緊急事態宣言発令で身体の悩みの検索が増加
まずは、代表的な身体の悩みとして挙げられる「肩こり」「腰痛」「頭痛」「便秘」について、直近2年間の検索ユーザー数推移を見てみました。
「頭痛」と検索しているユーザーが最も多く、次いで「腰痛」「便秘」「肩こり」の順となっていました。新型コロナの感染が国内で初めて確認されたのは2020年1月ですが、それ以前から「頭痛」に関する検索者は月間で約50万人ほどおり、コロナに関係なく慢性的に「頭痛」に悩んでいるユーザーが多いことがわかりました。
また、これら4つのワードは緊急事態宣言が発令されると増加している傾向にあることもわかりました。例えば、1回目の緊急事態宣言は2020年4月7日~2020年5月25日でしたが、2020年5月7日に期間延長が適用されたことで5月は検索ユーザー数が特に伸びていました。さらに2回目の緊急事態宣言は2021年1月8日~2021年3月21日となっており、1月も検索ユーザー数が増加していることがわかりました。
長引く緊急事態宣言や延長で、環境の変化や先の見えない状況にストレスを感じ、身体に何らかの不調が生じて検索していることが考えられます。
検索ユーザー数推移
期間:2019年5月~2021年4月
デバイス:PCおよびスマートフォン
検索ユーザーのデモグラフィック
■女性割合が半数以上
では、どんな属性のユーザーが検索しているのでしょうか。
まずは、性別で見てみると、どのワードも女性割合が半数以上となっており、特に女性が悩んでいるようです。「便秘」に関しては女性割合が高く、7割以上となっていました。
検索ユーザーの属性:性別
期間:2019年5月~2021年4月
デバイス:PCおよびスマートフォン
■年代では40代が多い
次に、年代別で見てみましょう。「肩こり」「腰痛」は40代、「頭痛」は30代~40代、「便秘」は30代のユーザーが多く検索していることがわかりました。
全体的に40代が多い結果となりました。40代になると体質の変化の他に、責任ある仕事からストレスを感じて知らないうちに身体に負担をかけているのかもしれません。
検索ユーザーの属性:年代別
期間:2019年5月~2021年4月
デバイス:PCおよびスマートフォン
■「腰痛」「頭痛」「便秘」は20代が増加傾向に
「腰痛」「頭痛」「便秘」の検索ワードに関しては、コロナ以降、20代の検索数が増加傾向にあることが分かりました。
特に「頭痛」関連ワードはコロナ以前は2割に満たなかったのに対し、直近の4月では2割を超えており30代に迫ろうとしています。さらに「便秘」関連ワードは顕著でコロナ以前の2019年5月は13.1%に対して、2021年4月は21.2%と8ポイントも増加していました。
20代と言えば社会活動が最も活発な年代です。コロナの影響で行動範囲が制限されている上に、外出自粛でストレスや運動不足から「頭痛」や「便秘」を引き起こしている可能性が考えられます。
「腰痛」検索ユーザーの推移
期間:2019年5月~2021年4月
デバイス:PCおよびスマートフォン
「頭痛」検索ユーザーの推移
期間:2019年5月~2021年4月
デバイス:PCおよびスマートフォン
「便秘」検索ユーザーの推移
期間:2019年5月~2021年4月
デバイス:PCおよびスマートフォン
どんな身体の悩みを抱えている?
