。

ここまで紹介してきたTABETEやReduceGOなどのフードシェアリングサービスはBtoCの食品販売でしたが、HenoHenoは主に企業の福利厚生のためのサービスを展開。SDGsや健康経営を推進する企業を中心に販売しています。

サービス開始から約半年で累計導入企業は100社に至るとのリリースもあります。食品ロス削減に関心を寄せる、SDGsへの取り組みを積極的に行う企業へのビジネスも、今後広がっていくのではないでしょうか。

HenoHenoを販売するデイブレイク社プレスリリースより

まとめ

本記事ではフードシェアリングサービスなどによる、各社の食品ロスへのアプローチを見てきました。サービスの発展においては、いかに消費者の意識を向けられるかも重要な課題です。

社会貢献の目線だけでなく、「お得」「美味しい」「楽しい」などの付加価値を提供しながらうまく消費者を取り込むことができれば、食品ロス削減のムーブメントを起こす要となるはず。今後の動向に注目です。

分析概要

ネット行動分析サービスを提供する株式会社ヴァリューズは、全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「eMark+」を使用し、2019年3月~2020年2月のネット行動ログデータを分析しました。
※ユーザー数はヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。

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この記事のライター

フリーランスPRおよびライターとして活動中。二児の母。

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