ほんの数年前までは、中国人はまだ中古品を「品質の悪い物」として敬遠していましたが、近年では中古品の売買がブームになってきました。
「中古品経済におけるユーザーの観察報告」によれば、7割以上のインタビュー回答者は、週に1〜2回中古品を売買していると答えました。ShenwanHongyuanGroupの研究報告によると、2019年の中国の中古品市場規模は前年比で19%増加し、8,834億元(約15兆円)にも達したと言われており、急激に拡大しています。
2019年の中国の中古品市場規模
また、特に注目すべきは、若年層が中古品売買に対して積極的な姿勢を取っていることです。タブレット端末の「iPad」から洋服に至るまで、インターネットの販売サイトでは、中古品の売買が増加しています。
以下では、販売サイトの主なユーザーである18〜34歳の若年層が中古品に惹かれる理由を分析します。
若年層の消費価値観
■合理性重視
中国の若者が買い物するときに、優先的に以下の要因を検討する傾向があります。
①品質が良いかどうか
②価格が品質に見合っているかどうか
③色やデザインよりも、使いやすい(着やすい)かどうか
④長く使えるかどうか
⑤持続可能性があるかどうか
このように、中国の若年層は合理性重視の消費価値観を持っていることが分かります。そのうえ、インターネットを通じて、物や場所などを共有するシェア経済の拡大によって、中国人の中古品に対する抵抗感が薄れつつあります。そのため、上記の要素を満たしている場合、より経済的な中古品を選ぶことが多くなりました。
■グリーン経済
中国政府は経済成長と環境を両立することで持続可能な発展を達成するために、長年に渡って国民にグリーンコンシューマーになるように呼びかけてきました。それに呼応するように、若年層の消費行動は商品の「持続可能性」に大きく影響されています。
「世界のブランド品消費者意識調査」によれば、ブランド品の1次市場および2次市場の顧客の59%は、商品の「持続可能性」が彼らの購買行動に影響を与えており、ブランド品の2次市場の顧客の17%は中古ブランド品の購入はグリーン経済の理念に沿っていると表明しました。
■虚栄心による消費・衒示(げんじ)的消費
合理性重視の消費価値観を持っている一方、虚栄心による買い物や衒示的消費(=誇示的消費)も存在しています。
中国では近年、急激な経済の成長によって、一部の富裕層は誇示したいという思いから高級ブランド品を持つようになりました。そして、高級ブランド品を日常的に目にすることが多くなったことで、他人に追随して安い中古ブランド品を買う中間所得層も多くなりました。
「2020年中国中古ブランド品市場発展の研究報告」によると、2019年に中古ブランド品を購入する顧客の50%は30歳未満です。このように、収入は少ないけれども、虚栄心の強い若年層はコストパフォーマンスの良い中古ブランド品を購入することが多いようです。
若者に多い衝動買い
「2019年第3四半期の支払システムの全体的な稼働状況」によれば、第3四半期までに、Z世代の約50%はクレジットカードの支払いを滞納しており、その総額は919.6億元(約1.5兆円)にも達しています。また、「2018年中国退職後未来図調査報告」のデータによると、18〜34歳の若者の毎月の平均貯蓄額は僅か1339元(約22,289円)になります。
数年前から、日本の女子高生の制服をファッションとして愛用する中国女性が増えてきました。その「JK制服ブーム」に乗って、ついつい制服を買ってしまった人が多かったのか、昨年、中国のフリマアプリ「閑魚」では、JK制服の出品数が最多となりました。
このように、衝動買いの多い若者がすぐにフリマアプリを利用して売買する行為も、中古経済の発展の理由の一つになりうるでしょう。
出品数の多い商品 TOP 15
シェア経済の拡大とフリマアプリの登場
中国では経済の成長と収入の増加によって、衒示的消費と衝動買いが多くなりました。従って、商品の使用価値は十分に引き出されないまま、不用品になってしまうことが増えています。しかしながら、リサイクルショップやフリーマーケットを代表とした中国の伝統的な中古品市場の成長は、経済の発展に追い付けずにいました。
そのような状況下、インターネットを含む情報技術を利用して、シェアする形で社会資源の整合・共有を可能にしたシェアリングエコノミーの拡大は、中古品経済の発展にきっかけを与えました。リサイクルショップに依存していた中古品経済は、「閑魚」や「転転」などのようなフリマアプリの出現によって急成長を遂げました。
今年3月に転転グループによって発表された「2020年度中古品売買サービス白書」では、2020年5月に新設合併で新しく設立された会社「転転グループ」の収益は、対前年111%増加したことが書き記されています。また、アリババグループの財務諸表によれば、閑魚の「GMV」(Gross Merchandize Volume)も2000億元(約3兆元)を超えており、前年度と比較して100%増となります。
住宅購入価格の上昇
中国の1級都市と2級都市において、住宅の平均購入価格は持続的、かつ急激な上昇を示しています。
この10年間だけを見ても、1級都市の住宅の購入価格は20,800元/平米(約35万円/平米)から42,145元/平米(約70万円/平米)に、2級都市の住宅の購入価格は8,638元/平米(約14万円/平米)から14,286元/平米(約24万円/平米)に上昇しました。そのため、遊休品の保存コストが大幅に上昇し、遊休品の販売・譲渡に繋がったとされています。
一方、高価な住宅購入価格によって賃貸を選択する人が増えたことも、中古品市場規模の拡大の理由の一つとされています。
「賃貸消費行動の調査報告」によると、1級都市と一部の新1級都市において、賃貸に住んでいる人は40%を超えており、さらに借主の多くは引越しの際に中古の家具を購入、もしくは譲渡しているようです。また、住宅購入価格の高い1級都市と2級都市におけるフリマアプリのユーザー数も、その他の都市におけるユーザー数より遥かに多いようです。
まとめ
以上を踏まえると、中古品が中国の若者の間で流行した直接の原因は、若年層の消費価値観や消費行動、フリマアプリの普及にありますが、その裏にはさらに中国の経済や政策の影響もあることが分かります。
日本の近代消費社会の4カテゴリーで中国の消費社会を分類してみると、中国は今、消費の単位が家族から個人になった第三の消費社会から自己充足としての消費へと向かう第四の消費社会に移行している最中で、今後さらに日本と同じようなシェア志向、社会志向へ向かって変化していくでしょう。
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「大学生网购冲动消费行为分析」
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「90后无负债人口仅占13.4%,年轻人为何总是冲动消费?」
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「在二手市场,我们看到了年轻人“悔购”的2020 | 年度消费奇观③」
https://www.cbndata.com/information/127053
「第四の消費社会~ものを買えば幸せになる時代の終わり~/藤井 健志」
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中国出身の留学生。立教大学大学院に在学中。