次は、「肩こり」と「腰痛」を検索しているユーザーが他にどんな身体の悩みを抱えているのか、新型コロナ発生前後のアンケート結果から調査しました。分析には、消費者ニーズを分析できるツール「story bank」を使用しています。
■「肩こり」検索ユーザーが抱えている悩み
まずは「肩こり」を検索しているユーザーを見てみました。
コロナ後は「頭痛」や「体のゆがみ」、「慢性疲労」、「むくみ」、「便秘」が上位にランクイン。コロナ前と比較すると悩みの顔ぶれに変化があることがわかりました。
リーチ率ではコロナ後の方が高くなっているワード(青い塗りつぶし)は「フケ・頭皮のかゆみ」と「薄毛・抜け毛」となっており、頭皮や毛髪に関するワードが目立っていました。
逆にコロナ後の方が低くなっているワード(赤い塗りつぶし)は「冷え症」と「睡眠不足」、「肌荒れ」で、特に差があったのは「睡眠不足」でした。自粛生活やテレワークなどの影響で、コロナ以前と比較すると時間を有意義に使えることから睡眠不足が解消しているのかもしれません。
「肩こり」検索ユーザーの身体の悩み/特徴値TOP20
期間:コロナ前は2019年8月~2020年1月、コロナ後は2020年3月~2020年8月
デバイス:PCおよびスマートフォン
※アンケートにて取得
■「腰痛」検索ユーザーが抱えている悩み
続いて、「腰痛」を検索しているユーザーを見てみましょう。
コロナ後は「睡眠不足」、「肩こり」、「慢性疲労」、「冷え症」、「敏感肌」となっていました。「慢性疲労」や「敏感肌」についてはコロナ前は下位にランクインしていたのに対し、コロナ後は上位となっており、関心度合いが高いことがうかがえました。
コロナ後にリーチ率が低くなっているワード(赤い塗りつぶし)は「腰痛」と「乾燥肌」でした。
「肩こり」検索ユーザーの身体の悩み/特徴値TOP20
期間:コロナ前は2019年8月~2020年1月、コロナ後は2020年3月~2020年8月
デバイス:PCおよびスマートフォン
※アンケートにて取得
ワードネットワークから興味関心の強いワードを探る
では、「肩こり」「腰痛」「頭痛」「便秘」のワードを検索しているユーザーは共にどんな検索をしているのでしょうか。
次はキーワード同士のつながりを可視化したワードネットワークを見てみました。
ワードネットワークでは、掛け合わせ検索件数が多く関連性が強いワード同士が線で繋がっており、それにより潜在的な興味関心を把握することができます。
■「肩こり」検索ユーザーの興味関心ワード
『マッサージ』『原因』『ストレッチ』『解消』『頭痛』に分類され、以下のことが考えられます。
・マッサージ:安くて、おすすめの整体や整骨院をエリアも含めて探している
・原因:吐き気や頭痛などの症状に加え、僧帽筋など筋肉との関係性も気にしている
・ストレッチ:簡単で気軽にできる方法をYouTubeやテレビなどで探している
・解消:枕などのグッズの他に、運動や筋トレなどの解消方法を探している
・頭痛:薬や漢方、ツボなど対処方法の他に、めまいや眼精疲労などの症状も気になっている
「肩こり」検索ユーザーのワードネットワーク
期間:2019年5月~2021年4月
デバイス:PCおよびスマートフォン
■「腰痛」検索ユーザーの興味関心ワード
『改善』『整体』『ストレッチ』『マットレス』『原因』に分類され、以下のことが考えられます。
・改善:グッズや薬の他に、筋トレやストレッチ、体操なども気になっている
・整体:おすすめや口コミから人気の院を探している
・ストレッチ:寝ながらや座ったまま、オフィスなど気軽にできる方法を探している
・マットレス:硬さや高反発など種類の他に、おすすめやランキングなどを気にしている
・原因:寝起きや、右側や左側など痛い場所を探っている
「腰痛」検索ユーザーのワードネットワーク
期間:2019年5月~2021年4月
デバイス:PCおよびスマートフォン
■「頭痛」検索ユーザーの興味関心ワード
『熱中症』『原因』『肩こり』『吐き気』『コロナ』に分類され、以下のことが考えられます。
・熱中症:熱や吐き気の症状の他に、ロキソニンや薬なども含め治し方や対処を探している
・原因:後頭部やこめかみなど痛む場所や、風邪や二日酔い、生理などが検索されている
