中国で加熱する「ファン経済」マーケティングを完全解説|中国トレンド調査

中国で加熱する「ファン経済」マーケティングを完全解説|中国トレンド調査

近年中国では「ファン経済」を利用したマーケティングが加熱しています。本記事では、中国独特のファン経済とファン経済マーケティングの現状と特徴、プロモーションの事例、メリット・デメリットについて解説します。


日本と同様に、中国でも広告宣伝に芸能人を起用することが一般的です。しかし、日本とは異なり、中国では「流量(トラフィック)」が起用の際の指標になっていることが多く、芸能人のファンの購買力への依存度が高い等の特徴があると考えられます。以下では、中国の芸能人起用事情とファン経済を利用したマーケティングについて解説していきます。

流量芸能人とファン経済

■「流量芸能人」とは

前述のように、中国では芸能人を起用する際に、「流量(トラフィック)」を参考にしていることが多いとされていますが、そのトラフィックを引き寄せることのできる芸能人は、特に「流量芸能人」と呼ばれます。

流量芸能人は近年インターネットで流行っている用語で、流行り出した当初は人気だけあって演技や歌唱力などの実力が伴っていない、という風刺の意味合いも含まれていましたが、最近では、単にファンの多い人気芸能人のことを指すことが多くなってきました。

例えば、今春中国で爆発的な人気を得たテレビドラマ「山河令」の主演である張哲瀚は一躍、流量芸能人になり、Weiboのフォロワー数はオンエア前の1200万人台から今の1700万人台になり、現在では22社とCM契約をしています。

■ファン経済

流量芸能人の流行によって注目されるようになった概念として、ファン経済が挙げられることが多いです。ファン経済とは、ファンと注目されている側(芸能人等)との関係を基礎にして展開されるビジネス行為を指し、「ユーザーとの密着度を上げ、口コミを通してマーケティングを行い、経済利益や社会的効率を向上させるビジネス運営スタイル」のことです。

簡単に言えば、ファンがアイドルを応援するために、CD・DVDやそのアイドルがイメージキャラクターを努めるブランドの商品などを購入することがファン経済です。

日本と異なり、中国のファンは熱狂的な人が多いです。流量芸能人が起用される場合、ファンだけで売上の半分以上を貢献することも多々あります。

例えば、アメリカニューヨークから生まれた美容ブランド「Elizabeth Arden(エリザベスアーデン)」の売行きは張哲瀚とCM契約を結んでからグッと伸びました。ECモール「タオバオ(Taobao)」において、元々一月で2000本しか売れなかった「レチノール セラミド カプセル」は、CMが公開されてから僅か1日でその販売数は1万本を超えました。また、販売数と比例して、商品レビュー欄もファンによるレビューによって塗りつぶされました。

■ファン経済とマーケティング

流量芸能人の起用によって売上が伸びることは以上から分かりますが、中国の流量芸能人は数多く、どの流量芸能人の影響力が強く、誰を起用したらいいのか、という疑問が自ずと生じるでしょう。

実は中国では、芸能人のビジネス価値に対してデータに基づいて評定する会社がいくつか存在します。

例えば、北京AlManデータテクノロジー株式会社がそのうちの一社で、認知度も評価も高いです。北京AlManデータテクノロジー株式会社は話題、口コミ、プロフェッショナリズム、CM起用という4つの面から、AI技術を用いて芸能人に対して総合的な評価を行い、さらにランク付けをしています。

6月17日に発表された最新の中国芸能人ビジネス価値ランキングでは、前記の張哲瀚が1位に上がり、そのビジネス価値スコアは96.45となっており、続いて2位と3位はそれぞれアイドルである王一博と女優のディルラバ・ディルムラットになります。予算が潤沢な場合、このようなTOP層の流量芸能人をキャスティングすれば、ハズレはまずないでしょう。

AlManデータによる中国芸能人ビジネス価値ランキング

また、日本では競合ブランドが同じ芸能人を起用することはタブーですが、中国では複数のブランドに同じ芸能人が起用されることは一般的です。例として再び張哲瀚を挙げますが、彼は化粧品ブランドだけで「メイベリン」や「クリニーク」、「ニベア」などの8社のイメージキャラクターを努めています。

張哲瀚がイメージキャラクターに起用されている化粧品ブランド

出典:各ブランドWeibo公式アカウント

芸能人起用の仕方も様々です。ブランド全体のイメージキャラクターはもちろん、1カテゴリーのみ、商品の1ラインのみ、または新商品の中でイチオシアイテムのみのイメージキャラクターとして起用するケースもよく見られます。

例えば、「メイベリン」のブランドイメージキャラクターは韓国の女性アイドルグループ「ITZY(イッジ)」で、ブランドアンバサダーには男性アイドルである何洛洛とアーティストであるTifa Chenの2名が起用されており、さらにベースメイクのイメージキャラクターとして張哲瀚が起用されています。

