注目集まる社会貢献型ショッピングサイト「KURADASHI」
KURADASHIは、"もったいないを価値へ"をスローガンに掲げる株式会社クラダシが2015年に開始した、国内最大級の社会貢献型ショッピングサイト。フードロス削減に賛同したメーカーから協賛価格で商品を仕入れ、最大97%OFFで販売。売上の3~5%が、環境保護や動物保護などの社会貢献活動団体へ寄付されます。
取扱い商品は、パッケージのキズや、製造日から賞味期限までの期間を3等分して販売期限を設ける「3分の1ルール」などにより、まだまだ美味しく食べられるにも関わらず、廃棄の危機にある食品。それらを購入することで、フードロス削減に繋がります。
「KURADASHI」とは
それではまずKURADASHIへの興味関心を、分析ツール「Dockpit」で検索ユーザー数推移を見て確認してみましょう。
分析ツール:「Dockpit」、分析期間:2020年4月〜2021年3月、対象デバイス:PC、スマートフォン
今年の2月に、KURADASHIのユーザーが急増しています。2月はテレビや新聞など複数のメディアでKURADASHIが紹介されており、それらの影響が大きいと考えられます。特にテレビでは、サービス紹介に加え、KURADASHIに出品されている食品事業者や生産者も出演。格安価格で食品が買えるお得感と、手軽に社会貢献に参加できるという2つの特徴がより鮮明に紹介されたことで、検索数を引き上げたのではないでしょうか。
フードロス問題の関心層は?
KURADASHIはフードロス削減に貢献する代表的なサービスですが、近年、フードロスへの問題意識が高まり、国や地方自治体、民間企業でも、フードロス削減に向けた取り組みが増えてきています。
そもそもフードロスとは、「本来食べられるのに捨てられてしまう食品」のこと。国内のフードロスは年間で600万トン以上にのぼり、そのうち家庭から発生するフードロスはおよそ45%、事業からは55%と言われています。
また、国連が策定したSDGs(持続可能な開発目標)にフードロス削減が含まれ、「2030年までに世界全体の⼀⼈当たりの⾷料の廃棄を半減させる」というターゲットが示されました。これにより世界的にフードロスへの問題意識が普及。日本では、令和元年10月に「食品ロス削減推進法」が施行され、地方自治体に向けたフードロス削減の基本方針が示されました。
このようなフードロスをめぐる社会の動きを受け、民間企業でもフードロス削減の取り組みが活発化。コンビニでは、賞味期限が迫った商品の購入時にポイントを付与したり、恵方巻やクリスマスケーキなどの季節商品は予約制にするなどの対策が施されました。
このほか、KURADASHIと類似したフードシェアリングサービスもここ数年で増加。KURADSHIはメーカーの商品や食材が主体ですが、飲食店の余った料理やパンを手頃な価格で購入できるフードシェアリングサービス等も存在感を高めています。
自治体や民間企業での取り組みが進むフードロス削減ですが、消費者の間では、どのような層で関心が高いのでしょうか。「フードロス」を検索するユーザー構成を見てみましょう。
▼性別
分析ツール:「Dockpit」、分析期間:2020年4月〜2021年3月、対象デバイス:PC、スマートフォン
▼年代
分析ツール:「Dockpit」、分析期間:2020年4月〜2021年3月、対象デバイス:PC、スマートフォン
女性比率が高く、30~50代が主要層であることが分かります。食との接点が多い女性は、食べ物を大事にしようという意識が強く、また、フードシェアリングサービスを利用することで「美味しいものがお得に手に入る」という点にも注目しているのかもしれません。
フードロスサービスでは「手頃に買える通販サイト」が人気
では、フードロスを検索した人は、どのようなテーマに関心があるのでしょうか。ワードネットワークやに流入ページから深掘りしていきます。
こちらは、「フードロス」検索者のワードネットワークです。
分析ツール:「Dockpit」、分析期間:2020年4月〜2021年3月、対象デバイス:PC、スマートフォン