・肩こり:吐き気やめまいなどの症状の他に漢方やツボなど緩和する方法も気になっている
・吐き気:悪寒や腹痛、下痢などの症状が主に検索されている
・コロナ:熱や喉の痛み、腹痛など症状が特に気になっている
「頭痛」検索ユーザーのワードネットワーク
期間:2019年5月~2021年4月
デバイス:PCおよびスマートフォン
■「便秘」検索ユーザーの興味関心ワード
『原因』『改善』『赤ちゃん』『解消』『ツボ』に分類され、以下のことが考えられます。
・原因:赤ちゃんや新生児、母乳など子供に関連することを気にしている
・改善:食事やサプリ、運動など改善手段を探している
・赤ちゃん:マッサージや綿棒、砂糖水など家庭でできる解消方法を探している
・解消:妊婦や赤ちゃん、子供や猫など広い範囲で検索されている
・ツボ:即効や速攻、お灸など実効性のある方法を探している
「便秘」検索ユーザーのワードネットワーク
期間:2019年5月~2021年4月
デバイス:PCおよびスマートフォン
特徴値から関心が高いワードを探る
最後に各ワードを検索しているユーザーの関心ワードを見てみました。
特徴的なワードとして以下があがってきました。
■「肩こり」検索ユーザーの関心ワード
「首こり」「首コリ」と首の凝りに関連する症状がランクイン。「肩こり」を訴えるユーザーは首こりを併発していることが多いのかもしれません。
「肩こり」検索ユーザーの関心ワード/特徴値TOP5
期間:2020年5月~2021年4月
デバイス:PCおよびスマートフォン
■「腰痛」検索ユーザーの関心ワード
「腰痛改善」や「腰痛対策」、「腰痛体操」など解消方法が目立ちました。他には「狭窄症」や「椎間板」など病名がランクインしていました。
「腰痛」検索ユーザーの関心ワード/特徴値TOP5
期間:2020年5月~2021年4月
デバイス:PCおよびスマートフォン
■「頭痛」検索ユーザーの関心ワード
頭痛の種類である「緊張型頭痛」がトップに。また、「寝過ぎ」や「寝すぎ」がランクイン
しており、寝過ぎによる体への影響や症状なども気にしているようです。
「頭痛」検索ユーザーの関心ワード/特徴値TOP5
期間:2020年5月~2021年4月
デバイス:PCおよびスマートフォン
■「便秘」検索ユーザーの関心ワード
「便秘になる」「便秘改善」が上位にランクインしていることから、便秘の原因や改善方法が気になっているようです。また、「お風呂上り」は一見無関係に見えますが、お風呂あがりのマッサージは効果的に便秘を改善できることもあるようで、関心が高いことがうかがえました。
「便秘」検索ユーザーの関心ワード/特徴値TOP5
期間:2020年5月~2021年4月
デバイス:PCおよびスマートフォン
まとめ
今回は、「肩こり」「腰痛」「頭痛」「便秘」の検索ワードについて調査しました。これらは緊急事態宣言をきっかけに検索数が増加する傾向にあることがわかりました。
また、20代の「腰痛」「頭痛」「便秘」の検索ユーザー数が増加傾向にあることも、新型コロナが大きく影響しているようです。
コロナ前と比較すると、コロナ後のユーザーの興味関心が変化していることもうかがえました。これらを踏まえ、ニーズの変化を柔軟に取り入れ情報を提供することが重要と言えそうです。
分析概要
全国のモニター会員の協力により、インターネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析ツール『Dockpit』および『story bank』を使用し、ユーザーのデジタル行動を分析しました。
「Dockpit」は、検索キーワード分析だけでなく、競合サイト分析や消費者のトレンド調査にも役立ちます。
もし宜しければ、無料版もありますので、下記よりご登録ください。
マナミナは" まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン "。
市場の動向や消費者の気持ちをデータを調査して伝えます。
編集部は、メディア出身者やデータ分析プロジェクト経験者、マーケティングコンサルタント、広告代理店出身者まで、様々なバックグラウンドのメンバーが集まりました。イメージは「仲の良いパートナー会社の人」。難しいことも簡単に、「みんながまなべる」メディアをめざして、日々情報を発信しています。