「メイベリン」のブランドイメージキャラクター(左)とブランドアンバサダー(右)

出典:「メイベリン」Weibo公式アカウント

中国市場における日本ブランドのマーケティング

「ザ クレンジングバーム」で有名のスキンケアブランド「DUO(デュオ)」は、2018年にアイドルグループである「KinKi Kids」をイメージキャラクターに起用したことで、中国人のファンの間でも話題になっていました。

これを機に、DUOは中国のECプラットフォームでビジネスを展開し、さらに6月12日に中国のサバイバルオーディション番組でデビューを果たしたINTO1の日本人メンバーであるサンタ(賛多)とのCM契約を公開しました。

中国のSNSである「Weibo」におけるDUOのオフィシャルアカウントにアップロードされている当該CMは、6月18日までに29.8万回リポストされており、またそのコメント数といいね数はそれぞれ3.6万と32.1万になることから、ファンによる商品の宣伝効果は絶大だと考えられます。また、賛多がイメージキャラクターを務めている商品である「ザ クレンジングバーム」の売上も早々に発表されました。1秒で22万元(約377万円)、30秒で140万元(約2400万円)、6分で300万元(約5143万円)と、かなりの好成績でした。

「Weibo」におけるDUOのCM

ファン経済に基づくマーケティングのメリットとデメリット

■メリット

流量芸能人をイメージキャラクターに起用する例は増えていますが、そのメリットは主に以下の通りです。

①ファンが商品を購入するため、売上の増加に直接的につながる
②ファンが勝手に広告を拡散するので、商品の宣伝になり、間接的に商品の売上を伸ばすことができる
③短期的にブランドの知名度・信頼度を上げることができる

メリット①と②に関しては、前述のDUOの例からよく理解できると思われますが、ここで特筆したいのはメリット③です。2014年に成立した中国のスキンケアブランド「One leaf」は成立すると同時に、当時の流量芸能人である鹿晗(ルハン)をイメージキャラクターに起用することで、ブランドの知名度を上げ、さらに翌年に「中国化粧品フェイシャルマスク第一位」の称号を得たことから、信頼度も高いことが分かります。

■デメリット

流量芸能人をイメージキャラクターに起用するメリットがある一方、デメリットも確実に存在します。

①タオバオ(Taobao)における商品レビュー欄に芸能人への応援メッセージが埋まっていることがあるため、一般の顧客は口コミを参考することが難しくなる
②反感を買うこともある

上記のサンタ(賛多)と同じINTO1のメンバーであるリュウユ(劉宇)が化粧品ブランド「perfect diary」のイメージキャラクターに起用されてから20日以内に、リュウユがおすすめしたリップのレビューの半数以上が「リュウユが選んだ色がかわいい」や「リュウユをイメージキャラクターに起用していただきありがとうございます」等のような内容になりました。この現象に対して、「なんでレビュー欄にはファンの応援メッセージばっかりなの?」と反発的な態度を示している消費者も少なくありません。

「perfect diary」の商品レビュー

まとめ

適切な流量芸能人をブランドのイメージキャラクターに起用することで、莫大な利益を得られるのは間違いないことでしょう。

しかしそれと同時に、一般の顧客と当該ブランド固有のファンを遠ざけることもあるので、慎重にキャスティングすることが重要だと考えられます。

<参考文献>
「【艾漫×新浪微博明星】联合发布9月商业价值」
http://www.iminer.com/newsDetail/getCans/5db00506c96882753579ffe9
「看了这几部热播剧男神的粉丝数,网友:张哲瀚涨粉迅速!」
https://www.163.com/dy/article/GB4536UD0517UKL6.html
「流量明星,凭什么有流量?」
https://zhuanlan.zhihu.com/p/52808288
「化粧品ブランドの芸能人起用は「流量」とファン経済に注目!中国のプロモーション事例」
https://note.com/china_cosmetic/n/nba42c14ed8c2
「人気のファン経済、ファンとの触れ合いが特徴」
http://japanese.china.org.cn/business/txt/2016-08/15/content_39096611_3.htm
「粉丝经济」
https://baike.baidu.com/item/粉丝经济
「张哲瀚代言轻奢产品,一天销量赶超之前5倍还多,“下海”真好!」
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1694199841897829498&wfr=spider&for=pc
「一叶子」
https://baike.baidu.com/item/一叶子/7563503?fr=aladdin
「贡献一半以上销量,刘宇、杨洋们的粉丝在彩妆晒单“控评”」
https://www.cbndata.com/information/169801

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この記事のライター

中国出身の留学生。立教大学大学院に在学中。

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