「通販」や「お菓子」は、KURADASHIのように、フードロスの食品を手頃な価格で販売するサービスへの関心だと考えられます。「パン」との繋がりが強いのは、パンが特にフードロスの多い食品と言われていることが関係しているのでしょう。最近はパンのロスを削減に特化したシェアリング・通販サービスも出てきており、「フードロス」「パン」に興味のある層は、それらのサービスへも関心を持つ可能性があると考えられます。
「コロナ」の繋がりは、新型コロナの影響で飲食店が営業自粛(短縮)を要請されたことで、たくさんの食材が行き場を失い、フードロスとなってしまったことが影響していると考えられます。それらのフードロスを救い出そうと、通販で販売する取り組みが複数の組織で行われました。コロナのワードネットワークに「支援」「応援」等のワードが見られるのは、それらの動きとの関連と言えそうです。
続いてこちらは、「フードロス」検索後の流入コンテンツの上位10ページです。
分析ツール:「Dockpit」、分析期間:2020年4月〜2021年3月、対象デバイス:PC、スマートフォン
1位の豊洲市場ドットコムのページを見てみると、「豊洲市場から食べ物のムダを無くそうプロジェクト」と題した、豊洲市場の訳アリ品を価格を抑えて販売するページでした。このプロジェクトは、特にコロナ禍でメディアでも取り上げられ、フードロス削減に貢献できるだけでなく、掘り出し物をお得に買えるメリットもあることから、大きな話題となりました。
2位のPIARYは、結婚式の引き出物やペーパーアイテムなど、結婚アイテムの通販サイト。新型コロナの影響で結婚式の中止が相次ぎ、ロスになってしまった引き出物を格安価格で販売するページでした。ワードネットワークでも「お菓子」を中心に「コロナ」「引き出物」「通販」のネットワークが見られたように、コロナで発生した引き出物のロスの購入に、注目が集まっていたことが分かります。
いずれも、「フードロスの食品を手頃に買える通販サイト」という点が共通しており、上位10のほとんどが、これらのコンテンツと類似した、「食べて応援」「美味しく社会貢献」などのキャッチフレーズが添えられた通販ページでした。
▼マナミナでは過去、フードロスに貢献する産直ECサイト「食べチョク」の調査記事も公開しています。併せてお読みください。
withコロナで一次産業の救世主に!?話題沸騰中の食べチョクのユーザー像にWebサイト分析から迫る
https://manamina.valuesccg.com/articles/10782020年前半から世界中で感染が拡大している新型コロナウイルスの影響によって、大きな影響を受けている農業や漁業などの一次産業。その生産者達の救世主となり、サービスを急成長させている産直ECサイトの「食べチョク」。そんな急成長を見せる「食べチョク」のユーザーの特徴、サービス成長の背景をヴァリューズの新ツール「Dockpit(ドックピット)」を使用して調べていきます。
まとめ
SDGsを機に世界的にフードロスへの問題意識が高まり、さらに新型コロナの影響で行き場を失った食品を救う動きが活発化しました。また、メディアでも取り上げられ、ユーザーが急拡大した「KURADASHI」や、豊洲市場のようなフードロス食材を販売する通販サイトは、中々手に入らない貴重な食材が格安で手に入ると大きな話題を呼びました。
「美味しい食品を手頃な価格で購入できる」という魅力は、フードロス問題に目を向けるきっかけにもなります。消費者の協力無くして解決できないフードロス問題にとって、美味しさ、手頃、希少といった要素は、人々を巻き込み、動かすための重要な要素と言えるでしょう。今後、消費者が積極的にフードロス削減に参加できる仕組みが発展し、問題解決に向けて進むことを期待します。
<分析概要>
ネット行動分析サービスを提供する株式会社ヴァリューズは、全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「Dockpit」を使用し、2020年4月~2021年3月のネット行動ログデータを分析しました。※ユーザー数はヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。
フリーランスPRおよびライターとして活動中。二児の母。