どうなる?東京五輪
新型コロナの影響で1年延期し、2021年7月23日開会の方向で合意された東京オリンピック。しかし感染者は今もなお世界中で増え続け、来年夏にも収束は難しいという意見も耳にします。そんな中で開催予定の東京オリンピックは、これまでとは違った内容になるでしょう。
東京オリンピックで実施されるスポーツは33競技。野球・ソフトボール、空手、スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンの計5競技が、今大会から追加された新競技です。日本選手の活躍が期待される競技も追加されており、国民の期待が寄せられています。
しかし、コロナが収束しなければ、入場制限や無観客といった措置が取られるかもしれません。そこで活躍が期待されるのが、テレビ中継やLIVE配信です。特にスポーツLIVE配信は、コロナ禍に多くのスポーツが無観客開催されたことで需要が高まり、ここ最近の興隆が目立っています。
コロナ禍で注目されたスポーツLIVE配信。2021年のトレンドトピックとして着目し、主要サービスの動向を元に深掘りしていきます。
主要スポーツLIVE配信サービスのユーザー推移をチェック
今回は、スポーツLIVE配信を行う国内の主要3サービスとして、DAZN(ダゾーン)、スカパー、WOWOWの3サービスをピックアップ。まずは、3サービスの概要を紹介します。
2016年に日本上陸したDAZNは、野球やサッカーのほか、ゴルフや格闘技、eスポーツまで、あらゆる種目を網羅するスポーツ専門のLIVE配信サービスです。国内外のスポーツライブ中継のほか、見逃し配信や、過去の名シーンを特集したコンテンツも配信しています。
スカパーは、映画やドラマ、スポーツ、音楽など、広くエンターテイメントを扱う動画配信サービス。スポーツでは野球やサッカーを中心に、格闘技やモータースポーツなどを配信しており、選手を主人公にしたドキュメンタリーなども見応えのある独自コンテンツです。
WOWOWも、スカパーと同様、映画やドラマなど幅広いジャンルを扱い、スポーツではサッカーを中心にゴルフやテニス、格闘技などを配信しています。さらにWOWOWは、スポーツや映画と連動させたツアーを企画・販売する「WOWOWトラベル」を展開しており、現地でのスポーツ観戦ツアーを多数開催。現在はコロナの影響で休止していますが、ヨーロッパやアメリカなどでの観戦ツアーが企画されていました。
↓マナミナ「スポーツLIVE配信サービス」調査記事
日本上陸から丸3年、DAZN(ダゾーン)のユーザー数は? スポーツ動画配信サービスを調査しました
https://manamina.valuesccg.com/articles/722国内外のスポーツを配信しているDAZN(ダゾーン)が、日本に上陸してから丸3年。現在のユーザー数はどのように推移しているのでしょうか。同じくスポーツ動画配信を行うスカパーやWOWOWとのユーザー層の違い、3サービスの特徴をまとめてみました。
それでは次に、3つのサービスにおけるPC・スマホ合算のユーザー推移を見ていきましょう。
eMark+より集計。対象期間:2019年12月~2020年11月、対象デバイス:PC&スマートフォン
【対象サイト・アプリ】
・DAZN→Webサイト(https://www.dazn.com)とアプリ「DAZN」
・WOWOW→Webサイト(https://www.wowow.co.jp)とアプリ「WOWOWメンバーズオンデマンド」
・スカパー→Webサイト(https://www.skyperfectv.co.jp)とアプリ「スカパー!オンデマンド」
WOWOWが他の2サービスと大きく差をつけて1位で、スカパー、DAZNと続きます。ただし、WOWOWとスカパーはスポーツ配信だけではありませんので、スポーツを強みとするDAZNとは、動きの要因は異なると考えられます。
2020年2月から5月にかけて、WOWOWとスカパーはユーザーを拡大。新型コロナが本格化した時期と重なっており、ステイホーム中の娯楽として、映画やドラマなどのエンタメコンテンツの視聴者が増えたと推測できます。
一方、スポーツを専門とするDAZNは、他の2サービスよりも試合やリーグの開催時期に大きく左右されたと推測します。今年はコロナの影響でプロ野球が例年よりも約3カ月遅れて6月に開幕。Jリーグも2月末から試合を延期して6月に再開するなど、異例のスケジュールで行われました。これらの人気スポーツの試合延期が重なったことで、DAZNは一時伸び悩みましたが、ちょうど人気プロスポーツが開幕・再開した6月ごろから大きく伸長しています。
さらに、DAZNは6月に通常1ヶ月の無料期間が2ヶ月に延長されるキャンペーンを開催しており、6月・7月の伸びはこの効果もあるでしょう。
また、こちらは3サービスの年代別比較です。
eMark+より集計。対象期間:2019年12月~2020年11月、対象デバイス:PC&スマートフォン
【対象サイト・アプリ】
・DAZN→Webサイト(https://www.dazn.com)とアプリ「DAZN」
・WOWOW→Webサイト(https://www.wowow.co.jp)とアプリ「WOWOWメンバーズオンデマンド」
・スカパー→Webサイト(https://www.skyperfectv.co.jp)とアプリ「スカパー!オンデマンド」
DAZNは他の2サービスに比べて20代の若年層比率が高い傾向です。スカパー、WOWOWの年齢層構造は類似しており、幅広い年齢層をカバーしつつ、40代~60代の中高年層が主要層という構成でした。若年層の方がスポーツのライブ配信アプリ利用率は高く、より専門性の高いスポーツコンテンツを持つDAZNを利用していると言えそうです。
スポーツLIVE配信の検索キーワードの傾向は?
続いて、Web行動ログ分析ツール「Dockpit」を使って、3サイトへの流入に占める自然検索の傾向をチェックします。
こちらは、直近1年間の自然検索での流入数の推移です。
Dockpitより集計。対象期間:2019年12月~2020年11月、対象デバイス:PC&スマートフォン
2020年7月はDAZNがWOWOWを抜き、最も検索流入が多い結果となっていました。その後徐々に元の順位に戻っていますが、スカパーとの差は1年前と比較してかなり縮まっています。
続いて、年間の検索キーワードランキングを見てみましょう。こちらは、直近1年で3サービスの検索に使用されたキーワードの上位10を表しています。
Dockpitより集計。対象期間:2019年12月~2020年11月、対象デバイス:PC&スマートフォン
年間の検索数で見ても、ユーザー数では2位のスカパーよりも、DAZNのサービス名が多く検索されていました。
それぞれの検索キーワードは、サービス名がほとんどでしたが、スカパーは「スカパー 無料」というキーワードが上位に入っていました。
Dockpitより集計。対象期間:2019年12月~2020年11月、対象デバイス:PC&スマートフォン
スカパーは毎月第1日曜日を「無料の日」としており、契約以外のチャンネルも視聴できるサービスを提供しています。「無料の日は必ず見る!」というユーザーも多く、検索キーワードとしても上位にランクインしているのでしょう。
2021年はどうなる?スポーツLIVE配信の今後
ここまで過去1年間のスポーツLIVE配信の動向を調査しましたが、東京オリンピックが開催される来年はどうなっているでしょうか。
DAZNは先日、飲食店やホテルなどでの利用拡大に向け、商業施設を対象にした利用契約サービスを開始しました。既に国内ではカラオケボックスやインターネットカフェなど700箇所以上で使用でき、今後も施設数を増やしていくと発表しています。既にヨーロッパやアメリカでは年間数万の商業施設で取り入れられており、東京オリンピックでの需要も意識して、日本でのサービスを開始したのかもしれません。
また、ライブ配信だけでなく、VRを活用したスポーツ観戦もここ最近注目されています。今年夏に無料トライアルが行われた、横浜DeNAベイスターズとKDDI主導の「バーチャルハマスタ」は、VR空間での観戦だけでなく、ジェット風船を飛ばしたり、選手の巨大パネルが設置されるなど、VRならではの演出が盛り込まれていたことで話題になりました。このようなテクノロジーを活かしたスポーツ観戦も、東京オリンピックに向けて来年実用化されるかもしれません。
1年間待ちわびた東京オリンピックがどんな開催内容になるのか、期待と不安が入り混じります。もしかすると、これまでにない次世代スポーツ観戦が急発進する大会になるかもしれません。その代表格として、活躍が期待されるスポーツLIVE配信サービス。2021年の展開が楽しみです。
<分析概要>
ネット行動分析サービスを提供する株式会社ヴァリューズは、全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「eMark+」「Dockpit」を使用し、2019年12月~2020年11月のネット行動ログデータを分析しました。※ユーザー数やセッション数はヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。
フリーランスPRおよびライターとして活動中。二児の母。